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YUKICHI OTSUKA 大塚雄吉
F1 ウォッチャー
幼少期にF1に魅せられ、50年以上にわたって、日本製のF1が出ていなくても、日本人F1ドライバーがいなくても50年以上にわたってF1を見続けてきた、F1 ウォッチャー。

Formula One(6)2010.07.23

ブリティシュGPは予想外の展開だった。
アップ・デートを多数投入してレッドブル独走を止めようとしたマクラーレンが逆にアップ・デートのために苦しんでいた。

フェラーリは予選でヨーロッパGPからすると信じられないようなパフォーマンスを見せたが、決勝では2台とも序盤に接触して散々な結果に終わった。

ハミルトンは外れてしまったアップ・デートを予選終了までに建て直し、何とか戦える状態に持って行った。
そして、フェッテルがスタートを失敗して1周目に接触しトップ争いから脱落したこともあって、決勝では見事2位に食い込んだ。
ロスベルグも非凡さを発揮してパフォーマンスが十分でないメルセデスを久しぶりに表彰台フィニシュまで引き上げた。
バリチェロは非力なエンジン、可夢偉は低予算に苦しむチームでありながらすばらしい結果を出した。
可夢偉がタイヤ・マネジメントを身に付けたことがここブリティシュGPでも証明された。

次はドイツGPだ。
ドイツには多くの観光名所がある。
1週間をドイツだけに費やせるならばレンタカーでメルヘン街道かロマンチック街道を1箇所1泊のペースで巡ればそれぞれに美しい町の個性が楽しめる。
僕のオススメはカッセルにあるヴィルヘルムへーエ公園の自然の落差を利用した大噴水だ。
ただし、水を上げるのに時間がかかるので噴水が見られるのは週1回(確か水曜日)の決まった時間なので曜日と時間を確認した方が良い。

F1のドイツGPはかつてニュルブルクリンクの北コースで開催されていた。
当時は全長が22.8kmあり途中にはジャンピングスポットがあって作りが弱いマシンは完走できなかった。
ホンダF1もここがデビュー戦だったがリタイヤに終わっている。
今のF1は速くなりすぎて危険なので1周5.1kmの南コースが使われている。
シューマッハがチャンピオンを続けていた頃はヨーロッパGPがニュルブルクリンクで開催されていた。
2007年からはドイツGPはニュルブルクリンクとホッケンハイムで1年おきに開催されるようになり、今年はホッケンハイムで行われる。
ここも、全長12kmの高速コースだったが現在は大幅にレイアウトが変わり全長4.6キロメートルの中高速コースとなった。
コース幅も広げられたのでこのコースではパッシングが可能だ。
ドイツ人F1ドライバーは、フェッテル、ロスベルグ、シューマッハ、スーティル、ヒュルケンブルグ、グロックと6人もいる。
グランプリドライバーの4人に1人がドイツ人という事になる。
ホーム・グランプリの観衆の前でいつも以上の走りを見せてくれるだろう。
アロンソ、バトン、シューマッハはそろそろポジティブな結果を出す必要がある。
レースごとにシートが決まるHRTの左近もセナを上回らないと後が無い。
2010 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
学会ネット株式会社 代表

Formula One(5)2010.07.09

ヨーロッパGPのヒーローは3人いた。
優勝したフェッテル、7位を獲得した可夢偉、4位に入ったバリチェロの3人だ。
なかでも可夢偉はドライバー・オブ・ザ・ディといってもいいだろう。

予選ではどうもパフォーマンスが出せず、下位の6台のすぐ上18番手のポジションに甘んじていた。
もっとも、予選タイムはトップのフェッテルから1秒しか離れていなかったから絶望的な差ではなかった。
ここは低ミュー路面のストリートコースなのでモナコほどではないがパッシングはかなり難しいコースだ。
可夢偉は、ハード(プライム)タイヤで出来るだけ長く走ってタイヤ交換のタイミングをずらし、少しでも上位に立つ作戦だった。ウエバーの大事故の後、ソフト(オプション)タイヤでスタートしていたドライバーが次々とタイヤ交換を済ませるなか、可夢偉はハードタイヤで走り続けた。
その間タイヤをセイブしながらもバトンを抑え続け、長らく3位の座をキープしていた。
ラスト4周となってからタイヤ交換のためピットインした。
評価に値するのは、ラスト4周までタイヤをもたせながらハイペースを保ったことだ。
トルコGPとは状態が違うだろうが、ロングランでのタイヤ・マネジメントが進歩したように見える。
そして、フレッシュ・ソフトタイヤに履き替えるやまずはアロンソを抜き去り、最終ラップの最終コーナーの突っ込みでブエミを退け、自力で7位をもぎ取った。
どうやら、可夢偉はタイヤ・マネジメント術を身に付けたようだ。

フェッテルはヨーロッパGPで久々に圧勝してチャンピオンシップ争いに復帰してきたし、マクラーレンは今回アップデートなしで2・3位を入った。
ウイリアムズはバリチェロのルノーはクビサのドライビングによって上位に食い込んだ。
フェラーリとメルセデスはあまりいいところが無かった。

シーズン折り返しの10戦目、ブリティシュGPが開催されるシルバーストーンは飛行場跡地に作られた有名な高速コースだ。
かつて、無敵のホンダ・ターボを搭載するウイリアムズとロータスが1・2・3・4フィニッシュを飾ったことがある。
英国人はモータースポーツファンが多い。
英国では、自宅のバックヤードで仕立てたセダンでサーキットまで自走し、レースを楽しむ人は珍しくない。
レース人口が多いので、レースカー・メーカーや部品メーカーが多数存在し産業として成立している。
このため、英国に本拠地があるF1チームが多く、事実上のホーム・グランプリというチームが多い。
ということは、ここぞと頑張るチームが多いということだ。
特に、マクラーレンはファクトリーがシルバーストーンのすぐそばにあり、ヨーロッパGPでは見送ったメジャー・アップデートをここで投入してくるだろう。
しかも、ドライバーは二人とも英国人だ。
レッドブルにとってもチャンピオンシップ逃げ切りのためにはここでマクラーレンを突き放しておく必要がある。
メルセデスとフェラーリは正念場だ。
後半戦の流れがここで決まる。
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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
学会ネット株式会社 代表

Formula One(4)2010.06.25

今年のカナダGPはマクラーレン・ディだった。
マクラーレンはトルコGPでもワンツーフィニッシュを飾ったが、トルコの勝利はレッドブルの同士討ちの結果転がり込んできたものだった。
カナダではチームの総合力で勝ち取った真の勝利だ。
F1マシンのポテンシャルはいまだにレッドブルのほうが若干上かも知れないが、チームの総合力はマクラーレンの方が上だ。
ジル・ビルヌーブ・サーキットはブレーキとタイヤに厳しいサーキットなのでドライバーのブレーキの使い方とチームのタイヤ交換戦略が勝敗を決める大きな要素になる。
ドライビング面から見るとブレーキングの巧いハミルトンはみごとに予選と決勝を制した。

トルコではあまりいいところが無かったフェラーリが盛り返し、逆にメルセデスはカナダではぱっとしなかった。
アロンソとクビサは相変わらずドライバーの力によってマシンのポテンシャル以上の結果を出している。
それにしても、今年のF1は稀に見る接戦になっている。
現在ランキングトップ5のドライバーたちはほとんど差がなくレースごとに順位が入れ替わる状況が続いている。
レッドブル独走でもなくなってきているしコースによってマシンとの相性などがあるから毎レース予想が立たない。

ブレーキングはドライバーの腕の見せ所だ。
エンジンや空力性能が劣っていてもブレーキさえまともであればドライバーはコーナーの突っ込みで自身の技量と度胸の限りを尽くしてブレーキングを遅らせてライバルの前に出ることが出来る。
ハミルトンの場合は、ほんの数秒ブレーキングするときにどの程度手前でどの程度まで踏み込むかという組み合わせが絶妙なのだろう。
レッドブルは、今回カナダGPでは、何かマイナー・トラブルを抱えていたために終盤マクラーレンを追撃できなかったようだ。
ひょっとしたらブレーキ・トラブルかもしれない。
ただし、ドライバーがブレーキをうまくセーブしていないと終盤つらくなるということもあるので真相はわからない。

次は、ヨーロッパ・グランプリだ。
F1は原則1国1開催だが、その時々で、チャンピオンドライバーがいる国、複数のチームがある国などで地域名を冠したGPが国名を冠したGPとは別に見ることができる。
バブル期の岡山のパシフィックGPやシューマッハ全盛時代のドイツなどは1国2開催をやっている。
10年後には中国でアジアGPが開催されるかもしれない。
それはともかく、最近のヨーロッパGPはスペインのバレンシアで開催されている。
バレンシア・オレンジの里、バレンシアである。
ここは、公道サーキットなので、路面のミューが少なく、低速コーナーが多いのでメカニカルグリップのいいマシン(ルノー、ウイリアムズ、ロータス?)低ミュー路面が得意そうなドライバー(クビサ、ロスベルグ、リヴィツィ、フェッテル、バリチェロなど)活躍がみられるといい。

ところで、今回のヨーロッパGPはティーム・ロータスの500戦目にあたる。
名門ロータスがナショナルカラーであるブリティシュ・レーシング・グリーンにロータス・イエローストライプで今年復活したその年に500戦目が巡ってきた。
数年以内にはトップチームになってほしいと思う。
願わくばドライバーの一人は日本人で。
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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
学会ネット株式会社 代表

Formula One(3)2010.06.11

今年のトルコGPはF1レースの面白さを一杯詰め込んだ内容だった。
われわれ日本人にとっては可夢偉が実力を見せてくれたことが嬉しかった。
予選Q2ではシューマッハを抑えて一発勝負のフライングラップで9番手タイムをたたき出した。
Q2までに新品タイヤを使い果たしていたのでQ3では1回アタックしただけでタイムも出なかった。
スペインGPの予選と同じパターンだ。今のザウバーではこれがほぼ限界らしい。
むしろ、可夢偉は予選でマシンの実力以上の結果を出したといえる。
決勝レースでもがんばって何とか10位に食い込みザウバーに今シーズン初ポイントをもたらした。
速めにタイヤ交換をする作戦を取ったために終盤ではカーカスがのぞくほどタイヤを使い果たし、終盤はひやりとさせられた。

とはいっても、これは、あくまで日本人から見たトルコGPのハイライトだ。

本当のハイライトは、上位の4人のドライバー間で行われていた。
これまで、空力マシンだから早いと思われていたレッドブルがモナコでも速く、メカニカルグリップも良いことが分かり今シーズンはレッドブルの独走かと思われていた。
ところがどっこい、常にチャンピオン争いをしてきた強力チーム・マクラーレンが見事に盛り返してきた。
予選からこの4人(4台)は他のチームとは別次元のところにいた。
しかもそれぞれのチーム内でドライバー同士の速さが拮抗している。
とりわけ、ウエバーに2連勝を許してしまったフェッテルはグリッドのだれよりもウエバーに勝たせられない立場あった。
これが終盤でチームメイト同士のバトルに繋がった。
フェッテル自信はリタイヤ、ウエバーも3位に終わった。
マクラーレンもドライバー同士で同じようなバトルがあったが、こちらはクラッシュまでには至らずワンツー・フィニッシュを飾った。
ここ何十年もトップドライバー同士を競わせることによって多くのチャンピンシップを取ってきたマクラーレンと新興チーム・レッドブルの経験の差が出たというべきだろう。

シューマッハがマシンのポテンシャルを精一杯引き出して4位に入ったのも今後のレースを面白くしそうだ。
シューマッハの全細胞が4年前の状態に戻ったのかもしれない。
このまま行けば、最終戦にならないとチャンピオンが決まらないだろう。
メルセデスGPは着実に速くなっている。これで、7レースで5ウイナーだ。

次は、大西洋を渡ってカナダGPだ。
カナダGPが開催されるモントリオールはフランス系カナダ人の多く住むケベック州にある。
ケベック州はこれまで何度か平和的にカナダから独立する話が持ち上がったが、結局カナダ連邦にとどまっている。
だから、カナダの公用語は2つあり英語と仏語だ。
もっとも、フランスから来たフランス人によると現在のパリで話されているフランス語とは違うなまりがあるそうだ。
カナダで僕のオススメは、ケベック州の州都であるケベック・シティだ。セントローレンス川沿いのデッキと昔のフランス地方都市風の町並みが美しい。

カナダ・モントリオールでのスターは故ジル・ビルヌーブだ。フェラーリが低迷していた時代に勇敢なドライビングであのエンゾ・フェラーリを虜にしてしまったドライバーだ。
(エンゾはめったにドライバーを好きになったりしなかった)フェラーリのドライバーとなって凱旋したここでのレースで優勝してしまった。
チャンピオンにはなれなかったが多くの人に愛され感動を与えたドライバーだった。
チャンピオンになった息子ジャックよりも人気がある。スポーツは勝つことも大事だが、人々に感動を与えることに価値がある。
オリンピック跡地の人工島ノートルダム島に作られたサーキット・ド・ジル・ビルヌーブ(サーキット名はジルの名前だ)は細長い人工島に作られた長い直線とタイトなヘアピンのあるコースでなのでとてもブレーキとタイヤに厳しいコースである。
パッシングの優しいコースではない。それでも、ホンダ・エンジンを失った非力なマクラーレンを駈ったセナが1週目の2・3コーナーで4輪中3輪をダートに落として数台を抜いたことがあるし、佐藤琢磨はポテンシャルの劣るスーパーアグリのマシンでシケイン突っ込みのレイトブレーキングでマクラーレンに乗るアロンソを抜き去った事などが記憶に新しい。

今年のようにマシンとドライバーの実力が拮抗している状態で毎年荒れるカナダGPが争われるとだれが勝つか全く予想がつかない。
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Formula One(2)2010.05.28

今年もモナコGPは面白かった。
モナコのコースは市街地を利用したタイト・コーナーの多いコースなのでパッシングをする場所がほとんどない。
だから、モナコでは予選で上位のグリッドを確保するのがとても重要になる。
アロンソは、ここモナコで木曜のフリー走行から好調でフロント・ローを狙っていた。
ポール・ポジションを取ればほとんど優勝したようなものだからだ。
そのアロンソが土曜日午前のフリー走行でスピンしてマシンを壊してしまったために予選に出走できなくなってしまった。
これで、今年のアロンソのモナコGPは終わったと誰もが思った。
しかし、アロンソ本人は諦めていなかった。
一周のタイム差がかなりあるとはいえ前を走る下位チームのマシンをパッシングの難しいモナコで次々と抜き去り、終わってみれば6位に食い込んでいた。
しかもスタート直後に交換したタイヤで74ラップ以上を走りぬいての結果だ。
どう転んでも楽しませてくれるドライバーである。

予選、決勝ともクビサの巧さは光っていた。
クビサの手にかかるとまるでルノーが速いように見えるから不思議だ。
車の実力からすると予選2位、決勝3位は賞賛に値する。
それにしてもウエバーの速さは群を抜いていた。
予選こそクビサががんばったおかげでひやりとさせられたが、同じマシンを駆るフェッテルも含めて決勝では誰も追いつけなかった。

ウエバーは、佐藤琢磨とF1同期生だがミナルディからスタートしてここまで来た。
最近はフェッテルよりも速くなったようにも見える。もう数戦見てみないとわからないが・・・。
どちらにしても、ブラウンGP一辺倒だった昨年と比べると今年のF1は6戦で4ウイナーなのではるかに混戦となっていて毎レース目が離せない。

ここで、オールド・ムービーを1点、フランス映画「男と女」である。
中年でそれぞれ子持ちの独身男女のラブ・ストーリーだが主役の男がレーシング・ドライバーという設定なので当時のレースやレーシング・ドライバーの様子が自然な形で感じ取ることができる。
男と女の子供の登場の仕方や海辺のシーン、ボサノバ風テーマ曲などいちいちシャレている。

今週末は、トルコGPだ。
バニー・エクレストンのF1真の世界選手権化計画に沿って2005年からチャンピオンシップに加わったグランプリだ。
中速・低速・高速コーナーが適度にミックスされモナコと違ってパッシング・スポットもあるコースだ。
マッサはこのコースを得意としていて、これまでのトルコGP5戦中3勝している。
得意のトルコでマッサが自信を取り戻すか、フェッテルがウエバーから主導権を取り戻してアイルトン・セナに近づけるか、ターニング・ポイントとなるトルコグランプリが始まる。
2010 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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