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YUKICHI OTSUKA 大塚雄吉
F1 ウォッチャー
幼少期にF1に魅せられ、50年以上にわたって、日本製のF1が出ていなくても、日本人F1ドライバーがいなくても50年以上にわたってF1を見続けてきた、F1 ウォッチャー。

Formula One 2012(11)2012.07.27

ドイツGPは、アロンソが今期3勝目をあげた。
レッドブルが新たなルールブックの抜け道を見つけて速くなり、マクラーレンは大幅なアップデートが機能し、フェラーリはコース上最速のマシンでなかったにもかかわらず優勝してしまった。

アロンソは金曜日からの3日間を完璧にこなした。
終盤猛追した2位のバトン、3位のライコネン、5位のフェッテルを寄せ付けなかった。
まず、雨の予選できっちりポールポジションを取り、優勝を狙えるポジションを確保した。
決勝レースでは2位との差を1秒プラスアルファに保つことによってDRSを使って抜かれるのを防ぎつつ、できる限りタイヤの負担を減らしてブリティシュGPの二の舞にならないようにしていたのだ。

可夢偉は決勝ですばらしい走りを見せた。
特に、レース後半はファーステスト・ラップを連発しながら順位を上げていった。
終盤はライコネンとの差がかなりあったので毎周0.5秒づつ速くても追いつかないなと思われたが、フェッテルが20秒ペナルティを受けたおかげでフェッテルと20秒以内にいた可夢偉は4位になった。
追撃の手を緩めなくて良かったのだ。
予選順位がもっと上のほうだったらと悔やまれる。
今回も予選中雨が激しくなったときに真っ先に出ていればもう少し予選順位は上がったかもしれない。
もっとも可夢偉の話だと、どちらにしてもインターミディエイト・タイヤとのザウバーのマシンは相性が良くなかったらしいが。

シューマッハは終盤3回目のタイヤ交換をしたために7位に終わった。
タイヤを交換したおかげでレースのファーステスト・ラップを記録した。
シューマッハは少ない燃料でタイヤのことを気にせずに全レース予選並みの速さで走りたいのだろう。

ドイツGPでピレリはミディアム・タイヤ、ソフト・タイヤとも安定していた。
ハンガリーでもドイツと同じコンビネーションでタイヤが供給される。
ドイツGPは比較的タイヤによる不確定要素が少なかった。
しかし、ハンガロリンクでは気温と路面温度が高くなればタイヤに振り回されることになりそうだ。

ハンガリーGPの行われるハンガロリンクは1週4.3Kmの短く中低速コーナーの多いコースで抜き場がないから、予選が極めて重要になる。
今年は厄介なことに金曜日と日曜日が雨で土曜日が晴れの予報となっている。
予報どおりなら、予選は晴で決勝は雨ということになる。
バトンはハンガロリンクを得意としている。
決勝で雨が降ったり止んだりになれば、バトンの得意技が発揮されることになるだろう。

アロンソはシーズン前半で2位ウエバーに34点のチャンピオンシップポイント・リードを築いた。
接近した今年のF1においては意外に大きなポイントリードと考えることもできる。
いいときも悪いときもポイントを取る(22戦連続ポイント獲得中)アロンソ相手にこの差をひっくり返すのは簡単ではない。しかし、まだ10戦残っているのも確かだ。

ハンガリーGPは1位バトン、2位アロンソ、3位ハミルトン、4位フェッテル、5位可夢偉、6位ロスベルグ、7位ペレス、8位ライコネン、9位グロージャン、10位ウエバーかな。

2012 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
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Formula One 2012(10)2012.07.20

ブリティシュGPは、ラスト4周でアロンソからトップを奪ったウエバーが優勝した。
ウエバーはモナコ以来の今期2勝目だ。
雨の予選をうまく乗り切りポールをとったアロンソだったが決勝は2位に終わった。
フェッテルは予選・決勝ともウエバーに歯が立たず3位でフィニシュした。
マッサは久々に良い走りを見せて4位に入った。
フェラーリが乗りやすくなったこともあるだろうが、やはりマッサは高速コースが得意だ。
5位と6位にはロータスのライコネンとグロージャンがはいった。
シューマッハは予選で3位に入る健闘をみせたが決勝では6位に終わった。

期待はずれだったのはマクラーレンとザウバーだ。マクラーレンはデータ、資金力、経験のあるトップチームで今回はホームグランプリだから良いパフォーマンスを見せるだろうと思われていた。
ところが、予選・決勝を通じて全くいいところがなく決勝で8位と9位にはいるのがやっとだった。
まるで今シーズン序盤のフェラーリと立場が入れ替わってしまったかのようだ。
マクラーレンはマシン開発の方向性を見失っているのだろうか。ザウバーは予選上位に入ることの可能なマシンでありながら、予選Q2が再開された時、完全なウエット路面だったのにインターミディエイトを履かせてコースに出すという失態を演じたために予選上位を逃している。
ザウバーはこれが決勝の結果にまで響いた。

ピレリはブリティシュGPから新しいコンパウンドのハードタイヤを投入した。
これまで不評でタイヤ交換義務のためにだけ使われていた印象の強かったハードタイヤはやっとソフトタイヤとのコンビネーションで使えるようになったようだ。
ドイツGPはソフトとミディアムのコンビネーションなのでタイヤ的には安定したレースが見られる可能性が高い。
もっとも予選晴れ、決勝雨などとなると全く状況は変わってしまうが。

今年のドイツGPはホッケンハイムで開催される。
現在、破産の危機に見舞われているニュルブルクリングとの隔年開催になっている。
もともとは森の木立の中を長い直線が走るサーキットで主にF2レースが催されていた。
スコットランド人の天才F1ドライバージム・クラークが雨のF2レース中に事故で死亡してしまった。
ロータスはジムクラークの死を悼んで市販スポーツカーのエンブレムをしばらくの間黒地にしていた。
2002年からはロング・ストレートがカットされた新コースとなったので安全になったが、ハイスピード・バトルは見られなくなった。新設部分は幅が広いのでパッシングもやりやすい。

最近、予選での速さが目立ち始めたシューマッハはここホッケンハイムを得意としている。
シューマッハが絶対王者として君臨していた時代はレース中の給油が許されていた。
当時サイボーグといわれるぐらいの体力を維持していたシューマッハはレース中に3回ピットストップを行い、全スティントを予選並みの速さで走っていた。
しかし今のF1は満タンでスタートしてゴール前には100Kg以上軽くなったマシンで戦わねばならない。

ドイツGPは1位シューマッハ、2位アロンソ、3位フェッテル、4位ロスベルグ、5位ライコネン、6位可夢偉、7位グロージャン、8位ウエバー、9位ハミルトン、10位セナかな。

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
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Formula One 2012(9)2012.07.06

ヨーロッパGPでアロンソは今期二度目の優勝を果たした最初のドライバーとなった。
2位はライコネン、3位にはシューマッハが入った。
3人とも元ワールドチャンピオンでフェラーリに在籍したドライバーだ。
チャンピオンになるためにはグランプリごとの状況がどうあってもその中でレースを組み立て少しでも前でゴールする力が必要だ。
アロンソは最速のマシンに乗っていなくてもチャンピオンをとることのできるドライバーだ。

予選・決勝を通じて最も速かったフェッテルはセフティカー先導後のエンジントラブル(実際はルノー・エンジンの電気系のオーバーヒートらしい?)で無念のリタイヤを喫した。
ヴェルニューの進路変更によるクラッシュでセフティカーが出動しなければ二度目の優勝を果たしたのはフェッテルだった可能性が高い。

可夢偉はソフトタイヤを温存しつつ予選7番手につけることができた。
金曜日のフリー走行から予選までの2日間の全プログラムをしっかりマネージした結果だった。
決勝でも1週目で前の2台と厄介なマルドナルドを抜いて4番手をキープしていた。
しかし、ピットインの際のマイナートラブルでタイムロスがあった。
その後、マッサとクラッシュしてしまい表彰台か優勝の可能性すらあったレースがリタイヤとなってしまった。

もっとも、ハミルトンもピットでジャッキのトラブルのために14秒もロスして後退しただけでなく最後はマルドナドに接触されてリタイヤした。
ハミルトンは前線のカナダまでにもピットで遅れを取って後退したことが何度もあり、ようやくカナダで全てが噛み合って今期初優勝となったのだ。
アロンソは今回予選11番手で表彰台さえ困難に思われた状況から優勝をもぎ取った。

特性がつかみにくいピレリタイヤにはいまだに各チームが悩まされているが、マレーシア以外の全レースでソフト・コンパウンドのタイヤが用意されている。
レース毎の組み合わせによってソフト・コンパウンドがハード側で使われるときとソフト側で使われるときがあるがフェラーリかマクラーレンあたりがそろそろ方程式を見つけ出すのではなかろうか。

次は、ブリティシュGPだ。
多くのF1チームの本拠地は英国にある。
ブリティシュGPが開催されるシルバーストーンは飛行場に併設された高速コースだ。
トップドライバーは自家用機でコースにやってくることができる。
今週末の予報は3日とも曇-雨(典型的な英国の気候!?)で気温も低い。
晴れると暑いし高速コースのためか用意されるタイヤはハードとソフトになる。
低い気温だとみんなハード・タイヤをあまり使いたがらないかもしれない。
大本命はなんといっても高速コースを得意とするマクラーレンのハミルトンだろう。
バトンはシルバーストーンではいい思いをしたことがない。可夢偉は前回GPのクラッシュで5グリッド降格ペナルティを負っているがモナコの時のシューマッハのようにポールをとりに行ってほしい。
決勝が雨になれば大荒れで面白い結果がでそうだ。

ブリティシュGPは1位ハミルトン、2位ウエバー、3位バトン、4位フェッテル、5位ライコネン、6位可夢偉、7位アロンソ、8位ディレスタ、9位シューマッハ、10位ロスベルグかな。

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Formula One 2012(8)2012.06.22

カナダGPでようやくハミルトンが今期初優勝を飾った。
2位と3位にはワン・ストップでタイヤをもたせながらもいいペースで走り切ったグロージャンとペレスが入った。
ワン・ストップで優勝を狙ったアロンソは終盤になってタイヤがもたずそのままゴールまで走る間に5位まで下がった。
アロンソより少し早めにタイヤがだめになったフェッテルはタイヤ交換して4位まで追い上げた。
金曜日にデフのトラブルでフリー走行ができなかった昨年のウィナー、バトンはマシンを仕上げられなかったハンディキャップが最後まで影響し、決勝16位と低迷した。

ここまでの7戦で7人のドライバーと5種類のマシンが優勝した。
マクラーレン2勝、レッドブル2勝、ウイリアムス1勝、メルセデス1勝、フェラーリ1勝だ。
今年はタイヤに振り回されてまだどのチームもどうすればうまくいくのか解っていない。
ピレリ・タイヤはパフォーマンスを発揮する領域が極めて狭く、限界を超えるとタイヤが突然機能しなくなる(ラップタイムが3~5秒ぐらい遅くなる)と言われている。
しかも、サーキットごとにハード側タイヤとソフト側タイヤの組み合わせが変わる。
これに加えて金曜日から日曜日までのサーキット路面温度、燃料の重さ(マシンの重量)など複雑な要素が幾重にも重なっている。
もちろん長年戦っているグランプリチームは膨大なデータの蓄積があるからその時々の状況にあわせてセッティングする技術を持っているのだがタイヤのスウィート・スポットがあまりにも狭いためにセッティングが難しいのだ。
専従のレーシングタイヤ・スペシャリスト(元ブリジストンの浜島氏)がいるフェラーリでさえ苦労している。
上位チームはブレーキの熱をホイールに当てる量を調節するなどの対策をして何とかタイヤのパフォーマンスを安定させようとしているぐらいだ。

そんな中でもチームの実力を感じさせるのはマクラーレンとレッドブル、ドライバーの実力を感じさせるのはアロンソとフェッテルだろう。

北米大陸で1戦したのみでF1サーカスは大西洋を渡り、再び地中海沿岸に戻る。ヨーロッパGPはスペインのバレンシアで行われる第2スペインGPで、来年からはスペインGPとしてバルセロナとの隔年開催になる。
バレンシアのコースは海沿いの一般道を利用したストリートコースだ。
オレンジの名産地であることからわかるように典型的な地中海気候で夏の気温は高い。
ヨーロッパGPで使用されるタイヤはミディアムとソフトになる。
前2戦より1段づつ固い目のコンパウンドだ。
とはいえ、路面温度は高いだろうからワン・ストップはリスキーだ。
フェッテルはバレンシアのコースを得意としている。
昨年はマシンのトラクションが非常に良かったこともあるが彼にしかできないようなライン取りでコーナーを回り、圧倒的に速かった。
バトン、ライコネン、可夢偉はいい結果を出しさないといけないのでフリー走行から決勝まででマシントラブルがないといいが。

ヨーロッパGPは1位フェッテル、2位アロンソ、3位可夢偉、4位バトン、5位ライコネン、6位ハミルトン、7位ウエバー、8位ロスベルグ、9位シューマッハ、10位マッサかな。        

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Formula One 2012(7)2012.06.08

モナコGPは優勝ウエバー、2位ロスベルグ、3位アロンソ、4位フェッテル、5位ハミルトン、6位マッサという結果だった。
1位から6位まで6.1秒と一見伯仲していたように見えるがスタート時の1コーナーで順位を上げようとしたシューマッハがグロージャンに行く手をふさがれて接触してから後は見所の少ないレースだった。
本当はポールポジションのシューマッハ(スペインGPでセナにぶつかったペナルティで5グリッド降格したためポールポジションからスタートできなかった)が予選順位どおりスタートしていれば復帰後の初優勝を飾っただろう。

モナコは抜き場がなく、フロントローにいない場合タイヤ交換のタイミングをずらし他のレースカーで混んでいないところにピットアウトして、速く走って差をつめるぐらいしか順位を上げる方法がない。
これをうまくやったのがアロンソとフェッテルだ。
それでも、終盤ウエバーとロスベルグがスローダウンしても抜くすべがないから、伯仲した戦いがあったわけでもないのに6台が数珠繋ぎでゴールするレースとなってしまった。

見所はむしろ予選にあった。
予選では今シーズン限りで引退だと噂される崖っぷちの3ドライバーが見事なパフォーマンスを見せた。
シューマッハは予選1位のタイムをたたき出してモナコではいつも好タイムを出すロスベルグの鼻頭をへし折った。
フェッテルが予選10番手と沈む中、ウエバーは2番手タイムをたたき出した。今シーズン開幕からパフォーマンスの低いフェラーリに手こずって成績が低迷しシーズン途中の降板を噂されていたマッサは、スペインGPあたりから調子を取り戻したフェラーリを駆ってQ1・Q2ではアロンソより速く、Q3でもアロンソに0.1秒遅れの7番手タイムを出した。

崖っぷちドライバーの復活とフェラーリの復調で今シーズンの行方はますます混沌としてきた。
雨が降らなくても、下位3チームの6人以外は誰でも優勝しそうな感さえある。

カナダGPは地中海のコートダジュールから大西洋を渡り、カナダ東部の大都市でフレンチ・カナディアンが多く住むモントリオールで行われる。

万博跡地にあるジルビルヌーヴ・サーキットはストリート舗装のレース専用コースで直線2本の両端をタイトコーナーでつないだようなコースだ。
メルセデスは直線が速いし、ダブルDRSによってストレート・エンドのブレーキング・スタビリティも良いからブレーキさえよければ予選ではかなり有利だろう。
ということは、決勝でもフロントローにいれば圧倒的に有利だ。
ただし、タイヤはモナコGPと同じソフトとスーパー・ソフトが持ち込まれるからレース当日の路面温度によってはタイヤに優しくないといわれているメルセデスは苦戦するかもしれない。
昨年は雨で2時間近い中断があったあと、猫の目のように変わるコンディションに強いバトンが見事優勝した。
ところが、今年のピレリ・タイヤにはバトンの繊細なドライビングが通用しないらしく2戦目以降頭を抱えている。

カナダGPは1位シューマッハ、2位ハミルトン、3位ライコネン、4位バトン、5位マッサ、6位フェッテル、7位可夢偉、8位アロンソ、9位デレスタ、10位ロスベルグかな。         2012 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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