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HIDESHI OKI 沖秀史
株式会社USEN 音楽番組制作部長
500番組を超えるUSEN音楽放送の番組編成・制作を統括。洋楽、邦楽、CM制作ディレクターから、ネット動画サイト立ち上げなど、20年以上に渡って番組・コンテンツ制作に従事しているプロ中のプロ。温厚な人柄で音楽業界に極めて多くの人脈を持ち、自らドラマーでもある。

待つのはつらいこと2010.01.06

新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。

「トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズが来日しますように。。。。」
「初詣と言えばまず願い事は健康であることではないですか?」
「男として健康を犠牲にしても願わねばならんことがあるんじゃ」

一行目と三行目は私。二行目は、業界のとある若者A君。

高校時代からずっと買い続けているアーティストである
トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズでありますが、
本国でのヒットやその安定したセールスとは裏腹に日本ではどうも評価がイマイチ、
というか無名のようですらありますなぁ。
しかし、私の周りにいる仕事仲間などには非常にたくさんのファンがいるのも事実です。

1952年生まれということなので、今年58歳。
(どうもこのブログで紹介する人は総じて60歳前後がなぜか多い。
これのは私の年齢によるところもあると思うが、今後はもう少し考えるべきか。。)

しかしこのバンドはホントいいメンバーです。無類のセッション好きのベルモント・テンチ(Key)。
ミック・ジャガーのソロ・アルバムでのピアノプレイなどは私の好きな演奏のひとつ。
ロックを知り尽くした「ええ感じ」のフレーズやバッキングを随所にちりばめることが出来る男。。
なんせオルガンがコロコロいうてます。

そしてマイケル・キャンベル(G)。
この寡黙な男こそが、ハートブレイカーズのキーマンと言えるでしょう。
決して弾きすぎることなく、その楽曲を最大限生かすためには、
どのようなフレーズや音がいいのか、
ということを徹底して考えているギタリストと言えます。
テクニックを見せびらかせるタイプではなく、大人しい仕事人、といった感じ。
この人のギターの音色やフレーズが渋くて大好きな私。

これらのバックが作り出すサウンドに枯れたトム・ぺティの声が乗るとそこはもうロックそのもの。
またトム・ぺティもギターを弾きますが、そのプレイも非常にエモーショナルです。
例えていうならジョン・レノンのギターソロがジョージよりいい時がある、といった風情。
(わかります?)

幾度となく彼らは外部のプロデューサーを招き、その度にサウンドを大きく変化させてきた。
デイヴ・スチュアートがプロデュースした『サザン・アクセント』では、ある種サイケに。
そして、『ラーニング・トゥ・フライ』ではジェフ・リンに。
ELO臭が漂うこのアルバムはソロアルバムのようにすら聴こえる味付け
(これは賛否両論あると思いますが。。)。

ひとつのことを続けて行きながら、時代にあった音作りをする。
それは時代に迎合するためではなく、その時代に柔軟に調和する、ということであるはず。
この手のバンドのビデオ・クリップは演奏シーンをストレートに映すものが多かったが、
この時期は彼らもMTVを意識して結構ちゃあんとクリップを作っていた。
マイク・キャンベルはちょっといやだったかもしれないが。。。

それにしてもなぜに彼らは日本に来ないんだぁ〜?。
「The waiting is the hardest part」って歌ってるやん。
そんなわけで今年も私は彼らの来日を待つのである。

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HIDESHI OKI/沖秀史
株式会社USEN 音楽番組制作部長

相反する二つの表現を備える声….2009.12.09

「声にとっても特色があるんだよ。
 例えていうならマイケル・マクドナルドの女版だよ」
「マイケル・マクドナルドって誰ですか?」
「なんやて?お前この業界におって知らんのかいっ!?」

一行目と三行目は同一人物(私)。
二行目は、とある若者A君。
既にお気づきのように普段は標準語の私も、
感情が高ぶると関西弁になるのはいつものこと。

さて、それはさておきローレン・ウッドの『キャット・トリック』。
今なぜこのアルバムを薦めるのか?
それは私が好きだからなだけです(きっぱり)。

今までに幾度となく、彼女の「声」を文字で表現しようと試みてきたが、
未だかつてコレ!という表現に至ることができていません。
しかしどうしても二つの反対語を並べてしまうことになってしまうのです。

ドライでウエット(どっちやねん)とか、
艶があるざらつき感(意味分からん)とか。。。

発売当初、音楽ライターの方々や評論家の方々は
どのように彼女の声を表現していたのでしょう?。

81年に発表されたこの作品こそ、彼女の最高傑作であり、
この時代のAORの中でも名作と呼ぶことができる作品でしょう。
この作品とアーティストを伝える時に、
いかにに声に個性があるかを伝えようとしたのがオープニングのような会話となった訳です。。

今の若者達は映画『プリティ・ウーマン』の劇中歌とし「フォーレン」を耳にした人の方が多いと思います。
実際歌を聴かせると「知ってる!」と言うけどアーティスト名やタイトル名まで
答えることができた人は当然いませんでした。(超私的な範囲のリサーチですけど。。)

そう言えばこのアルバムのプロデューサーはバネッタ&チューダコフです。
彼らの他のプロデュース作品も是非聴いてみてください。
みんなでプロデューサーを辿る旅に出ようよ。

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HIDESHI OKI/沖秀史
株式会社USEN 音楽番組制作部長

英雄色を好む2009.11.18

「ジョン・メイヤーっていいギターを弾くよな」
「でも、やたら女優との浮名が多いアーティストですよね」
「それは、英雄色を好むじゃ…」

一行目と三行目は同一人物(私)。二行目は、業界のとある若者A君。

「最近、昔買ったCDばかりを聴いていて、新しい人たちのCDを買っていないなぁ。。。」
先週の木曜日の午後に、ふとそんなことを考えてしまいました。
過去を懐かしみ、あの時はよかった、最近はいいのがない、
など言うことも会話の端々に出てくる今日この頃。

大好きなアーティストが新譜を出すのを指折り数えたあの頃と同じような気持ちになりたい。
名盤は今でも続々と制作されているのに、
情報を追いかけることを面倒くさく思った時から
音楽から離れてしまっていくことは始まっているのか?

私にしては珍しく最近の人の話題。
その名はジョン・メイヤー。

Daughtersでグラミー賞の「Song of the Year」を受賞したのが2004年。
この手のシンガーソングライター・ギタリストが受賞するのってなぜか嬉しい。

ヴォーカルのフィーリングもよいし、何よりギターが「歌っている」。

この人若いのにクラプトンやB.B.キングなどのベテラン大御所ギタリストとは競演しているし、
ブルースにがんがんにのめり込んでいるのがまたいいですね。
デレク・トラックスといいアメリカのギタリストは層が厚く、
素晴らしいギタリストが出てくると感心しますなぁ。

このライヴアルバムでは、
私の大好きなトム・ペティの曲を取り上げるなど選曲センスも非常によろしい。

しかし、レイヴォーンに憧れブルースにのめり込み、
枯れた声で歌う彼も若者ゆえいろんな女優との浮名が絶えない。。(笑)。
これも世の流れか。。

ブルースギタリストって個人的には「ストイック」な印象を持ってしまう。
ブルースのルーツを求め旅をし、ギターを担いで町から町へ、
そして町の小さなライブハウスで飛び入りという名の勝負を地元のギタリストに挑む。。。

どうもそういうイメージが強いんだよなぁ。。。

ブルースなどをやっているアーティストとハリウッド女優が付き合う、
ということが何となくしっくりこないのは私の勝手な妄想なのか。。

日本で言うと、「柔道の道場破りが、女優と付き合う」みたいな感じか…。

やっぱ、おかしいッス。

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HIDESHI OKI/沖秀史
株式会社USEN 音楽番組制作部長

KISS論2009.11.04

「ほう、久しぶりにKISSのニューアルバムが出るな」
「あの聖飢魔IIみないなメイクをしたバンドですか?」
「普通、聖飢魔IIがKISSみたいなメイクをしている、というのじゃ!」

一行目と三行目は同一人物(私)。二行目は、業界のとある若者A君。

というわけで、今回のテーマはKISS論。

KISSの音楽を分析する、というよりはKISSのビジネスについて述べたい。

1973年結成(ファーストアルバムは1974年にリリース)なので
既に36年目に突入するというロックバンドである。
ご存知のようにメイクを施し、
重たい衣装にハイヒールを履いてロックするイカしたバンドである。
ジーンが血を吐き、火を吹き、ポールは客席の上のを舞い、ドラムはせり上がるという
まさにアトラクションのようなステージが人気を博している。
ちなみに血を吐くジーン・シモンズは今年60歳(!)。

メンバーの変遷も激しいものがあるが、
一番不思議なのはこのバンドの2大フロントマンである、
ジーン・シモンズとポール・スタンレーの関係値ではなかろうか?

個性の集合体であるKISSというバンドにいて、
互いに激しいエゴをぶつけ合いながらも
この二人が過去に一度も決裂しなかったのは、
もはやKISSというビジネスを続けていく中で、
その存在を維持することがビジネスマンとしての彼らの使命と化しているからではなかろうか?

一時期、ジーン・シモンズは俳優という副業に忙しい時期もあったが、
この時期にこのバンドとブランドをポールがしっかり支えてたからこそ空中分解もなかったのであろう。
必ずしもメンバー全員が揃ったレコーディングでなくても、
KISSという看板を下さずにやり過ごせていた時期も実際にあったようだ。
ちなみに中期のヒット曲「シャンディ」を演奏しているKISSのメンバーはポール一人のみ(!)。
当時の私は、「ピーター・クリスは随分ドラムが上手くなったな!」などと勘違いしていた。。

ファンを大事にする彼らは、KISSというブランドを戦略的に使っているし、
膨大に存在すると思われる未発表の楽曲や映像、
そして何よりそれらを行使するタイミングなど、緻密に練られ、
そしてそのストーリー性と共に世の中への登場の仕方などが日々協議されているのに違いない。
KISSのマーチャンダイズ戦略(ロゴ、メイク顔などめっちゃTシャツにしやすいし)も
徹底的にマーケティングされていると思う。

きっと株式会社KISSというのがあって、
社長=ジーン・シモンズ、副社長=ポール・スタンレイで毎朝取締役会とかやっていそう。。。

先日購入したポール・スタンレーのソロライブのDVDにはしっかり
「Paul Stanley Music Co.ltd」とクレジットが入っていた。。
KISSも分社化しているのか?

さて、そんなKISSがニュー・アルバム「Sonic Boom」を発売した。
前作「サイコ・サーカス」発売が1998年なので、ファンとしては11年も待たされたニューアルバムである。
これにはどんな邦題が付くのか??「地獄の衝撃音波」とかになるのかなぁ(笑)。

トミー・セイヤーへ
ブラック&ブルー、そしてKISSの裏方、トラを経て、KISSのメンバーになりつつ、
LIVEに明け暮れた生活だっと思うが、
やっと君のプレイやヴォーカルがオリジナルアルバムのスタジオ盤に収録されことを嬉しく思います。

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HIDESHI OKI/沖秀史
株式会社USEN 音楽番組制作部長

Q+PR=これはこれであり2009.10.28

「むぅ、これもある意味クイーンと言えるなぁ。。」
「これがクイーンの新ヴォーカリストですか?」
「何言うとうんねん、ポール・ロージャースやんけ」

一行目と三行目は同一人物(私)です。二行目は業界の若者A君。

さて、11月24日はフレディ・マーキュリーの命日。
毎年この日は、クイーンを聴きながらお酒を頂くのが私の習慣。

ポール・ロジャースはご存知、フリー、バッド・カンパニー、等を
歴任したヴォーカリストですが、以降はさっぱりバンドに恵まれて
いない(と私が思っている)人ではなかろうか?

レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジと組んだザ・ファームの結成
も話題になった割りには商業的成功もないまま消滅するし。。。

しかしそんな彼のヴォーカリストとしての魅力を私自身再認識するに
至らせたアルバムがトリビュート作品である「マディ・ウォーター・ブルース」。
元々クイーンが好きだった私はこのアルバムにブライアン・メイが参加している
、ということが購入動機だった。このアルバムは一曲毎に様々なギタリストを
フィーチャーしているが、このようなアルバムを成立させるのにはヴォーカリスト
として芯が揺るがないことが一番大事なことではなかろうか?言うなれば単語帳
のリングがポール・ロジャース、単語帳一枚一枚がギタリスト。。。

で、本論のQ+PR(PCのキーボード操作のことではありません)。

2008年のQ+PRの「ライヴ・イン・ウクライナ」を見た。
もちろんクイーンのヴォーカルはフレディ・マーキュリーであり永久欠番のような
ものである。しかし、今年60歳になるポール・ロジャースの奮闘が意外にも私の
心を揺さぶるのです。このクイーンおたくの私の心を。

決してフレディを再現するわけでもなく、自分を主張するわけでもない。。

アーティストを目指し、スターダムをのし上がり、チャートの頂点を登ると
同時に人生にピリオドを打ってしまう男が描かれる「シューティング・スター」
(バッドカンパニーの曲)。70年代の曲だが、まるでフレディーのような人生
を歌うこの曲がステージで歌われるのが興味深い。。

で、結論。

「これはこれであり。」

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HIDESHI OKI/沖秀史
株式会社USEN 音楽番組制作部長