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YUKICHI OTSUKA 大塚雄吉
F1 ウォッチャー
幼少期にF1に魅せられ、50年以上にわたって、日本製のF1が出ていなくても、日本人F1ドライバーがいなくても50年以上にわたってF1を見続けてきた、F1 ウォッチャー。

Formula One 2015(17)2015.10.30

ハミルトンはアメリカGPで優勝して2015年のワールドチャンピオンとなった。
2位にはロスベルグが3位にはフェッテルが入った。
ロスベルグにもフェッテルにも優勝するチャンスはあったが、結局、最後に勝利を引き寄せたのはハミルトンだった。
フェッテルは予選でレッドブルの後塵を拝し5番手で、更にニューPU投入のグリッド降格が加わり、14番グリッドからのスタートだった。
しかし、そこはフェッテル、前半のセフティカーとタイヤ交換戦略で優勝できそうなところまで持っていった。
残念ながら、終盤にセフティカーが入ったことでハミルトンとロスベルグのタイヤ交換ロスタイムが短縮され、リードマージンがなくなってした。
そうなると、雨中とは言え予選で1.8秒も離されているメルセデスを相手に首位の座を守りきるのは不可能だ。
ロスベルグは今回も予選でポールポジションを獲った。
鈴鹿から3連続ポールだ。ロシアではピットから嫌がられながらも何度もスタート練習をして弱点を克服しようと努力していた。
残念ながら、今回はフリー走行と予選が大雨に見舞われたため、入念にスタート練習をする機会を失ってしまった。
しかし、終盤にプレッシャーから小さなミスを犯して、優勝をハミルトンにさらわれてしまっただけでなく、早々とチャンピオンの座を謙譲するはめになった。
それより少し前の周で、ハミルトンはロスベルグにイン側から並びかけ、ロスベルグをコーナーのアウト側へ押し出すような動きを見せたが、ペナルティを受けなかった。
ここでも、紳士的なロスベルグと勝つためにはボーダラインの外側に半分足を出しても前に出ようとするハミルトンの違いが如実に現れていた。
フェルスタッペンも似た動きをする。

フェルスタッペンは、トロロッソでレッドブルを出し抜く速さを見せて4位でゴールした。
トロロッソはサインツも7位に入った。
ペレスは、予選6位ながら、決勝では苦しい戦いをしていたが、結局5位でゴールした。
マクラーレン・ホンダのアロンソとバトンは中盤には5位と6位を走っていた。
終盤になってアロンソはPUの不調が出たため後退した。
バトンは、今回、旧型のPUながら得意とするセミ・ウエットの路面で絶妙なドライビングを見せて、ポジションを6位まであげていた。
しかし、路面が乾き始めるとブレーキングの巧さによるアドバンテージがなくなり、後退せざるを得なかった。
それでも、終盤にセフティカーが入ったところでフレッシュなドライ・タイヤに履き替え、タイヤ・アドバンテージをフルに活用して6位まで持っていった。
アメリカGPは、ドライバーの力が前面に出た面白いレースだった。

次は、北米を少し南下してメキシコに入る。
メキシコGPが開催されるのは1992年以来で23年ぶりだ。
エルマノス・ロドリゲス・サーキットは2300メートルの高地にある。
自然吸気エンジンの場合は空気が薄いのでかなり出力が落ちるがターボエンジンは空気を圧縮するので出力ダウンを最小限に抑えることができる。
かつては高地にあわせたエンジンの調整が鍵になった。
ホンダF1がこの地で初優勝したのも高地に合わせたエンジン調整の賜物だったといわれている。
しかし、空力的に研ぎ澄まされた現代のF1に薄い空気がどのように影響するかは未知数だ。

サーキットは近代F1に適合すべく大幅に改修された。
ここでのヒーローは言うまでもなくペレスだ。
情熱的なメキシコ人ファンの応援の後押しを受けて快走してほしい。
最近身に着けた冷静さは失わずに。

メキシコGPは、1位ロスベルグ、2位フェッテル、3位ペレス、4位アロンソ、5位ボッタス、6位バトン、7位ヒュルケンベルグ、8位リチャルド、9位サインツ、10位フェルスタッペンかな。

2015 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
学会ネット株式会社 代表

Formula One 2015(16)2015.10.23

ロシアGPもハミルトンが勝った。
2位に入ったフェッテルは、予選4番手と決勝スタートでの後退を、絶妙のタイヤ交換タイミングとしぶとい走りでカバーして鈴鹿の借りを返した。
優勝する目のないこのレースで、フェッテルは51周目に最速ラップをたたき出して、このレースの何よりの喜びとしていた。
3位には、激戦を大どんでん返しで制したペレスが入った。
ペレスは、後2周でゴールというところで、ボッタスとライコネンに抜かれた。
最終ラップで、更にボッタスを抜こうとしたライコネンがボッタスと接触したためにペレスが表彰台の一角を勝ち取ったのだ。
ペレスは、長いステイントをいいペースで走っていたので、棚ぼたではなく3位表彰台に値する。
デビュー当初からタイヤマネジメントに卓越しているペレスの良いところが前面に出た結果だった。
4位にはマッサが入り、ライコネンは5位でゴールしたがボッタスとの接触ペナルティで8位に降格、5位にはホーム・レースのクビアトが昇格した。
クビアトは予選が振るわなかっただけに、ホームで結果が出せてよかった。
ナスレは6位、マルドナドは7位だった。
大健闘のバトンとアロンソが9位、10位に滑り込んだ。
(アロンソはレース後にペナルティで11位になりフェルスタッペンが繰り上がった)

レース中にグロージャンのロータスがコースオフして大破したが、ドライバーズ・シートまで破損するクラッシュにもかかわらずグロージャンは無事だった。
大きな事故の場合、マシンの損傷が大きいほどドライバーへのダメージは少ないことが多い。
これはクラッシュ時に突然ゼロになる運動エネルギーがマシンを破壊するエネルギーとして使われるからだ。
マシンの破壊に使われるエネルギーが少ないとそのエネルギーはどこかに行くわけで、その一部がドライバーに行くことになる。現在のF1はかなり安全になったが、バッテリーなどの容量は多くなっているはずなので電気面の安全対策を今以上に考えておく必要があるだろう。

ところで、ホンダとルノーにとって良かったのは、2016年以降のパワーユニット開発制限が少し緩和されたことだ。
改良できる部分が広がったことと、シーズン中の変更も可能になった。
それでもメルセデスとホンダの持っているデータ量の差は10倍近いだろうからホンダPUがメルセデスPUを上回れるようになるのは早くても2017年からだろう。

シーズン終盤の3連戦はアメリカ大陸に移る。
3連戦の初戦、アメリカGPの行われるオースティンのコースはアメリカン・オーバルではなく、自然の起伏を利用したヨーロピアン・スタイルのコースだ。
シンガポールから参戦しているロッシは8年ぶりのアメリカ人F1ドライバーだ。マノーでは上位を望めないが、健闘を期待したい。
ロシアで活躍したペレスは次のメキシコGPを待ちきれないメキシコ人ファンがオースティンに押しかけるだろう。
ロシアでFPを走らせたホンダのニューエンジンを使うアロンソは期するものがあるはずだ。
週末は悪天候が予想されているから、フェッテルとバトンあたりが意外な好成績を残すかもしれない。
(フェッテルはニューPU投入で10グリッド降格予定)

アメリカGPは、1位ロスベルグ、2位ライコネン、3位フェッテル、4位リチャルド、5位アロンソ、6位マッサ、7位バトン、8位ヒュルケンベルグ、9位サインツ、10位ナスレかな。

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Formula One 2015(15)2015.10.09

ハミルトンは2位ロスベルグに19秒近い差をつけて日本GPを制した。
これで2015年のチャンピオンはハミルトンに決まったようなものだ。
最終戦までシンガポールのようなスロー・コースはないし、紳士的なロスベルグは、何が何でもチャンピオンを獲りにいくという気迫にかけるからだ。
フェッテルは3位に入ったが、ピットインのタイミングにもう少し工夫があれば2位も可能だった。
シンガポールGPで、フェッテル・フェラーリが実力で優勝したときはシーズンの終盤は面白くなるかもしれないと期待したが、1レース限りのことだったようだ。

今回もピレリは高いタイヤ内圧を指定してきたが、パワーがものを言う鈴鹿ではメルセデスの行く手を阻むことはなかった。
4位にはライコネン、5位ボッタス、6位ヒュルケンベルグと続き、7・8位にはロータスの2人、9位・10位にはトロロッソの新人2人が入った。

アロンソは、ホンダのホーム・レースで大きなスペイン国旗とアストゥリアス州の旗まで掲げて応援してくれる日本のファンに応えるべく奮闘した。
バック・ストレートでもホーム・ストレートでも蓄積したエネルギーが途中で切れてしまい、ストレートエンドで簡単に抜かれてしまうホンダPUを補うために渾身のコーナリングで立ち向かったが、ドライバーの腕でカバーできる範囲を超えていた。
レース中に、アロンソが思わず「これじゃGP2のエンジンだ」と叫んだが、ドライバーとしてこれ程辛いことはなかったのだろう。
F1に上がって来たばかりのルーキー・ドライバーだったら、F1に乗れるだけでうれしいだろうし、自分もミスをするから遅いのはマシンのせいばかりでもない。
予選や荒れたレースで速いところを見せれば次の年はよりよいチームで走れるかもしれない。
しかし、アロンソやバトンは違う。
彼らは、トップチームにいてチャンピオンを獲ったことのあるドライバーで、キャリヤの最後にもう一度チャンピオンの栄光を手にしたいと思って走っているのだ。
ちょうど、1987年ホンダの最初のホーム・グランプリで逆のことがあった。
当時、予選仕様では1500馬力出ているとされた強力なホンダ・ターボを搭載するロータスがオーバーテイク・ブーストを使ってホーム・ストレートを駆け抜けていく中、抜かれたマシンに乗るドライバーは燃料を持たせるため直線の後半は惰性で走っていたのだ。
当時は無線がなかったからコックピットでなんとつぶやいていたか分からないが、ドライバーとしては悔しかったに違いない。

現在のF1パワーユニットの開発レギュレーションでは、シーズン中に大幅な改良ができないから、シーズンオフの間にどれだけ的をついた改良を施せるかにかかっている。
2015年のシーズン前テストまでの時間は僅か4ヶ月だ。ホンダのエンジニアたちには、1964年シーズン・オフの時のようにがんばってもらいたい。

次は、開催2年目となるロシアGPだ。
ソチの冬季オリンピック会場を取り巻くコースで、ほぼ真円の4分の3になっている2・3・4コーナーが特徴的だ。
ここでもメルセデスが優位なのは変わりがないだろうが、鈴鹿よりは一周のラップタイムが長いので、コーナリング・マシンのレッドブルがどの程度の速さを見せるか楽しみだ。
ホーム・グランプリのクビアトはマシンさえ壊れなければ、良い結果を出して見せるだろう。

ロシアGPは、1位ロスベルグ、2位クビアト、3位フェッテル、4位リチャルド、5位ライコネン、6位マッサ、7位ヒュルケンベルグ、8位アロンソ、9位バトン、10位サインツかな。

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