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AKIRA OKAJIMA 岡島朗
有限会社楽脳 取締役
某大手コンピュータ関連出版社で編集者として活躍、のちに映像企画制作・テレビ番組制作などを主たる事業とする「楽脳(らくのう)」を石井忍氏とともに設立。パソコン、インターネット、テレビ、芸能と守備範囲は広いが、特に映画関連の業務が多いこともあり映画に造詣が深い。

「スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー」2011.01.07

スペインのビルバオにあるグッゲンハイム美術館やドイツのヴィトラ本社ビル、ディズニー・アイスリンク、ウォルト・ディズニー・コンサートホールなど、現在の建築において世界を代表する巨匠、フランク・ゲーリーのドキュメンタリーです。
日本での劇場公開時に、彼の建築の大ファンから薦められて観ましたが、今回DVDで改めて観まして、感慨を改めました。
このテキストが、ドキュメンタリームービーを紹介していて本当に良かったと思います。
その理由は、末尾で。

監督は、『愛と哀しみの果て』のシドニー・ポラックです。
フランク・ゲーリーとは長年の友人ということでこの作品が実現しました。
ご存知の方も多いと思いますが、フランク・ゲーリーは、その斬新な建築によって、賛否両論を常に巻き起こす奇才です。
このムービーの中では、彼が建徳模型をスタッフとつくる場面が随所に出来てきますが、厚紙を切ってテープで貼付けるところなどは、工作の時間そのものです。
タイトルにあるように、彼の幼少時代からのスケッチも何枚も紹介されています。
その自由な発想と長過ぎる沈黙時間は、まさに贅沢な創造空間を観るものと共有させてくれます。
出来上がった模型は、コンピューターによって、実現可能な建徳模型にコンストラクションされます。
フランク・ゲーリーの作品は、コンピューターのソフトウェア開発の進歩によって支えられているといってもいいかもしれません。

インタビューで登場するデニス・ホッパーが、自身の自宅を彼に依頼したのはハリウッドでは有名な話ですが、それ以外にも多くの美術家や建築家がインタビュー出演しています。
それぞれが、独自の建築観を語っているのも興味深いです。
グッゲンハイム美術館が完成したときの感想を、シドニー・ポラックに訪ねられたときに語るあまりに意外な事実が心を打ちます。
それは、ドキュメンタリーならではの説得力を持っている場面です。
彼は、「恥ずかしいものをつくってしまった」と語るのです。それは彼自身の劣等感や意地悪さに裏打ちされています。
しかも、それが観るものの心に迫ります。

たくらむことを全面的に肯定してくれる、そんな作品です。

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AKIRA OKAJIMA/岡島朗
有限会社楽脳 取締役