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YUKICHI OTSUKA 大塚雄吉
F1 ウォッチャー
幼少期にF1に魅せられ、50年以上にわたって、日本製のF1が出ていなくても、日本人F1ドライバーがいなくても50年以上にわたってF1を見続けてきた、F1 ウォッチャー。

Formula One(11)2010.10.08

アロンソは強い。
レッドブルの方が有利なマリーナベイ・サーキットできっちりとポールポジションを押さえ、決勝でも二番手のフェッテルにつけ入る隙を与えずトップの座を守りきってゴールした。
実はアロンソは金曜日のフリー走行時にコーナーでオーバーランしている。
おそらく予選に備えてコーナーの限界を試していたのだろう。
モナコよりはコース幅があるとは言え性能の劣るマシンで優勝するためには予選でポールを奪取することが絶対条件だ。
ウエバーはきっちり3位に入りチャンピオンシップ首位を維持した。

ハミルトンはどうしてしまったのだろう。
イタリア、シンガポールと続けてリスクのあるパッシングをした挙句のリタイアでチャンピオンシップ・ポイントでもアロンソに逆転されてしまった。

いよいよ待ちに待った日本GPだ。
去年まではF1に日本人ドライバーだけでなく日本メーカー、日本のチームが出場していたが、今年はドライバー2人とブリヂストンだけになってしまった。
来年からはブリヂストンも出場しないからドライバーだけになる。
これからが本当の実力を試される。
ポーランド人ドライバーのクビサ、スペイン人のアロンソ、フィンランド人、ブラジル人ドライバー達は何の後ろ盾も無く腕一本でF1界を戦ってきたのだ。
鈴鹿でホンダ・ミュージックが聴けないのは寂しい限りだがその代わりに日本人が優勝したりチャンピオンになったりする日が来るかもしれない。
F1はマシンのウエイトが高いスポーツだがスポーツである限り最後は人だ。
アロンソを見ればF1の勝負はマシンだけではないことが良くわかる。

F1日本GPまであと数日という10月4日ピーター・ウォーがなくなった。
ウォーといえば創世記の頃からティーム・ロータスとともに歩み1989年に引退するまでの間長らくチームを引っ張った人物だ。
第1回日本グランプリ(F1ではない)に美しきスポーツプロトタイプ・ロータス23を駆って出場し優勝をさらったことが思い起こされる。
日本GPは日本のモータースポーツの聖地、鈴鹿サーキットで開催される。
なんと、本田宗一郎は名神高速道路が完成するより前に本格的レーシングコースを作ったのだ。
鈴鹿は本格的レーシングコースでサーキット舗装なのでロードコースのマリーナベイと違いグリップがいい。
高速コースながらテクニカルなコーナーもあるセッティングの難しいコースだ。
相変わらずレッドブルが有利だろうが、フェラーリは鈴鹿を得意としている。

チャンピオンの可能性を残しているウエバー、アロンソ、ハミルトン、フェッテル、バトンの5人は熾烈な戦いを見せるだろう。
鈴鹿の経験が少ないといいつつもホームグランプリの大歓声にいつもは冷静な可夢偉も燃えないわけがない。
鈴鹿はスパほどではないが秋に開催されるために急な雨が降りやすい。
雨が降ると車の向き不向きも変わるだろうから一波乱あるだろう。土日の鈴鹿の天気予報は曇り一時雨だ。
2010 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
学会ネット株式会社 代表

Formula One(10)2010.09.24

モンザでのフェラーリは圧倒的に速かった。
今シーズン初めてマクラーレンよりもレッドブルよりも明確に速かった。
アロンソは予選でスーパーラップを決めて文句なしのポールポジションをとった。
フェラーリ以外では、チームメートも含めて他者とは逆のセットアップをしたバトンが光っていた。
モンザは高速コースなので普通はリアウイングを寝かせてコーナリング・スピードを犠牲にしても直線スピードを稼ぐセットアップにするのだが、なんとバトンはウイングを立ててコーナリング・スピードを稼ぐという逆の戦法に打って出たのだ。

これが見事に当たってバトンは見事予選2位を得ることに成功した。
バトンは決勝のスタートを決めて前半をリードしたが、タイヤ交換の時の僅かな差でアロンソに逆転されてしまった。
アロンソはティフォッシの大歓声の中トップでゴールした。
やはりスタードライバーはファンの期待に応えてここぞというところで決める。
エンジンが一時おかしくなった後、運良くエンジンが息を吹き返したフェッテルは粘り強く走り続けて4位でフィニシュした。
この3人が高ポイントをゲットしたおかげで、近年に無い上位5人によるチャンピオンシップ争いはシーズン終盤に入っても続いている。

F1ヨーロッパ・ラウンドはこれで修了し、アジアの3戦はシンガポールから始まる。
シンガポールは、淡路島の2割増程度の面積(707平方Km)の島に470万人が住む経済成長率世界一の都市国家だ。
シンガポールがF1開催に手を挙げたのは、常に街を魅力的に見せる仕掛けを増やさないと成長が維持できないからだ。
シンガポールGPがナイト・レースなのは、赤道直下で昼間は暑いこともあるが、この時間帯だとヨーロッパでは日曜の午後になるのでヨーロッパの視聴率が取りやすいという事情もあるようだ。

マリーナベイ・サーキットはストリートコースなので、メカニカル・トラクションの良い車が有利だ。
モナコで上位にいた車はここでも上位にくる可能性が高い。
フェラーリ、ルノー、ウイリアムズなどが得意とするタイプのコースだ。
ドライバーの力を見せてくれそうなのはアロンソ、クビサ、ロスベルグあたりだろうか。
フェッテルはここらで1勝しておかないとチャンピオンシップレースから脱落するので勝ちに来るだろう。
決勝レースはアロンソ、フェッテル、クビサの三つ巴の争いになるような気がする。
どう転んでも、チャンピオン争いは日本GPに持ち越される。
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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
学会ネット株式会社 代表

Formula One(9)2010.09.10

スパ・ウエザーは今年も予選からチームとドライバーを翻弄した。
なかでも、Q1は短いセッションの中盤に雨が降ったために練習走行では良いタイムを出していたザウバーなどがQ2に進めなかった反面、ロータスやヴァージンがQ2進出を果たした。
フォースインディアは今年も予選からスパでは速いところを見せた。
ウエバーはこのコースに向いていない(といっても速い)レッドブルでポールをとった。
ハミルトンはQ3終盤、濡れた路面で巧みなドライビング見せ予選2位に食い込んだ。
クビサも久々に予選3位に入った。

スパの気まぐれな天候は決勝になっても続く。
降雨スポットをチェックするために上位チームはヘリを飛ばしてしているほどだ。
案の定、序盤と終盤に雨が降った。
予報どおり序盤に降った雨が一旦上がり、終盤になってまた降ったため、その間のタイヤ交換時期とタイヤ選択によって勝負が決まった。
ハミルトンが優勝、ウエバー2位クビサが3位に入ったが、実は3人とも冷静でコース・コンディションに関わらず巧いドライビングを見せるドライバー達だ。
決して運が良かったわけではなく、悪コンディション下でも速く走り続ける実力があるからだ。
雨にめっぽう強いスーティルは5位に入ったし、可夢偉も後方スタートから巧いレース運びで8位に食い込んだ。
フェッテルはまたも焦って自滅しただけでなく、バトンまで巻き込んでしまった。
速いだけではチャンピオンにはなれない。

イタリアGPの開催されるモンツァはイタリア北部の都市ミラノの郊外にある。
ミラノには大聖堂や最後の晩餐の絵画、ミラノ・ファッションなど見所はいっぱいあるが、車好きにとってはなんと言ってもアルファロメオである。
アルファのエンブレムの中にある赤十字はミラノ市の市章で、アルファは昔も今もミラノの誇りである。
フェラーリが台頭するまではグランプリカーといえばアルファロメオであった。
エンゾ・フェラーリは自身アルファロメオのレーシングドライバーであったし、スクーディア・フェラーリも自前のレースカーを作り始めるまではアルファロメオを走らせていた。

いよいよ、ティフォッシ(フェラーリ・ファン)達が待ち焦がれたイタリアGPが伝統の高速コースモンツァで競われる。
いうまでも無くフェラーリ・チームは最も力が入る。
モンツァは高速コースに適したマクラーレンとフェラーリにとって有利なコースだから、ベルギーで痛いポイントを落としたバトンとアロンソはなんとして勝ちを狙ってくるだろう。
ベルギーGPで高速コースでも速いことを証明したルノーのクビサと高速コースでは速さを見せるフォースインディアのスーティルにも注目だ。
2010年のチャンピオンシップもあと6戦となった。
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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
学会ネット株式会社 代表

Formula One(8)2010.08.26

ハンガリーGPは予選と決勝スタート後の数百メートルでレースが決まると誰もが思っていた。
予選ではレッドブルの速さを見せ付けられた。
ドイツGPではフェラーリがついにレッドブルと戦えるまでに速くなったように見えたがそうではなかった。
中でもフェッテルは群を抜いていてチームメイトのウエバーもお手上げだった。
日本期待の可夢偉は遅い車にひっかかって18位と振るわなかったばかりか、ピット入り口の信号無視でペナルティを与えられ最後列からのスタートとなってしまった。
予選が終わった時点で誰もがフェッテルの圧勝を予想していたし、予選の結果を見れば当然のことだった。

ところが、そうは簡単にいかないのがF1の面白いところだ。
スタートは順当にいき、後方で可夢偉が7台抜きをやって16位まで進出していたのを除けば大きな動きはなかった。
ところがセフティカーがはいったことがきっかけで、セフティカーとの車間を空けすぎたフェッテルがペナルティを食らい大きく後退、このレースは2位でいいと思っていたであろうウエバーが優勝してしまった。
アロンソは予選でレッドブルに歯の立たなかったフェラーリをちゃっかり2位に滑り込ませた。
可夢偉はセフティカー明けにシューマッハを抜いたのが効いて9位に入ってレース強さをまたしても証明してしまった。

夏休みが終わって、F1サーカスはベルギーのスパ・フランコルシャンに集まってくる。
僕にとってベルギーといえば高級なチョコレート、ダイヤモンド、新聞のインクで手が汚れないように新聞にアイロンをかけてくれるホテルといった高級なイメージのものが目に浮かぶ。
ただし、自動車に関して言えば自国に大きな自動車会社もないしF1ドライバーも常にいるわけではない。
それでも、1950年以来あまり途切れることなくF1GPが開催されている。
尊敬すべきレーシング・ドライバー/自動車評論家である故ポール・フレール氏はベルギー人であった。
ポール・フレール氏の著書「ハイスピード・ドライビング」は今でも僕のドライビング技術の中核をなしている。
正統なスポーツ・ドライビングを身につけたい方にはお勧めの一冊だ。

スパ・フランコルシャンの名物はオー・ルージュと呼ばれるそのまま天にも登って行きそうな登りの高速コーナーと、スパ・ウェザーといわれるレース中猫の目のように変わる天気だ。
スパはドイツ国境も近いのでドイツ人観客も多数押しかける。
スパは高速コースなので高速コースに強いフェラーリが伝統的に良い成績を収めてきたが、2009年ここでのフォース・インディアの速さは驚きだった。
今年のレッドブルはオール・ラウンドで圧倒的な速さを見せているからここでも優位に立つのは間違いない。
ただし、スパでは、タイヤ交換のタイミングとコース・コンディションの変化にうまく対応できるドライバーが結果を出すことができる。
コンディションの変化を味方にできるバトンや新しいFダクトが付く予定のルノーに乗るクビサにはいいところを見せてもらいたい。
スパ・ウェザーで決勝レースが荒れると思わぬドライバー・チームが優勝するかもしれない。
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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
学会ネット株式会社 代表

Formula One(7)2010.07.30

ドイツGPはエキサイティングな予選から始まった。
僅か2戦前のヨーロッパGPからは想像がつかないほどフェラーリが速くなった。
アロンソはでポール・ポジションを逃したがフロント・ローに並んだフェッテルと僅か1000分の2秒差だったし、マッサも予選3番手に着けた。
ブリティシュGPの予選で見せた速さは本物だったようだ。
名門ウイリアムズもヨーロッパGPあたりから少しづつに速くなり予選で確実にトップ10に入れるようになってきた。
打倒レッドブルの最右翼と思われていたマクラーレンはアップ・デートがなかなかはまらないし、このレースが地元のメルセデスも予選から苦戦していた。

決勝のスタートは、ポール・ポジションのフェッテルがアロンソを牽制しすぎて両者が遅れたところで予選3位のマッサがトップにたった。
マッサは、終盤にベストラップを更新し続けてスタート時の失地を回復したアロンソにトップの座を譲るまで快走し続けた。
この際のチーム・オーダーは物議をかもしたがチームとしては久々の勝利をチーム・メート同士がつぶしあってフイにすることだけは避けたかったのだろう。
フェラーリは伝統的にチーム・オーダーが好きなチームだが、罰金で済みそうなのでしてやったりなのだろう。
マクラーレンは両ドライバーががんばって4位、5位に持ち込んだがトップ3にはかなり差をつけられた。
ルノーとメルセデスは両ドライバーともトップ10に入った。

次は、僅か1週間後にハンガリーGPが開催される。
西側諸国のみで開催されていたF1レースを始めて東欧圏で開催した。
もっとも今はユーロ圏だが。
本田宗一郎氏が亡くなった直後に本田氏を敬愛していたアイルトン・セナが喪章をつけて出場した。
予選では驚異的なドライビングでこのコース向とはいえなかったマクラーレン・ホンダをねじ伏せてポール・ポジションをとり、決勝では2位以下を抑えきって優勝した。
アイルトンはこの勝利を本田氏に捧げると言った。

今年のチャンピオンシップの行方ははますます混沌としてきた。
現在1位のハミルトンから5位のアロンソまでの5人の内だれがチャンピオンになってもおかしくない。
ハンガロリンクは抜き場が無いので予選で結果を出すことが極めて重要になる。
予選でポールを取り、決勝のスタートでトップに立ったらタイヤ交換でミスしない限り、まず抜かれることはない。
ハンガリー人F1ドライバーはいないが、クビサはポーランド人、ペトロフはロシア人なのでファンも国境を渡って応援に来るだろうから、良いパフォーマンスが見られるだろう。
二人とも復調しつつあるルノー・チームというのも面白い。

バトンはこのコースでホンダF1を駆り、猫の目のように変わる天気の中巧みなドライビングで優勝したことがある。
バトンはここらあたりでハミルトンより上位でフィニッシュしておく必要がある。
ドイツでは惜しくも11位だった可夢偉も直線のスピードがさほど重要ではないこのコースでは予選上位に入れれば決勝の結果が期待できる。
今回も予選に注目だ。
2010 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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