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YUKICHI OTSUKA 大塚雄吉
F1 ウォッチャー
幼少期にF1に魅せられ、50年以上にわたって、日本製のF1が出ていなくても、日本人F1ドライバーがいなくても50年以上にわたってF1を見続けてきた、F1 ウォッチャー。

Formula One 2020(7)2020.08.28

スペインGPは、ハミルトンが圧勝した。
ハミルトンは、通算88勝となっただけでなく、表彰台フィニッシュ回数もF1歴史上最多の156回となった。
フェルスタッペンは、70周年記念GPでは、メルセデスの弱点を巧みについて勝ったが、今回は優勝を狙える状況ではなく、手堅く2位を確保するしかなかった。
ボッタスは、今回も3位でゴールした。

予選からメルセデス勢の速さは他を圧倒していた。
ポールポジションのハミルトンとボッタスは僅か0.059秒差で、両者とも最高の仕上がりなだけではなく、3番手のフェルスタッペンに0.7秒の差をつけていたのだ。
レーシングポイント勢の2台も速く、予選でフェルスタッペンとアルボンの間に割って入った。
マクラーレン勢は7番手と8番手を占め、フェラーリの2台は9番手と11番手というありさまだ。

決勝レースのスタートでは、クリーンなスタートを切ったハミルトンに対して、出遅れたボッタスのスキをついてフェルスタッペン、ストロール、ペレスがポジションを上げる。
ボッタスはすぐさまペレスを抜き返すが、ストロールが蓋になって2番手のフェルスタッペンに近づけない。
ボッタスは10周目になってようやくストロールの前に出てフェルスタッペンを追うが、あまり近づきすぎると自分のタイヤを痛めてしまうので、2秒以内には差を詰めない。

20週目ごろになると、70周年記念GPの時とは逆にレッドブルのタイヤが先に音を上げ始めた。
フェルスタッペンは22周目にピットインしてタイヤをミディアムに交換、それを見て、メルセデスは、2車とも24周目にミディアム・タイヤに交換する。
フェルスタッペンはピット作業の速さのおかげでハミルトンとのギャップを2秒縮めるが、ハミルトンに追いつくことができないという状況は変わらず、ハミルトンとのギャップはじりじりと開き始める。

70周年記念GPよりは路面がスムースであるとか、タイヤも耐久性のあるとはいうものの、メルセデスは暑さに対応したレースをしっかり練ってきていた。
上位の3台は、このままの順位でレースを終えることになったが、このレースのもう一つのハイライトはフェッテルだった。
スタートしたミディアムタイヤで30周目まで引っ張ったフェッテルは、残りの36周をユーズドのソフトタイヤで走り切ったのだ。
終盤、使い切ったタイヤで走っていたためにつー・ストップのストロールとサインツに抜かれたが、7位を守り切ってゴールしたのだ。
4回ワールドチャンピオンを獲得したフェッテルの技術と意地を見せてもらった感じだ。タイヤに優しいフェラーリだったことも幸いしたかもしれない。

次は、ベルギーGPだ。
名うての高速コース、スパ・フランコルシャンはPUの強いチームが有利だ。
レッドブル・ホンダにとっては試練のレースとなる。
メルセデスは言うまでもなく、レーシングポイントにも先を行かれる危険性がある。
ただし、風の流れが速く、スパ・ウエザーと言われる猫の目天気になれば、レッドブルにも勝機は出てくる。

ベルギーGPは、1位フェルスタッペン、2位アルボン、3位ボッタス、4位サインツ、5位ガスリー、6位ハミルトン、7位フェッテル、8位ルクレール、9位ノリス、10位ペレスかな。

2020 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉

Formula One 2020(6)2020.08.14

フェルスタッペンが、70周年記念グランプリを完璧なレース運びで走り切って優勝した。
フェルスタッペンは、4番グリッドからスタートしたが、すぐさま3番手にあがり、ボッタスとハミルトンの背後でいつでも前に出られる状態を保ちながら走っていた。
先行するメルセデス勢は、両車ともミディアムタイヤを履いていたが、6週目あたりからタイヤが厳しくなり始めた。
上位陣の中で、唯一ハードタイヤでスタートしたフェルスタッペンは、タイヤをうまくマネジメントして走っていたので、なんの問題もなかった。
フェルスタッペンは、2番手ハミルトンの1秒後を走行していた11周目、ピットからは、ハミルトンに近づきすぎてタイヤの温度を上げないようにとの無線が飛んだ。
これに対して、フェルスタッペンは、「今が、メルセデスに追いつく唯一のチャンスだ」「おばあちゃんみたいに座っているわけにはいかないよ。」と無線を返し、メルセデスとの距離をさらに詰めてタイヤの厳しいメルセデス勢にプレッシャーをかけて追い込んだ。
ボッタスが14周目に、ハミルトンが16周目に、たまらずピットインして、ハードタイヤに交換する。
フェルスタッペンは、ハードタイヤ・スタートなので、そのまま走行を続け、トップの座を手に入れた。

25周目になっても、フェルスタッペンはタイヤ交換をせずに、ハードタイヤで快調にラップを重ねる。
フレッシュなハードタイヤに交換してフェルスタッペンを追撃するはずのメルセデス勢は、23周目からハードタイヤにブリスターが発生し、ずるずる後退していた。
この時点で、2番手のボッタスはフェルスタッペンに17秒以上の差をつけられていた。

フェルスタッペンは、27周目に、ピットインしてミディアムタイヤに履き替える。
ピットを出たときに僅かにボッタスの先行を許すが、ブリスターの出たハードタイヤを抱えるボッタスは、フレッシュなミディアムタイヤを履くフェルスタッペンの敵ではなく、僅か数コーナーで抜かれてしまった。

その後、33周目に、ボッタスとフェルスタッペンが同時に、ピットインしてハードタイヤに交換して、ハミルトンが一時トップに立つが、42周目にはピットインしてハードに交換したため、フェルスタッペンは、トップに返り咲き、ボッタスの8秒前で解消にh知り続ける。
44週目まで、ブリスターの出たハードタイヤで引っ張ったハミルトンは、残り8周をフレッシュなハードタイヤを利用して、ボッタスから2位を奪い、ファーステストラップを記録してレースを終えた。勝ち目のないフェラーリを駆ってワンストップで走り切ったルクレールが望外の4位を手に入れた。

70周年記念グランプリで、レッドブル・ホンダはチーム力のすごさを見せつけてくれた。
ハンガリーGP後には、各チーム、メルセデスとの圧倒的なパフォーマンスの差に呆然としていた。
しかし、レッドブル・ホンダは、何とかメルセデスを倒す方法を探っていたのだ。
ホンダは、早々と2機目のPUを投入した。昨年とっていた、プラクティスと予選・決勝で、古いPUと新しいPUを使い分けて、決勝で、パフォーマンスの高いPUを使えるようにする戦略だ。

レッドブルのシャシーは、レースを経るごとに風に対する嫌な敏感さがなくなるように改良されているのは明らかだ。
タイヤにも優しい。メルセデスの快進撃を見て、レッドブル流ハイ・レーキ空力コンセプトの時代は終わったと言っていたのは誰だ? 
ハイ・ダウンフォースのメルセデスは、路面温度は高いと相変わらずタイヤに厳しいことが露呈した。
チームは予選タイムより決勝レースを重視して、タイヤに優しいセッティングをする決断をした。

そして、フェルスタッペンは、ハードタイヤで予選Q2を突破し、決勝をハードタイヤでスタートできるようにして、チームが立てた作戦を実行可能にした。
しかも、決勝レース重視のセッティングでもスターティング・グリッド2列目を確保した。
フェルスタッペンは、決勝の走りも、ペースを保つところと勝負どころで攻めるタイミングをわきまえた見事なものだった。

次は、スペインGPだ。
カタルーニャ・サーキットは、シーズン前テストが行われる場所なので、各チーム、多くのデータを持っている。
しかし、シーズン前テストは2月なのに対して今は8月だ。
もともと温暖な地域であるところに来て、今年は新型コロナ・ウイルスのせいで、本来ならF1の夏休み期間中に開催されるので、晴れればシルバーストーン同様、路面温度は相当高くなるだろう。
スペインGPは、70周年記念グランプリより1段硬めのブリティッシュGPと同じタイヤで争われることになるのは、メルセデスにとっては、小さな幸いだ。
このところ、ノリスばかり目立っているマクラーレンのサインツは、ホームGPでいい結果を出してもらいたい。

スペインGPは、1位フェルスタッペン、2位ハミルトン、3位アルボン、4位ボッタス、5位ガスリー、6位リチャルド、7位フェッテル、8位ルクレール、9位サインツ、10位ペレスかな。

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉

Formula One 2020(5)2020.08.07

ハミルトンがブリッティシュGP通算7勝目を挙げた。
ハミルトンは、決勝レースを通じて首位を独走していたが、ファイナル・ラップにタイヤがバーストし、左フロント・タイヤを引きずりながら辛くもゴールラインを横切った。

2番手を走っていたボッタスは、ゴールまであと2周というところでタイヤがバーストし、長い道のりをピットまで戻ってきた。
メルセデスチームには緊張が走り、ピットからハミルトンにできる限りタイヤをいたわってゴールまでたどり着くようにとの指令が飛んだ。
しかし、ハミルトンのタイヤはゴールまでもたず、ファイナルラップの途中でバーストしてしまった。
単独の3番手を走り続けていたフェルスタッペンは、ボッタスのタイヤがバーストしたのを見て取って、ソフトタイヤでファーステストラップを獲りに行った。
ハミルトンのタイヤもバーストしたことで、後から考えるとフェルスタッペンはタイヤ交換せずに走り続けていれば優勝できたかもしれない。
しかし自車のタイヤもバーストしていれば1ポイントも取れなかったかもしれない。
フェルスタッペンから30秒以上離されて4番手を走行していたルクレールは運良く3番手に浮上し、オーストリアGP以来の表彰台に立つことができた。
ボッタスは、何とかコースに戻ったが11位でレースを終えた。

シルバーストーンでもメルセデスは決勝のゴール2周前までは圧倒的に週末を支配していた。
唯一メルセデスに対抗できそうなのはレッドブルであったが、そのレッドブルでさえ、フェルスタッペンの予選タイムはハミルトンよりも1秒以上遅かった。
レッドブルはシルバーストーンに空力アップデートを持ち込んでいたが、メルセデスに迫るには不十分だった。
決勝レースでのメルセデスとレッドブルのタイム差は予選ほどではないが、それでも0.5秒以上はありそうだ。
決勝のラップ・タイム差が0.2秒以下にならないと真っ向勝負は挑めない。

それでも、今回のブリティッシュGPでは、勝利を得るためには多くの要素が絡んでいて、どれか一つ欠けても勝利には結びつかないというF1の面白さを象徴するようなレースだった。

1986年のF1最終戦、オーストラリアGP、当時、最高出力1500馬力と言われた無敵のホンダ・ターボを積むウイリアムスに乗るナイジェルマンセルは、予選から決勝まで圧倒的な速さを見せていて、最終戦の優勝は誰の目にも明らかだった。
ところが、そのマンセルがレース終盤にタイヤバーストに見舞われてリタイヤしてしまい、最終戦の勝利もその年のチャンピオンシップも逃してしまった。
その時、優勝してチャンピオンの座もさらっていったのがアラン・プロストだった。
プロストは、圧倒的に速いマンセルを無理に追わず、タイヤをいたわりながら、淡々と後を追っていた。ゴール直後にマシンを止め、マシンから降りるなりタイヤを見つめていたプロストが印象的だった。
シルバーストーンでルノーのピットにいたプロストは、今年のブリティシュGPの結末をどう見ていたのだろう。

今週末のF1は、先週末と同じシルバーストーンで、70周年記念グランプリとして開催される。
先週と違う要素は、タイヤがよりソフト目に設定されるということだ。
先週より路面温度が高くなり、タイヤ・コンパウンドがソフトになれば、タイヤ・トラブルが増えることも考えられるが、逆に、1セットのタイヤでこなせる周回数は短くなるから、ハードタイヤで多くの周回数をこなす必要がなくなり、ピットイン回数は増えるがタイヤ・トラブルは減るかもしれない。
どちらかといううと、タイヤを持たせる技術よりも、ソフトタイヤで速く走れるドライバーのほうが有利かもしれない。
英国特有の雨が絡めばまたストーリーは変わってくる。

ブリティッシュGPは、1位ハミルトン、2位フェルスタッペン、3位ボッタス、4位アルボン、5位ペレス、6位フェッテル、7位ガスリー、8位ルクレール、9位リチャルド、10位サインツかな。

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉