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YUKICHI OTSUKA 大塚雄吉
F1 ウォッチャー
幼少期にF1に魅せられ、50年以上にわたって、日本製のF1が出ていなくても、日本人F1ドライバーがいなくても50年以上にわたってF1を見続けてきた、F1 ウォッチャー。

Formula One 2016(6)2016.05.26

フェルスタッペンがスペインGPで初優勝を飾った。
それまでフェッテルが持っていた史上最年少のF1優勝記録を大幅に更新しての快挙だ。
2位と3位には予選が不調だったフェラーリのライコネンとフェッテルが入った。

フェルスタッペンが今回優勝できたのは、フロント・ローからスタートしたメルセデス2台がスタート直後に絡んでリタイアしてしまったおかげだ。
とは言っても、メルセデス2台以外の20台の中では最も速かったから、メルセデスに不測の事態が発生したところでしっかり優勝をものにすることができたのだ。
F1で優勝したりチャンピオンになったりするドライバーは、運と実力を兼ね合わせて持っている。
アロンソなどはどちらかというと運の悪いほうだが、どうやっても勝ち目のないレースで、前の車に予想外のトラブルが起こった時に、それに乗じて優勝を勝ち取るということを何度もやってきた。

フェルスタッペンは、チャイナGPとロシアGPでのアクシデントからレッドブルを追われたクビヤトに代わって、突然、このレースからレッドブルに乗ることになった。
昨年から乗っているトロロッソより速いマシンを突如手に入れることができたわけだ。
ここまでは、どちらかというと運が良かったといえる。
しかし、並みのF1ドライバーだったら優勝はできなかっただろう。
フェルスタッペンは、週末になって初めて乗るレッドブルのマシンをわずか1日半で乗りこなしただけではなく、Q2では先輩のリチャルドより速いタイムをたたき出し、フェラーリ勢を押しのけて3番手につけていたのだ。
Q3では一発のタイム勝負でリチャルドに負けたが、それでも、決勝レースは4番手グリッドからのスタートだった。
メルセデス2台に何かあればトップに立てる位置をきちんと確保していたのだ。

フェルスタッペンは、決勝レースでも見事なドライビングを披露した。
スペインGPに用意されたミディアムタイヤは比較的長持ちするので2ストップ作戦が可能だった。
とはいえ、フェルスタッペンは後半の32周を1セットのタイヤで走り切ったのだ。
これはたやすいことではない。
タイヤを持たせるためにタイムを落とせば後続に追いつかれてしまうから、優勝するためにはそれほどタイムを落とすわけにはいかない。
普通に速く走ると、タイヤはゴールまでもたない。
そのため、フェルスタッペンは、シケインの立ち上がりでパワーをかけすぎないようにしたり、ショート・シフト(通常のように1速づつ高いギヤにシフト・アップせず例えば3速から5速といったように飛ばしてシフトする)を行ったりしてリヤ・タイヤになるべく負担をかけないように細心の注意を払っていた。
フェルスタッペンは、めったにやってこないチャンスを最大限に生かし、優勝すべくして優勝したのだ。
地元のサインツも検討して6位でフィニッシュしたのだが、フェルスタッペンの快挙の前に霞んでしまった。

次は伝統のモナコGPだ。
コース的には現代のF1には不向きなストリートコースだが、いまだに、最もステータスの高いグランプリだ。
モナコ人F1ドライバーはいないが、父親がF1チャンピオンのロスベルグはモナコ育ちだ。
事実、ロスベルグはモナコを得意としている。
ロスベルグは、去年、チームの戦略ミスで勝っていたレースを失ったハミルトンの後につけていて棚ぼたで優勝できた。
モナコは、PUのパワーによる差が出にくいコースだ。
驚くべき性能のシャシーを持ったレッドブルがメルセデスを実力で打ち負かす可能性も充分ある。
モナコのデータが豊富なマクラーレン・ホンダも他のコースよりいいかもしれない。
どちらにしても、モナコは予選が全て、日曜日より土曜日のほうがおもしろい。

1位ハミルトン、2位リチャルド、3位アロンソ、4位フェッテル、5位フェルスタッペン、6位ライコネン、7位バトン、8位サインツ、9位クビヤト、10位ボッタスかな

2016 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
学会ネット株式会社 代表

Formula One 2016(5)2016.05.13

ロスベルグは、ロシアGP開幕4連勝を果たした。
2位には開幕戦以来、不運のトラブルが続いているハミルトンが入った。
ハミルトンは予選Q2中のマシントラブルのためQ3が走れず、10番手スタートからよく追い上げたがロスベルグに追いつくのは無理だった。
ロスベルグの4連勝は同じマシンに乗るハミルトンと直接勝負して得た4連勝ではない。
それでも100ポイントは100ポイントだ。
去年までのシーズンでは、ロスベルグのほうがマイナートラブルに泣かされたこと多かったのではないだろうか。
3位にはフェラーリのライコネンが着けた。
フェッテルは、スタート直後にクビヤトに2度も追突されてリタイアしてしまった。
4位と5位には今回好調だったウイリアムズのボッタスとマッサが入った。
アロンソは、彼らしい巧みなレース運びで6位につけた。
序盤でタイミングよく前に出ることができたマグネッセンは、後続をなんとか抑えきって7位に入賞した。
ルノーの現状からすれば望外の結果だった。
8位にはハースのグロージャン、9位にはロシアGPを得意とするペレスが入った。マ
グネッセンに頭を押さえられていた集団の前に出られなかったバトンが最後の1ポイントを獲得した。

ホームGPでいいところを見せようと張り切りすぎたクビヤトは、レース中のペナルティで15位に沈んだだけでなく、レース後に非難の的になり、レッドブルチームも何らかの対策を講じる必要に迫られた。
F1にレッドブルとトロロッソ(イタリア語でレッドブルの意)の2チームを有するレッドブルは次のスペインGPからクビヤトをジュニア・チームのトロロッソに移し、フェルスタッペンをジュニア・チームのトロロッソからレッドブルに昇格させると発表した。

レッドブルのマネジメントは巧みだ。今シーズン、勝てるパワーユニットを獲得できなかったレッドブルは、今年は来シーズンに向けた準備シーズンのつもりだろうと思われていた。
しかし、現時点でベストと思われるシャシーを開発し、非力なPUでもサーキットによっては表彰台を狙えるところまで持ってきた。
そして、最近のクビヤト批判に呼応するふりをして、来シーズンから昇格することが確実視されていたフェルスタッペンを早々とレッドブルに引き上げ、ドライバー面でもチームのパフォーマンスアップを狙ったのだ。
しかも、フェルスタッペンとサインツがチーム内で対立して最悪の状態だったトロロッソ・チームの内部問題も解決してしまった。

マクラーレン・ホンダは今回6位と10位に入賞することができた。
ホンダPUはようやく信頼性と中団で戦えるだけの実力を身につけてきたように見える。
次はQ3の常連にならない限り、上位チームの一角が予定外に崩れるようなレースでも表彰台は見えてこない。

F1は今週末のスペインGPからヨーロッパ・ラウンドに入る。
スペインGPの開催されるカタルーニャサーキットはF1のシーズン前テストも行われるコースなのでチームもドライバーもコースを知り尽くしている。
シーズン前テストでも圧倒的なテスト内容だったメルセデスが優位なのは間違いないだろう。
今回こそ、ハミルトンとロスベルグのガチンコ勝負が見たいものだ。
スペインGPは、アロンソとサインツにとってホーム・グランプリだ。
アロンソの復活を待ち焦がれるスペインの観衆の前で、アロンソは力の限りの走りを見せてくれるだろう。

1位ハミルトン、2位フェッテル、3位ライコネン、4位アロンソ、5位フェルスタッペン、6位リチャルド、7位バトン、8位サインツ、9位マッサ、10位ハイドフェルドかな。 

2016 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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学会ネット株式会社 代表