- YUKICHI OTSUKA 大塚雄吉
F1 ウォッチャー
- 幼少期にF1に魅せられ、50年以上にわたって、日本製のF1が出ていなくても、日本人F1ドライバーがいなくても50年以上にわたってF1を見続けてきた、F1 ウォッチャー。
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Formula One 2012(6)2012.05.25
スペインGP(今期第5戦)で今期5人目の勝者となったのはマルドナドだった。
2位にはホーム・グランプリのアロンソ、3位にはライコネンが入った。
何度もF1グランプリを席巻したことのある名門チームでありながら、昨年、絶不調だったウィリアムズに乗るF1参戦2年目のマルドナドが優勝したことが話題になった。
しかし、今年のウィリアムズは昨年の不調の一因であったエンジンをルノー・エンジンに変更し、仕上がりの良いシャシーを用意してきた。
オーストラリアGPではマルドナドがファイナルラップでクラッシュするまでは6位を走行していたし、マレーシアGPではセナが6位に入った。チャイナGPではセナ7位・マルドナド8位と6~10位の入賞圏内を走れる実力を見せていた。
バーレーンGPは2台ともリタイアに終わったのでこの辺が限界かなと思われたが、なんと、スペインでは優勝してしまった。
マルドナドとウィリアムズはどうやってスペインGPの優勝を手に入れたのだろう。
雨が降ったわけでもなく、上位チームにアクシデントが多発したわけでもない。
まずは、フリー走行3回を有効に使ってコースとタイヤにあわせたマシン・セッティングが完璧にできていた。
マルドナドは予選Q1Q2Q3を通じて速く、フロント・ローを獲得した。ダントツの予選タイムながら燃料残量違反で最後尾スタートになったハミルトンのおかげでポールポジションとなった。
レースでは序盤アロンソに先行を許したがタイヤ交換の際に抜き返し、終盤タイヤの厳しくなったアロンソを退けてトップでゴールラインを横切った。
雨で混乱したマレーシアGPを除く4戦ではいずれもフロント・ローからスタートしたドライバーが優勝している。
ハミルトンは予選で圧倒的な速さを見せていたが24番手スタートでは決勝で8位に入るのがやっとだった。
チャイナGPでは圧倒的な速さでポールポジションを取って優勝したロスベルグもスペインGPでは予選7位・決勝7位の結果だった。
フリー走行3回でセッティングを完璧にこなし、予選ではできるだけタイヤを使わないでフロント・ローを獲得して決勝では先頭に立って前に他車がいないことの利点を最大限に利用してタイヤをコントロールし逃げ切るというのが必勝パターンだ。
そうすれば多少の不利はカバーできる。レース・ウイークの3日間を通して緻密に戦うことができたチームとドライバーが優勝カップを手にする。今期はタイヤの要素が大きすぎるといわれるが、この方が、チームとドライバーの要素が大きくなるから、競争としてはよいかもしれない。
いよいよモナコGPだ。
モナコの1勝は他のGPの3勝に値すると言われるブランドGPだ。
今年のモナコは例年にも増して予選が重要だ。
もともと抜き場の少ないモナコでは予選で前にいないと優勝どころか上位に入ることも難しいが今年はチームの実力が拮抗しているので予選で前に出ないと挽回は困難だ。
土曜日の予選は雨になる可能性が高いらしいから状況はさらに混沌とする。
決勝が雨になれば誰が優勝するかまったく予想がつかない。
モナコGPは1位可夢偉、2位ハミルトン、3位アロンソ、4位バトン、5位フェッテル、6位ライコネン、7位シューマッハ、8位マッサ、9位セナ、10位ウエバーかな。
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Formula One 2012(5)2012.05.11
4戦目となるバーレーンGPで今期4人目のウィナーが誕生した。
フェッテル・レッドブルが今期初優勝!し、ロータスのライコネン、グロージャンが2位、3位にはいったのだ。
マレーシアでポイント圏外に終わったレッドブルはわずか5週間でマシンを修正し、予選・決勝ともにトップを狙えるマシンに仕立て直してきた。
レッドブルは前戦のチャイナGPで2台のマシンの空力仕様を変えて実戦テストをしてまでバーレーンに備えた。
結局バーレーンでは新しい仕様の方を採用し結果につながった。
もっとも、ドライバーがフェッテルでなければ優勝までは行けなかったかもしれないが・・・。
バーレーンGPもう一つのハイライトは、シーズンオフのテストでシャシーの強度問題が発覚し、テスト不足で開幕に挑んだロータスが安定した速さを示し始めたことだ。
ロータスのドライバー、ライコネンはレースごとに勘を取り戻し、たった4戦で優勝を狙えるところまで来た。
もう一人のロータスドライバー、グロージャンも予選だけでなく決勝でも強い走りができるようになった。
今年のF1で問題になっているのは、タイヤの使い方によってレースパフォーマンスが劇的に違ってしまうことである。
バーレーン予選11位のライコネンはあえて予選Q3進出を狙わず決勝にタイヤを温存したことで、もう少しで優勝というところまで行った。
これでライコネンが優勝でもしていたらもっと大きな話題になっていただろう。
Q3まで進出してしまうと決勝は予選Q3で3周走ったユーズド・ソフトタイヤでスタートすることになってしまう。
新品のソフトタイヤでスタートできる予選11位のドライバーより3周早くピットインしなければならない。
しかも、11位のドライバーは決勝で新品のソフトタイヤを2セット使えるのに対してQ3に進出したドライバーは新品のソフトタイヤは1セットしか残っていない。
Q3に進出するより予選ではできるだけ新品タイヤを温存したほうが、決勝での作戦に幅が出て有利になる。
バーレーンGPでロータスが取った作戦はチャイナGPでライコネンが予選5位でありながら、決勝後半でワンセットのタイヤを長く引っ張りすぎたために14位に終わった教訓から来たものだろう。
バーレーンGPからスペインGPまでは3週間ある。
この間にイタリアのムジェッロでシーズン中の合同テストが催された。
フェラーリやザウバーはパフォーマンスの挽回に必死だし、3週間あれば開発力のあるマクラーレンやレッドブルはかなりの改良を施すことができるだろう。
ロータスとザウバーがいいタイムを出していたが、悪くはないという程度でこのテストのタイムで今後のレース結果を占うことはできないだろう。
スペインGPのサーキット・デ・カタルーニャはどことなく鈴鹿に似たところがあるレイアウトなためか日本人F1ドライバーは得意としている。
2007年琢磨がドライバーの力でスーパーアグリを8位に持ち込んだ。
鈴鹿育ちでない可夢偉には関係ないだろうが・・。
スペインGPは1位可夢偉、2位ハミルトン、3位アロンソ、4位バトン、5位フェッテル、6位ライコネン、7位シューマッハ、8位ウエバー、9位マッサ、10位セナかな。
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Formula One 2012(4)2012.04.20
チャイナGPの予選は今シーズンの混戦を絵に描いたような予選だった。
Q1を通過した17台が0.7秒の間にひしめくという混戦ぶりだ。
今回、好調の可夢偉はQ1は硬いほうのタイヤで出したタイムで通過した。
Q2の驚きはワールドチャンピオンのフェッテルがQ3に進めず予選11番手に甘んじたことだ。
そんな中始まったQ3ではなんとロスベルグが早々と驚異的なタイムをたたき出し、予選2番手のハミルトンに0.5秒以上のタイム差をつけた。
3番手は前回のマレーシアと同じくシューマッハだった。
そして予選タイム4番手にはライコネン、ウエバーら強豪を抑えて可夢偉が入った。
ペレス8番手、アロンソ9番手、グロージャン10番手と続く。
この時点で、ライバルチームの面々は、メルセデスはどうせ本番ではタイヤに苦しめられて自滅するだろうと鷹をくくっていたに違いない。
ところが、決勝レースはロスベルグのワンマン・ショウだった。
バトンはピットでのタイムロスがなければ、もう少し追い上げることができて接戦になっただろう。
接戦でタイヤを消耗すればロスベルグは苦しくなったに違いない。
3位には今回もハミルトンが入った。
4位ウエバー、5位は予選11番手のフェッテルだった。
6位グロージャン、7位セナ、8位マルドナドの後はアロンソが遅いフェラーリを9位にねじ込んだ。
10位には3番グリッドでスタートしてファーステストラップを出した可夢偉が滑り込んだ。
昨年まで、可夢偉は11-16位が順当のマシンを何度もポイント圏内でフィニッシュさせていた。
今回初めて優勝を狙えるグリッドとマシンを手に入れたのに結果は10位だった。
2011年の日本グランプリのときと同じように、スタート直後の謎の失速が全てを狂わせてしまった。
レーシングカーではタイムを出そうとして、第3コーナーをそれまでより速いスピードで抜けられるようになると第4コーナーへの侵入速度が速くなるのでそれまでのようには回れなくなる。
今のザウバーと可夢偉は同じような状況だ。
マシンはドライバーががんばれば予選4番手、決勝ファーステストラップが出せるマシンになった。
しかし、予選でQ3まで進めるようになったということは新品のソフトタイヤを決勝に温存できなくなるということも意味する。
トップチームはトップチームのつらさがある。
それでもいいグリッドでスタートしなければ優勝は望めない。
優勝を狙うのとポイントを狙うのとは根本的に違うのだ。
ここを切り抜けられるかどうかがトップチーム・トップドライバーになれるかどうかの分かれ道だ。
この辺で一勝しておかないと、メルセデスは安定しつつあるし、スペインGPまでにはフェラーリ、レッドブルの改良型マシンが出揃ってしまう。
バーレーンGPは政情不安から昨年中止になった。
今年はエクレストンの鶴の一声で開催が決まった。
あるチームのシェフは信条としてバーレーン行きを拒んだために解雇されたらしい。
利得に流されれば儲かるが、信念を貫くと高くつく。
バーレーンの気候は、当然晴れで気温も高い。
タイヤの交換時期と使い方が重要な要素になる。
バーレーンGPは1位可夢偉、2位ライコネン、3位ハミルトン、4位バトン、5位シューマッハ、6位フェッテル、7位ウエバー、8位ロスベルグ、9位ペレス、10位アロンソかな。
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Formula One 2012(3)2012.04.13
マレーシアGPは予選がほぼドライで決勝がウエットだったために予選と決勝が全く異なる結果となった。
予選は、オールラウンドで安定した速さを持っているマクラーレンに乗るハミルトンが2戦連続のポール、初戦優勝のバトンが2番手だった。
予選ではめっぽう早いメルセデスのシューマッハはついに予選3番手に入った。
結果がいいとかつてのシューマッハが蘇ったように思えるから不思議だ。
今年はさまざまな空力規制でアドバンテージを失ったレッドブルは4番手と6番手、早いが安定性を欠くロータスに乗るライコネンが5番手とレッドブルの間に割って入った。
アロンソは9番手につけるのがやっとだった。
ところで、今年のメルセデスが予選で早いのはDRSの作動を利用したダクトによるものらしい。
DRSが作動するとウイングが水平になり空気抵抗が減る。
DRSでウイングを水平にした時に空気をリアからダクトを通してフロントウイングまで導くことによってフロントウイングのダウン・フォースを減らし、DRSによって減ったリアのダウン・フォースとフロントのダウン・フォースのバランスを良くすることができる。
これならばウイングを走行中に動かすことを禁じたレギュレーションに抵触しない。
DRS作動時のブレーキングも安定する。
予選ではコース全域でDRSが使えるのでより有利だ。
だから、メルセデスは予選で速いのだ。
このアイデアをロータスはルール違反だと抗議している。
決勝レースはアロンソとペレスのツーマン・ショウだった。
二人ともそれぞれすばらしい走りを見せた。
ペレスは予選で速いばかりでなくこれまでも決勝でワンストップ作戦をしばしば成功させてタイヤの使いかたのうまさを見せていた。
マレーシアではチームのタイミングの良いタイヤ交換と相まって、もう少しでアロンソを抜くというところまで追い上げた。
しかし、アロンソに追いつくのと追い抜くのとは大違いだ。
アロンソを抜くのは容易ではない。
アロンソは戦闘力の劣る今のフェラーリを巧みに操ってペレスの猛追をかわし、予選9位のマシンを優勝に導いた。
しかも、アロンソはレース中にテレメトリが故障していてピットからの情報がほとんどない状態で走っていたのだ。
チャイナGPのコースは上から見ると上海の上の字型になっている。
中国人らしい設計時のリクエスト(おそらく)だ。
上海は前戦のマレーシア同様、突然の雨でレースが思わぬ方向に行くことがあるサーキットだ。
天気予報では土曜日は晴れ日曜日は雨となっている。
天気が予報どおりになればマレーシアのときと同じように天候の読みと変わり続けるコースコンディションに合わせたタイヤの使い方が勝敗を分けることになる。
観客としては天気が予報どおりになってくれると面白いレースを見ることができる。
マレーシアではちょっとしたタイヤ交換のタイミングのずれや運の悪さで下位に沈んだドライバーたちにチャイナではいい巡り会わせが来るかもしれない。
チャイナGPは1位バトン、2位フェッテル、3位可夢偉、4位ハミルトン、5位ライコネン、6位シューマッハ、7位アロンソ、8位ウエバー、9位グロージャン、10位ロスベルグかな。
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Formula One 2012(2)2012.03.23
2012年はまれに見る面白いシーズンとなりそうだ。
開幕戦とはいえ、今年のF1グランプリは予選からかなりの接戦だった。
Q1ではライコネンが19番手でQ2に進めず、Q2では、1.5秒以内に15台のマシンが入るというF3の予選のような状況だ。
Q3でも2011年にシーズン最多ポールポジションを取ったフェッテルが、今回ポールのハミルトンから0.7秒以上離され6番手スタートになってしまった。
フェラーリは、マクラーレンと比べて1周1秒近く遅いマシンでQ3に進むのはさすがに無理があり、アロンソがコースアウトするまで攻めたのに予選12番手がやっとだった。
マッサに至ってはQ3どころか危うくQ2にも進めないところだった。
マクラーレンは仕上がりの良さを見せつけてフロントローを独占した。
メルセデスはシューマッハが3番手、ロスベルグが7番手に入る速さをみせた。
ロータスはグロージャンが予選3番手となりマシンのポテンシャルが高いことを示したが安定性を欠いていた。
ザウバー、ウイリアムス、フォースインディア、トロロッソの中盤4チームは昨年より遥かにトップ5チームに近いところにいる。
つまり、今年は18台のマシンとドライバーによる混戦が期待できるということだ。
レースはバトンがタイヤと対話するクレバーな走りで完勝した。
フェッテルはドライビングうまさを見せて予選6位のレッドブルを2位に持ち込んだ。
ハミルトンは予選の一発では速かったがレースを通じてのタイヤの使い方はまだまだ改良の余地があり3位に甘んじた。
アロンソは4位のウエバーからかなり離されてしまっただけでなく5位を守るのにも苦労していた。
ファイナルラップのマルドナルドのクラシュから始まった混乱のおかげで、壊れたリヤ・ウイングのまま走り続けていた可夢偉が6位を得た。
マイナーな損傷であればそのままフィニッシュまで何とか持っていって入賞してしまうのはさすがだ。
ペレスは今年もなんとワン・ストップで走りきり8位に入った。
マレーシアGPは高温多湿の中でのレースを強いられる。
クローズド・コックピットのGTカー・ドライバーの中には脱水症状で倒れてしまうドライバーもいるほどだ。
天候もレース中に突如スコールが降ることが珍しくない。
もっとも今年は予選日決勝日とも天気予報は雨となっている。
予報どおりなら、雨に強いドライバー、バトン、フェッテル、ライコネン、可夢偉が有利だ。
アロンソも雨に強いがグリップのない今のフェラーリでは苦戦を強いられるだろう。
雨にめっぽう強いスーティルは残念ながら今年は出場していない。
マシンの実力が拮抗してくると、マクラーレン、ウイリアムスなどのチームはデータも経験も豊富なので強さを発揮する。
上位チームの中では冬の間のテストが不十分だったメルセデスとロータスはここ数戦は不安定な状態が続くだろう。
マレーシアGPは1位バトン、2位フェッテル、3位可夢偉、4位ハミルトン、5位ライコネン、6位シューマッハ、7位アロンソ、8位ウエバー、9位ヒュルケンブルグ、10位マルドナドかな。
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