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YUKICHI OTSUKA 大塚雄吉
F1 ウォッチャー
幼少期にF1に魅せられ、50年以上にわたって、日本製のF1が出ていなくても、日本人F1ドライバーがいなくても50年以上にわたってF1を見続けてきた、F1 ウォッチャー。

Formula One 2016(12)2016.07.29

ハンガリーGPはハミルトンが制した。
ついに、ハミルトンがロスベルグを抜いてチャンピオンシップ・ポイントで首位に立った。
ハミルトンは、スタートでトップに立った後はロスベルグとの差を終始2秒前後に保ってゴールした。
予選でポールポジションをロスベルグに獲られたハミルトンは、今週末は決して好調とは言えなかったが、決勝のスタートを決めた後は、タイヤ・マネジメントとラップタイムのバランスをとる巧みなレース運びだった。
ハミルトンは、ロスベルグとの差が1秒台になると少しラップタイムを挙げて抜くチャンスを与えずゴールした。
ハミルトンは、調子があまりよくなくても、それなりにレースを作ることができる。
シーズン終盤のハミルトンのパワーユニット交換ペナルティを考えると、ハミルトンとロスベルグはチャンピオンシップ争いで並んだといっていいだろう。

3位にはロスベルグから25.6秒遅れてリチャルドが入った。
最近、ちょっとした不運のためにフェルスタッペンの後塵を拝していたリチャルドは、今回実力を示した。
4位にはリチャルドから0.7秒遅れでフェッテルが入った。
5位にはフェッテルから20秒遅れでフェルスタッペンがゴールし、フェルスタッペンのわずか0.4秒背後でライコネンがゴールした。
ライコネンは、終盤、何度かパッシングを試みたが、フェルスタッペンのF1シーズン2年目とは思えない落ち着いた(違反すれすれの)ブロッキングに遭い、抜くことができなかった。

7位にはアロンソが中団グループの先頭でゴールした。
アロンソは珍しいことにP1から決勝までの全セッション7番手だった。
これが、マクラーレン・ホンダの現在の立ち位置だろう。
今後、さらに上を目指すには、ホンダのPUアップグレードだけでなくマクラーレンの空力アップデートとサスペンション改良も重要になってくる。
トップテンの残りには、8位サインツ、9位ボッタス、10位ヒュルケンベルが中位チームから1ずつ入った。
これからの高速コースは、フォースインディア、ウイリアムズ、トロロッソが速い。

ハンガリーからわずか1週間後に開催されるのは、ドイツGPだ。
環境問題とスポーツの予算管理(サッカーでもリーグの各チームに赤字を出さないように厳しく指導している)に厳格なドイツでは、去年予定されていたニュルブルクリンクでのF1開催が取りやめとなった。このため、ホッケンハイムで行われるF1グランプリは2年ぶりのドイツGPとなる。
ホッケンハイムは、高速コースでコース幅も広いからDRSを使ったパッシングが多くみられるだろう。
ブレーキに厳しいコースだから終盤に番狂わせがあるかもしれない。

2016年のF1には、ロスベルグ、フェッテル、ヒュルケンベルグ、ウェーレーンの4人のドイツ人ドライバーがいる。
2014年、2015年と続けてコンストラクターズチャンピオンをとったのもドイツのメルセデスだ。
今年の前半戦をリードしたロスベルグは、今年は最もチャンピオンになれる可能性が高まっているといいていいだろう。
ロスベルグはここで勝ってハミルトンへの流れを止める必要がある。
他のドイツ人ドライバー、3人もホーム・グランプリで出すエキストラパワーに期待したい。

ドイツGPは、1位ロスベルグ、2位ハミルトン、3位フェッテル、4位リチャルド、5位ライコネン、6位ヒュルケンベルグ、7位バトン、8位アロンソ、9位クビヤト、10位マッサかな。

2016 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
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Formula One 2016(11)2016.07.22

ブリティシュGPはハミルトンの3年連続優勝で幕を閉じた。
ハミルトンは、ウエットからドライへのコンディション変化をものともせず(むしろイギリス人だから慣れているか)予選・決勝を通じてグランプリを制した。
ハミルトンに続いて6.9秒差でフィニッシュしたのはロスベルグ、さらに1.3秒差でフェルスタッペンがゴールした。
しかし、ロスベルグはレース終盤にギヤボックス・トラブルに見舞われた際に、ピットから有利になる情報を(7速を飛ばしてシフトする)得たとして、レース後、10秒加算ペナルティを課せられた。
このため、公式記録は、フェルスタッペン2位、ロスベルグ3位となった。
ピットがロスベルグに無線で対処方法を教えてしまったためだが、ドライバーも教えられなかったよりは少し有利になったという裁定だった。
ピットからドライバーにマシン操作に関する指示をしてはならないという規則に沿ったもので、ルールを厳格に適用することによって公平さが保たれた。
ロスベルグは、せっかく自力でフェルスタッペンを抜いたのに不運な結果になったが、ギヤボックス・トラブルでリタイヤするよりはいいだろう。

これで、ロスベルグとハミルトンのチャンピオンシップポイント差は1となった。
しかし、ハミルトンは、ポイント上ではロスベルグと並んでも、前半戦でパワーユニット・コンポーネントのトラブルが続いたせいで、ターボとMGU-Hは5基目のコンポーネントを使っている。
これらのコンポーネントが壊れればシーズン規定数を使い果たすことになり、6基目を投入する時点でグリッド・ダウン・ペナルティを受けることになる。
ハミルトンはグリッド・ダウンによる不利を少しでも少なくするため、5基目が壊れなくても、パッシングのしやすいコースで早めに6基目を投入したいと考えているようだ。

ブリティシュGPの結果をチーム別見ると、メルセデスが1位・3位、レッドブルが2位・4位、フェラーリが5位・9位、フォースインディアが6位・7位、トロロッソが8位・10位となっている。
フェラーリの代わりにレッドブルがメルセデス追撃の旗手になりつつあることがよくわかる。
レッドブルは空力が良いため高速コースでもメルセデスについていくことができる。メルセデスとレッドブルのタイム差も縮小してきた。

次はハンガリーGPだ。
ハンガリーGPが東欧最初のF1GPとして開催されたのは1986年に遡る。
パーマネントコースながら延長が4.3Kmと短く、タイトなコーナーが多いため決勝でのパッシングは難しい。
予選順位が極めて重要になるコースだ。
バトンは2006年のハンガリーGPで猫の目のように変わる天候の中、自身の初優勝とホンダ・ホンダの3勝目を飾ったコースだ。
今のマクラーレン・ホンダには適しているコースだ。
かつて絶大なパワーを誇り、ブリティッシュGPで1-4位を独占したホンダ・エンジンを知る者にとっては寂しい限りだが・・・。
ハンガリー人のF1ドライバーはいないが、ロシア人のクビヤトには近隣のロシアからファンが詰めかけるだろう。
トロロッソに移籍させられてからはぱっとしないクビヤトは、ここいらで結果を出さないと来年はない。

ハンガリーGPは、1位フェッテル、2位リチャルド、3位バトン、4位アロンソ、5位ライコネン、6位フェルスタッペン、7位クビヤト、8位サインツ、9位ヒュルケンベルグ、10位ペレスかな。

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
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Formula One 2016(10)2016.07.08

オーストリアGPはファイナルラップにハミルトンがロスベルグを下して優勝した。
ポールポジションからスタートしたハミルトンは終盤までに十分なマージンを稼いでいたが、大事を取ってタイヤ交換をしたときにロスベルグに先行されてしまった。
首位の座を取り戻すべくロスベルグを追ったハミルトンは、ファイナルラップでロスベルグに追いつきコーナーのアウト側から抜こうとした。
しかし、ロスベルグが外側のスペースを残さなかったために2台は接触した。
ロスベルグの車はフロント・ウイングを激しく損傷し、スローダウンしてしまった。
ロスベルグは、なんとかゴールにたどり着いたものの、フェルスタッペンとライコネンにも抜かれ4位フィニッシュに終わった。
ロスベルグは、ハミルトンに抜かれても2位で18ポイントが手に入ったはずなのにレーシング・ドライバーとしてはどうしても抜かれたくなかったのだろう。

2位にはフェルスタッペン、3位には、ライコネンがテール・ツー・ノーズでゴールした。
フェルスタッペンは速く、強引なだけでなくしぶとい。
5位にはリチャルドが入り、6位にはバトンが入った。
バトンは3番手グリッド(昨年以来のマクラーレン・ホンダのベストグリッド!)というスタート位置を生かしてうまく走り切った。
スタート直後には2番手を走行していたから、いつものように中団グループに行く手を阻まれることもなく、レースを組み立てることができた。

やはり、スターティング・グリッドは重要だ。
マクラーレン・ホンダは、予選からトップスピードを捨てて雨がらみのコンディションになった時に備えたハイ・ダウンフォースの設定で挑んでいた。
バトンはQ3最後に路面が最も乾く状態のタイミングを待ってタイムを出した。
チームのセッティング戦略と天候の変化、ドライバー技量の三者がそろっての予選結果(5番手タイム)だった。

7位にはグロージャン、8位サインツ、9位ボッタス、10位ウエィレーンが続いてゴールした。
中でも、ウエィレーンは、光るものを見せてくれた。
常にテールエンダーに甘んじていたマシンで予選Q3を突破し、12番手スタート、そして決勝でも見事にポイント・フィニッシュを果たした。

メルセデスが、育てたいドライバーとして今シーズンにマノーのシートを得た。
今後も才能があるところを見せることができれば、近い将来、メルセデスのシートに座っている可能性が高いドイツ人ドライバーだ。

ブリティシュGPは、伝統のシルバーストーンで行われる。
シルバーストーンは、飛行場を改修してできたコースなので高低差のない高速コースだ。
しかしイン・フィールド部分はテクニカルでもある。
シルバーストーンに取って代わられるまではブリティシュGPといえば1986年までは隔年でブランズハッチでも開催されていた。
ブランズハッチは緑が多く、高低差のある自然なコーナーが配置されている英国らしいサーキットだ。

今回、ハミルトン、バトン、パーマーはホームグランプリだ。
フェラーリ、トロロッソ、ザウバー以外のチームは英国に本拠地を置いている。
ハミルトンはここで勝てばロスベルグとポイントで肩を並べることができる。
ホンダはブリティシュGPを前にエンジン(PUの内燃機関部分)をアップデートした模様だ。
マクラーレンも空力の改良を続けている。

ブリティシュGPは、1位ハミルトン、2位ロスベルグ、3位フェッテル、4位マッサ、5位リチャルド、6位ヒュルケンベルグ、7位アロンソ、8位フェルスタッペン、9位ボッタス、10位バトンかな。 

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
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Formula One 2016(9)2016.07.01

ヨーロッパGPはロスベルグが2位以下を寄せ付けず圧勝した。
ロスベルグは予選から圧倒的に速く、このコースに波長の合わなかったハミルトンは自滅して5位に終わった。
ハミルトンは、このレースで優勝してポイント差を解消してチャンピオンシップ争いで有利に立つことを目論んでいただろう。
どっこい、今年のロスベルグは一味違う。
概して、市街地コースはロスベルグのほうがハミルトンより得意なようだ。
フェッテルは、このコースに合わせてうまくセッティングできなかったフェラーリを2位でフィニッシュさせた。

3位に着けたのはモナコGP以来、絶好調のペレスだった。
ペレスは、予選Q3で2番手のタイムをマークして周りを驚かせたが、フリー走行中のクラッシュで破損したギヤボックスを交換したことによるペナルティで5グリッド降格となり、決勝スタートは7番グリッドからスタートした。
そして、決勝レースでも見事な走りを見せたペレスは、表彰台をもぎ取った。
ペレスはロスベルグと同じく市街地コースが好きで、トラクションのかからない状況をうまくコントロールする術を持っている。
昨年は空回りが目立ったペレスだったが、ここにきて急速に評価を取り戻しつつあり、来年のフェラーリ・シートが取りざたされるまでになってきた。

以下、4位ライコネン、6位、ボッタス、7位リチャルド、8位フェルスタッペン、9位ヒュルケンベルグ、10位マッサの順でゴールした。
マクラーレン・ホンダはバトンが11位、アロンソがトラブルでリタイヤというカナダGP同様の結果に終わった。
予選前のプラクティスではバトンが好タイムを出していたが決勝の結果には結びつかなかった。

2016年シーズンも第7戦カナダGPまでにすでに1/3を消化して、ヨーロッパGPからヨーロッパ・ラウンドの7戦が続く。
今シーズンは、メルセデスの二人、ハミルトンとロスベルグだけをとってみても最後までもつれそうだ。
他のチームでも、フェラーリが展開によっては優勝を狙えるようになってきたこと、レッドブルもトップ3を狙えるようになってきたことでグランプリごとの展開から目が離せない。

次のオーストリアGPは、レッドブルリンクで行われる。
A1リンクはエステルライヒリンクをショート・カットしたものだが、レッドブルリンクは2014年のF1開催再開に合わせてA1リンクを近代化させたものだ。
全長は4.3Kmと短くコーナー数も少ない単純なレイアウトだが、周回数が多い。オーストリア人F1ドライバーと言えば3回のワールドチャンピオンに輝いたニキ・ラウダが有名だが、もう少し遡るとヨッヘン・リントというF1ドライバーがいた。
リントは、1970年に、シーズン途中のイタリアGPで事故死したが死後も合計ポイントで抜かれることはなくチャンピオンとなったのだった。
ロスベルグは、2014年、2015年と2連勝している。
ハミルトンは、ここで勝ってヨーロッパGPの失地を回復し、次の母国GPに弾みをつけたいところだろう。

オーストリアGPは、1位ロスベルグ、2位リチャルド、3位フェッテル、4位アロンソ、5位サインツ、6位ライコネン、7位ヒュルケンベルグ、8位マッサ、9位バトン、10位グロージャンかな。

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