- YUKICHI OTSUKA 大塚雄吉
F1 ウォッチャー
- 幼少期にF1に魅せられ、50年以上にわたって、日本製のF1が出ていなくても、日本人F1ドライバーがいなくても50年以上にわたってF1を見続けてきた、F1 ウォッチャー。
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Formula One 2016(10)2016.07.08
オーストリアGPはファイナルラップにハミルトンがロスベルグを下して優勝した。
ポールポジションからスタートしたハミルトンは終盤までに十分なマージンを稼いでいたが、大事を取ってタイヤ交換をしたときにロスベルグに先行されてしまった。
首位の座を取り戻すべくロスベルグを追ったハミルトンは、ファイナルラップでロスベルグに追いつきコーナーのアウト側から抜こうとした。
しかし、ロスベルグが外側のスペースを残さなかったために2台は接触した。
ロスベルグの車はフロント・ウイングを激しく損傷し、スローダウンしてしまった。
ロスベルグは、なんとかゴールにたどり着いたものの、フェルスタッペンとライコネンにも抜かれ4位フィニッシュに終わった。
ロスベルグは、ハミルトンに抜かれても2位で18ポイントが手に入ったはずなのにレーシング・ドライバーとしてはどうしても抜かれたくなかったのだろう。
2位にはフェルスタッペン、3位には、ライコネンがテール・ツー・ノーズでゴールした。
フェルスタッペンは速く、強引なだけでなくしぶとい。
5位にはリチャルドが入り、6位にはバトンが入った。
バトンは3番手グリッド(昨年以来のマクラーレン・ホンダのベストグリッド!)というスタート位置を生かしてうまく走り切った。
スタート直後には2番手を走行していたから、いつものように中団グループに行く手を阻まれることもなく、レースを組み立てることができた。
やはり、スターティング・グリッドは重要だ。
マクラーレン・ホンダは、予選からトップスピードを捨てて雨がらみのコンディションになった時に備えたハイ・ダウンフォースの設定で挑んでいた。
バトンはQ3最後に路面が最も乾く状態のタイミングを待ってタイムを出した。
チームのセッティング戦略と天候の変化、ドライバー技量の三者がそろっての予選結果(5番手タイム)だった。
7位にはグロージャン、8位サインツ、9位ボッタス、10位ウエィレーンが続いてゴールした。
中でも、ウエィレーンは、光るものを見せてくれた。
常にテールエンダーに甘んじていたマシンで予選Q3を突破し、12番手スタート、そして決勝でも見事にポイント・フィニッシュを果たした。
メルセデスが、育てたいドライバーとして今シーズンにマノーのシートを得た。
今後も才能があるところを見せることができれば、近い将来、メルセデスのシートに座っている可能性が高いドイツ人ドライバーだ。
ブリティシュGPは、伝統のシルバーストーンで行われる。
シルバーストーンは、飛行場を改修してできたコースなので高低差のない高速コースだ。
しかしイン・フィールド部分はテクニカルでもある。
シルバーストーンに取って代わられるまではブリティシュGPといえば1986年までは隔年でブランズハッチでも開催されていた。
ブランズハッチは緑が多く、高低差のある自然なコーナーが配置されている英国らしいサーキットだ。
今回、ハミルトン、バトン、パーマーはホームグランプリだ。
フェラーリ、トロロッソ、ザウバー以外のチームは英国に本拠地を置いている。
ハミルトンはここで勝てばロスベルグとポイントで肩を並べることができる。
ホンダはブリティシュGPを前にエンジン(PUの内燃機関部分)をアップデートした模様だ。
マクラーレンも空力の改良を続けている。
ブリティシュGPは、1位ハミルトン、2位ロスベルグ、3位フェッテル、4位マッサ、5位リチャルド、6位ヒュルケンベルグ、7位アロンソ、8位フェルスタッペン、9位ボッタス、10位バトンかな。
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Formula One 2016(9)2016.07.01
ヨーロッパGPはロスベルグが2位以下を寄せ付けず圧勝した。
ロスベルグは予選から圧倒的に速く、このコースに波長の合わなかったハミルトンは自滅して5位に終わった。
ハミルトンは、このレースで優勝してポイント差を解消してチャンピオンシップ争いで有利に立つことを目論んでいただろう。
どっこい、今年のロスベルグは一味違う。
概して、市街地コースはロスベルグのほうがハミルトンより得意なようだ。
フェッテルは、このコースに合わせてうまくセッティングできなかったフェラーリを2位でフィニッシュさせた。
3位に着けたのはモナコGP以来、絶好調のペレスだった。
ペレスは、予選Q3で2番手のタイムをマークして周りを驚かせたが、フリー走行中のクラッシュで破損したギヤボックスを交換したことによるペナルティで5グリッド降格となり、決勝スタートは7番グリッドからスタートした。
そして、決勝レースでも見事な走りを見せたペレスは、表彰台をもぎ取った。
ペレスはロスベルグと同じく市街地コースが好きで、トラクションのかからない状況をうまくコントロールする術を持っている。
昨年は空回りが目立ったペレスだったが、ここにきて急速に評価を取り戻しつつあり、来年のフェラーリ・シートが取りざたされるまでになってきた。
以下、4位ライコネン、6位、ボッタス、7位リチャルド、8位フェルスタッペン、9位ヒュルケンベルグ、10位マッサの順でゴールした。
マクラーレン・ホンダはバトンが11位、アロンソがトラブルでリタイヤというカナダGP同様の結果に終わった。
予選前のプラクティスではバトンが好タイムを出していたが決勝の結果には結びつかなかった。
2016年シーズンも第7戦カナダGPまでにすでに1/3を消化して、ヨーロッパGPからヨーロッパ・ラウンドの7戦が続く。
今シーズンは、メルセデスの二人、ハミルトンとロスベルグだけをとってみても最後までもつれそうだ。
他のチームでも、フェラーリが展開によっては優勝を狙えるようになってきたこと、レッドブルもトップ3を狙えるようになってきたことでグランプリごとの展開から目が離せない。
次のオーストリアGPは、レッドブルリンクで行われる。
A1リンクはエステルライヒリンクをショート・カットしたものだが、レッドブルリンクは2014年のF1開催再開に合わせてA1リンクを近代化させたものだ。
全長は4.3Kmと短くコーナー数も少ない単純なレイアウトだが、周回数が多い。オーストリア人F1ドライバーと言えば3回のワールドチャンピオンに輝いたニキ・ラウダが有名だが、もう少し遡るとヨッヘン・リントというF1ドライバーがいた。
リントは、1970年に、シーズン途中のイタリアGPで事故死したが死後も合計ポイントで抜かれることはなくチャンピオンとなったのだった。
ロスベルグは、2014年、2015年と2連勝している。
ハミルトンは、ここで勝ってヨーロッパGPの失地を回復し、次の母国GPに弾みをつけたいところだろう。
オーストリアGPは、1位ロスベルグ、2位リチャルド、3位フェッテル、4位アロンソ、5位サインツ、6位ライコネン、7位ヒュルケンベルグ、8位マッサ、9位バトン、10位グロージャンかな。
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Formula One 2016(8)2016.06.17
カナダGPはモナコに続いてハミルトンが2連勝した。
ハミルトンはF1デビューイヤーの2007年カナダGPがF1初優勝だから、ジル・ビルヌーブ・サーキットが好きなようだ。
カナダGPにハミルトンが優勝したことによって、ロスベルグとハミルトンのチャンピオンシップポイント差が一気に縮まり、9となった。
2位には5秒差でフェッテルが入った。
予選3番手だったフェッテルはフロントローのハミルトンとロスベルグがスタートで出遅れる隙をついて巧みに前へ出てトップに立った。
しかし、ハミルトンがウルトラ・ソフト+ソフトのワンストップで走り切ったのに対し、フェッテルはウルトラ・ソフト+スーパー・ソフト+ソフトのツーストップだったため逆転されてしまった。
セフティカーが出ていれば結果が逆転していたかもしれない。
ボッタスはフェッテルからさらに41秒も離されてゴールした。
ボッタスはウイリアムズに今シーズン初の表彰台フィニッシュをもたらした。
4位に入ったのは、フェルスタッペンだ。
フェルスタッペンは、レース序盤でリチャルドのほうが速かったのにポジションを譲らず走り切っての4位だ。
リチャルドは序盤に前へ出られなかったことが響いて7位に終わった。
もし、フェルスタッペンがリチャルドを前に行かせていたらリチャルドは表彰台も可能だった。
5位に終わったロスベルグは、スタートで出遅れ、第2・第3コーナーでハミルトンと並んだ時に行き場を失い、大きく後退したことが最後まで響いた。
後続は、6位ライコネン、8位ヒュルケンベルグ、9位サインツ、10位ペレスの順でゴールした。
新型のターボチャージャーを投入したマクラーレン・ホンダはアロンソが11位、バトンが火煙を出してリタイヤトいう結果に終わった。
マクラーレン・ホンダは昨年よりは確実に進歩しているが、ライバルたちも手を休めているわけではない。
フェラーリはモナコでは振るわなかったが、カナダには新しいエアロパーツを投入してきた。
フェッテルのドライビングのおかげもあって予選タイムでポールシッターのハミルトンとのタイム差を0.18秒差まで縮めた。
これは、天候・アクシデントなどの不確定要素なしで対等に決勝を戦うことのできるレベルだ。
レッドブルはベストシャシーとルノーPUのアップデートによって3強に返り咲きつつある。
上位チームはレースごとに進化している。
おかげで、メルセデスの二人芝居ではなく、ドライバーの個性がぶつかり合う戦いが見られるようになって来た。
コースごとに、上位3チーム・6人のドライバーのうちだれが優勝するかわからない状態になってくれると嬉しい。
ヨーロッパGPは、カナダGPのわずか1週間後にアゼルバイジャンで開催される。
コースは首都バクーの市街地に設けられている。
全チーム、ドライバーともに初のコースだ。
今回、ウルトラ・ソフトタイヤは用意されないので、未知の路面とタイヤのマッチングをどうするかチームのセッティング能力が試される。
コースの特性はカナダGPのジルヌーブ・サーキットに近いとされているが未知数だ。
2.1Kmの長いストレートがあるのでメルセデス勢には有利なように見えるが、カナダでフェラーリとレッドブルはメルセデスに肉薄していたからここでも面白い戦いが見られるだろう。
ヨーロッパGPは、1位フェッテル、2位リチャルド、3位ハミルトン、4位ロスベルグ、5位アロンソ、6位ライコネン、7位マッサ、8位サインツ、9位ペレス、10位グロージャンかな。
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Formula One 2016(7)2016.06.10
ハミルトンがモナコGPで今季初優勝を果たした。
昨年のモナコでは勝っていたレースをチームの指示ミスでふいにしたハミルトンだが、今年は運が巡ってきた。
ハミルトンは、昨年の教訓から、トラック上の順位重視の作戦をとり、上位ドライバーの中ではただ一人ワンストップでウエットとウルトラソフトだけを使って走り切った結果の勝利だ。
今年、勝っていたレースをピットのもたつきで失ったのは2位のリチャルドだった。
3位表彰台には、モナコのコースが好きなペレスが登った。
(モナコの表彰台は他のコースと違ってメイン・ストレートから一段上がっているだけなので登るという感じではないが・・・)
ペレスは、これまでモナコでは攻めすぎてクラッシュすることが多かったが、今年はクレバーに攻めた結果の3位フィニッシュだった。
モナコの表彰台で歓喜するハミルトン・ペレスと、2位に入ったのに悔しい表情のリチャルドが対照的だった。
フェッテルは、なぜかモナコ向けのセッティングが決まらなかったフェラーリをなんとか4位に持ち込んだ。
5位にはアロンソが入った。
アロンソは、過去に、ポールをとれる状況の時には予選で限界まで攻めてガードレールに接触することもあった。
しかし、今回はゴールまでしぶとく走る作戦で、他のドライバーが消えていく中、浮上した。
9位に入ったバトンも同様のレース運びながら、雨が弱まりだしたとみてとるや、早々とインターミディエイトにタイヤ交換するなどして上位進出を狙っていた。
チャンピオンを絶ったことのあるドライバーたちは、このあたりが違う。
今回のモナコのライコネンはそうでもなかったが。6位には、予想に反して調子のよかったフォースインディアに乗るヒュルケンベルグが入った。
他には、7位ロスベルグ、8位サインツ、10位マッサがポイント圏でフィニッシュした。
今年のモナコは、予選がとても面白かった。
スペインからすでに兆候は見えていたが、レッドブルのマシンが本当に速くなった。
予選はドライコンディションだったので、レッドブルのリチャルドは、実力でメルセデスより速い予選タイムを出してポールポジションをとった。
しかも、Q2はスーパーソフトを履いてタイムを出していたので、決勝のスタートでは、Q3で使ったウルトラソフトではなくスーパーソフトでスタートできる。
決勝では、スタートでトップに立ってしまえば抜かれることはないから、遅いスーパーソフトでトップはキープして、後半に新品のウルトラソフトを使って後続を引き離すことができる。
素晴らしい戦略と、その戦略を可能にするリチャルドの予選ドライビングだった。
ところが、決勝日は雨で全車ウエットタイヤ・スタートととなり、せっかくの戦略がふいになった。
それでも、リチャルドはポールスタートだったので、レースをコントロールしていたし、ピットがタイヤ交換をスムーズにやっていればハミルトンに前に立たれることもなかった。
次は大西洋を渡ってカナダGPだ。
夏の短いカナダでは、6月は春のような気候だ。
コースは長いストレートとタイトコーナーをつないだレイアウトなのでブレーキとタイヤに厳しい。
今のF1の場合ブレーキだけではなく減速時のエネルギー回生効率とエネルギー・マネジメントも重要だろう。
モナコから始まったハミルトンの巻き返しがシーズンを面白くする。
ウイリアムズもこの手のコースは得意なはずだ。
カナダGPは、1位ハミルトン、2位ロスベルグ、3位マッサ、4位リチャルド、5位フェッテル、6位ライコネン、7位バトン、8位アロンソ、9位ペレス、10位クビヤトかな。
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Formula One 2016(6)2016.05.26
フェルスタッペンがスペインGPで初優勝を飾った。
それまでフェッテルが持っていた史上最年少のF1優勝記録を大幅に更新しての快挙だ。
2位と3位には予選が不調だったフェラーリのライコネンとフェッテルが入った。
フェルスタッペンが今回優勝できたのは、フロント・ローからスタートしたメルセデス2台がスタート直後に絡んでリタイアしてしまったおかげだ。
とは言っても、メルセデス2台以外の20台の中では最も速かったから、メルセデスに不測の事態が発生したところでしっかり優勝をものにすることができたのだ。
F1で優勝したりチャンピオンになったりするドライバーは、運と実力を兼ね合わせて持っている。
アロンソなどはどちらかというと運の悪いほうだが、どうやっても勝ち目のないレースで、前の車に予想外のトラブルが起こった時に、それに乗じて優勝を勝ち取るということを何度もやってきた。
フェルスタッペンは、チャイナGPとロシアGPでのアクシデントからレッドブルを追われたクビヤトに代わって、突然、このレースからレッドブルに乗ることになった。
昨年から乗っているトロロッソより速いマシンを突如手に入れることができたわけだ。
ここまでは、どちらかというと運が良かったといえる。
しかし、並みのF1ドライバーだったら優勝はできなかっただろう。
フェルスタッペンは、週末になって初めて乗るレッドブルのマシンをわずか1日半で乗りこなしただけではなく、Q2では先輩のリチャルドより速いタイムをたたき出し、フェラーリ勢を押しのけて3番手につけていたのだ。
Q3では一発のタイム勝負でリチャルドに負けたが、それでも、決勝レースは4番手グリッドからのスタートだった。
メルセデス2台に何かあればトップに立てる位置をきちんと確保していたのだ。
フェルスタッペンは、決勝レースでも見事なドライビングを披露した。
スペインGPに用意されたミディアムタイヤは比較的長持ちするので2ストップ作戦が可能だった。
とはいえ、フェルスタッペンは後半の32周を1セットのタイヤで走り切ったのだ。
これはたやすいことではない。
タイヤを持たせるためにタイムを落とせば後続に追いつかれてしまうから、優勝するためにはそれほどタイムを落とすわけにはいかない。
普通に速く走ると、タイヤはゴールまでもたない。
そのため、フェルスタッペンは、シケインの立ち上がりでパワーをかけすぎないようにしたり、ショート・シフト(通常のように1速づつ高いギヤにシフト・アップせず例えば3速から5速といったように飛ばしてシフトする)を行ったりしてリヤ・タイヤになるべく負担をかけないように細心の注意を払っていた。
フェルスタッペンは、めったにやってこないチャンスを最大限に生かし、優勝すべくして優勝したのだ。
地元のサインツも検討して6位でフィニッシュしたのだが、フェルスタッペンの快挙の前に霞んでしまった。
次は伝統のモナコGPだ。
コース的には現代のF1には不向きなストリートコースだが、いまだに、最もステータスの高いグランプリだ。
モナコ人F1ドライバーはいないが、父親がF1チャンピオンのロスベルグはモナコ育ちだ。
事実、ロスベルグはモナコを得意としている。
ロスベルグは、去年、チームの戦略ミスで勝っていたレースを失ったハミルトンの後につけていて棚ぼたで優勝できた。
モナコは、PUのパワーによる差が出にくいコースだ。
驚くべき性能のシャシーを持ったレッドブルがメルセデスを実力で打ち負かす可能性も充分ある。
モナコのデータが豊富なマクラーレン・ホンダも他のコースよりいいかもしれない。
どちらにしても、モナコは予選が全て、日曜日より土曜日のほうがおもしろい。
1位ハミルトン、2位リチャルド、3位アロンソ、4位フェッテル、5位フェルスタッペン、6位ライコネン、7位バトン、8位サインツ、9位クビヤト、10位ボッタスかな
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