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YUKICHI OTSUKA 大塚雄吉
F1 ウォッチャー
幼少期にF1に魅せられ、50年以上にわたって、日本製のF1が出ていなくても、日本人F1ドライバーがいなくても50年以上にわたってF1を見続けてきた、F1 ウォッチャー。

Formula One 2012(21)2012.11.30

2012年最終戦ブラジルGPは、雨が降ったり止んだりする中、このような猫の目天気を最も得意とするバトンが見事に優勝を飾った。
バトンのすごさは、天候とタイヤの変化に応じてドライビングを合わせることができることだ。
2011年のカナダGPでは天候の変化に合わせて頻繁にタイヤ交換をしながら最後は猛烈に追い上げて優勝した。
逆に今回は、天候が変わってもタイヤ交換をせずに我慢して天候が戻るのを待ち最小の交換回数で乗り切った。
そのバトンが今シーズン序盤のマレーシアGPでは全くうまく走れなかった。
シーズン当初は、各チームと各ドライバーがピレリ・タイヤの扱いにどれだけ混乱していたかが分かる。

2位には、最後までチャンピオンシップをあきらめず戦ったアロンソが入った。
マッサは地元ブラジルのファンの期待に応える速さを見せたが(おそらくアロンソに2位を譲って)3位デゴールした。
ポールポジションを取ったハミルトンはヒュルケンベルグとの接触のせいでリタイアせざるをえなかった。

フェッテルはスタート直後セナに追突されてスピンした後、リアの空力パーツにダメージを負った(フロントノーズのパーツと違いレース中に交換することができない)マシンで最後尾から追い上げて7位に入った。
これによって、このレース2位に入ったアロンソを総合で3ポイント上回り、2012年F1ワールドチャンピオンの座に着いた。
もし優勝のバトンがメカニカル・トラブルか何かで終盤にリタイアしていれば、アロンソがチャンピオンとなるところだった。
チャンピオンシップ3位には復帰1年目にもかかわらず全レースを完走し、チャイナGPを除いた全レースでポイントを獲得したライコネンが入った。

可夢偉は15番手スタートだったが、スタート後の混乱に乗じてうまく順位を上げ、一時は4位を走りアロンソとバトルしていた。
しかし、終盤には8位まで後退し7位を狙ってシューマッハを最終コーナーインサイドから抜こうとしたが、イン側を締められて接触・スピンしたために9位に終わった。
鈴鹿を除く今シーズンの可夢偉を象徴するような内容だった。
チームがトップを走るのに不慣れで予選からの運び方がうまくないなどいろいろな要素もあるが、全てがうまくはまれば優勝できたかも知れないGPもあった。
優勝できなかったのは何か足りない部分があるのだろう。
不運の一言で片付けてしまってはいけない。
もしチャイナGPかベルギーGPで優勝していればマクラーレンから招聘されたのは可夢偉だったかもしれない。
現時点で、上位チームの2013年体制はほとんど決まっている。
表彰台以上を狙える可能性のあるチームでシートがまだ確定していないのはロータスとフォース・インディアの各1シートだけだ。

2013年は、2014年にレギュレーションが大きく変わることからマシンの大幅な変更はなく、ピレリ・タイヤも3年目に入るので使い方は分かってきている。
まさに、チーム力とドライバー力の戦いとなるだろう。
2014年のチャンピオンシップはまた5人のチャンピオンたちの熾烈な戦いになるだろうがその中に可夢偉が割って入ってくれることを願って止まない。

2012 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
学会ネット株式会社 代表

Formula One 2012(20)2012.11.23

アメリカGPは、ハミルトンが実力でフェッテルとの一騎打ちを制して優勝した。
アロンソはフェッテルよりもハミルトンをライバルとして注意しているというのが頷ける1戦だった。
振り返ってみれば、2012年のハミルトンは自身のミスよりもチームのミスとマシントラブルで勝てるレースを失っている。
アロンソはもらい事故で2度リタイアしているが、ヨーロッパGPではフェッテルのマシントラブルのおかげで優勝できている。
今回、アロンソはチームメイトの犠牲とウエバーのマシントラブル、自身の粘り強い走りによって何とか3位を確保した。

ここアメリカでも、アップデートの効果がなかったフェラーリは予選でアロンソより前にいたマッサのマシンのギアボックス封印シールをわざと剥がして5グリッド降格させ、アロンソを少しでも前のグリッドにつかせる作戦を取ったのだ。
アロンソをチャンピオンシップレースにとどまらせるための犠牲となったマッサは、降格させられた11番グリッドから4位に入る好走を見せた。
ハミルトンの優勝の陰に隠れてしまったがバトンは予選Q2途中でマシンがストップしたため12番グリッドとなったが、果敢に追い上げて5位でゴールしている。

今年は突然グリップしなくなるピレリタイヤの使い方が難しくて毎レース優勝者が変わるところから始まった。
しかし、終盤になって各チームタイヤの使い方をマスターしてタイヤは撹乱要因ではなくなったと思われていた。
ところが、アメリカGPでは別の要素でタイヤがクローズアップされた。
アメリカGPのコースが今年から開催される新品サーキットだったことからいつもとは逆の事態となった。
多くのマシンが走ってタイヤの溶けたゴムがサーキット路面に付着するまでは全くグリップが得られなかったのだ。
ピレリがスムースな舗装のこのサーキットに対して固めのタイヤセットを用意したこともこれに拍車をかけた。
金曜日のP1の走り出し時点では各車簡単にコースアウトしてしまうアイスバーンのように感じられるコンディションだった。
決勝でも可夢偉は14週目に交換したハードタイヤで最後まで走りぬくことができただけでなく終盤にはトップを走るマシンと同等のタイムで走っていた。
それにしても、ハミルトンとマッサはタイヤの心配がないと速い。
シーズンを通じてタイヤに振り回されるたが多くのチームが優勝し、チャンピオンシップが最終戦までもつれ込んだのだから興行的には大成功だったといってよいだろう。

フェッテルとアロンソのポイント差は最終戦を残して13ポイントとなった。
最終戦でフェッテルがリタイアしても、アロンソは3位以上に入らなければ2012年チャンピオンにはなれない。
2008年もブラジルでチャンピオンが決まった。ハミルトンとチャンピオンを争っていたマッサがトップでゴールしてチャンピオンになるかと思われた。
ところが、最終コーナーでグロックを抜いて5位に滑り込んだハミルトンが1点差でチャンピオンになった。
決勝が雨になればアロンソのチャンスが広がるのでレースは面白くなる。

ブラジルGPは1位アロンソ、2位フェッテル、3位バトン、4位マッサ、5位ライコネン、6位可夢偉、7位ハミルトン、8位ペレス、9位ウエバー、10位セナかな。

2012 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
学会ネット株式会社 代表

Formula One 2012(19)2012.11.16

アブダビGPは、レース・オブ・チャンピオンズとも言うべき4人のチャンピオン経験者による接戦を制したライコネンが復帰後初優勝を果たした。
2年間のブランクが感じられたのはシーズン前半まででシーズン後半になってからはチャンピオンシップのコンテンダーとして見事な走りを見せている。
アロンソがまたもや2位に入り、3位に入ったフェッテルとの差は僅かに縮まって10ポイントとなった。
本来は、予選で圧倒的速さを示したハミルトンが独走して優勝するはずだったが、突然のエンジン・トラブルで戦列を去った。

フェッテルは、予選終了時のガソリン残量が規定より少なかったことを理由に決勝は最後尾スタートとなった。
決勝でフェッテルはセッティングを追い上げ用に大幅に変更し、ピットスタートから小クラッシュなどに見舞われながらも終盤にはバトンを抜いて表彰台に立った。
アロンソは6番グリッドから見事2位に入ったことで、チャンピオン・レースに踏みとどまっている。
このまま行けば、アロンソがアメリカGPでリタイヤでもしない限り、最終戦ブラジルGPまでチャンピオン争いが持ち越される可能性が高くなった。

可夢偉は全くマシン・セッティングが決まらず、予選16番手となったが、決勝ではKERSが満足に使えないトラブルを抱えながらもスタートで大幅に順位を上げたことや上位マシンの後退によって浮上し6位でゴールした。
予選の状態から見れば上出来の結果だった。
来年もザウバーに乗れそうになってきた。テルメックスから強烈な横槍が入らない限り・・。

今年のアメリカGPは2007年のアメリカGP(インディアナポリス)から4年のブランクを置いて開催される。
ついにアメリカGPもいつもサーキット・デザイナーによる専用サーキットとなった。
アメリカはヨーロッパとは異なる自動車文化を持っている。
ヨーロッパの道路は町と町を結ぶ自然の地形に沿ったアップダウンやカーブのある道路が普通だが、アメリカの道路は距離の離れた町と町の間を直線で繋いだ道路が多い。
このためレース・トラックと言うとヨーロッパではワインディング・ロードだが、アメリカでは直線を走り続けているのと同じでしかも3台が並行して走ることのできるバンク付のオーバルになる。

それにしても、F1チームの開発能力と適応能力はたいしたものだ。
今シーズンの前半はタイヤのグリップが崖のように突然なくなり、不可解な性能を示すタイヤの使い方にどのチームも苦労していたが、シーズン終盤になるとタイヤの使い方によって予想外のレース結果が出るということがなくなってきた。
アブダビGPなどは、どのチームもさらりとワン・ストップで切り抜けてしまった。
アメリカGPのタイヤはミディアムとハードの組み合わせになる。全チーム、アメリカGPのコースを走るのは初めてだから蓋を開けてみないと分からないが、ピレリはハード寄りのタイヤ・コンビネーションを選択しているし、このレースに限ってハードタイヤをワン・セット多く供給するようだから大きな波乱はないだろう。
フェラーリはアメリカGP用にもマシン・アップ・デートを用意するようだ。

アメリカGPは1位アロンソ、2位フェッテル、3位ハミルトン、4位ウエバー、5位ライコネン、6位可夢偉、7位バトン、8位マッサ、9位グロージャン、10位セナかな。 

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
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Formula One 2012(18)2012.11.02

インドGPはまたもやレッドブル・フェッテルが圧勝した。
フェッテルは4連勝してアロンソに13ポイントの差をつけることになった。
今シーズンは残り3レースしかない。
アロンソは、予選5位からできる限りの仕事をして2位に食い込み、被害を最小限に抑えた。
3位に入ったウエバーにKARSのトラブルがなければアロンソをもってしても3位が精一杯だったかもしれない。

今年はレッドブルの圧倒的速さの原動力だったブロウン・ディフューザーの使用を禁止され、イタリアGPまではマクラーレンやフェラーリの後塵を拝することの多かったレッドブルがシンガポールGPあたりから盛り返しはじめ、鈴鹿の決勝以降は無敵のレッドブルに戻ってしまった。
どうやら、エンジンの排気を利用しないでも同じ効果を出すことのできる空気の流しかたを見つけたようだ。
フェラーリもアロンソに頼っているばかりではいられないからフロントウイングなどに懸命のアップデートを重ねているがレッドブルほどの劇的な性能向上を果たせないでいる。
フェラーリにとって重要なことはマクラーレンでも自身でもいいから予選でレッドブルにフロントローを取らせないようにすることだ。
スタート後DRSが使えるようになる3周目までにフェッテル・レッドブルが先頭で2番手以下を1秒以上引き離さないようにすれば、戦い方はある。
たとえば後方の援護はなくなるがマッサのマシンを予選向きにセットアップしてポールポジションをとらせるという手もある。
最近のマッサであれば可能な手だ。そうすれば、たとえフェッテルが予選2番手でもフェッテルはマッサの後を走るので路面温度の高いアブダビではタイヤの温度が下げられずマッサを抜いてトップを独走するのが難しくなる。
フェラーリは2台タンデム走行して予選タイムを稼ごうとしているぐらいだからアブダビではこの手でくるかもしれない。
実は最近ずっとこの手をトライしているがマッサがポールを取れないでいるだけなのかもしれないが・・・。

今、可夢偉はF1人生始まって以来のピンチだ。
残留を願っていたザウバーのシートのひとつがヒュルケンベルグに決まってしまった。
もうひとつのシートはガティレスになる可能性が高いから、ほかのチームのシートを探さないといけなくなる。
とはいっても、スポンサーを持ち込んでトップから2~3秒落ちのマシンでレースに出ていても実力は発揮できない。
まだ、来シーズンのシートが両方とも確定していないチームの中ではロータス、フォース・インディア、ウイリアムスぐらいしかキャリアを伸ばせるチームは残っていない。

アブダビGPのタイヤはソフトとミディアムの組み合わせになる。
ミディアムは今年あまり使われていないしソフトに近いから使い方が難しいだろう。
この地で雨はないから、何か予想外の展開が起きるとすればタイヤの使い方とチーム戦略によってだろう。

アブダビGPは1位アロンソ、2位フェッテル、3位ウエバー、4位マッサ、5位ライコネン、6位可夢偉、7位バトン、8位マルドナド、9位ディレスタ、10位ロスベルグかな。 

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
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