ブラッディ・マリー。
それがカクテルの名前であることを高校生の僕は知らなかった。
この名前をバンドの名前にしたのは当時好きだった甲斐バンドのアルバムの中の曲名だったというのがその理由。
僕のアマチュアバンド歴において初めてオリジナル楽曲を演奏することになったのがこのブラッディ・マリーというグループ。
しかも後期のビートルズのようにライヴは一切やらず、友達の家に集まっては各自のオリジナルナンバーをアレンジし、録音することを楽しみとする自己満足バンドであった。
メンバーは僕を入れて3名。
各々がヴォーカル、ギター、ベース、ハーモニカ、ピアノなどを曲によって担当分けしていた。
基本は自分の作曲した曲は自分がアレンジし、ヴォーカルを担当する。残り二人に実際に演奏して聴かせてみせてアレンジをしていく。
当時4チャンネルのカセットマルチレコーダーに10曲を詰め込んだテープは今でも僕の宝物である。
さて、導入が長くなってしまったがどうしてこのような書き出しになったのかは、改めてRCサクセション(以下、RC)の初期の3枚を改めて聴いて思い出したことがあるからだ。
この初期の3枚に共通して僕が抱くのが「郷愁」の2文字。
曲のイメージしかり、当時のRCのメンバーとレコード会社の微妙な関係値しかり。
G→Bmなど郷愁を誘うコード進行、maj7などのコードの響きがかもし出すそこはかとない淋しさ。。
今でこそロックのRCと言われていた彼らが、デビュー当時のフォークバンドっぽい時期に作り出した楽曲が生み出したこの郷愁は、後にロックのバンドと言われた彼らのレパートリーの中にも多数存在する。
当時の僕はそんな郷愁の虜になってしまった一人だ。
「金儲けのために生まれてきたんじゃないぜ」「ヒッピーに捧ぐ」に表現される切なさは後に「いい事ばかりはありゃしない」「Johnny Blue」などにも受け継がれていると感じる。
僕の最初のオリジナルバンド、ブラッディ・マリーを結成した頃にはまだRCサクセションの初期の3枚を知る前であったが、僕達のオリジナルソングのアレンジと微妙に似ている曲が多かったので、僕達は勝手に「自分達のやっていることは間違っていない」と勝手に思っていた。
「ヒッピーに捧ぐ」は「お別れは突然やってきて」という歌い出しから始まる。
まさに突然やってきたこのお別れから早一年。僕は毎年あの日の郷愁を思い出すだろう。