知り合いのCMプロデューサーから教えてもらったのが、この『アメリカン・スプレンダー』。
毎回ドキュメンタリームービーを紹介していますが、この作品はその意味では異色作品といえます。
何でもない自分の日常の出来事や思ったことを漫画にして、カルト的な人気を誇った作家ハービー・ピーカーの半生を描いた今作は、本人がナレーションをしています。
場面場面でアドリブも入っているのでは?と勘ぐってしまう面白さがあります。
病院の書類係で生計を立てていたハービーは、2度目の離婚のショックで声が出なくなり、唯一の趣味であるレコード収集だけが楽しみのような生活。
ある日、このまま死んでいくことに恐怖した彼は、友人の絵描きロバート・クラムに自分の原作に絵をつけてもらうよう懇願します。
いまでこそ、エッセイコミックは多くありますが、70年代にはとても新鮮だったことでしょう。
「特別なヒーローでない主人公の、まったく冴えない日常は、果たして物語になるのか」という発想ですから。
ハービーのコミックは、全米で話題となりました。
最近のマーケティング用語っぽくいえば、エンゲージメントされた作品になった、ということでしょうか。
ハービー自身も、テレビショーにレギュラー出演して、人気者になります。
司会者のおべっかに迎合せず、シニカルに世の中を風刺していったからです。
これも、現在のテレビショーではあたり前ですよね。たとえば、マ○コ・Dさんとかを挙げるまでもなく。
映画の中では、ハービーの漫画のファンだった奥さんとの関係も見所になっています。
ハービーは、作家として認められてからも書類係を続けました。
特別な人の特別な日常には、嘘がたくさんあるということがわかっていたんだと思います。
今年の7月、70歳になったハービーは自宅で亡くなりました。
ご冥福をお祈りいたします。
POSTED BY:
AKIRA OKAJIMA/岡島朗
有限会社楽脳 取締役
このページのトラックバックURL
トラックバック一覧
このページへのコメント一覧
コメントを投稿
(初めて投稿される方のコメントは管理者の承認が必要となります。ご了承ください。)