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YUKICHI OTSUKA 大塚雄吉
F1 ウォッチャー
幼少期にF1に魅せられ、50年以上にわたって、日本製のF1が出ていなくても、日本人F1ドライバーがいなくても50年以上にわたってF1を見続けてきた、F1 ウォッチャー。

Formula One 2018(4)2018.04.27

チャイナGPは、リチャルドが素晴らしいドライビングを見せて優勝した。
2014年から始まった新しいパワーユニット・レギュレーションになってからメルセデスが圧倒的速さを見せてきたが、5年目の今シーズンは3GP終了時点でメルセデスは1勝もできていない。
オーストラリアGPの予選を見て、今年もメルセデスの優位は揺るがないと思ったのは、全くもって早計だった。

リチャルドは2014年からレッドブルに移ってきたが、前年の2013年まででレッドブルの全盛時代は終わっていた。
それでも、リチャルドは、まともにやったらメルセデスPUに敵わないルノーPUを積んだレッドブルで6勝もしている。
そのほとんどが、レース中に廻って来た少ないチャンスを卓越したドライビングで勝ちに結びつけたものだ。
リチャルドが得意とするのは、絶妙なタイミングと長さを持ったシャープなレイト・ブレーキングだ。
チームメイトのフェルスタッペンが普通のドライバーならコースアウトしてしまいそうな勢いを保ったままコーナーの立ち上がりで強引に抜いていくのとは対照的だ。

予選の結果だけを見ればフェラーリが相変わらず好調で、フロント・ローを独占した。
ポールポジションを獲ったフェッテルとライコネンのタイム差0.1秒以下だったが、予選3番手のボッタスはフェッテルから0.5秒以上離されていた。
5番手と6番手は、レッドブルの2台で6番手のリチャルドはフェッテルよりも0.85秒遅かった。
予選終了時点で、リチャルドが優勝すると、誰が予想しただろうか。
しかし、今年のチャイナGPは、雨も降らず、大事故もなかったのにリチャルドが勝利した。
タイヤがレース結果を左右するうえで大きな役割を演じたと言えるだろう。

レース前、ウルトラソフトは15周程度しかもたないといわれていて、予選で使ったタイヤで決勝をスタートすると12週ぐらいでピットインする必要があることから、フェラーリとメルセデスは決勝でウルトラソフトを使わずにソフトでスタートし、ミディアムで最後まで走り切るワンストップ作戦を採った。
これに対して、レッドブルは全く異なる作戦を立てた。ウルトラソフトでスタートし、性能が落ちるところまでウルトラソフトで引っ張り、次にミディアムに交換して何とか最後まで引っ張るか、状況が変わればソフトに交換して、ソフトの速さでレースの後半にライバルを出し抜くというものだった。
そして、この作戦は、トロロッソ・ホンダのチームメート同志が接触して31周目にセフティカーが出動するという事態になったことで、見事に的中した。
レッドブルの二人は続けてピットインし、ミディアム・タイヤをわずか14周で履き捨てて、ソフトで猛追したのだ。

チャイナGPは、チームの判断力とドライバーの技を見せつけてくれたレースだった。
次は、バクーの市街地コースで開催されるアゼルバイジャンGPだ。
バクーのコースには全長2Kmに及ぶストレートがある。去年までストレート・スピードが遅かったマクラーレン・ホンダは全くレースになっていなかった。
今年のトロロッソ・ホンダはストレートスピードが速いのでその心配はないが、車がアンジュレーションの多い路面にセンシティブなように見受けられるので、バクーのコースでそれがどう出るか心配ではある。
また、ホンダPUはMGUHによるエネルギーの回収とディプロイメントでライバルPUに後れをとっているから今回は厳しいレースになるだろう。

アゼルバイジャンGPは、1位ボッタス、2位ハミルトン、3位ライコネン、4位フェッテル、5位フェルスタッペン、6位リチャルド、7位ヒュルケンベルグ、8位グロージャン、9位アロンソ、10位サインツかな。

2018 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉

Formula One 2018(3)2018.04.13

フェッテルは、見事なドライビングで、バーレーンGPの勝利をもぎ取った。
この勝利はまさにフェッテルのドライビングによってもたらされたものだ。
2位には、2番グリッドからスタートしたボッタスが入り、3位には、予選4番手ながらギヤボックス交換によって9番グリッドからスタートすることになったハミルトンが入った。
そして、なんと、4位でゴールしたのは、トロロッソ・ホンダを駆るガスリーだった。

フェラーリは予選から好調で、ポールポジションと2番手をとってフロントローを独占した。
予選3番手と4番手はメルセデスだったが、今回はボッタスがハミルトンより速いタイムを出した。
フェラーリとメルセデスの差はメルボルンほどではなく、トップのフェッテルと4番手のハミルトンのタイム差は僅か0.262秒で、決勝レースでも充分戦える範囲内だった。
5番手には3強の3番手レッドブルのリチャルドが占めたが、もう1台のレッドブルのフェルスタッペンは、Q1でコースアウトしてQ2に出走できず15番手に沈んだ。
変わって、予選6番手に着けたのは、トロロッソ・ホンダのガスリーだった。
トロロッソは新しい空力パッケージを投入し、ホンダも2週間でオーストラリアGPで出た問題を解決したパワーユニットを用意した。
これを、チームが巧くセットアップし、ガスリーのドライビングによって結果に結びついた。

決勝レースは、とてもドラマチックでハラハラする展開となった。
サキール・サーキットは、中低速コーナーが連続することから、ブレーキ、タイヤ、燃費に厳しいコースだ。
決勝レースを通じてこれらの要素をマネージするのがとても難しい。
メルセデス勢は、フロントローをフェラーリに独占されたこととハミルトンが9番グリッドスタートのためボッタス一人でフェラーリと戦わねばならないから、1ストップ作戦を基本にしていた。
フェラーリは、2ストップ作戦だった。

スタート直後、ボッタスはライコネンを出し抜いて2番手に上がり、フェッテル、ボッタス、ライコネンの順で周回が続いた。
各車、1回目のタイヤ交換を終えた30周目時点でフェッテルとボッタスの差は5秒足らずであり、2回目のタイヤ交換が視野に入ってくる40周目になってもフェッテルとボッタスのタイム差は7.5秒しかなかった。
1回タイヤ交換をすると20秒以上のロスがあるから、ボッタスがこのままタイヤ交換をしなかったら、1周につき1秒以上ボッタスより速いタイムで周回して抜き返さないといけなくなる。
ソフトタイヤの予想寿命が30周だったから、ゴールの10周前までには交換しないといけない計算になる。
フェッテルは、タイヤ交換せずにタイヤをもたせて最後まで走り切り優勝するか、タイヤ交換をして3位に甘んじるかの決断をする羽目になった。
ここで、フェッテルは、走り続けることを選択し、寿命30周のはずのタイヤで39周を走り切った。
そして、フェッテルは、ボッタスに抜かれることなく、チェッカーを受けることに成功した。
ハミルトンも9番グリッドから3位まで追い上げて力を見せた。
ガスリーは、マグネッセンとの激しいバトルを制し、見事なペースで走り切って4位でフィニッシュした。
バーレーンGPは、存分にドライバー力を見せつけてくれた、面白いレースだった。

次は、上海で開催されるチャイナGPだ。
上海のコースはバーレーンよりは直線が長く、高速コーナーもあるバランスの取れたコースだ。
マシンの総合的な実力を見ることができる。
ハミルトンは、チャイナGPで過去4回も勝っている。
予選のタイム差がバーレーン並みに小さければ、タイヤ・チョイスがレースを左右して、ハミルトンの独走にはならないかもしれない。
ガスリーは評価を定着させるたには、ここでも入賞する必要がある。

バーレーンGPは、1位ハミルトン、2位フェッテル、3位ライコネン、4位ボッタス、5位フェルスタッペン、6位リチャルド、7位ガスリー、8位グロージャン、9位アロンソ、10位サインツかな。

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉

Formula One 2018(2)2018.04.06

2018年シーズン開幕戦、オーストラリアGPを制したのはフェラーリとフェッテルだった。
フェッテルは昨年に続いて開幕戦に勝利した。
2位でゴールしたのは、ポールポジションからスタートしたハミルトン、3位でゴールしたのは2番グリッドからスタートしたライコネンで、フェラーリにとっては最高の1日、メルセデスにとっては最悪の1日となった。

予選の結果からは予想できなかった結末だった。
開幕前の予想は、メルセデス、フェラーリ、レッドブルの差が縮まり、トップ3三つ巴の戦いが見られるだろうというものだったが、ふたを開けてみると、メルセデスの強さは相変わらず頭抜けていた。
ポールポジションを獲ったハミルトンは2番手のライコネンに0.664秒の差をつけた。
フェッテルはライコネンからわずか100分の1秒差だった。
予選4番手と5番手のレッドブルはフェラーリからさらに0.3秒遅れだから、ハミルトンとメルセデスの組み合わせがいかに速いかがわかる。1周で1秒近く離されたらレースにならない。

メルセデスは、今年から予選モードの開発に本格的に取り組んだと言っていた。
だから、決勝がスタートするまでは、決勝レースは予選ほどメルセデスに差をつけられないだろうとの希望的観測があった。
決勝レースがスタートすると、ハミルトンはポールから難なくトップに立ち、ライコネンの追随を許さなかった。
ここで、ライバルチームは、今年もメルセデスが圧倒的に速いことを思い知らされる。
ハミルトンはレースの前半、必至で食らいつくフェラーリ勢を尻目に3秒前後のリードを保つ余裕を見せていた。
このままいけば、ハミルトン・メルセデスの圧勝となるところだった。
しかしメルボルンの勝利の女神はまたしてもハミルトンに微笑まなかった。
20周目にタイヤ交換を済ませたハミルトンには同調せず走り続けていたフェッテルは、バーチャル・セフティカーが26周目に出ると、絶妙のタイミングでピットインしてコースに戻り、ハミルトンの前に出ることに成功した。
フェッテルは、オーバーテイクが難しいアデレードのコースをレース後半、見事に逃げ切って勝利をさらった。

26周目のバーチャル・セフティカーは、今回予選から絶好調で中団グループのトップで快走していたハースがつまらないピットのミスで引き起こしたものだった。
このインシデントがメルセデスから勝利を奪い、フェラーリに勝利をもたらすとは・・・。

初戦の結果から、今シーズン序盤の勢力図が見えてきた。メルセデス、フェラーリ、レッドブルの3強の中ではメルセデスが一歩先を行っている。
セコンド・グループにはハース、ルノー、マクラーレンの3チームが並んでいる。
フォースインディア、ウイリアムズ、トロロッソ、ザウバーの4チームはセコンド・グループからさらに1秒前後遅れをとっている。
ボッタスは、苦手コースを無くさないと今年1年ナンバー・ツーに甘んじることになるだろう。
トロロッソ・ホンダの成功への道のりはまだまだ遠そうだ。
ホンダは、PUの信頼性をある程度確保できたのだから、パフォマンス・アップ・バージョンを早期に投入する必要がありそうだ。

次の舞台は中東に移って、バーレーンGPだ。
ボッタスは、ここで、ハミルトンを打ち負かしておく必要があるだろう。
サキール・サーキットは、ブレーキに厳しいサーキットなのでハースはメルボルンで見せた速さを生かしきれないかもしれない。
トラック・コンディションがレース中に大きく変化するトワイライト・レースに、うまく合わせていくチーム力が試される。

バーレーンGPは、1位ボッタス、2位ハミルトン、3位ライコネン、4位フェッテル、5位フェルスタッペン、6位リチャルド、7位位アロンソ、8サインツ、9位グロージャン、10位ガスリーかな。

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉