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YUKICHI OTSUKA 大塚雄吉
F1 ウォッチャー
幼少期にF1に魅せられ、50年以上にわたって、日本製のF1が出ていなくても、日本人F1ドライバーがいなくても50年以上にわたってF1を見続けてきた、F1 ウォッチャー。

Formula One 2011(2)2011.05.20

今年のフェッテルは速さに加えて強さを身につけてしまった。
タイヤ交換を3回にしていれば勝てたかもしれない中国GPで2位になってからきっちり戦い方を修正してきた。
練習走行1回目でマシンを大破させてほとんどマシンに乗れていなかったのに予選最後のQ3ではたった1回のアタックでトップタイム出してみせた。
決勝では3周目までに後続がDRSを使えないマージンを作ってそのまま誰も近寄せず圧勝した。

アロンソはやはり強いドライバーだ。
現状のフェラーリで3位に入ったのはアロンソの力だ。
ロスベルクは速くなってきたメルセデスで頑張ったが、決勝でトップ3に入るにはマシンの燃費とタイヤ磨耗をもう少し良くする必要がある。
あまり目立たなかったがブエミはいい位置につけた。
可夢偉は予選Q1の頭で燃料系が壊れてノータイムだったため最後尾からのスタートとなったが13台抜いてピレリタイヤを20周ももたせザウバーを10位に滑り込ませた。

トルコGPはなんとも忙しいレースだった。
もともとタイヤに厳しいコースと言われていて標準で4ストップ、うまくタイヤを使っても3ストップが必要だった。
という事は、24台のマシンが10周から15周に1回ピット・ストップすることになる。
これだけ頻繁にピット・ストップがあると順位がめまぐるしく入れ替わり、本当は誰が上位にいるのか最後の10周ぐらいになるまで分からない。
20周ぐらいはタイヤがもたないとレースがわかりづらくなってしまう。
ピレリは、スペインGPでは耐久性があるかわりソフトタイヤとのグリップ力に差があるハードタイヤを用意するらしい。
少しは見やすくなるかな。

スペインGPは今シーズンの第5戦目になるのでドライバーもそろそろ今シーズンのレギュレーションにあわせた戦い方を組み立てられるようになってきている。
ここからが本当に熾烈な戦いになる。
これまでの4戦でフェッテルに明確な差をつけられていたウエバーもそろそろピレリタイヤの使い方がわかってきただろうから今回もう少しフェッテルに近いタイムが出せるようになるだろう。
ここでフェッテルに1周0.3秒以上離されるようだと評価が定着してしまい来シーズンのシートが危うくなる。
バトンもコースコンディションがめまぐるしく変わる状況でないとなかなかハミルトンを上回れないでいる。
赤丸急上昇の注目株デレスタが決勝でどんな結果を出すか楽しみだ。

シューマッハはやはり復活できないのだろうか。
今年のようにタイヤ交換の多いレースは得意なはずなのだが。2度目の引退をするまでに1勝はしてほしい…。

スペインGPは1位フェッテル、2位ハミルトン、3位ウエバー、4位アロンソ、5位バトン、6位ロスベルク、7位可夢偉、8位ハイドフェルド、9位マッサ、10位デレスタかな。

2011 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
学会ネット株式会社 代表

Formula One 2011(1)2011.05.07

2011年のF1グランプリシーズンももう3戦が終わってしまった。
オーストラリアGPとマレーシアGPではフェッテルが圧倒的に速かったのでつまらないシーズンになってしまうかと心配された。
ところが第3戦中国GPになって様相は一変してしまった。
ちょっと興行向けに過ぎると思われた今年のF1レギュレーションが巧く作用し始めたのだ。
以前導入したが一旦廃止していたKERSが今年からまた使えるようになった。
KERSは、走行中の動的エネルギーをはずみ車に蓄えて数秒間放出する装置だ。
放出時に80馬力ほどブーストできる。

新しい仕組みDRSも導入された。
DRSはコースごとに決められた直線区間で前車の背後1秒以内に迫った車がリアウイングのフラップを水平にすることができトップスピードを上がる。
性能が劣るマシンでも前車の1秒以内にいれば直線の終わりで追い抜くことが可能になる。
KERSは主に上位チームが下位チームのマシンがDRSを使って追い抜こうとしたときに直線の後半で追いつかれないようにするのに使っている。
とはいっても、ハミルトンなどはKERSをコーナーの立ち上がりなどでこまめに使っているから防戦にしか使えないわけでもない。

KERSやDRSよりももっとレースの不確定要素を増やすことになったのは、今年から使われるピレリタイヤだ。
シーズン開始前は10周ももたないと言われ、開幕してみるとそれほどでもなかったが、タイヤ交換のため最低でも2ストップ、ふつうは3ストップが必要になる。
しかも、ソフトタイヤとハードタイヤの耐久性に大きな差がないうえに、タイヤのグリップの落ちが突然訪れるという特性を持っている。
さらに、1レースで使えるタイヤの数が制限されているから予選でよい位置を占めるためにタイヤ本数を使いすぎると本番で使える新品タイヤが少なくなる。
予選上位に行くためにタイヤを使いすぎると決勝で不利になる。
中国GPで、レッドブルに乗りながらQ1を突破できなかったウエバーは予選でタイヤを使わなかったことで決勝では頻繁にタイヤ交換ができ、18番グリッドから3位まで追い上げた。
もっとも、これは車がレッドブルでウエバーだから出来る芸当だが・・・。
可夢偉はタイヤマネジメントがうまいのとマシンが9-12番手の実力だからいまのところ2ストップ作戦を取っている。
可夢偉といえば、パッシングの巧さは健在で、マレーシアではDRS無しのコーナーで見事なクロス・フェイントを使いシューマッハを抜いていた。

中国GPから3週間空けてトルコGPだ。
第3戦では1・2戦で圧倒的に速かったレッドブルにマクラーレンガ追いついた。
3週間の間にレッドブルは1-3戦でまともに使えなかったKERSを使えるようにしたようだし、フェラーリも風洞の問題を解決して新しいウイングを投入してくる。
たった1-2週間であれだけのニューパーツを用意できるマクラーレンも今回もアップデートを投入してくるだろう。
FIAの目論見どおり今年もエキサイティングなレースが続きそうだ。

トルコは1位フェッテル、2位バトン、3位ハミルトン、4位アロンソ、5位ウエバー、6位マッサ、7位ロスベルク、8位ハイドフェルド、9位可夢偉、10位シューマッハかな。

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
学会ネット株式会社 代表

Formula One(14)2010.11.12

ブラジルGPは予選のサプライズで幕を開けた。
雨が降り続いた予選のQ3開始直後に雨がやみ、予選終了まであと数分というところでコースが乾き始めた。
各車慌てて晴用のオプション・タイヤに履き替えたが、ベスト・タイミングでタイヤ交換をしたウイリアムズのヒュルケンベルグがポールポジションを獲ったのだ。
確かにQ3での好タイムはチームのタイヤ交換タイミングによるところが大きいが、Q2を突破していなければそれも無かったのだから単なるラッキーではない。
ヒュルケンベルグは期待の新人として今年ウイリアムズからデビューし、後半戦になって予選では速いところを見せ上位に行くようになってきていた。
ポールを獲ったのはサプライズだが実力はあるのだ。

決勝は予選とうって変わり晴れ上がった。
晴れてしまってはマシンの性能差はいかんともしがたくヒュルケンベルグは頑張って抵抗したが最終的に8位でゴールした。
決勝ではレッドブルの2台が速く中でもフェッテルは速くて安定していた。
フェッテルに追いつかなかったウエバーはあわよくば2位フィニシュを狙うアロンソのプレッシャーを受けていたがブラジルでは韓国のような失敗は犯さなかった。

アブダビGPは中東のアラブ首長国連邦の中ではもっとも広い国土を持つアブダビで開催される。
アブダビGPの2週間前にフェラーリのテーマ・パークであるフェラーリ・ワールドがオープンした。
時速240KMのフェラーリF1の形をしたジェットコースターが売りらしい。
アブダビGPは2009年が第1回で今年は2年目に当たる。
長いストレート+高速ベンドとタイトコーナー群からなる高速と中低速両方の要素を持った近代的なコースだ。
ピットレーンが長いトンネル状になっているのがユニークだ。

2009年ブラジルGPでF1デビューを果たした可夢偉は2戦目のアブダビで6位に入っている。
今年のザウバーは去年のトヨタほど上位のマシンではないから大変だろうが、ドライバーの可夢偉自身はこの1年でかなり進歩している。
来年に繋がる走りを見せて欲しい。

最後までチャンピオン争いに残ったのはアロンソ、ウエバー、フェッテルの3人だ。
一見、アロンソが有利なようだが必ずしもそうではない。
フェラーリのマシンがレッドブルを上回ったと思われたのはイタリアGPだけだ。
Fダクトをものにした最近のレッドブルは高速コースでも速くなってしまった。
フェラーリが効果的なアップデートを投入できてまともに戦えるようになるかレッドブル2台の1台が自滅しない限りアロンソはこのままではアブダビGPで3位になってしまい、ウエバーが優勝すればチャンピオンになる。
ところが、フェッテルがウエバーに勝ちを譲るだろうか?
アロンソが自力でチャンピオンを確実にするためには2位以上でゴールしなければならない。
アロンソは、経験とテクニックの限りを尽くして予選でポールを獲りにくるだろう。
ポールが取れれば決勝2位以上でゴールするチャンスはぐっと高くなるからだ。
今週の日曜日にチャンピオンは決まる。
2010 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
学会ネット株式会社 代表

Formula One(13)2010.11.05

ゴールまであと10周というところでチャンピオンシップの流れが大きく変わった。
シーズン前半戦では焦って勝てるレースを落としていたフェッテルがシンガポールGPあたりから速いだけでなくクレバーなレースをするようになった。

韓国GPでも序盤戦からトップを独走していた。
ところが、突然のエンジン・ブローでリタイヤとなってしまった。
厳しいコンディションの中、唯一フェッテルを追い続けていたアロンソが優勝した。
鈴鹿では3位を確保するのがやっとで韓国でも予選修了時点では決勝3位が濃厚だったのにレッドブル2台が自滅したため一気にチャンピオンシップ争いで優位に立った。

可夢偉はタイヤ交換タイミングが早すぎたにもかかわらずタイヤを巧くセーブして、日没まで続いたレースを8位でフィニシュした。
可夢偉は最後の数周は暗くてほとんど見えなかったとコメントしている。
以前フォーミュラ・ニッポンの日本人選手が語っていたが、ヨーロッパ、特に北欧の選手は日本人選手と比べて雨や夜のレースで速いのは暗い場所でも日本人よりよく見えるためらしい。
そういえば、日本人はヨーロッパのレストランの照明を暗いと感じるが、夏のよほど晴れた日でもない限りサングラスがないと眩しくて困るということはない。

F1サーカスはいよいよ地球の裏側ブラジルへ移る。
エマーソン・フィッティパルディ、ネルソン・ピケ、アイルトン・セナといった偉大なチャンピオン達だけでなく数多くのF1ドライバーを搬出してきた国だ。
今、走っているマッサとバリチェロもチャンピオンにはなったことがないが、速いドライバーだ。
2008年のF1は今年と同じように最後までチャンピオンシップがもつれた。
シーズン最終戦ブラジルGPファイナルラップの最終コーナーでハミルトンがグロックを抜くまでチャンピオンが決まらなかった。

ブラジルGPの開催されるインテルラゴス・サーキットはF1コースでは数少ない時計の反対回り(左周り)だ。
このコースでは最終コーナーを高速で立ち上がり、ストレート・エンドの1コーナーでパッシング仕掛けるシーンが良く見られる。
ただし、1コーナーの進入で無理をして抜くと2コーナーで抜き返される。
このコースは他にもパッシング・ポイントがいくつかあり観戦には絶好のコースだ。
レース中雨に見舞われることが多いコースでもある。今週末も雨の可能性が高いらしい。

ここまで来てチャンピオンの可能性を残しているのは数字上5人、事実上4人となった。
去年の事故から奇跡的に復活したマッサは、今年、残念ながらチャンピオン争いに加われなかったが、インテルラゴスが得意だしフェラーリは例年このコースでは速いから是非いいところを母国で見せて欲しい。
ハミルトンとフェッテルはまだ諦めてはいない。
ウエバーは平常心を取り戻せるだろうか?
ドライバー達はチャンピオンシップを争っていてもいなくても来シーズンに向けてここでいいところを見せておかないとシートを失う危険すらある。
フェラーリが1・2ならチャンピオンはここで決まりだ。
2010 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
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Formula One(12)2010.10.22

可夢偉はすごい。
今シーズンの可夢偉は決勝レースに合わせたマシンセッティングと巧みなタイヤマネジメントで戦闘力の劣るザウバーを何度も入賞させてきた。
昨シーズン終盤に出場した2戦のアグレッシブな走りとは対照的だ。
この1点を見ても、目標に到達するために必要なことは何かを知っているドライバーだということが分かる。
終盤の2戦だけF1をドライブするチャンスをもらった去年は今年のシートを手に入れるためにたった2戦の間に自分の速さをアッピールする必要があった。
F1のレギュラーシートを手に入れた今年は与えられたマシンで出来るだけポイントを上げ、より速いマシンのシートを手に入れるためのチャンスを拡げようとしている。
ところが、可夢偉は鈴鹿でバレンシア以来のセンセーショナルな走りを披露した。
しかも極めて冷静にヘアピンで5回のパッシングをやってのけたのだ。
名手バリチェロを抜いたときは進入でアウト側からブレーキングを遅らせながら通常より鋭角的にインに切り込み頂点で前にでた。
アルグエルスアリの場合は、1回目は立ち上がりのイン側を突いて抜き、2回目は当然相手がインをブロックしてくるのでアウト側に立ち上がり抜いた。

というふうに書くと、いとも簡単なようだが、もっと下のカテゴリーでも鈴鹿のヘヤピンで抜くのは難しい。
カートならタイトコーナーでのパッシングはよく見られるが、可夢偉が乗っているのはF1で相手はF1ドライバー達だ。

1964年のホンダの挑戦から始まった日本のF1の歴史も46年経ってようやくここまで来た。
第1期ホンダF1の監督であった中村良夫はその当時からF1はマシンだけでなくドライバーが重要だと言っていた。
その当時、ヨーロッパで通用する唯一の日本人ドライバーは生沢徹であったが、中村は生沢を側面支援するもののホンダF1には乗せなかった。
その生沢が日本に帰って作ったF2チームで起用したドライバーが中島悟である。

鈴木亜久里は日本GPで3位に入り、F1チームのオーナーにまでなった。
片山右京はなかなかマシンに恵まれず結果を残せなかったが、遅いマシンを極端なレイト・ブレーキングで走らせイタリアの記者達からは高く評価されていた。
その後、ホンダとトヨタが若手日本人F1ドライバーの育成に力を入れた結果、佐藤琢磨と小林可夢偉というF1界で注目されるドライバーが育った。
その中でも可夢偉は巧さと速さと強さを持ちF1チャンピオンにまで上り詰めるポテンシャルを持ったドライバーだと思う。

今週は2010年が初開催の韓国GPだ。
ヨンガムは朝鮮半島南西端に位置する長いストレートと連続するコーナーのセクションに分かれたコースだ。
どのチームもドライバーも始めてのコースなのでマシン・セットアップのはまり具合でいつもとは違った予選結果になる可能性が高い。
バトンとハミルトンはここで表彰台に登れないとチャンピオン争いから脱落する。
フェッテルはここでも優勝の最有力候補だ。
アロンソも優勝しないとポイントでウエバーを逆転できない。
クビサもそろそろ運が向いてきそうだ。
泣いても笑ってもここを入れてあと3戦、地球の反対側へ飛ぶ前に優勝がほしい。
2010 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
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