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NORIYUKI TANAKA 田中紀之
株式会社ディーツーコミュニケーションズ 事業開発本部 本部長
NTT DoCoMo、電通を親会社に持つモバイル・マーケティング企業で、さまざまな事業開発のリーダーを務める。見識の広さ、発想の豊かさに加えて、組織を動かしてゆくうえでの行動力や決断力に優れている。世界の歴史やさまざまな文化、アートにも明るく、話題に事欠かない。

ビジネスで失敗する人の10の法則2010.02.03

キーオ氏が「事業で勝利する方法」で講演を求められて「できない」と断り、
「かなりの確率で負けることなら保証できる」という内容をまとめた本。

キーオ氏はコカ・コーラを全世界で成長させたが、
「ニュー・コーク」発売という大失敗もしただけに、言葉に説得力があります。

年長者の自慢話と繰り言を聴きたくなくても、ぎっしりとした経験と知恵は是非知りたいもの。

10の法則といいつつ、おまけがついて、11の法則があります。

なかでも、「法則8 官僚組織を愛する」はかなり怒りに近いトーンで書かれており、
「会社の前進をすべて止めたいのであれば、事務手続きを何よりも優先すればいい」
「わたしはいつも高給取りの掃除夫を自認」
「わたしの仕事はいつも廊下をきれいにしておき、
とくに優秀な従業員が仕事ができるようにすることだ」
という言葉には共感します。

「ひとりにマネージャーの肩書きを与える。一年半もすると、アシスタントがつく。
アシスタントはすぐにジュニア・マネージャーになる。
すると何が起きるか?その下にアシスタントがついて、この課程がくり返されていく。」には爆笑。
家畜が増えるように、官僚組織が増えていく、とまで言って、かなり頭にきています。

「法則10 将来を恐れる」では、
「事業を指導する立場に立ちたいと考えているのであれば、合理的な楽観主義者でなければならない」と諭しています。
これって、あらゆる悲観ケースを検討して、
それに勝てる戦略と戦術があるから、びくびくしなくて良いということだと思います。

戒めの書として、読み返したい本。

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コカ・コーラパークが挑戦するエコシステム・マーケティング2009.12.18

私の所属する部署では、毎月課題図書を配付しています。
 2010年1月4日の事業開発本部 全体会議で取り上げるのが本書です。

テレビ、新聞、雑誌、ラジオなどのマスメディアの広告費減少のニュースはくり返し報道され、やや驚きも薄れています。
 屋外広告や、プロモーションもよくないようです。
インタラクティブ広告はやや増えていますが、広告費全体のパイ減少を補う勢いはなし。
 
とはいえ、生活者に商品・サービスを提供するために、企業がコミュニケーションをやめるわけではありません。
 
統合型マーケティング・コミュニケーション(IMC)は、企業のあらゆるコミュニケーション活動を戦略統合するものですが、
マスメディアを中心に「広告出稿し続けるだけ」のことも多かったようです.
 かつては、「CMやめたら売れなくなりますよ」というような脅し文句を、広告会社が言ったとか言わないとか。
 
日本コカ・コーラは自社サイト「コカ・コーラ パーク」をメディア主軸に、IMCを展開いています。
 
コカ・コーラパークの会員は740万人(2009年9月)もいて、
生活者を自社メディアへ誘導と会員化、直接の継続コミュニケーションを行っています。
 
生活者をファン化して、ストック、関係を深めることが目的なので、
集客は必ずしも広告出稿である必要はなく、近いターゲットを有するメーカーとも協働。
 
日産自動車「CUBE」のサイトと相互に会員登録してもらい、
個人情報利用許諾をクリアにしたコミュニケーションを展開していますし、「メディア」なので、ふつうに他社広告を掲載しています。

このような企業は単純なメディア出稿はあまり行わなくなるでしょうし、広告主間での協働プロモーションは拡大していくでしょう。

メディアや広告会社は、広告配信技術の導入や効果分析、
アイデアの意味ではないクリエイティブな提案なしには生き残っていけないと思います。

その点、211ページもある本書に広告メディアのことはでてきても、ほとんど広告会社が登場しないことは気になります。
 
 
最後に、本部メンバーに出した課題をご紹介します。
———
■課題「コカ・コーラパークが挑戦するエコシステム・マーケティング」を読んだうえで、各140文字以内で述べよ。
 
課題1:大規模会員を持つナショナルクライアントが自社サイトをメディア化することでの、彼らのメリットを3つあげよ
 
課題2:課題1のサイトがもつメリットにより、既存のインターネット広告メディアが迫られる変化とは何か?
 
課題3:課題1のサイトの出現によって、広告会社が迫られる変化とは何か?

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「アメリカ海兵隊」〜徽章2009.10.13



★徴章(記章 きしょう)は「身分・資格・所属団体などを表すために、衣服・帽子などにつけるしるし。バッジ。」
   〜大辞林 第二版

徽章について、アメリカ海兵隊と日本陸軍の話を。

海兵隊の新兵教育は「every marine, a rifleman」の方針のもと、全員が職種を問わずにライフルマンとして育成されます。
哲学は「one shoto,one kill」。一発必中のライフル射撃は、海兵隊のコア・スキル。

フルオートで連射可能なM16ライフルが配備されたとき、
海兵隊は「単発」「3点発射」のみに改造したM16A2を制式採用したことは有名。
徹底しています。

全員が海兵隊、ライフルマンというわけで、
海兵隊の制服には官位を表すものはあっても、パイロット、歩兵などの職種を表す徴章はありません。

特定任務を得たライフルマンが戦車を動かし、大砲を撃ち、飛行機を操縦しているのが海兵隊。
軍のなかで海兵隊飛行士だけが、任務志願前2年間、陸上士官勤務が義務づけられているのは象徴。
徹底しています。

日本軍ではどうか?

陸軍大学出参謀はエリート意識が強烈で、指揮官を指揮する矛盾が生じました。
卒業生は、天保期の百文銭に似た、菊と星をかたどった徽章を与えられ、「天保銭組」と呼ばれましたが、
陸大出以外を「無天」と呼び、位を超えて侮蔑したため、1936年には着用禁止に。

嫌みな上司の下では、誰もね…。

インテリジェンス小説「ダブル・ジョーカー」には「天保銭組」を強烈に皮肉った一話があります。
陸軍中野学校を下敷きにしたインテリジェンス「D機関」と、創設者結城中佐の苛烈な駆け引き。
チャンドラーの影響を大きく受けたという著者の、乾いた文体のオムニバス。
ミステリ小説ファンにオススメ。

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「アメリカ海兵隊」〜コンセプトをつくり出せる組織(1)2009.09.25

野中郁次郎氏の「アメリカ海兵隊」は、最強組織とは何かを求めた本。
太平洋戦争で日本がなぜ負けたかを分析研究した「失敗の本質」(野中氏他の共著)へのアンサーブック。
日本軍はだめだった。
では、成功の罠に落ちない組織とは何か?

この本で面白いのは、1921年ワシントン軍縮会議以降。
西部太平洋におけるマリアナ、カロリン、マーシャル諸島は、日本の委任統治領となり、

第一次世界大戦の勝者であるはずのアメリカは、逆に太平洋では大戦前より弱者となったという指摘です。
日米開戦になれば、アメリカ艦隊は太平洋を渡らなければならなくなる。
海兵隊は、日本軍の島をひとつひとつ奪取するため、
海と空の軍事力で敵の陸軍力を打ち破るという新しい「コンセプト」=「水陸両用戦」を提唱しました。

「水陸両用戦」は太平洋戦争に勝利することで完成、しかし役割を失います。
成功の罠に落ちるどころか、成功すると組織をなくすという過酷。
海兵隊の航空部隊は、空軍に移管するという意見もでました。
熱核弾道弾が登場すると、海兵隊って半分くらいでいいんじゃないの?とまで言われてしまう。

1950年、朝鮮戦争の劣勢を仁川上陸戦における海兵隊の活躍で挽回したことから、「即応部隊」としての機能を証明してポジションを確保。
即応部隊をより高度に実現する「新しいコンセプト」=海兵空・陸機動部隊(MAGTF:Marine
Air-GroundTask Force)という組織構造をつくります。
軍事介入の期間に応じた戦争機能(兵器、兵站、人員)をone packageで編成される、世界で唯一の軍事組織形態。

海兵隊は陸海軍への吸収や組織の大幅縮小という「存在危機」に、
「新しいコンセプト」を自らつくり出し、それを実現する組織に自己革新することで生き残ってきました。

なぜ、それが本当にできるのか?

存在意義についての強烈なプライドがあると思います。
「真っ先に戦う(First to Fight)」。
米国の戦争では「即応部隊」として必ず最初に海兵隊が投入されます。

どんな状況でも必ず最初に戦うことが決まっているのは、「それは私の担当ではない」的な逃げが利かない。
世界中のどこでも、一定の期間戦争しなければならない唯一無二の組織。
強烈なプライドとロイヤリティが生まれやすい。

First to Fightが最優先で、組織形態も戦略も手段に過ぎず、ドラスティックに変更できる遺伝子がある。
リクルートのかつての社訓「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という言葉も思い出します。

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新聞社〜破綻したビジネスモデル2009.09.03

ビジネス書には「こんな新しい考えとサービスで、ちょーバラ色!」という本と、
「失敗と破綻の実際を論理的に分析する」本があります。

ほとんどは前者。これも大量に読んではみます。
でも、惹かれるのは、失敗の話。

成功のケースは業界や時代をまたぐことが難しくても、
失敗のケースは、
普遍的で自分の仕事にあてはめると背筋が寒くなることが多いからです。

本書は、毎日新聞の常務まで務めた河内孝氏が、
新聞のビジネスモデルの破綻を解説し、氏が考える構造変更案を提示しています。

第一章「新聞社の危機、その諸相」で、人口減少、ネット拡大よる広告収入の減少、
世界に類を見ない販売部数を支える巨額の販売コスト…
などなど要因を分析されており、
読んでいて逼迫した気持ちになります。

高度成長期につくられた「テッパンなビジネスモデル」が、
環境変化で行き詰まっています。

新聞を宅配で読むという習慣は、
一度ロックインできるとこれほど安泰なビジネスモデルはありませんが、
一度やめた、習慣がない層をロックすることは難しい。

「そういうもんだ」を前提にしたビジネスが、
生活者から「それって、本当?なんか変」と思われたときはたいへん。

「就職したらとりあえず定期保険に入らないと」
「今度、車検だから買い替えないと」
「夏もちゃんとネクタイしめてないと」…。

一度、テッパンを味わうと、精度、効率を高めるので、どんどんうまくいく。
さらなるテッパン化にむけて組織はどんどん最適化され、
人材教育もどんどん型にはめていく。

「テッパン」を前提に組まれた構造を変えるのはとてもむずかしい。
「最適化しないほうがいいんじゃないの?」って言うの、ほんとうにバカみたいなので。

過剰適応、成功体験の罠、ゆでガエル。
環境変化を乗り越える戦略などなく、戦略を変更できる人材と組織をつくれるか。
「それって、本当?なんか変」って、生活者に言われる前に言えるのか?

河内孝氏は2006年に退職されましたが、
マイコミジャーナルで「メディアの革命」を連載、講演活動も活発に行っていらっしゃいます。
http://journal.mycom.co.jp/column/media/index.html

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