- HIDESHI OKI 沖秀史
株式会社USEN 音楽番組制作部長
- 500番組を超えるUSEN音楽放送の番組編成・制作を統括。洋楽、邦楽、CM制作ディレクターから、ネット動画サイト立ち上げなど、20年以上に渡って番組・コンテンツ制作に従事しているプロ中のプロ。温厚な人柄で音楽業界に極めて多くの人脈を持ち、自らドラマーでもある。
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NO.1ロックドラマーを選ぶ(12)ミッキー・カリー2010.11.19
いや〜、まだまだ出てきますね。
しかしロックの王道の音を豪快に叩き出すこの人を忘れておりました。
No.1ロックドラマー:ミッキー・カリー
ベストアルバム:レックレス/ブライアン・アダムス
80年代中盤に私のハートを鷲掴みにしたアーティストがブライアン・アダムス。
もともとブルース・スプリングティーンやジョン・メレンキャンプなどのアメリカンロック好き少年だった私には当然の結果だったかも知れない。
彼はカナダ出身であったが、GパンにTシャツという爽やかなファッションに身を包み、しゃがれ声で歌いまくるこの若者に前述の二人とは違うソングライティングの才能を感じたものでした。
もうひとつ、ブライアン・アダムスが好きになって行ったのはそのドラムサウンドに大きな衝撃を受けたからでした。
そのドラムサウンドとは。。。
「うわっ!ドラムの音めっちゃデカイ!でもヴォーカルもしっかり聴こえてるやん!」
というドラマーが嬉しくなるようなミックスが施されていたことが大いなる理由です。
このドラムサウンドをミックスした人の名前はボブ・クリアマウンテン。
そう、ブルース・スプリングスティーンの「Born In The USA」の冒頭のスネアサウンド。
ストーンズの「Start Me Up」のスネアなどあの時代のビッグドラムサウンドを作り出したのは彼の手になるものです。
彼については語りたいことが一杯あるのですが、このままいくと脱線しかねないのでこのあたりで止めておきます。
この重心の低さは彼の椅子の高さが低いことにも連動しているような気がするが、それだけではない。
特に「たまっている」というのが一番の理由であると思われます。。
しかも、この「たまっている」は明らかに、というのでもなく、「そこはかとなく」という書くも微妙、聞き取るも微妙といった風情。
特に、テンポが早い曲になればなるほどその「そこはかとなく」たまっている感はより一層の輝きを増すのです。
彼ダリル・ホール&ジョン・オーツ 『Big Bam Boom』でも叩いていますが、そこでも「そこはかとなく」たまっている感と並んで豪快なドラム・プレイが繰り広げれらます。
私もアマチュアながら趣味でドラムを叩いておりますので、この「そこはかとなく」たまっているドラマーを自称しておりましたが、ある人に言われました。
「お前のドラムはたまっているのでなく、もたっているのじゃ!」だって。
むぅ、どうれすれば「もたる」から「たまる」に昇華することが出来るのでしょうか?
何かいいイメージトレーニングとかありませんか?平坂さん
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NO.1ロックドラマーを選ぶ(10)サイモン・フィリップス2010.09.28
渋くてマニアックな
このドラム合戦ですが
興味のない方には
何のことか分からないかも
知れませんなぁ(笑)。
そこで今回はわかりやすく
この方で行こうと思います。
No.1ロックドラマー:サイモン・フィリップス
ベストプレイ:1988年のミック・ジャガーのバックバンドの時。。
日本で正式にストーンズが公演をしたのが1990年。
それに先立1988年3月ミック・ジャガーが単独で来日した。
大いなる期待に胸を高まらせ、大阪城ホールに足を運んだ。
一曲目「ホンキー・トンク・ウィメン」。
カウベルの音とともに始まった8ビート。
このカウベルと8ビートを一緒に叩いている姿を見て驚いた。
右にセットされたカウベル、左手でハイハットとスネアというオープンハンドで叩いていた
この男こそ「サイモン・フィリップス」。
そのタイトかつ大胆なプレイに思わず見入ってしまいました。
ミックさんゴメンなさい。
サイモン・フィリップス最大の特徴はその機能的なドラミング。
「右にあるものは右手、左にあるものは左手で叩く方が効率ええやん!」
「わし両利きやねん」
(関西弁にしたのには特に意味はありません)
と過去に雑誌で目にした記憶がある。
なるほど。
それが冒頭の手を交差させない8ビートに続いていたわけか。
彼がオープンハンドドラミングをする人だと言うことが分かると、
彼のドラムセットを見て「なるほど」と思えます。
ドラムセットも何となく左右対象にセッティングされています。
これは両利きである彼がその時の体の向きに応じて、
右へ左へとフィルインが行えることに他ならない。
彼はのちにTOTOのサポートメンバーから、
正式メンバーになるがジェフ・ポーカロの後釜という黄金の椅子に座ることができたのも
百戦錬磨である彼のドラミングであれば、
TOTOでも大丈夫だろうと認められたことでもある。
それにしても、
1988年のライブでのサイモン・フィリップスは相当ロックしています。
この時の映像は当時TVで放映されたはずだが
セットにマイクロカメラなどを設置していたこともあり、
オープンハンドの妙が随所に見て取れます。
頼むからDVD化して下さ〜い。
というわけで、そのプレイが彼のベストと思っているので
オススメアルバムは彼のセットの写真にしています。
悪しからず。。。
暴風雨の雨のようなフィルを繰り出す男、サイモン・フィリップス。
嵐のようなコンビネーション、
そんな彼が文字通り国民的アイドルの嵐のレコーディングに参加しているらしい。。。
(誰か詳細教えて下さい)
わかりやすくないですか?平坂さん
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NO.1ロックドラマーを選ぶ(8)デヴィッド・ガリバルディ2010.08.10
そう来ましたか、平坂さん
アメリカン・バンドのイントロのバスドラは未だに難しいと感じる私です。。
しかしこの方を忘れてはいけません。
No.1ロックドラマー:デヴィッド・ガリバルディ
ベストアルバム:バック・トゥ・オークランド
「タタト、タタト、タカカン、カン!」
「何じゃ今の?右手と左手の数が勘定でけへん・・・」
と、思わず口から出たタワー・オブ・パワーのライヴ(@東京ビルボード)。
タワー・オブ・パワーのドラマーとして有名なデヴィッド・ガリバルディ。
彼らは当然ファンクという分類に入るのだろうが、ベイエリア出身の割には
コッテリしたとんこつ系の音に満ち溢れ、その割には時折、西海岸ならでは
の微妙に乾いた風情も持ち合わせるサウンド。そしてホーンセクションと
ファンクのビートの絡み合いが最高にカッコいいいバンドです。
このビートを支えるのがロッコ・プレセア(B)デヴィッド・ガリバルディ
(Dr.)。先日も来日した彼らを見に行きましたが、そ知らぬ顔して驚愕の
リズムを繰り出す二人の姿は鳥肌ものでございました。
この二人ってきっと音とリズムで会話ができる人達なんだろうなぁ。
ガリバルディが「カンカン」叩くのに合わせてベースが「ポポポポ」とか
いうてるんでっせ。このベースのポポポポフレーズは、指二本でいとも
簡単に弾いているようですが実際やってみるとこんな音出せませんでぇ。
さて、ガリバルディ先生ですが、この人きっと身長が高いと思いますが、
その身長に比べてドラムセットは非常にコンパクトなものとなっています。
しかも、タムとシンバルの角度の親和性や機能性などは全ドラマー必見の
セットとなっています。
音の特色としては、「カンっ!」という甲高い音。そしてご飯にちりばめらる
ふりかけのように随所で聴かれるゴーストノートとリニアフレーズ。
以前彼のシグネチャーモデルを試打したことがありますがブラスシェルで
サイズは14×3.5。普段6.5のスネアでサザンロックを叩いている私は
「こんな浅い胴で低音出んのか?」と疑っていましたが
その低音の鳴りと反応のよさ、バランスの良さに驚愕しました。
スナッピーの本数も大量。まさにガリバルディが得意とするリニアな
フレーズはこの音なくしては成立しないでしょう。
それに彼が愛して止まないファンクの伝統的センス
と相まって誰にもマネの出来ない個性を発揮しているのではないでしょうか?
偶数・奇数が混じり合ったビートを楽な顔して刻む男、デヴィッド・ガリバルディ。
そんなリニアでパラディドル的プレイはおっさんのハートを鷲掴みです。
整いました?平坂さん
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NO.1ロックドラマーを選ぶ(6)トッド・ラングレン2010.07.27
ボビコときましたか。。。
しかしやはりなんといってもNo.1ロックドラマーは「トッド・ラングレン」でしょう。。
No.1ロックドラマー:トッド・ラングレン
ベストアルバム:Something/Anything
No.1ドラマーは本職がドラマーであるとは限らない(笑)。
アマチュアとてドラマー稼業は辛いものです。
そうです。ドラマーやプレイ、楽器についてのウンチクがどんどん多くなってしまうのです。
あの人のセットはどうとか、あの人のプレイはどうとか。
しかも自分のことは棚にあげて。。
ついついドラマー本来のもつ良さなどを忘れがちになるのだろうか…。
私がウンチク王になろうとしていた時期に衝撃をうけたアルバムがトッド・ラングレンのこの名盤。
ドラムの本質に出会ったといっても過言ではない。
それが言わば「本職ではない人の叩くドラム」
この「本職ではない人の叩くドラム」というのは時として勉強になることが多い。
大学生の頃の私はかなりの宅録マニアで自分で全楽器を演奏し録音しそれを一人夜中に聴いてニンマリする、という根暗な人間でありました。
まずは、ドラムパートを当時はシーケンサーに打ち込んでいくのですが、ドラマーが打ち込むドラムパートはやはり本物志向になっており、実際に叩けるもの前提で打ち込むものです。
フィルインの際も1拍毎にハイハットを踏んでる音を打ち込むとか。。。(笑)。
しかし当時友人のギタリストが打ち込んだ曲のドラムパートを聴いて私は驚きの声を上げました。
「こんなん8本ぐらい手がないと叩かれへんやんけ!」
「こんなドラミングなんで出来るやつおらんぞ!」
しかし、それと同時に実際のドラムで再現できることだけを前提で打ち込んでいた自分は、なんと型にはまった人間なんだろう、とも思ってしまいました。
トッドのこのアルバムを聴くといつもこのことを思い出します。。
このアルバムの特徴はその楽曲のほとんどがトッド・ラングレンによるマルチレコーディングということ。
ヴォーカル、ギター、キーボードはもちろん当然ドラムパートもトッド自身が行っています。
このCDには1曲ごとにトッドがコメントしているライナーが入っているのですが、
「ドラムのパートはレヴォンからぬすんだのさ。。。」とか出てきます。
折しも前回紹介したリヴォン・ヘルムのことです。
聴けば聴くほどドラマーの常識をくつがえすようなフレーズに思わずニンマリしてしまいます。
「スネアが抜けていてもいいじゃないか、ハイハットを刻まなくてもいいじゃないか、
それが曲にあっているのが一番イカすドラミングなのさ!」とつぶやいているようです。
こういうもありですよね?平坂さん
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NO.1ロックドラマーを選ぶ(4)リヴォン・ヘルム2010.07.02
いえいえそうではありません。
NO.1ロックドラマー:リヴォン・ヘルム
ベストトラック:Up On Cripple Creek
ザ・バンドはアメリカの郷愁を感じさせるバンドである。
しかし、意外にもメンバーは4人のカナダ人と1人のアメリカ人で構成されている。
そしてその唯一のアメリカ人がリヴォン・ヘルムである。
ザ・バンドのメンバーは苦労人揃いで地味な活動が多かったが、
逆にその高く安定感のある演奏力を持つ彼らが
時折しもボブ・ディランがフォークギターをエレキギターに持ち替えたあたりから活動を共に始め、
結果ザ・バンドへの注目も集まっていったというのは有名な話。。
その音楽性はカントリー、ブルース、リズム&ブルース、フォークミュージックなど
いわゆるルーツ・ミュージックの要素が非常に高く、
そして華やかさとは距離を置いた孤高さを感じるバンドである。
故にルーツ・ミュージックを趣味で叩いている方々には非常に参考になること請け合いです。
さて、そのザ・バンドでリズムを支えてきたリヴォン・ヘルムのドラミングは
3点セットから生み出される素朴で泥臭いのが持ち味です。
・フィルイン後のクラッシュシンバルがないことが多い
・クラッシュシンバルをライド的に多用する
上記が彼のドラミングにおける特徴として挙げられる。
もうひとつの大きな特徴は、ザ・バンドのリードヴォーカリストである、ということ。
そう、彼は自分で叩き、歌う。
特にヴォーカルのシャウトにシンクロして入るフィルインなどは聴いているとぐっと胸が熱くなる。
一方で歌とまったく違う譜割りのリズムを普通に歌ながら難なく叩く。
一般にドラマーはヴォーカルを取らないことが多く、黙々と叩く職人気質の人が多いが、
逆に歌えるドラマーはヴォーカルのリズムや息継ぎなどと絡み合った、
歌わないドラマーとは一味違うフィーリングが生まれてくるのもこれまた真実だと思います。
さて、ドラマーにとって重要なのが叩いている姿。
レギュラーグリップで背中を丸めて叩くその姿は、まさにアメリカの郷愁そのもの。
しかし、それは過去に封印されたものではなく、
今なお、そして一生付き合える音楽へ出会えた嬉しさへと変わる。
ベストトラックの「Up On Cripple Creek」は彼らの2ndアルバムに収録されていますが
今回は敢えて彼らのラストライブのDVDで見ていただくことをオススメします。
(若き日のマーティン・スコセッシが手がけたこのステージは彼のザ・バンドに対する熱き感情が感じられます。)
またドラミングに加え、時にはマンドリンを手にした映像などもあり
彼の他の才能を垣間見ることもできます。
やっぱリヴォン・ヘルムですよね?平坂さん
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