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YUKICHI OTSUKA 大塚雄吉
F1 ウォッチャー
幼少期にF1に魅せられ、50年以上にわたって、日本製のF1が出ていなくても、日本人F1ドライバーがいなくても50年以上にわたってF1を見続けてきた、F1 ウォッチャー。

Formula One 2021(3)2021.04.30

エミリア・ロマーニャGPは、フェルスタッペンが独走で優勝した。
予選でポールポジションを獲ったのはハミルトンだったが、ペレスとフェルスタッペンがハミルトンから0.089秒以内につけた。
ボッタスが予選で8番手に沈んだ為に、ハミルトンは決勝のスタートで孤軍奮闘せざるを得なくなった。
案の定、決勝のスタートでハミルトンはペレスとフェルスタッペンの間に挟まれて1コーナーに侵入し、フェルスタッペンに鼻先を抑えられて先行を許すことになった。
これまで、スタート時のトルクの出し方がうまくなく、フェルスタッペンに迷惑をかけてきたホンダPUだが、冬の間にこの面でも飛躍的に進歩したホンダPU (+PUセッティング)は今回フェルスタッペンのトップ奪取の大きな助けとなった。
濡れた路面(特に滑っとした路面)で走行する能力が突出しているフェルスタッペンは2番手のはハミルトンを寄せ付けず、最後までトップを譲ることなく独走して優勝した。

それでも、ハミルトンはチャンピオンの強さを見せた。
レース中に周回遅れをパスする時にしくじってコースアウトするも、そこでレースをあきらめず、冷静にグラベルをバックしてコースに戻り、その後の赤旗中断の30分間に気持ちを立て直した。
赤旗再スタート後、8番手から次々と先行者を抜いて2番手まで浮上し、2位でゴールしたのだ。
もう少しで、ノーポイントに終っていたレースをスタート直後の状態に戻したのだ。
スタートでフェルスタッペンに抜かれた後、そのまま走っていたとしても今日のフェルスタッペンを抜くことはできなかっただろうから、1ポイントも失っていない。
それどころか、優勝のためには無理をせずに走っていたフェルスタッペンより速いタイムを出して、ファーステストラップ・ポイントを攫り、チャンピオンシップ・ポイント1位をキープした。

去年までのフェルスタッペンは、優勝するために、予選の一発の速さを武器にしてハミルトンの横に並んでスタートし、スタートでリスクを冒して前に出るか、タイヤ交換のタイミングで前へ出て何とか先にゴールするといった戦い方しかできなかった。
しかし、今年は違う。フェルスタッペンには、ポールポジションを獲れるマシンがあって、自分がポールポジションが取れなくてもチームメイトがハミルトンと並んでくれる。
フェルスタッペンは、決勝レースのどこかで前に出ればそのまま引き離せるレースペースを持っている。

今年、フェルスタッペンは、強力なPUとリアの挙動が安定したマシン、そして、経験があって速いチーム・メイトを手に入れた。
一方、ハミルトンは、今年のマシンはリアが安定せず、ボッタスからの援護があまり期待できなくなってしまった。

それにしても、開幕後の2戦を終えて見えてきたのは、メルセデスは昨年、PUのアドバンテージによって勝っていたのではなく、シャシーの開発力とハミルトンの傑出したドライビングによってチャンピオンをとっていたということだ。
現時点で、メルセデスに比べてアドバンテージを持っていると思われるフェルスタッペン+レッドブルを抑えてチャンピオンシップをリードしているのはハミルトン+メルセデスだ!

角田は、デビュー戦を9位でゴールして上出来だと言われた。
しかし、本人はもっと上位を狙っていたに違いない。
角田にとってイモラは数百周も走りこんで慣れ親しんだコースだし、チームのホーム・コースでもある。
おそらく本人は表彰台も狙えると思っていただろう。しかし、大事な予選のQ1でコースアウトしてマシン後部を大破してしまった。
最後尾グリッドからのスタートとなった決勝では、最初の数周で5台を抜いて14番手まで浮上してウエット路面でも早いところを見せた。
赤旗中断になるまでに9番手まで順位を上げていた。

赤旗後のレース再スタートの後、前にいたハミルトンを抜き、直後に単独スピンをしたが、その後挽回して12番手でゴールした。
あの時、レコードラインを外してハミルトンを無理に抜いた為に、獲れたはずのポイントが獲れなかったと批判することはできる。
しかし、角田が決勝で大きなミスをしたのはこの時だけであり、マシンは無傷でコースに戻ったし、ドライタイヤに履き替えてからのレースペースはトップ5に入るほど速かった。
ポイントを獲ることも重要だが、優勝と2位には大きな差があるし、シーズンが終われば誰もチャンピオンしか覚えていない。
チャンピオンを目指す角田がこれによって、グリーシーな路面で前に出るためのコントロール限界を感じ取ることができたのならば収穫だ。

次は、昨年カレンダーに復活したポルトガルGPだ。
アップダウンによるブラインド・コーナーが多複数あるコースだ。
バーレーンは砂埃、イモラはウエットだったので、そろそろ週末を通じて完全なドライ・コンデションのレースを見たいものだ。
メルセデスが、この2週間でさらにリアを安定させてくれば、レッドブル・ホンダは優位を保てなくなる。
ボッタスが復活してくれば、メルセデスとレッドブル・ホンダ4台によるがっぷり四つの戦いを見ることができる。

ポルトガルGPは、1位フェルスタッペン、2位ペレス、3位ハミルトン、4位ボッタス、5位ガスリー、6位角田、7位サインツ、8位リチャルド、9位ルクレール、10位フェッテルかな。

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Formula One 2021(2)2021.04.16

2021年シーズン初戦バーレーンGPは、ハミルトンが辛くも優勝を手にした。
フェルスタッペンは、予選でハミルトンに0.4秒も差をつけてポールポジションを獲り、決勝でもトップを走っていた。
しかし、ハミルトンに充分な差をつけることができなかった序盤に、最初のピットストップでアンダーカットされた。
フェルスタッペンは終盤になってハミルトンに追いついき53周目のターン4でオーバーテイクしたが、直後にコース外にはみ出したために、ハミルトンに順位を譲る羽目になった。

フェルスタッペンは、もう一度パスしようとしたが、先のパッシングでタイヤを使い切っており、もう一度ハミルトンを抜くことはできなかった。
フェルスタッペン自身はスタートからパワーがうまく車輪に伝わらない問題を抱えていた(おそらくはデフの制御系の問題)それがなければ、アンダーカットされることなく、首位を独走して楽々とポール・トウ・ウィンできていただろう。

メルセデスとハミルトンは、決勝レースでのレッドブル・ホンダの小さなマシントラブルによって狭まったパフォーマンスの差を戦略と戦術とドライビング技術を組み合わせて勝利に結びつけた。
過去7年間連勝を続けてきたメルセデスとハミルトンは、単にメルセデスPUパワーによって楽勝していたわけではないことを証明してみせた。

ハミルトンは、レース中に禁止されるまでターン4をコースアウトし続けて周回してタイムを稼いだ(レース中にルールの適用基準を変更するスチュワートは問題だが)。
メルセデスはベストなタイミングでハミルトンをピットインさせてフェルスタッペンをアンダーカットすることに成功した。
その後、ハミルトンは早めに交換したタイヤでフェルスタッペンと変わらないタイムで周回を続けた。
更に、ハミルトンは、終盤ターン4でフェルスタッペンに抜かれたときにブロックと判定されない範囲でアウト側に膨らんでフェルスタッペンがコースをはみ出さざるを得ない状況を作った。
メルセデス・チームはまさにスリム・チャンスを全てすり抜けて優勝にこぎつけたのだ。
メルセデスは未だに総合力でレッドブル・ホンダを上回っている。

角田は、デビュー戦を9位でゴールした。
予選では、Q1ではソフトタイヤで2番手タイムを出して周囲を驚かせた(他のドライバーもソフトタイヤ)。
チームは、決勝を見据えてQ2ではミディアムタイヤでQ3進出を狙ったが、角田はミディアムタイヤをうまく使いきれず13番グリッドからスタートすることになった。
決勝では、スタートで無理をしてデビュー戦を台無しにしないように慎重になりすぎ、順位を一時17番手付近まで落とした。
しかし、そこからのドライビングは見事だった。
マシンのパフォマンスは中断グループではトップクラスではあるものの後方から追い上げるのは全車の気流(ダーティ・エアと呼ばれる)やタイヤを酷使するという点でかなり不利になる。
その中を8台抜いたのは角田の実力を示すものだ。
特に最終盤のストレート入り口でストロールの150m後方にいながら見事なレイト・ブレーキングでコーナーのインに突っ込んでオーバーテイクしたシーンは角田の真骨頂だった。

次は、イタリアのイモラで開催されるエミリア・ロマーニャGPだ。
アップダウンのある中速コーナーが続く伝統のコースだ。
メルセデスが3週間でどの程度の対策を施て来るか、レッドブルは3週間デ小さなネガティブ・ポイントをつぶしてさらに速くなっているかが焦点だ。
予選でレッドブルとメルセデスの間に0.6秒以上の差がつくようだとシーズン前半1/3ぐらいはレッドブル優勢が続くだろう。
角田は、走りなれたイモラなので、予選で6番手以内に入り、決勝のスタートで無理をしてクラッシュしなければ上位に食い込める。
エミリア・ロマーニャGPはジョビナッツィとアルファ・タウリ、フェラーリチームにとってはホームGPとなる。

エミリア・ロマーニャGPは1位フェルスタッペン、2位ペレス、3位ハミルトン、4位角田、5位ガスリー、6位ボッタス、7位ルクレール、8位リチャルド、9位サインツ、10位ストロールかな。 

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉

Formula One 2021(1)2021.03.26

F1の2021年シーズンがバーレーンで開幕する。
コロナ禍はいまだ収まらず、変異型のコロナウイルスが蔓延し始めた中、開幕にこぎつけた。
当初はオーストラリアで開幕戦が行なわれる予定だったが、確実に開催が可能なバーレーンでスタートすることになり、当初のオーストラリアGPの日程は開幕前テストに充てられて、バーレーンで実施された。

昨年はコロナ禍の中(今年もだが・・・)極めて変則的な形で何とか17戦が組まれたが、感染防止対策の為に開催内容やチーム側の体制がスリム化された。
おかげで、必要だとされながら遅々として進まなかったF1チーム運営のスリム化が幾分か前に進んだ感じだ。

今年は、7年間続いたメルセデスのF1支配が崩される年になるのだろうか?
今年は、昨年と比べて大幅な変更が許されていないので、メルセデスを追い越すだけの開発は難しいのではないかとも言われている。
そんな中、メルセデス対抗の筆頭株であるレッドブル・ホンダはできることはすべてやってきた感と気迫がみなぎっている。
昨年、ホンダは2021年限りでF1から撤退することを発表した。
そして、2021年しかないという現実が今年のホンダの力をより高めたと思われる。
2021年のホンダPUは全くの新設計と言っていい内容だ。
特にICE(ガソリンエンジン部分)はカムシャフトの位置を下げたり、シリンダー間の距離を縮小したりして、さらなるコンパクト化・低重心化を実現している。
これは、レッドブルのシャシーにも好影響をもたらす。
今年からダウンフォースを削るために減らされたリアアンダーフロア面積を補完するためにPUの横を流れる空気量を増やす必要があり、PUがコンパクトなことは空力設計上有利になる。
また、前傾しているハイ・レーキ・コンセプトのレッドブルにとって、重心高の低いPUはコーナーでのマシンの安定性に大きく寄与する。

ホンダは、2021限りの撤退を決めた後、本来2022年に投入するはずだったPUを2021年に間に合うように開発し、最終年に悔いのないようにやり切ることにした。
ホンダのエンジニアには2021年はドライバーズ・コンストラクターズ両方ともチャンピオンをとって、撤退を決めたマネジメントを後悔させてみせると意気込んでいる人もいる。

メルセデスは、多少の問題を抱えていたものの、テストでは例年通りテストに徹していて、蓋を開けてみれば去年のように圧倒的に強いかもしれないと憶測する向きもある。
確かに昨シーズンのテストから開幕戦の圧勝という状況を思い起こせばトラウマに陥るのも納得できる。
しかし、世界最大のエンジンメーカーが精魂を傾けて開発したエンジンを侮ってはいけない。
レッドブルだってテストで燃料を多めに積んで走行していたのかもしれないのだ。

今年は、有力ドライバーの移籍が多数あった。
フェッテルはフェラーリからアストンマーチン(前レーシングポイント)へ、サインツがマクラーレンからフェラーリへ、リチャルドがアルピーヌ(前ルノー)からマクラーレンへと移籍した。
今年は三人のルーキーと一人の出戻りがF1に登場する。
F1に戻ってくるのは、2回のワールドチャンピオンに輝くアロンソでアルピーヌから再デビューする。
三人のルーキーは去年F2を戦ったドライバーたちだ。
父親の会社がハースのビッグスポンサーとなったニキータ・マゼピンとF1ワールドチャンピオン7回のミハエル・シューマッハを父に持つ2020ン年F2チャンピオンのミック・シューマッハがハースからデビューする。
そして、日本でダントツの速さで2018年F4チャンピオンを獲った後、F3、F2をそれぞれ1年で卒業して、F1へと駆け上った角田裕毅がアルファ・タウリから出走する。
これまでの日本人F1ドライバーの中で最も速いとの呼び声が高い。
角田はF1ドライバーになることを目指しているのではなくF1チャンピオンになることを目指している。
ホンダのラストイヤーに角田のデビューが間に合った。

バーレーンGPは1位フェルスタッペン、2位ハミルトン、3位ペレス、4位リチャルド、5位ガスリー、6位ボッタス、7位ルクレール、8位フェッテル、9位ノリス、10位角田かな。

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉

Formula One 2020(18)2020.12.21

アブダビGPは、フェルスタッペンが完全にレースを制して優勝した。
2位と3位にはボッタスとハミルトンのメルセデス・コンビが入った。
ゴール直後にハミルトンとボッタスは2台のメルセデスでドーナッツ・ターンを舞い、2020年シーズンの終幕を祝った。

レッドブルはアブダビGPの週末を通して速さを示し、メルセデスと互角に近い形で戦える状態にまで仕上がっていた。
レッドブルのマシンは、例年、シーズンン終盤になってようやくメルセデス・マシンの性能に追いつくというのが続いている。
今年の場合は、シーズン前の空力シミュレーターの値と実際の空力性能に大きなずれがあったために、修正するのに時間がかかったようだ。

予選Q3ではフェルスタッペンが見事なラップを決めて、2番手ボッタスを0.025秒差で抑えてポールポジションを奪取した。
フェルスタッペンのドライビング、アタックラップのタイヤマネジメントとPUのエネルギー放出マネジメントが全てがうまく組み合わさって、ようやく、メルセデスを予選で下すことができた。
ハミルトンは、ポールタイムから0.086秒遅れの3番手だった。
今年、著しい進境を遂げたマクラーレンのノリスが4番手、サインツが6番手だった。
アルボンは、ようやくリアの挙動が安定してきたレッドブルでフェルスタッペンから0.325秒遅れの5番手タイムを出した。
決勝レースは、フェルスタッペンが何とか2番手以下を抑えてトップをキープし、以下8番手までグリッド通りの順でレースは進んでいった。
6周目には、アルボンがノリスを下して4番手に上がる。

10周目にペレスがマシントラブルでコース脇にマシンを停めた。
即座にVSCが出て、各社一斉にピットインしてタイヤをハードに交換する。
12周目からセフティカーの船頭に代わり、14周目にレースが再開される。
再開後のトップ4の順位は変わらず、ほとんどの車はこのまま最後までタイヤ交換無しで走りぬく作戦だ。
この時点で軍配はフェルスタッペンんに上がったも同然だ。
今回決勝のペースでレッドブル勢に劣るメルセデス勢は、前半で一台がアンダーカットを仕掛け、もう一台がフェルスタッペンより長く走って、どちらかが前に出る作戦を用意していたはずだが、セフティカーが出たおかげでその作戦が取れなくなった。

フェルスタッペンは、その後、追いつく速さのないメルセデス勢を尻目にじわじわと差を広げていき、50周目には2番手ボッタスとの差を11秒まで広げた。
そして、フェルスタッペンはそのまま一度もメルセデスにトップの座を脅かされることなくゴールした。
今回メルセデスはMGU-Kに不安があったため、MGU-Kの出力を10KWほど絞っていたとされ、フェルスタッペン・レッドブルの完勝を許すことになった。
こうして、型コロナ下の異常な2020年シーズンは終幕を迎えた。

アブダビGP後の1週間の間に来シーズンのF1シートはほぼ確定した。
フェッテルはフェラーリからレーシングポイントへ、ペレスはレーシングポイントからレッドブルへ、サインツはマクラーレンからフェラーリへ、リチャルドはルノーからマクラーレンに移ることになった。
アロンソは久々にF1復帰してルノーに乗ることになった。
新人は、ミック・シューマッハ、ニキータ・マゼピンがハースから、角田裕毅がアルファタウリから来季F1デビューをすることになった。
ハミルトンだけが来季の契約を更新していない状態だ。

角田裕毅はF2ルーキーイヤーでF2チャンピオンシップ3位に入り、速さでF2のライバルたちを圧倒した才能あるドライバーだ。
ホンダが撤退しても、実力だけでトップチームから声がかかるドライバーになれるポテンシャルを持っている。
来年1年間の成績を見れば、チャンピオンを狙えるドライバーになれるかどうかはわかるだろう。
ホンダのF1撤退で落ち込んでいたファンにとっては、この上ないクリスマス・プレゼントとなった。

2020 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉

Formula One 2020(17)2020.12.11

サヒールGPは、ペレスが劇的な初優勝を遂げた。
ペレスは先週エンジン・ブローで悔しい思いをしたが、今週は全てがいい方に働いて、念願の賜杯を手にすることができた。
2位に入ったのはF1初表彰台のオコン、3位はストロールだった。

ハミルトンに新型コロナの陽性判定が出たことにより、急遽ウイリアムズのラッセル(メルセデスの育成ドライバーでもある)がハミルトンのシートに座ることになった。
ウイリアムズのラッセルのシートにはジャック・アイトキン、手にやけどを負ったグロージャンのシートにはピエトロ・フィッティパルディ(2回F1チャンピオンのエマーソン・フィッティパルディの孫)が座ることとなった。
中でも、ラッセルはウイリアムズのマシンで時折Q2まで進出するなど、非凡なところを見せていたことから、最も速いメルセデス・マシンに乗ったらどのような走りを見せるか注目された。

ラッセルは、予選から余すところなく速さを披露した。
予選Q1とQ2は最速で、Q3でも、もう少しでポールポジションを獲るところまで行ったが、最後にボッタスにひっくり返されて0.026秒差で2番手となった。
フリープラクティスから好調だったフェルスタッペンも今回はメルセデスト変わらぬ速さを見せてポールを狙っていたが、ボッタスとは0.056秒差の3番手となった。
フェルスタッペンは、決勝のスタートで前に出ることさえできれば、勝てる目はあると踏んでいたに違いない。
ルクレールもアタック・ラップを見事にまとめて4番手タイムを出した。
来年のシートが決まっていないペレスと来年のシートが危ういクビヤトが5番手、6番手につけた。

決勝レースは、スタートでラッセルがボッタスの前に出てトップで1コーナーを抜けていく、ボッタス、フェルスタッペンが2番手を争う中、4コーナーで2者の隙を突いて外側から前に出ようとしたペレスに内側から前に出ようとしたルクレールが絡んでペレスがスピンし、ペレスとの接触を避けようとしたフェルスタッペンがグラベルにつかまった。
結局、フェルスタッペンとルクレールはリタイヤとなった。ペレスは走ることができたので2周目にピットインしてミディアム・タイヤに交換した。この時点でペレスは最下位に落ちた。

5周目にセフティカーが入った。
7周目にはラッセル、ボッタス、サインツレースが再開される。

28周目まではこのオーダーでレースが進むが、29周目にサインツがピットインしてミディアムに交換したので、ストロールが3番手に上がる。
他のドライバーがタイヤ交換のためいったん後退するのを尻目に、2周目にタイヤを交換したペレスは30周目までに6番手まで上がった!
55周目になってもメルセデスのラッセルはトップを走り続けていて、ボッタスはラッセルから7秒以上離されている。
ペレスは57周目にはオコンを抜いて3番手まで進出していた。

エイトケンがウイングを落としたため62周目にVSCが出た。
メルセデスは、この時点で3番手ペレスと26秒のギャップを築いていたラッセルの優勝を確実にするために、ピットインしてタイヤを交換することにした。
ここで、メルセデスらしからぬミスで、誤ったタイヤをラッセルに装着してしまった。
ラッセルはもう一度ピットに入って正しいタイヤに交換する羽目になった。
このため、トップを快走していたラッセルは5位まで落ちた。
それでもラッセルはあきらめず、75周目にはトップのペレスと3.2秒差まで迫る。
ところが79周目にリアタイヤのパンクのためにピットインして15番手まで後退する羽目になった。
その後、ラッセルはゴールまでの8周で6台を抜いて9位でゴールし、ファーステスト・ラップも記録した。
ラッセルのF1初ポイントは3点に終り、ほろ苦いものとなった。

次は、今季の最終戦アブダビGPだ。
ハミルトンが戻ってくるので、ラッセルはウイリアムズから出走することになる。
最終戦なので、ドライバーはいつもよりアグレッシブに攻めるだろう。
ボッタスとアルボンは崖っぷちだ。フェルスタッペンはここで優勝してチームの来年につなげてほしい。

アブダビGPは、1位フェルスタッペン、2位ボッタス、3位ガスリー、4位ぺレス、5位サインツ、6位アルボン、7位フェッテル、8位リチャルド、9位ノリス、10位ラッセルかな。

2020 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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