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NORIYUKI TANAKA 田中紀之
株式会社ディーツーコミュニケーションズ 事業開発本部 本部長
NTT DoCoMo、電通を親会社に持つモバイル・マーケティング企業で、さまざまな事業開発のリーダーを務める。見識の広さ、発想の豊かさに加えて、組織を動かしてゆくうえでの行動力や決断力に優れている。世界の歴史やさまざまな文化、アートにも明るく、話題に事欠かない。

「アメリカ海兵隊」〜コンセプトをつくり出せる組織(1)2009 / 09 / 25

野中郁次郎氏の「アメリカ海兵隊」は、最強組織とは何かを求めた本。
太平洋戦争で日本がなぜ負けたかを分析研究した「失敗の本質」(野中氏他の共著)へのアンサーブック。
日本軍はだめだった。
では、成功の罠に落ちない組織とは何か?

この本で面白いのは、1921年ワシントン軍縮会議以降。
西部太平洋におけるマリアナ、カロリン、マーシャル諸島は、日本の委任統治領となり、

第一次世界大戦の勝者であるはずのアメリカは、逆に太平洋では大戦前より弱者となったという指摘です。
日米開戦になれば、アメリカ艦隊は太平洋を渡らなければならなくなる。
海兵隊は、日本軍の島をひとつひとつ奪取するため、
海と空の軍事力で敵の陸軍力を打ち破るという新しい「コンセプト」=「水陸両用戦」を提唱しました。

「水陸両用戦」は太平洋戦争に勝利することで完成、しかし役割を失います。
成功の罠に落ちるどころか、成功すると組織をなくすという過酷。
海兵隊の航空部隊は、空軍に移管するという意見もでました。
熱核弾道弾が登場すると、海兵隊って半分くらいでいいんじゃないの?とまで言われてしまう。

1950年、朝鮮戦争の劣勢を仁川上陸戦における海兵隊の活躍で挽回したことから、「即応部隊」としての機能を証明してポジションを確保。
即応部隊をより高度に実現する「新しいコンセプト」=海兵空・陸機動部隊(MAGTF:Marine
Air-GroundTask Force)という組織構造をつくります。
軍事介入の期間に応じた戦争機能(兵器、兵站、人員)をone packageで編成される、世界で唯一の軍事組織形態。

海兵隊は陸海軍への吸収や組織の大幅縮小という「存在危機」に、
「新しいコンセプト」を自らつくり出し、それを実現する組織に自己革新することで生き残ってきました。

なぜ、それが本当にできるのか?

存在意義についての強烈なプライドがあると思います。
「真っ先に戦う(First to Fight)」。
米国の戦争では「即応部隊」として必ず最初に海兵隊が投入されます。

どんな状況でも必ず最初に戦うことが決まっているのは、「それは私の担当ではない」的な逃げが利かない。
世界中のどこでも、一定の期間戦争しなければならない唯一無二の組織。
強烈なプライドとロイヤリティが生まれやすい。

First to Fightが最優先で、組織形態も戦略も手段に過ぎず、ドラスティックに変更できる遺伝子がある。
リクルートのかつての社訓「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という言葉も思い出します。

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NORIYUKI TANAKA/田中紀之
株式会社ディーツーコミュニケーションズ 事業開発本部 本部長

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