今年もモナコGPは面白かった。
モナコのコースは市街地を利用したタイト・コーナーの多いコースなのでパッシングをする場所がほとんどない。
だから、モナコでは予選で上位のグリッドを確保するのがとても重要になる。
アロンソは、ここモナコで木曜のフリー走行から好調でフロント・ローを狙っていた。
ポール・ポジションを取ればほとんど優勝したようなものだからだ。
そのアロンソが土曜日午前のフリー走行でスピンしてマシンを壊してしまったために予選に出走できなくなってしまった。
これで、今年のアロンソのモナコGPは終わったと誰もが思った。
しかし、アロンソ本人は諦めていなかった。
一周のタイム差がかなりあるとはいえ前を走る下位チームのマシンをパッシングの難しいモナコで次々と抜き去り、終わってみれば6位に食い込んでいた。
しかもスタート直後に交換したタイヤで74ラップ以上を走りぬいての結果だ。
どう転んでも楽しませてくれるドライバーである。
予選、決勝ともクビサの巧さは光っていた。
クビサの手にかかるとまるでルノーが速いように見えるから不思議だ。
車の実力からすると予選2位、決勝3位は賞賛に値する。
それにしてもウエバーの速さは群を抜いていた。
予選こそクビサががんばったおかげでひやりとさせられたが、同じマシンを駆るフェッテルも含めて決勝では誰も追いつけなかった。
ウエバーは、佐藤琢磨とF1同期生だがミナルディからスタートしてここまで来た。
最近はフェッテルよりも速くなったようにも見える。もう数戦見てみないとわからないが・・・。
どちらにしても、ブラウンGP一辺倒だった昨年と比べると今年のF1は6戦で4ウイナーなのではるかに混戦となっていて毎レース目が離せない。
ここで、オールド・ムービーを1点、フランス映画「男と女」である。
中年でそれぞれ子持ちの独身男女のラブ・ストーリーだが主役の男がレーシング・ドライバーという設定なので当時のレースやレーシング・ドライバーの様子が自然な形で感じ取ることができる。
男と女の子供の登場の仕方や海辺のシーン、ボサノバ風テーマ曲などいちいちシャレている。
今週末は、トルコGPだ。
バニー・エクレストンのF1真の世界選手権化計画に沿って2005年からチャンピオンシップに加わったグランプリだ。
中速・低速・高速コーナーが適度にミックスされモナコと違ってパッシング・スポットもあるコースだ。
マッサはこのコースを得意としていて、これまでのトルコGP5戦中3勝している。
得意のトルコでマッサが自信を取り戻すか、フェッテルがウエバーから主導権を取り戻してアイルトン・セナに近づけるか、ターニング・ポイントとなるトルコグランプリが始まる。
2010 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved
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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
学会ネット株式会社 代表
日本の経済バブルが過ぎ去ってからもう20年になる。
最近、大手新聞社のウエブサイトのタブからレーシングが消えてしまった。
それでも、ホンダが第1期F1活動を休止して以来、日本のチームも日本人F1ドライバーも存在しなくなってもF1を見続けてきた僕にとってはたいしたことではない。
モータースポーツは日本ではマイナー・スポーツだがヨーロッパではサッカーの次に人気のあるメジャー・スポーツだ。
ホンダが撤退してもリーマンショックがあってもF1は何事も無かったのように続いている。
エンジニアの僕が言うのはつらいが、F1はマシンもハイテクですごいが、スポーツである限り、最後はドライバー同士の戦いこそが面白い。
チャンピオンを獲れるドライバーがいればその国のF1熱はあっという間に高まる。
要は、ひとりチャンピオンになれる日本人ドライバーが現れれば全てが変わる。
そこで、スペインGPである。
かつてスペイン人F1ドライバーがいなかったころのスペインGPは空席が目立っていた。
ところが、ここ数年はアロンソのおかげで熱狂的な観客がサーキットを埋め尽くしている。
それにしてもアロンソはすごい。
7回もチャンピオンになったシューマッハと戦って2度もチャンピオンの座をもぎ取ったのだ。
今年のスペイングランプリでもアロンソらしい走りがみられた。
このレース、レッドブルとは明らかに性能差のあるフェラーリを駆って、レッドブル追撃の手を緩めず、終盤トラブルに見舞われたフェッテルとハミルトンを尻目に2位に食い込んでみせた。
リタイヤしたマレーシアGPでもエンジンブローするまでしぶとく上位を狙っていた。
フェッテルが速いドライバーだとしたらアロンソは強いドライバーだ。
デ・ラ・ロサとアルグエルスワリもスペイン人だがこのふたりでは観客は呼べない。
同じカメラマンではないかもしれないが、スペインGPのカメラは昔から遅いマシンでがんばってドライブしている中位から下位のドライバーやバトルを比較的長い時間撮る。
今回も可夢偉を数周にわたって映していたし、スーパーアグリのラストレースとなったときも執拗に映していた。
これで何とかスポンサーが付けばと思ってくれていたのだろうか?
自国のスタードライバーがいなくてもF1を楽しんでいたころに培われた通の観戦癖が抜けないみたいだ。
日本GPもできればこのような撮り方をしてくれると国際映像を通じて日本のF1文化の高さが世界中に伝わる。
この週末は、いよいよモナコグランプリだ。
フランスGPが開催されなくなったからフランス人にとっては最も身近なグランプリだ(モナコはフランスのコートダジュールの一角にある小国なので)。
F1とモンテカルロ・ラリーを開催しているおかげで世界中によく知られている。
最近、モータースポーツに関心のない人にも本マグロ禁猟さわぎで有名になった。
王家に跡継ぎがないと国がフランスのものになってしまうという契約がフランスとの間にあるらしい。
高額のバッグが好きなご婦人の間でもてはやされているエルメス・ケリー・バッグはアメリカ人女優でモナコ王妃となったグレース・ケリーが愛用していたことからケリー・バッグと呼ばれていると聞いた。
話をF1に戻すと、ここはドライバーズ・サーキットの最高峰といわれている。
僕も鈴鹿の次にコーナー名を良く覚えているプレミアムなコースだ。
アップダウンとタイトなコーナーがたくさんある市街地を閉鎖して作った仮設コースなのでドライバーの力量の差が出る。
ここで飛びぬけて速かったのはアイルトン・セナとグラハム・ヒルだ。
(この根拠の説明には数ページを要するので別の機会に取り上げることにする)
モナコの路面は公道なので滑りやすく、コースがほぼ全周にわたってガードレールに囲まれている。
近年のF1マシンは速過ぎるので、予選でいいタイムを出さないとコース上では抜く場所がないといわれている。
それでも、パッシング・アーティストの佐藤琢磨はミラボーで見事に抜いてみせたことがある。
息を抜かずに観戦していれば失うもののない中盤あたりのドライバーがだれかやってくれるかもしれない。
可夢偉にはぜひやってほしい。
と、ここまで書いたら、木曜日のフリー走行でアロンソがベストタイムを出しているというニュースが入ってきた。
今年もモナコGPは面白くなりそうだ。
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