毎回ドキュメンタリームービーを中心に取り上げさせていただいておりますが、
今年も引き続き、
大好きなドキュメンタリームービーを取り上げようと思っております。
よろしくお願いいたします。
さて、この『いのちの食べかた』は、すでにご存知の方も多いと思いますが、
2005年にドイツ/オーストリアで制作されたドキュメントムービーです。
牛や豚、鶏からリンゴやパプリカなどのさまざまな食材の生産過程を淡々としたタッチで描いた作品です。
淡々と、というのは、カメラが向けられた農場などで働く人々との会話のシーンはまったくなく、したがってテロップなども皆無です。
無言で昼食のサンドイッチを食べる飼育係の表情。
それは、昨今メディアで流通している農業を楽しむ”エコ謳歌”の人々の満面の笑みとは、あまりにも対極にあります。
病気ならないように次々に注射される雛や子豚、意図的に精子を奪取される雄牛、手際よく取り出される子牛、完全防備された格好で、農薬を散布される野菜。
不愉快な気分になる場面が多いはずですが、「食べ続ける」ことを余儀なくされた我々人間のエゴを皮肉る目線ではないことが徐々にわかってくると、不思議な感慨が残る作品です。
その感慨とは、開き直りではなく、「21世紀」が夢見た未来ではないことをはっきりわかったこの10年近くの現実へのものだったりするのかもしれません。