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AKIRA OKAJIMA 岡島朗
有限会社楽脳 取締役
某大手コンピュータ関連出版社で編集者として活躍、のちに映像企画制作・テレビ番組制作などを主たる事業とする「楽脳(らくのう)」を石井忍氏とともに設立。パソコン、インターネット、テレビ、芸能と守備範囲は広いが、特に映画関連の業務が多いこともあり映画に造詣が深い。

「コヤニスカッツィ」2011.11.04

ここでは、毎回ドキュメンタリー作品を取り上げていますが、今回は1982年制作のゴッドフリー・レッジョ監督の『コヤニスカッツィ』です。
ナレーションや台詞は一切なく、効果的な音楽はラヴィ・シャンカールらと仕事したフィリップ・グラス。
権利問題などで1990年代は絶版状態にあった曰く付きの作品です。
この作品の内容は、とてもひと言では表わしにくいのですが、先ほど公開されて話題となった『ライフ』などとは一線を画すものです。
ユタ州にある国立公園の壮大な風景からはじまるおよそ20分。
アポロ12号計画の映像をはさんで、再び雲や峡谷、水面の美しい風景の後、巨大なパイプラインの映像から画面は人工物一色になります。
大規模な発電所、砂漠に建てられた送電塔、フリーウェイの空撮。そして原爆実験。作品はその後も大都市の様々なシーンを繋いでいきます。
この作品は、人類への警鐘のメッセージということ以上に複雑なものを含んでいるように思います。
作品タイトルは、ネイティブアメリカン、ホピ族の言葉で「常軌を逸し、平衡を失い、混乱した世界」の意味。
ホピ族が住むフォーコーナーズにはウラン採掘所があって、広島・長崎に投下された原子爆弾の原料となったウランはここから採掘されたとも言われています。
東日本大震災のあとで、ホピ族が日本にメッセージを送ってくれています。
http://www.youtube.com/watch?v=Vh9bw62qPNs
賛否はもちろんあると思いますが、こちらも本作とともにご覧になってはいかがでしょうか?

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AKIRA OKAJIMA/岡島朗
有限会社楽脳 取締役

「スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー」2011.01.07

スペインのビルバオにあるグッゲンハイム美術館やドイツのヴィトラ本社ビル、ディズニー・アイスリンク、ウォルト・ディズニー・コンサートホールなど、現在の建築において世界を代表する巨匠、フランク・ゲーリーのドキュメンタリーです。
日本での劇場公開時に、彼の建築の大ファンから薦められて観ましたが、今回DVDで改めて観まして、感慨を改めました。
このテキストが、ドキュメンタリームービーを紹介していて本当に良かったと思います。
その理由は、末尾で。

監督は、『愛と哀しみの果て』のシドニー・ポラックです。
フランク・ゲーリーとは長年の友人ということでこの作品が実現しました。
ご存知の方も多いと思いますが、フランク・ゲーリーは、その斬新な建築によって、賛否両論を常に巻き起こす奇才です。
このムービーの中では、彼が建徳模型をスタッフとつくる場面が随所に出来てきますが、厚紙を切ってテープで貼付けるところなどは、工作の時間そのものです。
タイトルにあるように、彼の幼少時代からのスケッチも何枚も紹介されています。
その自由な発想と長過ぎる沈黙時間は、まさに贅沢な創造空間を観るものと共有させてくれます。
出来上がった模型は、コンピューターによって、実現可能な建徳模型にコンストラクションされます。
フランク・ゲーリーの作品は、コンピューターのソフトウェア開発の進歩によって支えられているといってもいいかもしれません。

インタビューで登場するデニス・ホッパーが、自身の自宅を彼に依頼したのはハリウッドでは有名な話ですが、それ以外にも多くの美術家や建築家がインタビュー出演しています。
それぞれが、独自の建築観を語っているのも興味深いです。
グッゲンハイム美術館が完成したときの感想を、シドニー・ポラックに訪ねられたときに語るあまりに意外な事実が心を打ちます。
それは、ドキュメンタリーならではの説得力を持っている場面です。
彼は、「恥ずかしいものをつくってしまった」と語るのです。それは彼自身の劣等感や意地悪さに裏打ちされています。
しかも、それが観るものの心に迫ります。

たくらむことを全面的に肯定してくれる、そんな作品です。

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AKIRA OKAJIMA/岡島朗
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「アメリカン・スプレンダー」2010.12.07

知り合いのCMプロデューサーから教えてもらったのが、この『アメリカン・スプレンダー』。
毎回ドキュメンタリームービーを紹介していますが、この作品はその意味では異色作品といえます。

何でもない自分の日常の出来事や思ったことを漫画にして、カルト的な人気を誇った作家ハービー・ピーカーの半生を描いた今作は、本人がナレーションをしています。
場面場面でアドリブも入っているのでは?と勘ぐってしまう面白さがあります。

病院の書類係で生計を立てていたハービーは、2度目の離婚のショックで声が出なくなり、唯一の趣味であるレコード収集だけが楽しみのような生活。
ある日、このまま死んでいくことに恐怖した彼は、友人の絵描きロバート・クラムに自分の原作に絵をつけてもらうよう懇願します。
いまでこそ、エッセイコミックは多くありますが、70年代にはとても新鮮だったことでしょう。
「特別なヒーローでない主人公の、まったく冴えない日常は、果たして物語になるのか」という発想ですから。

ハービーのコミックは、全米で話題となりました。
最近のマーケティング用語っぽくいえば、エンゲージメントされた作品になった、ということでしょうか。
ハービー自身も、テレビショーにレギュラー出演して、人気者になります。
司会者のおべっかに迎合せず、シニカルに世の中を風刺していったからです。
これも、現在のテレビショーではあたり前ですよね。たとえば、マ○コ・Dさんとかを挙げるまでもなく。

映画の中では、ハービーの漫画のファンだった奥さんとの関係も見所になっています。
ハービーは、作家として認められてからも書類係を続けました。
特別な人の特別な日常には、嘘がたくさんあるということがわかっていたんだと思います。
今年の7月、70歳になったハービーは自宅で亡くなりました。
ご冥福をお祈りいたします。

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「ベジャール、そしてバレエはつづく」2010.10.19

フランスにいる映画関係の友人が、「日本ではあまり感じなかったが、オペラとバレエはクリエイティブに関係する職業人の教養としてすごく重要だ」という話をしてくれたことがあります。
そんな彼が薦めてくれたのが、モーリス・ベジャールのバレエ団に所属するジル・ロマンでした。

モーリス・ベジャールは、日本でも多くのファンを持つ振り付け家。
歌舞伎界とも深い交流を持ったことでもよく知られています。
2007年、その死はあまりにも突然で世界を驚かせました。

このドキュメンタリームービーは、ベジャール亡き後、ベジャール・バレエ・ローザンヌを継ぐことになった団員たちと、自他ともにその後継者と認められたジル・ロマンを追っています。
巨大な星を失ったあと、その志を継ぐことがどういうことなのか。
この作品は、ジルの苦悩を中心に、新しい作品を作り出そうとする団員たちの葛藤をよく現しています。

この作品を見ながら思い出したのが、「ウミガメのスープ」の話でした。
論理ゲームを代表するひとつである「ウミガメのスープ」は、ご存知のかたも多いと思います。
30分で解ければ、FBIにすぐにでも入れるとも言われていますね。

「ある男がレストランで”ウミガメのスープ”を注文して、出てきたスープをひとくち飲んだあと、コックに”これは本当にウミガメのスープですね”と聞き、その30分後にその男は自殺しました。なぜでしょう?」というものです。

複数人で行い、その原因を追求するのにYES/NOでしか答えられないという制約がつきます。
どれほど優秀な集団で行っていても、しばらくすると聞こうとする質問が無くなってしまうこのゲームは、いまでもgoogleやマイクロソフトの社員たちの間で、ときどき行われているそうです。

「ウミガメのスープ」では、答えがわからない質問をすることがとても難しいということが実感できるのですが、上記のジルは常に答えのない質問を考えています。
答えは、身体からしか出てきません。この過酷な訓練を経た団員が見つけたものは何か。
わかりやすくて、耳障りのいい答えを求めがちなときに観たい上質のドキュメンタリームービーです。

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『アンヴィル!~夢を諦めきれない男たち~』2010.09.21

知り合いのテレビディレクターが最近観た作品の中で一番面白かったと教えてくれたのがこの作品です。

ヘヴィーメタルバンド、アンヴィルを追ったドキュメンタリームービーです。
アンヴィルはかつて『メタル・オン・メタル』などの伝説的なアルバムを発売しますが、結局メジャー音楽シーンで活躍することがないまま四半世紀以上が経ちました。
しかしリップスをはじめとしたメンバーに、ロックの炎は消えていません。
ケータリングサービスの仕事をしながら、音楽を続けています。
その姿は、家族からみれば、「夢を追っている」というにはあまりにも残酷で熾烈な姿に映ります。
なぜ続けるのか、なんのために続けるのか?

そんな彼らに、ワールドツアーの話が舞い込みます。
ヨーロッパのロックフェス出演を中心としたツアーは、しかし、彼らに50歳の現実と音楽シーンの移り変わりを実感させるものなってしまいます。
改めて彼らは自問することになります。
なぜ続けるのか、なんのために続けるのか?

それでも彼らは自己負担で作った最新アルバムを持って、メジャーレコード会社の門をノックします。
諦めないのではなく、諦められない男たちの生々しい人生。

作品の最後、彼らは日本のフェスから招聘を受けて来日します。
30年ぶりでした。
ヨーロッパツアーの悪夢から、5人しかいない会場のイメージが離れられないリップスが立った舞台から見た光景は・・・。
髪が薄くなり、顔や身体の肉がたれた50歳の男のロックな生き様でした。

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