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YUKICHI OTSUKA 大塚雄吉
F1 ウォッチャー
幼少期にF1に魅せられ、50年以上にわたって、日本製のF1が出ていなくても、日本人F1ドライバーがいなくても50年以上にわたってF1を見続けてきた、F1 ウォッチャー。

Formula One(4)2010.06.25

今年のカナダGPはマクラーレン・ディだった。
マクラーレンはトルコGPでもワンツーフィニッシュを飾ったが、トルコの勝利はレッドブルの同士討ちの結果転がり込んできたものだった。
カナダではチームの総合力で勝ち取った真の勝利だ。
F1マシンのポテンシャルはいまだにレッドブルのほうが若干上かも知れないが、チームの総合力はマクラーレンの方が上だ。
ジル・ビルヌーブ・サーキットはブレーキとタイヤに厳しいサーキットなのでドライバーのブレーキの使い方とチームのタイヤ交換戦略が勝敗を決める大きな要素になる。
ドライビング面から見るとブレーキングの巧いハミルトンはみごとに予選と決勝を制した。

トルコではあまりいいところが無かったフェラーリが盛り返し、逆にメルセデスはカナダではぱっとしなかった。
アロンソとクビサは相変わらずドライバーの力によってマシンのポテンシャル以上の結果を出している。
それにしても、今年のF1は稀に見る接戦になっている。
現在ランキングトップ5のドライバーたちはほとんど差がなくレースごとに順位が入れ替わる状況が続いている。
レッドブル独走でもなくなってきているしコースによってマシンとの相性などがあるから毎レース予想が立たない。

ブレーキングはドライバーの腕の見せ所だ。
エンジンや空力性能が劣っていてもブレーキさえまともであればドライバーはコーナーの突っ込みで自身の技量と度胸の限りを尽くしてブレーキングを遅らせてライバルの前に出ることが出来る。
ハミルトンの場合は、ほんの数秒ブレーキングするときにどの程度手前でどの程度まで踏み込むかという組み合わせが絶妙なのだろう。
レッドブルは、今回カナダGPでは、何かマイナー・トラブルを抱えていたために終盤マクラーレンを追撃できなかったようだ。
ひょっとしたらブレーキ・トラブルかもしれない。
ただし、ドライバーがブレーキをうまくセーブしていないと終盤つらくなるということもあるので真相はわからない。

次は、ヨーロッパ・グランプリだ。
F1は原則1国1開催だが、その時々で、チャンピオンドライバーがいる国、複数のチームがある国などで地域名を冠したGPが国名を冠したGPとは別に見ることができる。
バブル期の岡山のパシフィックGPやシューマッハ全盛時代のドイツなどは1国2開催をやっている。
10年後には中国でアジアGPが開催されるかもしれない。
それはともかく、最近のヨーロッパGPはスペインのバレンシアで開催されている。
バレンシア・オレンジの里、バレンシアである。
ここは、公道サーキットなので、路面のミューが少なく、低速コーナーが多いのでメカニカルグリップのいいマシン(ルノー、ウイリアムズ、ロータス?)低ミュー路面が得意そうなドライバー(クビサ、ロスベルグ、リヴィツィ、フェッテル、バリチェロなど)活躍がみられるといい。

ところで、今回のヨーロッパGPはティーム・ロータスの500戦目にあたる。
名門ロータスがナショナルカラーであるブリティシュ・レーシング・グリーンにロータス・イエローストライプで今年復活したその年に500戦目が巡ってきた。
数年以内にはトップチームになってほしいと思う。
願わくばドライバーの一人は日本人で。
2010 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
学会ネット株式会社 代表

Formula One(3)2010.06.11

今年のトルコGPはF1レースの面白さを一杯詰め込んだ内容だった。
われわれ日本人にとっては可夢偉が実力を見せてくれたことが嬉しかった。
予選Q2ではシューマッハを抑えて一発勝負のフライングラップで9番手タイムをたたき出した。
Q2までに新品タイヤを使い果たしていたのでQ3では1回アタックしただけでタイムも出なかった。
スペインGPの予選と同じパターンだ。今のザウバーではこれがほぼ限界らしい。
むしろ、可夢偉は予選でマシンの実力以上の結果を出したといえる。
決勝レースでもがんばって何とか10位に食い込みザウバーに今シーズン初ポイントをもたらした。
速めにタイヤ交換をする作戦を取ったために終盤ではカーカスがのぞくほどタイヤを使い果たし、終盤はひやりとさせられた。

とはいっても、これは、あくまで日本人から見たトルコGPのハイライトだ。

本当のハイライトは、上位の4人のドライバー間で行われていた。
これまで、空力マシンだから早いと思われていたレッドブルがモナコでも速く、メカニカルグリップも良いことが分かり今シーズンはレッドブルの独走かと思われていた。
ところがどっこい、常にチャンピオン争いをしてきた強力チーム・マクラーレンが見事に盛り返してきた。
予選からこの4人(4台)は他のチームとは別次元のところにいた。
しかもそれぞれのチーム内でドライバー同士の速さが拮抗している。
とりわけ、ウエバーに2連勝を許してしまったフェッテルはグリッドのだれよりもウエバーに勝たせられない立場あった。
これが終盤でチームメイト同士のバトルに繋がった。
フェッテル自信はリタイヤ、ウエバーも3位に終わった。
マクラーレンもドライバー同士で同じようなバトルがあったが、こちらはクラッシュまでには至らずワンツー・フィニッシュを飾った。
ここ何十年もトップドライバー同士を競わせることによって多くのチャンピンシップを取ってきたマクラーレンと新興チーム・レッドブルの経験の差が出たというべきだろう。

シューマッハがマシンのポテンシャルを精一杯引き出して4位に入ったのも今後のレースを面白くしそうだ。
シューマッハの全細胞が4年前の状態に戻ったのかもしれない。
このまま行けば、最終戦にならないとチャンピオンが決まらないだろう。
メルセデスGPは着実に速くなっている。これで、7レースで5ウイナーだ。

次は、大西洋を渡ってカナダGPだ。
カナダGPが開催されるモントリオールはフランス系カナダ人の多く住むケベック州にある。
ケベック州はこれまで何度か平和的にカナダから独立する話が持ち上がったが、結局カナダ連邦にとどまっている。
だから、カナダの公用語は2つあり英語と仏語だ。
もっとも、フランスから来たフランス人によると現在のパリで話されているフランス語とは違うなまりがあるそうだ。
カナダで僕のオススメは、ケベック州の州都であるケベック・シティだ。セントローレンス川沿いのデッキと昔のフランス地方都市風の町並みが美しい。

カナダ・モントリオールでのスターは故ジル・ビルヌーブだ。フェラーリが低迷していた時代に勇敢なドライビングであのエンゾ・フェラーリを虜にしてしまったドライバーだ。
(エンゾはめったにドライバーを好きになったりしなかった)フェラーリのドライバーとなって凱旋したここでのレースで優勝してしまった。
チャンピオンにはなれなかったが多くの人に愛され感動を与えたドライバーだった。
チャンピオンになった息子ジャックよりも人気がある。スポーツは勝つことも大事だが、人々に感動を与えることに価値がある。
オリンピック跡地の人工島ノートルダム島に作られたサーキット・ド・ジル・ビルヌーブ(サーキット名はジルの名前だ)は細長い人工島に作られた長い直線とタイトなヘアピンのあるコースでなのでとてもブレーキとタイヤに厳しいコースである。
パッシングの優しいコースではない。それでも、ホンダ・エンジンを失った非力なマクラーレンを駈ったセナが1週目の2・3コーナーで4輪中3輪をダートに落として数台を抜いたことがあるし、佐藤琢磨はポテンシャルの劣るスーパーアグリのマシンでシケイン突っ込みのレイトブレーキングでマクラーレンに乗るアロンソを抜き去った事などが記憶に新しい。

今年のようにマシンとドライバーの実力が拮抗している状態で毎年荒れるカナダGPが争われるとだれが勝つか全く予想がつかない。
2010 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
学会ネット株式会社 代表