ここでは、毎回ドキュメンタリー作品を取り上げていますが、今回は1982年制作のゴッドフリー・レッジョ監督の『コヤニスカッツィ』です。
ナレーションや台詞は一切なく、効果的な音楽はラヴィ・シャンカールらと仕事したフィリップ・グラス。
権利問題などで1990年代は絶版状態にあった曰く付きの作品です。
この作品の内容は、とてもひと言では表わしにくいのですが、先ほど公開されて話題となった『ライフ』などとは一線を画すものです。
ユタ州にある国立公園の壮大な風景からはじまるおよそ20分。
アポロ12号計画の映像をはさんで、再び雲や峡谷、水面の美しい風景の後、巨大なパイプラインの映像から画面は人工物一色になります。
大規模な発電所、砂漠に建てられた送電塔、フリーウェイの空撮。そして原爆実験。作品はその後も大都市の様々なシーンを繋いでいきます。
この作品は、人類への警鐘のメッセージということ以上に複雑なものを含んでいるように思います。
作品タイトルは、ネイティブアメリカン、ホピ族の言葉で「常軌を逸し、平衡を失い、混乱した世界」の意味。
ホピ族が住むフォーコーナーズにはウラン採掘所があって、広島・長崎に投下された原子爆弾の原料となったウランはここから採掘されたとも言われています。
東日本大震災のあとで、ホピ族が日本にメッセージを送ってくれています。
(http://www.youtube.com/watch?v=Vh9bw62qPNs)
賛否はもちろんあると思いますが、こちらも本作とともにご覧になってはいかがでしょうか?