イタリアGPでのフェッテルとレッドブルはベルギーGPよりもさらに進化した戦い方を見せてくれた。
レッドブルにとってボギー・サーキットといわれる最も不得意なモンツァで直線の最高速を犠牲にしてもコーナーからの立ち上がり加速を重視したセッティングを採用し、最高速は最も遅い部類に入るのにラップタイムは最も速いという意表を突く作戦に出たのだ。
もっともこの作戦はレッドブルのマシンとフェッテルの腕があって初めて可能な作戦なのだが。
この作戦を成功させるためには予選でポールポジションを取る必要がある。
フェッテルはそれをきっちりとやってのけた。
これで、決勝のスタートを決めて逃げ切れればいいのだが、非力なKERSを持つレッドブルではそうはうまくはいかず、スペインGPの時と同じように見事なスタートを決めたアロンソに先を越された。
しかし、スペインの時ほどアロンソのリードは長くは持たなかった。
1周目の多重クラッシュでセフティカーが出たために、リスタートでタイヤの温まりのよいレッドブルに置いていかれたのだ。
この後は、輝きを取り戻しつつあるシューマッハを抜くのにてこずったハミルトンと見事なシューマッハ抜きを見せたバトンがフェッテルを追ったが、フェッテルはすでにはるか先を行っており終盤にはクルージングする余裕を見せて圧勝してしまった。
最も不利だといわれたコースで圧勝したフェッテルのチャンピオンはここで決まったも同然だ。
フェラーリは今シーズンのマシンの開発はこれで終了らしい。
それでも、F1は進んでいく、レッドブルもマクラーレンも決して手は緩めない。
次は、シンガポールGP、トラクションの低いストリート・コースでのナイト・レースだ。
夜の観光はシンガポールの売り物だ。
F1の前から夜の動物園(ナイト・サファリ)があるぐらいだし、今一番の名所になっているサンズ(3本の高層ビルの上に船の形をしたプールと展望デッキが乗っかっている)も夜見たほうが美しい。
実はサンズからF1コースの一部が見下ろせる。
シンガポールよりも日本のほうがはるかに見所が多いと思うのだが、観光客数はシンガポールのほうが多い。
俗物的なエンターテイメントに引かれる人のほうが多いのだろうか?
もっとも、関心のない人たちにとってはF1もその部類に入るかもしれない。
ところで、シンガポールのマリーナベイ・サーキットはアロンソが得意とするコースだ。
アロンソは去年の練習走行でもエスケープゾーンにオーバーランして限界をチェックしていた。
トラクションの低い直角コーナーではとても重要な確認事項だ。
ストリート・コースではこのちょっとした違いが決勝で競ることになったときに効いてくるし、マシンの不利を補うことができるのだ。
シンガポールGPは1位アロンソ、2位フェッテル、3位バトン、4位ハミルトン、5位ウエバー、6位マッサ、7位ロスベルグ、8位可夢偉、9位シューマッハ、10位ブエミかな。
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