ハミルトンは予選・決勝とアメリカGPに圧勝して、今年のチャンピオンシップ獲得を決して諦めているわけではないことを示した。
ロスベルグはオースティンのコースでは予選決勝ともハミルトンの敵ではなかったが、きっちりと2位に入って、ハミルトンがチャンピオンになる確率を着実に減らすことに成功した。
二人のポイント差は残り3戦で26ポイントとなった。
3位に入ったリチャルドはフェルスタッペンのマシン・トラブルによって出たバーチャルセフティカーがなかったら2位でフィニッシュできていただろう。
3ストップ作戦が裏目に出たフェッテルは4位に着けるのがやっとだった。
圧巻だったのは、アロンソだ。予選ではQ3に進めず12番手スタートながら決勝では1周目で9番手までポジションを上げ、その後はライコネンとフェルスタッペンのリタイヤのおかげで7番手まで浮上した。
アロンソは、レースの終盤で、前にいたマッサとサインツをギリギリまで攻めたブレーキングでかわし、5位でゴールして見せた。
マクラーレンの数少ないアドバンテージであるブレーキング・スタビリティとアロンソの技が光った。
バトンも19番手スタートから9位まで追い上げてポイントを獲得した。
今回のマクラーレンホンダはドライバー力によって多くのポイントを獲得できたといえるだろう。
1周目に大きく順位を落としたペレスはその後ペースが上がらず8位に終わった。
ハース・チームのホームレースでなんとかポイントフィニッシュまで持ち込んだグロージャンは10位に滑り込んだ。
ロスベルグは残り3戦、2位を続けていればチャンピオンになれるのだが、ことはそう簡単ではない。
F1ドライバーなら、残り3戦をハミルトンに負け続けてチャンピオンになったとしても素直に喜べないだろうから、なんとか勝とうとする。
そうなると、無理をして思わぬトラブルが生じる可能性が出てくる。
2位どころか下位に沈んでしまうこともあり得る。
3戦のうち1戦でもマシン・トラブルでリタイヤすることになれば、あっとゆう間にポイントは並んでしまう。
対するハミルトンは、失うものが何もない状態で、ただ優勝を目指して予選・決勝を走ればよい。
ノー・プレッシャー状態だ。
果たして、今年のロスベルグが、守りながら勝たなければいけない難しい状況に耐えられるだけのタフネスを持つことができているかどうかだ。
もう一つのかく乱要因はレッドブルの存在だ。
シーズン後半になってめっぽう速くなったレッドブルは、ドライバーの二人もめっぽう速い。
最近の予選では、メルセデスから0.5秒以内に入っている。
決勝では、タイヤ交換のタイミングやメルセデス勢のちょっとした隙に、二人のドライバーのうちのどちらかが2位に入ったり優勝したりすることも充分ありうる。
だから、最初にチャンピオンになった時、最終戦の最終コーナーでチャンピオンが決まった経験を持つハミルトンは、ちっとも諦めてなんかいないのだ。
次は、オースティンから南下してメキシコGPだ。
メキシコGPの舞台となるエルマノス・ロドリゲス・サーキットは標高2300mの高地にあるので、ターボチャージャーの実力とセッティングが重要なファクターになる。
長いストレートでは薄い空気による空気抵抗の少なさも相まってPUパワーの差が大きく出る。
さらに、薄い空気によってダウンフォースは少なくなるから、メルセデスPU勢にとっては有利だがレッドブルにとっては不利なコースだ。
ペレスとグティエレスにとってはホームGPだ。
メルセデスPUを積むフォースインディアに乗るペレスは昨年も力強いレースを見せた。
グティエレスは来年のシートが決まっていないからここでの入賞は必至だ。
メキシコGPは、1位ハミルトン、2位ロスベルグ、3位ペレス、4位ボッタス、5位ヒュルケンベルグ、6位フェッテル、7位フェルスタッペン、8位リチャルド、9位マッサ、10位グティエレスかな。
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ロスベルグが今年のチャンピオンシップを争う上で最も重要な一戦、
日本GPを完全に制した。
決勝で、ロスベルグが見事なスタートを切ったのに対し、ハミルトンは大きく出遅れて8番手まで後退してしまった。
ロスベルグの優勝に繋がった最大のポイントは、予選Q3でハミルトンと0.013秒差でポールポジションをとったことだ。
ハミルトンはプラクティスの3セッションを通じてマシン・セッティングが決まらず苦労していた。
しかし、そこはハミルトン、予選に入るとトップタイムを出せるところまでマシン・セッティングと自身のドライビングを修正してきた。
それでも、ほんの僅かな差でロスベルグのポールを許してしまった。
ハミルトンは、日本GPで優勝しなければ、事実上、自力でチャンピオンになる望みが絶たれるから、どうしてもポールをとる必要があった。
ところが、ハミルトンはポールをとれなかったために、決勝のスタートでロスベルグの前に出なければならなくなった。
これが、決勝のスタートでハミルトンのクラッチ・ミートに微妙な影響を与えたことは想像に難くない。
ハミルトンは、その後、果敢な追い上げを見せ、スタートで2番手に浮上したフェルスタッペンをもう少しで抜くところまで迫った。
しかし、フェルスタッペンは、ハミルトンに追いつかれてからはシケインの立ち上がりを速くするなどして防戦した。
フェルスタッペンを攻略することができなかったハミルトンは、3位に終わった。
4位と5位にはフェラーリのフェッテルとライコネンが入り、6位にはスタートで行く手を阻まれたことが最後まで響いたリチャルドが入った。
7・8位はぺレスとヒュルケンベルグ、9・10位にはマッサとボッタスが入った。
日本GP終了後のロスベルグとハミルトンのポイント差は33と広がり、残り4戦でハミルトンが全勝してもロスベルグが全て2位に入ればロスベルグが上回る。
今年のロスベルグは、精神的にも強くなっているように見受けられるから、ハミルトンが4戦全勝するのは容易ではない。
ロスベルグが抱えるリスクはパワーユニットの耐久性だろう。
ハミルトンは合計8基のPUを投入しているが、ロスベルグは5基で戦っている。
これまで運よく壊れなかったロスベルグのPUが残りの4戦で火を噴かないという保証はない。
ロスベルグのPUが残りの1戦で壊れて、ハミルトンが優勝すればポイント差は一気に縮まってチャンピオンシップの行方は最終戦まで縺れることになる。
次は、太平洋を渡ってアメリカGPだ。
同じシングルシーターレースのインディカー・シリーズはオーバル・トラック、市街地コース、ローカルロードコースで争われている中、オースティンのコースはF1開催ために準備された最新のレーストラックで、テクニカルな要素も多い。
特にスタート直後に駆け上がって急に曲がる1・2コーナーの攻防は見ものだ。
オースティンのコースは、舗装のグリップが低いためプラクティスからタイヤのラバーが定着しないと充分なグリップが得られない。
アメリカ人ドライバーはいないが、メキシコは近いので、ペレスとグティエレスにとっては準ホームGPでメキシコGPの前哨戦となる。
またハース・チームにとっては初めてのホームGPとなる。
鈴鹿の予選では調子が良かったから、本番ペースを改善できれば入賞が期待できる。
アメリカGPは、1位ハミルトン、2位リチャルド、3位フェッテル、4位ロスベルグ、5位アロンソ、6位フェルスタッペン、7位ペレス、8位バトン、9位グロージャン、10位グティエレスかな。
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マレーシアGPでレッドブルがワン・ツー・フィニッシュを果たした。
優勝はリチャルド、2位にはフェルスタッペンが入った。
本来ならば、1位を独走していたハミルトンが優勝するはずだったが、残り16周というところでメルセデスPUが突然ブローしてリタイヤしてしまった。
ロスベルグは、スタート直後にコーナーに無理をして突っ込んできたフェッテルのせいで大きく出遅れ、後半、失地を挽回したがレッドブルの2台に追いつくことはできず、2位から23秒差の3位でゴールした。
フェッテルは予選でも決勝でもレッドブルより遅いフェラーリでなんとか上位に入るべく、決勝のスタートで前へ出ようとしたが、ちょっと無理をしすぎてしまった。
表彰台の一角に食い込むどころか、レッドブルにワン・ツー・フィニッシュの機会を与え、フェッテル自身が、次戦、日本GPで3グリッド降格ペナルティを受ける羽目になった。
ハミルトンがリタイヤし、ロスベルグが3位で15ポイントを得たために、両者のチャンピオンシップポイント差は23となった。
1位ト2位では7ポイント差があるから、ハミルトンは残り5レース全て優勝しないと、チャンピオンの座をロスベルグに持って行かれることになる。
4位にはライコネンがロスベルグと3秒差でゴールし、ライコネンからさらに30秒遅れてボッタス、ペレス、アロンソが、5位、6位、7位でゴールした。
残りのポイント・フィニッシヤーは、ヒュルケンベルグ8位、バトン9位、パーマー10位だった。
アロンソは、PUをプラクティスで交換・テストしたため最後尾スタートだったが、1周目の混乱を巧みにすり抜けてポジションを上げた。
予選走行をほとんどしなかったアロンソは、新品のソフトタイヤをたくさん持っていたので3ストップ作戦で攻めることになっていた。
アロンソは、3ストップ目のタイミングに運よくセフティカー規制となったため、ロスタイムなくタイヤ交換ができ、7位のポジションを守ることができた。
逆に、バトンは2ストップ作戦で2回目のタイヤ交換後にセフティカー規制になってしまったので、9番手まで落ちてしまった。
暑かったクアラルンプールからわずか1週間あけて、初秋の鈴鹿で戦われる日本GPだ。
鈴鹿サーキットは1962年に完成した(日本最初の高速道路よりも1年早い!)トップクラスのグランプリコースだ。
このコースが無かったら、日本のモータースポーツは今日のレベルまで発展しなかっただろう。
おかげで、F1で優勝した日本製マシンとチャンピオンをとったエンジンはあるが、ドライバーは3位表彰台が3人出ただけだ。
日本社会におけるモータースポーツの地位はいまだに低い。
ヨーロッパではサッカーの次にモータースポーツが人気があるのに・・・。
鈴鹿サーキットは、ホームストレートから高速で飛び込む1コーナー、2コーナーからヘヤピンまで続く難しい中低速コーナー、そして、複数の中高速コーナーとバックストレートからなる後半の高速セクター、急減速を強いられるシケインと下り坂のホームストレートで構成され、ドライバーにあらゆる要素のレーシング・テクニックを要求するコースだ。
世界トップレベルであるF1ドライバー達が腕を試される。
マクラーレンホンダは、アロンソがニューPUで日本GPを戦うことになっている。
バトンは1つ前のバージョンで戦う。
昨年、レース中に「まるで、GP2マシンに乗っているようだ」と言ったアロンソが今年のマシンでどのように戦うか注目だ。
今年の日本グランプリは、土曜日も日曜日も曇りと雨が混ざった天気になるようだから、予選はドライ、決勝はウエットということもあり得る。
そうなれば、作戦とドライバーの技量によってメルセデス一辺倒ではないレースを期待できる。
バトンやフェッテルは、雨がらみのレースが得意だ。
フェラーリとマクラーレンは、鈴鹿での経験とデータが豊富で、これまで何度もも鈴鹿でよい結果を出してきた。
日本GPは、1位ハミルトン、2位バトン、3位フェッテル、4位リチャルド、5位アロンソ、6位フェルスタッペン、7位ヒュルケンベルグ、8位マッサ、9位ペレス、10位サインツかな。
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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
学会ネット株式会社 代表