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YUKICHI OTSUKA 大塚雄吉
F1 ウォッチャー
幼少期にF1に魅せられ、50年以上にわたって、日本製のF1が出ていなくても、日本人F1ドライバーがいなくても50年以上にわたってF1を見続けてきた、F1 ウォッチャー。

Formula One 2019(11)2019.07.26

ブリティッシュGPは、ハミルトンが6度目の優勝を飾った。
ボッタスが2位でゴールしたので、メルセデスは今シーズン7回目のワンツー・フィニッシュを決めたことになる。
3位にはルクレールが入った。
結果だけを見るとハミルトンがいつものように地元GPで快勝したように見えるが、決して、メルセデスの圧勝と言えるレースではなかった。

今シーズン第10戦にして、ようやく、トップ3チームの実力が接近してきたのは、予選の段階から明らかにだった。
昨年までなら、パワー・サーキットであるシルバーストーンでは、メルセデスが予選から他を圧倒していた。
特に、ハミルトンは、ホームコースのシルバーストーンでは、予選から決勝まで常に最速だった。
ところが、今年、ポールポジションを獲ったのはチームメイトのボッタスであり、ハミルトンは予選2番手に甘んじた。
それよりも驚いたのは、ポールポジションのボッタスから予選4番手のフェルスタッペンまでのタイム差が僅か0.183秒しかなかったことだ。
予選結果から見ても、メルセデス・ハミルトンの独走とはなりそうにないのは明らかだった。

決勝のスタートで、ハミルトンはボッタスの前に出ようとしたが、ボッタスは譲らずトップの座をキープすることに成功した。
ボッタスのあとには、ハミルトン、ルクレール、フェルスタッペンが続いた。
ハミルトンはしばらくボッタスとトップを争ったあと、ボッタスに近づき過ぎるとPUとタイヤのクーリングに問題が生じるから少し下がって、PUトタイヤに無理をかけないようにしていた。
この動きが勝敗に影響をもたらすことになる。

スタート時点で、メルセデス勢とレッドブル勢はミディアムタイヤを履いていたが、ソフト・タイヤでスタートしたルクレールが13周目にピットインしてミディアム・タイヤに交換したのを見て、ボッタスは16周目にピットインしてミディアム・タイヤに交換した。
(レース中に必ず2種類のタイヤを使用しなければいけないから、ボッタスはレース中にもう一度ピットインをして、ミディアム以外のタイヤに交換する必要がある)
ここで、ハミルトンはピットインせず、ミディアム・タイヤで走り続けた。
ところが、ボッタスのタイヤ交換ら僅か4周後、ジョビナッツィが単独スピンしたのを受けてセフティカーが出動した。
ハミルトンは、この間にピットインして、新品ハード・タイヤとトップの座を手に入れてしまった。
そこからは、ハミルトンがゴールに向かってクルージングするだけだった。
ボッタスが16周目にタイヤ交換をせずに、あと4周走っていれば、ボッタスが勝っていたかもしれない。

レースの結果はともかく、今回のブリティッシュGPはシルバーストーンの各所で接近戦が見られて面白いレースだった。
中でも、ボッタスとハミルトンの序盤のトップ争いとルクレールとフェルスタッペンの3番手争いは見ごたえがあった。
前回のオーストリアGPからレース・スチュワートがコース上のバトルに寛容になったことによって、ドライバーたちが積極的にコース上でポジション争いをするようになった。
ルクレールは、今回、許容範囲ぎりぎりのところでフェルスタッペンを合法的ににブロックして、オーストリアの借りを返した。レース後、ルクレールは、フェルスタッペンとのバトルはとても楽しかったと話している。なんと、健全なモーターレーシングだろう。

次は、F1GP全21戦の折り返し点、第11戦ドイツGPだ。
ホッケンハイムは、かつて、直線主体の高速コースだったが、近代F1的コースに改修されてからは高速セクションとテクニカル・セクションからなるバランスの取れたコースになった。
パッシング・ポイントのコース幅が広いことも特徴の一つだ。

シーズン後半を迎えて、トップチーム間の開発競争がますますヒートアップしている。
メルセデスは、ホームGPに大幅な空力アップデートを持ち込んで、直線でのスピード不足とPUの冷却問題を改善しようとしている。
フェラーリは、直線では速いがコーナーでは遅いことと、ソフト・タイヤの劣化が早いという問題を解決しなければならない。
レッドブル・ホンダは、予選の速さが足りないところをPUチューニングによって克服する必要がある。 
後半のグランプリは、チーム間の開発競争の結果としてレースの方程式が変わり、思わぬ結果を演出してくれることを期待する。

フェッテルとヒュルケンベルグにとってはホーム・グランプリとなる。
ドイツGPは1位フェルスタッペン、2位ガスリー、3位フェッテル、4位ハミルトン、5位ボッタス、6位ルクレール、7位ヒュルケンベルグ、8位リチャルド、9位ノリス、10位ライコネンかな。

2019 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉

Formula One 2019(10)2019.07.12

オーストリアGPは、フェルスタッペンが劇的な優勝を飾った。
メルセデスの連勝を止めたのはレッドブルとフェルスタッペンだった。
2位には、ゴール2周前までトップを走り続けたルクレールが入った。
我慢のレースを強いられたボッタスは、トップから19秒遅れの3位でゴールした。

今年のオーストリアGPは、F1が現行のターボ・ハイブリッド規定になってからのベストレースだったのは間違いない。
フェラーリのルクレールの速さはフリープラクティスから際立っていて、予選でも難なくポールポジションを獲った。
メルセデス勢は、以外にもフランスGPのような圧倒的な速さがなかったが、ハミルトンが一発の速さを見せて、予選2番手のタイムを出した。
フェルスタッペンはFP2の走行中に後ろからの風の影響でスピンし、マシンが壊れたため、予選までに充分な走り込みができなかったが、予選3番手のタイムをたたき出した。
ボッタスは、4番手タイムだった。
ただし、ルクレールの決勝タイヤはソフト、フェルスタッペンとメルセデス勢はミディアムとなっていた。

決勝レースのグリッドには、ハミルトンがペナルティで3グリッド降格となったため、ルクレール、フェルスタッペン、ボッタス、マグネッセンの順にならんだ。
決勝レースは、ポールのルクレールがうまくスタートを決めて先行したが、フェルスタッペンは、クラッチをアグレッシブに繋ごうとしたのか、アンチストールが作動してしまい、大きく出遅れて8番手まで後退してしまった。
フェルスタッペンのレースはこれで終わったかと誰もが思った。
しかし、フェルスタッペンが主役のドラマはここから始まった。
すぐさま追い上げを開始したフェルスタッペンは、5周目までにはガスリーを抜いて7番手、8周目にはノリスを抜いて6番手、9周目にはライコネンを抜いて5番手まで浮上した。
ソフト・タイヤでスタートしたフェッテルとルクレールはそれぞれ21周目と22周目にハード・タイヤに交換する。

ミディアム・タイヤでスタートしたフェルスタッペンは31周目まで引っ張った結果、35周目には4番手まで浮上する。
フェルスタッペンは、追撃の手を緩めず50周目にはフェッテルを下し、56周目にはついにボッタスを抜き去って2番手に浮上する。
この時点で、ルクレールとフェルスタッペンの差は約5秒あった。
フェルスタッペンは、1周につき0.5秒づつ追い上げないと、トップを走るルクレールを捕えることができない。
しかし、ルクレールもペースを上げたため、1周当たり0.2秒しか差が縮まらなくなった。
59周目、レッドブルのピットからフェルスタッペンに対して、エンジンのモード11、ポジション5に変更して、フル・パフォーマンスでゴールまで走れとの無線が入る。
ここからの、フェルスタッペンは1周0.5秒以上のペースでルクレールとの差を詰め、67周目には、背後まで迫った。
フェルスタッペンは、69周目にルクレールを仕留め、そのまま2.7秒差をつけてゴールラインを横切った。

では、フェルスタッペンは、スタート直後に8番手に落ちながら、開幕以来の8連勝のメルセデスをなぜ破ることができたのか?

第1に、フェルスタッペンは予選の一発の速さに加えて、決勝でも常に速いラップを刻むことができる上に、鋭いパッシングという武器を持っている。
しかし、フェルスタッペンの持つだれよりも強いスキルは、レースに勝つことを決してあきらめないことだ。

第2に、メルセデスは、コースによっては、オーバーヒートするぎりぎりのところまで追い込んでマシンを作っていること。メルセデスは、トップを快走していない限り、バーレーン、オーストリア、ハンガリー、メキシコ、ブラジルなどのコースではオーバーヒートに陥りやすく、フル・パフォーマンスで走ることができない。

第3に、レッドブルの空力が改善されたこと。レッドブルは、フランスGPから僅か1週間で新しいフロントウイングとノーズを用意してきた。
(1台分しか間に合わなかったが)これが、レッドブルリンクのターン1〜ターン4の圧倒的な速さを実現し、フェルスタッペンのパッシングを容易にした。
そして、第4に、ホンダのエンジニア達がフェルスタッペンと同じ気持ちを持って、レースを戦っていたこと。
フェルスタッペンがルクレールに追いつき追い越すために、どうしても必要だったPUの出力アップを、レース終盤にパフォーマンス・モードを解禁して勝ちに行ったことだ。

この4つの要素うちどれが欠けても、メルセデスとフェラーリを実力で下した、今回の、フェルスタッペンの大逆転勝利はなかった。

次は、第10戦ブリティッシュGPだ。
F1が最もF1らしく高速で自由に走り回れるシルバーストーンでのレースは今年限りになる公算が高い。
ここでは、メルセデス・ハミルトンが絶対本命だが、マクラーレンでレッドブル陣営に迫るタイムを出せるノリスとウイリアムスで頑張っているラッセルにとってもホーム・レースだ。
今年のブリティシュGPは、直線の速いフェラーリと空力がはまり出したレッドブルがどこまでメルセデスに迫れるかが見ものだ。

ブリティッシュGPは1位ハミルトン、2位ルクレール、3位フェッテル、4位フェルスタッペン、5位ボッタス、6位ガスリー、7位ノリス、8位リチャルド、9位グロージャン、10位ライコネンかな。 

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