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about

YUKICHI OTSUKA 大塚雄吉
F1 ウォッチャー
幼少期にF1に魅せられ、50年以上にわたって、日本製のF1が出ていなくても、日本人F1ドライバーがいなくても50年以上にわたってF1を見続けてきた、F1 ウォッチャー。

Formula One 2022(20)2022.10.28

USGPは、フェルスタッペンがタイヤ交換時の10秒近いロスをものともせず優勝した。
2位には、アプッデートが入ったメルセデスで大健闘したハミルトンが入った。
ルクレールは、決勝レースのペースが悪いフェラーリでなんとか3位の座をキープした。

フェルスタッペンはこれで年間13勝を上げたことになり、年間最多勝タイ記録となった。
フェルスタッペンが優勝し、ペレスが4位になったことで、コンストラクターズ・ポイントを575とし、2番手フェラーリに136ポイント差をつけて2022年コンストラクターズ・チャンピオンに輝いた。
USGPの週末に、レッドブル・グループの総帥であるディートリッヒ・マテシッツ氏が逝去したことから、これ以上ない弔いとなった。
マテシッツ氏はF1だけでなく、かつて、オリンピック種目として採用されなかったようなスポーツの振興に力を入れ続けた。
X-Gamesの種目としてポピュラーになったおかげで近年オリンピック種目となった種目も少なくない。

USGPは日本GPのように雨に翻弄されることはなかったが、週末を通じて強風に悩まされた。
タイヤの摩耗が激しいのも、レースの不確定要素を増やしていた。

予選Q1はサインツ、ルクレール、フェルスタッペン、の順で通過した。角田は13番手タイムでQ1を通過した。
予選Q2のタイムはルクレール、フェルスタッペン、サインツ、ラッセル、ハミルトン、ペレス、の順だった。
角田はQ3に進めなかった。
予選Q3はフェルスタッペン、ルクレール、サインツが群を抜いて速く、セクター1はルクレール、セクター2はフェルスタッペン、セクター3はサインツがそれぞれベストタイムを出したが、1周トータルで最も速かったのはサインツ、0.065秒遅れでルクレール、0.092秒遅れでフェルスタッペンという結果になった。
4番手以下は、ペレス、ハミルトン、ラッセルの順だった。

スターティング・グリッドは、ルクレールとペレスがICUとPUを交換したため、サインツ、フェルスタッペン、ハミルトン、ラッセル、ストロール、ノリスの順となった。
サインツにはスタートのプレッシャーがかかる。フェルスタッペンが後列にいるのと横に並んでいるのでは大違いだ。

決勝のスタートで、サインツは出遅れ、1コーナーまでにフェルスタッペンに先を越されてしまった。
焦ったサインツは左曲がりの1コーナーで大きく左にハンドルを切ってコーナー出口でフェルスタッペンの左に出ようとするが、そこへ後ろからきたラッセルがT字型に突っ込み、サインツは回ってしまう。
オープニングラップを終えての順位は、フェルスタッペン、ハミルトン、ストロール、ラッセル、フェッテル、ノリスの順になった。
角田は19番グリッドからのスタートだったが1周で14番手まで浮上した。サインツはピットに戻るが、ラジエターにダメージを負ってリタイヤとなる。

サインツが消えてルクレールは10番手、ハミルトンのメルセデスは1周あたり0.5秒ほど遅いのでなので、何もなければ、フェルスタッぺんの優勝は1周目にして決まったようなものだ。

フェルスタッペンは14周目にピットインしてミディアムからハードハミルトンは13周目にピットインしてハード・タイヤに交換した。
フェルスタッペンは14周目にピットインしてハード・タイヤに交換する。
ルクレールは、15周めには2番手まで上がったがまだタイヤ交換を済ませていない。

18周目にボッタスがコースアウトしてストップしたことにより、セフティカーが出動し、この間に、ここまでスタート・タイヤで我慢したルクレールがタイヤ交換して4番手でコースに復帰する。
22周目にフェルスタッペン、ハミルトン、ペレス、ルクレール、ラッセル、フェッテルの順で再スタートが切られた。
再スタートから半周ほどしたところで、ストロールとアロンソが接触、アロンソの車の前輪は数百メートル宙を浮いたまま走った。
幸い、新時代のベンチュリーカーでは、それ以上のことは起こらなかった。来年に向けて安全性の検証は必要だろう。

26周目に再スタートしてしばらくは、順位に変動がなかったが30周目にルクレールがペレスを交わして3番手に上がった。
ガスリーと角田は7番手と8番手を走っていた。
ところが、角田の方が速かったにもかかわらずチームがオーダーを出さなかったために、角田は、ここで7〜9秒損をした。

ハミルトンは35周目にピットインしてタイヤをハードに交換して、一旦6番手まで下がる。
フェルスタッペンは36周目にピットインして対抗するが、タイヤ交換に手間取り、通常より7秒以上ピットタイムを浪費したため、5番手に下がってしまった。
41周目にはハミルトンがトップに立ち、3秒差でフェルスタッペンが追う展開になった。
3番手のルクレールは、フェルスタッペンを追うというよりはペレスに抜かれないようにするのがやっとだった。

レース終盤、ハードで逃げるハミルトンをミディアムのフェルスタッペンが追い詰め、50周目に前へ出た。
ハミルトンは、抜かれた後も諦めずにフェルスタッペンに食い下がるが、ゴールした時は5秒の差がついていた。
ゴール後にハミルトンが”so close, so far”と言ったのが今回のハミルトンのレースを象徴するような詩的な表現だった。

次は、メキシコ・シティGPだ。
標高2300mにあるエルマノス・ロドリゲス・サーキットは、ペレスが登場するまでは、メキシコの英雄的F1ドライバーだった、
ロドリゲス兄弟に由来している。
空気の薄いコーチのレースでドライバーとPUの心肺能力が要求される。
このスタジアムに詰めかける観衆は全員ペレスを応援するために来ていると言っても過言ではない。
ペレスがホーム・グランプリでフェルスタッペンを打ち負かすことができるか見ものだ。

USGPは1位フェルスタッペン、2位ペレス、3位ルクレール、4位ハミルトン、5位アロンソ、6位角田、7位サインツ、8位ノリス、9位ボッタス、10位フェッテルかな。

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉

Formula One 2022(19)2022.10.19

日本GPは、スタート直後に第2コーナーでトップに立ったフェルスタッペンが優勝した。
2位の座は、ルクレールをファイナルラップの最終コーナーまで追い詰めてコースアウトを誘った、ペレスが奪い取った。
3位はルクレールとなった。
フェルスタッペンが優勝し、ペレスが2位になったことで、残り4戦で、フェラーリ・コンビが最大得点をとっても、フェルスタッペンを上回ることはない。
ホンダのホームコースである鈴鹿でフェルスタッペンのチャンピオンが決まった。
ホンダPUの開発を率いてきた浅木泰昭がコンストラクターズ・トロフィーを受けとるために鈴鹿の表彰台に立った。

日本GPの週末は雨に翻弄された。
金曜日のFP1とFP2は雨で、日曜日が雨の予報となっていたから、チームは、主にインターミディエイト・タイヤのパフォーマンスチェックをしたり、決勝に向けたセッティングを試していた。
土曜日は晴れたので、FP3は午後の予選に向けての唯一のドライ。テスト・セッションとなった。

予選Q1はフェルスタッペン、サインツ、ルクレールの順で通過した。
F4の鈴鹿コース・レコードを持つ角田はブレーキに問題を抱えながらもQ1を12番手で通過した。
予選Q2のタイムはペレス、アロンソ、フェルスタッペン、オコンの順だった。角田は13番手タイムでQ3には進めなかった。
予選Q3でトップタイムを出したのはフェルスタッペンだった。
フェルスタッペンから0.1秒遅れでルクレール、続いて、サインツ、ペレス、オコン、ハミルトンの順となった。

決勝は雨、フェルスタッぺンはレコノサンス・ラップのスタート練習でラウンチ・コントロールのセットアップが最悪だと無線で伝えていたが、その後の第2コーナーでは外側のラインを通って路面の水の量とグリップを確認していた。
そして、このフェルスタッぺンの動きが日本GPの優勝とチャンピオンの座を手繰り寄せることになる。

決勝は、雨の中、殆どの車がインターミディエイトタイヤを履いた。
スタンディング・スタートで始まったレースは、第1コーナーの入り口までにルクレールがフェルスタッペンに並びかけノーズの長さほど前にいた。
ところが、フェルスタッぺンは、そのままルクレールと並んで第1コーナーのアウト側を走り続け、第2コーナーの入り口で前に出てS字に入った時には完全にルクレールの前を走っていた。
これで、フェルスタッぺんの勝利はほぼ決まった。
フェルスタッペンは度胸で1コーナーのアウト側から並びかけたのではなく、スタート前からイン側よりもアウト側のグリップが良い事を知っていて、あえてアウト側を走り、第2コーナーで抜いたのだ。
フェルスタッぺンは2016年のブラジルGPでも、雨で中断した後のラップで全コーナーの水の深さとグリップを走りながら頭に入れておいて、再スタート後に驚くべき速さで走り、13台を抜いて3位でフィニッシュした。
フェルスタッペンは単にマシンコントロールがずば抜けてうまいだけではないのだ。

オープニングラップのS字以降は、フェルスタッペンを先頭にルクレール、ペレス、オコン、ハミルトンが続く。
後方では、サインツがスピンしてクラッシュし、アルボンがマシントラブルで車を止めた。
そのほかにもスピンが続出したため2周目が終わったところで赤旗中断となった。

赤旗から2時間経って、雨が小降りになっったので、セフティカー先導の後、ローリング・スタートでレースは再開された。
レギュレーションにより、雨の赤旗再会後は全車ウエット・タイヤでのスタートとなったが、コンディションはインターミディエイトに向いているようだ。
再スタート直後に、後方にいたラティフィとフェッテルはピットインしてインターミディエイトに交換した。
その後、フェルスタッペンをはじめとして、各車ピットに入ってインターミディエイトに交換する。
ウエットで走り続けた車もあったが、結局インターミディエイトのほうが速く、程なくタイヤはインターミディエイトに揃う。
残り31分となった時点で、トップ3はフェルスタッペン、ルクレール、ペレスとなった。

フェルスタッペンはルクレールとの差をじわじわと拡げていき、残り16分となったところで、13秒まで開いた。
残り3分となったところでフェルスタッペンとルクレールの差は22秒、ルクレールとペレスの差は0.4秒となった。
ルクレールは必死に防戦するがタイヤが終わっている。
ペレスは終了10分前ごろから急速にルクレールに追いついた。
ペレスは、F1デビュー当時からタイヤを耐たせるのが本当にうまい。
ルクレールはファイナルラップの最終シケインでマシンを抑えきれず、コースアウト、ショートカットしてペレスの前で戻って先にチェッカーを受けたが、コースアウトでアドバンテージを受けたとして5秒加算ペナルティを受け、ペレスと順位が入れ替わった。
フェルスタッペンは雨のスプリントレースで、2位以下に30秒以上の大差をつけてゴールラインを横切った。

次は、US GPだ。
サーキット。オブ・ジ・アメリカズはオーバルのハイスピード・レースが好きなアメリカらしくない中低速コーナーの連続するコースだ。
トラクションもいい方ではないので、タイヤ摩耗が厳しいフェラーリにとっては有利かもしれない。
アメリカ人ドライバーはいないが、アメリカ人がオーナーのハース・チームにとってはホームレースとなる。
例年、メキシコからはペレスのファンが大勢詰めかける。

USGPは1位フェルスタッペン、2位ペレス、3位ルクレール、4位ハミルトン、5位サインツ、6位角田、7位ラッセル、8位アロンソ、9位ノリス、10位マグネッセンかな。

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉

Formula One 2022(18)2022.10.07

シンガポールGPは、ペレスがスタート直後にトップに立ち、一度もトップの座を譲ることなく優勝した。
ペレスはモナコに続いての今季2勝目だ。モナコもシンガポールもストリート・コースだから、ペレスはストリートス・コースが好きなのかもしれない。
ルクレールは、レースを通じてペレスにプレッシャーをかけ続けたが、ペレスの前に出ることはできなかった。3位にはサインツが入った。

熱帯のシンガポールGPは、昼間の暑さを避けて夜に照明でコースを照らして行われる。
熱帯なので夕刻近くになると短時間スコールが降ることが多い。
ところが、グランプリ・ウィークの予選日と決勝日はいつものスコールより長く雨が降り、ウエット路面での走行となった。
これによって、大番狂わせが起こることになった。

予選Q1はウエット路面の中、ほとんどの車がインターミディエイトで走った。
トップタイムを出したのはフェルスタッペン、2番手以下は、ハミルトン、ルクレール、ペレスが続いた。
レッドブルのマシンは、低速コーナーの多いこのコースには向かないと言われていたが、チームは予選開始までにセットアップを決めてきた。

予選Q2のタイムはルクレール、ハミルトン、フェルスタッペン、ペレスの順だった。

予選Q3が始まる頃になると路面は乾き始め、ところどころ濡れた部分はあるがドライのソフトタイヤでなんとか走れる状態になった。
ピットインしてタイヤ交換するとタイムアッタクに使える時間が減るので各車セッションを走り切れるギリギリの燃料を積んで周回を続ける。
タイヤの熱でマシンが走れば走るほど路面は乾くので、Q3終了間際になるほどタイムは良くなる。
そんな中、ルクレールがトップ・タイムを出した、ルクレールから僅か0.02秒遅れでペレス、さらに0.03秒遅れでハミルトンが続いた。
フェルスタッペンは、ルクレールがトップタイムを出した時セクター2まではルクレールを上回るペースで来ていたが、そのままでは僅かに届かないリスクもあるとチームが判断し、最後にもう1ラップすることを選択した。
フェルスタッぺンの最後のアタックはセクター2まででルクレールよりも十分速く、セクター3をまとめればポールポジションは確実と思われた。
ところがピットからは最終コーナーでピットインせよとの指令が出た。
フェルスタッぺんの車は予定より1周多めに走ったために燃料が足りなくなってしまったのだ。
このため、フェルスタッぺんはQ3前半に出したタイムにより予選8番手となってしまった。
フェルスタッペンは難しい状況に追い込まれた。

決勝のスタートは、2番グリッドのペレスが1コーナーでポール・ポジションのルクレールの前に出てレースをリードするかたちで始まった。
3番手にはサインツがつけている。フェルスタッペンは、スタートでアンチストールが作動して12番手まで下がってしまった。
ルクレールはペレスの後についているがタイム差を1秒以下には詰められずこう着状態になっている。
フェルスタッペンは8周目までに9番手まで順位を上げた。
8周めにジョーがラティフィーに壁に押し付けられてクラッシュし、セフティカーが出動する。

11周目にレースは再スタートし、上位はセフティカー出動中にピットインしていないので順位に変動はない。
その後、フェルスタッぺンは6番手まで上がってきた。

29周目にオコンのマシンがマシントラブルで止まったためVSCが発動するが、誰もピットインしない。
VSC明けにフェルスタッペンがノリス、ハミルトンがサインツを抜こうとするがうまくいかない。
35周目には、ルクレール、ペレス、サインツの順でピットに入ってタイヤ交換するが順位は変わらない。

36周目に角田がブレーキング・ミスでクラッシュしてセフティカーが出動した。

残り34分となったところでセフティカーが引っ込み、そのタイミングでフェルスタッぺんはノリスを交わそうとするが、失敗して8番手まで順位を落とした。
さらに痛めたタイヤを交換するためにピットに入ったので14番手にまで落ちる。

この後、最終盤にペレスはペースを上げてルクレールとの差を7秒まで広げてチェッカーを受けるまで走り切った。
ペレスはセフティカーの後につけていた時に近づきすぎたことによるペナルティを5秒受けたが、順位は変わらなかった。
フェルスタッぺンは最終的に8位でゴールした。

レッドブルは予選の際どい場面での戦略ミスでフェルスタッペンを優勝させることができなかったが、代わりにペレスがフェラーリ勢を抑えて優勝したので、チームとしてのダメージは少なかった。

シンガポールGPを終えて、フェルスタッペンのチャンピオンシップ・ポイントは341となった。ルクレールは237ポイントとなったので、フェルスタッペンとの差はは104ポイントに縮まった。
今回優勝したペレスはルクレールまで2ポイントに迫った。残りは僅か5レースしかなく、次の日本GPでチャンピオンが決まる可能性が出てきた。

次は、シンガポールGPと同様、3年ぶりに開催される日本GPだ。
鈴鹿サーキットは連続した低速、中速、高速コーナーが入り混じり、立体交差によって右回りと左回りのコーナーがバランス良く設置されたテクニカルな高速コースなので、ドライバーのドライビングスキルが試される。
ホンダの本拠地だから、ホンダ製PUを使うレッドブルとアルファタウリにとってはホームレースのようなものだ。
フェルスタッペンは鈴鹿でチャンピオンを決めたいだろう。鈴鹿のコースは本格的なサーキット舗装なのでトラクションはいいがタイヤの摩耗も激しい。
角田にとっては始めてのホーム・グランプリとなる。角田はF4時代に鈴鹿で圧倒的な速さを見せていたから、得意なコースであることに間違いはないが、F4とF1では全く性能も挙動も違うので、どうなるかはふたを開けてみないとわからない。
大観衆の応援が力になることだろうから、気負わず実力を発揮してほしいものだ。
日曜日の予報は曇り/雨となっている。小雨ならばいいが、川の流れるような大雨とならないことを祈りたい。

日本GPは1位フェルスタッペン、2位ペレス、3位ルクレール、4位ハミルトン、5位サインツ、6位角田、7位ラッセル、8位ガスリー、9位アルボン、10位フェッテルかな。

2022 ©Yukichi Otsuka, All Rights Reserved

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉

Formula One 2022(17)2022.09.30

イタリアGPでフェルスタッペンは7番手スタートからあっという間にトップに立ち、2位のルクレールをまったく寄せ付けず快勝した。
3位にはラッセルが入った。
これで、フェルスタッペンのチャンピオンシップ・ポイントは335となった。
ルクレールは219ポイントとなったので、フェルスタッペンとの差はは116ポイントまで広がった。
ルクレールが4連勝して、その4戦でフェルスタッペンがすべてリタイヤでも追いつかないポイント差になってしまった。

イタリアGPで、レッドブルは、他のチームがモンツァ用の小型ウイングを用意してきたのに対して、ダウンフォースを稼げるサイズのウイングを持ち込んできた。
他のチームは高速コースのモンツァで最高速を稼ぐためにはドラッグ(空気抵抗)を減らす必要がある。
しかし、レッドブルのマシンは、元々ドラッグの少ないボディ形状なので、他より多少大きなウイングにしても他と同じくらいの最高速を出すことができる。
大きめのウイングをつければ、コーナーやシケインを速く走れるだけでなく、トラクションがいいのでタイヤが空回りすることなくタイヤに優しいセッテイングにマシンを仕上げることができる。
ストレートのアドバンテージがなくても、最終コーナーを早く立ち上がることができて、DRSを使えばストレートエンドで抜くことも可能だ。
レッドブルよりドラッグの大きい他のチームのンでは真似のできない芸当だが・・・。
レッドブルは、フリープラクテすの時間のほとんどを完全に決勝向けセッティングを煮詰めるのに費やしていた。

予選は、Q3でルクレールが渾身の走りでトップタイムを出し、フェラーリのホームレースに詰めかけたティフォシを喜ばせた。
フェルスタッペンは0.161秒差で2番手、サインツはフェルスタッペンからに0.123秒差の3番手タイムを出した。
予選のサプライズは、虫垂炎で欠場となったアルボンの代役に指名され、急遽ウイリアムスから出走することになったニック・デフリースで、初のGP予選で13番手タイムを出した。
モンツァは残り7戦の中では、最もストレートで抜くことが容易なコースなので、残りのレースのために新しいPUを取っておきたいチームがマシンの一部または全部のPU交換を行ったため、グリッドダウン・ペナルティが錯綜して、決勝のグリッドは予選のタイム順とはかけ離れたものになった。
決勝のスターティンググリッドは、ルクレール、ラッセル、ノリス、リチャルド、ガスリー、アロンソ、フェルスタッペン、デフリース(!)の順となった。

決勝のスタートは、ルクレールとラッセルの鍔迫り合いで軽い接触があった以外は、スムースにいった。
1周目を終えたところの順位はルクレール、ラッセル、リチャルドとなったが、7番手から4番手にまで順位を上げたフェルスタッペンは、ホームストレートでリチャルドを抜き去り、2周目の頭には3番手にまで進出した。
フェルスタッペンは5周目にはラッセルを下して2番手にまで上がってきた。
フェルスタッペンがルクレールまで2秒と迫った12周目にVSCが出た、ルクレールはすかさずピットインしてソフトからミディアムに交換した。
フェルスタッペンとラッセルはコース上に留まったので、フェルスタッペンがトップ、ラッセルが2番手、ルクレールはトップから13秒差の3番手となった。
フェルスタッペンは26周目にピットインしてソフトからミディアムに交換する。
フェルスタッペンはスタートタイヤでルクレールの2倍の距離を走った。
この時点でルクレールとフェルスタッペンのタイム差は10秒。
フェルスタッペンはルクレールより12周若いタイヤで追い上げを開始する。
フェルスタッペンはルクレールより1周あたり0.5秒以上速いペースで追い上げる。
ルクレールはタイヤを使い果たし、34周目にソフトタイヤに交換した。
この時点で、ルクレールはフェルスタッペンの20秒後方に位置することになった。
48周目にセフティカーが入ったところで、フェルすスタッペンはソフトタイヤに交換してルクレールの前でコースに戻った。
これで、フェルスタッペンは再スタートになった時にフレッシュなソフトタイヤで戦える。
しかし、事故車の処理に時間がかかり、セフティカー先導のままレースは終了となった。
もし、最後数周のドッグファイトがあったとしても、順位に変動はなかっただろう。

次は、3年ぶりに開催されるシンガポールGPだ。
シンガポールの市街地コースを夜にライティングのもと走るレースだ。
中低速型のストリートコースなのでフェラーリに向いたコースだ。
大型のウイングを装着しても大きなディスアドバンテージにはならない。
残り6戦が行われるコースの中では最もレッドブル・マシンのアドバンテージを出しにくいコースだ。
フェラーリ・ルクレールはシンガポールで勝ってモナコの無念を晴らしてほしい。
メルセデスもこのコースなら勝つチャンスがある。
フェッテルは当時性能が劣るフェラーリでメルセデスを破って優勝したことがある。

シンガポールGPは1位ルクレール、2位フェルスタッペン、3位ハミルトン、4位ペレス、5位アロンソ、6位フェッテル、7位角田、8位リチャルド、9位ノリス、10位ボッタスかな。

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉

Formula One 2022(16)2022.09.09

オランダGPでフェルスタッペンはポールからスタートし、終盤にハミルトンとトップを競う場面があったが、最初にチェッカーを受けた。
フェルスタッペンは今期10勝目となった。2位にはラッセル、3位にはルクレールが入った。
フェルスタッペンのチャンピオンシップ・ポイントは310まで積み上がった。
ペレスとルクレールは201ポイントで並び、フェルスタッペンとの差はは109ポイントになった。
ペレスとルクレールは、残り7戦でフェルスタッペンが複数回リタイヤでもしない限り、ひっくり返すことができないほど差をつけられた。

オランダGPのレッドブル勢はベルギーGPの時とは違い、持ち込んだセッティングを大きく外し、苦闘していた。
P1開始当初から好調だったのはフェラーリとメルセデスだった。
直線の短いサンドフォールトでは、レッドブルのマシンはスパほどの優位性が保てないのではないかと危惧されていた。
予想どうり、金曜日のP2が終わった時点で、フェルスタッペンはルクレールとラッセルに先を越されていた。
レッドブルは金曜日の夜にハードワークをして土曜日の朝にはセッティングを大幅に変更してきた。
フェルスタッペンは、P1開始早々にマシントラブルが出てロングランのテストができていなかったので、P3は決勝に向けたセッティングの確認に時間を割いたためか、ルクレール・ラッセルとのタイム差はP2からあまり縮っていないように見えた。

予選Q1が始まると、上位3人のドライバーの顔ぶれはフリープラクティスの時とは入れ替わっていた。Q1のトップはフェルスタッペン、2番手ハミルトン、3番手角田という結果だった。
角田の3番手タイムはセッション終盤にトラック・エボリューション(走行したマシンのタイヤのゴムがサーキット路面に付着してグリップが向上する)を利用して出したものだった。
それにしても、角田はP3では16番手タイムだったから、バンクの上側をうまく使ってタイムを上げる走り方でも見つけたのだろう。
予選Q2は、サインツ、ラッセル、フェルスタッペン、ルクレールの順だった。
この4人が1分10秒台を出した。フェルスタッペンはQ2突破に充分なタイムを出していたので、深追いせず決勝用にソフトタイヤを1セット温存した。
角田は10番手タイムを出して今期4回目のQ3進出を果たした。
予選Q3は、フェルスタッペン、ルクレール、サインツという結果になった。
ハミルトンと角田はトラックエボリューションをフルに利用しようとして、予選終了間際にアタックしていたが、前でアッタクしていたペレスが最終コーナー手前でスピンして、黄旗がでたためタイムアップできず、4番手と9番手に終わった。

決勝のスタートは、スムーズで、オープニングラップを終えると、フェルスタッペン、ルクレール、サインツ、ハミルトン、ペレス、ノリス、ラッセルの順でホーム・ストレッチに戻ってきた。
上位7車のスタートタイヤは、フェルスタッペン、ルクレール、サインツ、ペレスがソフト、ハミルトン、ノリス、ラッセルがミディアムだ。
ソフト組は2ストップ、ミディアム組は1ストップが予想される。
メルセデス勢はレッドブル、フェラーリ勢がピットに入った後走り続けて前にでる戦略だ。
15週目、トップフのフェルスタッペンと2番手のルクレールの差は3秒ある。
ここで、サインツとペレスがピットインしてタイヤをミディアムに交換した。

ルクレールは18周目にピットインしてタイヤをミディアムに交換する。
この間に、ハミルトンとラッセルが前にでる。19周めには、フェルスタッペンがピットに入ってミディアムに交換する。
20周目には、ハミルトン、ラッセル、フェルスタッペン、ルクレール、ペレス、サインツの順になった。
この時点でのハミルトンとフェルスタッペンの差は約9秒ある。
フェルスタッペンは、早めにハミルトンを抜いておかないと、ワン・ストップのハミルトンに最終的に前に出られてしまうことになる。
フェルスタッペンんは周回毎に0.6秒平均でハミルトンとの差を詰めていった。

ハミルトンはフェルスタッペンが1.8秒後方にまで迫った30週目にピットインしてハードタイヤ!に交換した。
メルセデス・チームは、序盤でハードに交換したアロンソ他のペースがいいことを掴んでいた。
これでゴールまでノンストップで行ける。
フェルスタッペンが次のタイヤ交換をするまでに、21秒以内につけておけば、フェルスタッペンの前に出ることができる。
ハミルトンがコースに戻った時点でのフェルスタッペンとの差は約14秒だった。
フェルスタッペンはハミルトンとの差を21秒以上に広げようとするが、ハードを履いたハミルトンは速く、タイム差は一旦19秒まで広がったが、48周目には14秒差にまで縮まってしまった。

48周目に角田がリアのデフ(?)のトラブルでコース上にストップしたためVSCが出る。
フェルスタッペンは、即座にピットインしてハードタイヤに交換する。
ハミルトンもピットインしてミディアムタイヤに交換した。
これで、フェルスタッペンがトップに立ち、ハミルトンは13秒差を追い上げる展開となった。
ミディアムを履くハミルトンはファーステストラップを連発しながら55周目にはフェルスタッペンまで11秒と迫った。

55周目にボッタスが車をコース上に停めたため、セフティカーが出動した。
フェルスタッペンは、すかさずピットインしてソフトタイヤに交換した。
ハミルトンはトップの座を手に入れるためコース上に留まり、ラッセルはピットに入ってソフトタイヤに履き替えてフェルスタッペンの背後につけた。

セフティカーにより各社の間隔は詰まった。
ハミルトン、フェルスタッペン、ラッセル、ルクレール、ペレス、サインツの順に並び、60周目が終わったところで再スタートしとなった。
フェルスタッペンはコントロールライン通過直後にハミルトンに並びかけ、1コーナーで鮮やかに抜き去った。
その後、使い古したミディアムで走るハミルトンは、ラッセルとルクレールにも交わされて4位でゴールすることになった。
レッドブルとメルセデスは、それぞれのチームの総力を結集して、見応えのある攻防を見せてくれた。
フェラーリはレッドブルに匹敵するマシンを持ちながら、タイヤの摩耗が早かっただけでなく、戦術面で劣ったことやピット作業の乱れなどでメルセデスの後塵を拝する結果となった。

次は、夏休み明けの3連戦を締めくくるイタリアGPだ。
モンツァは言わずと知れた高速コースだ。
各車、モンツァ用の小型ウイングを持ち込んでストレート・スピードを1Kmでも上げようとしてくる。とは言っても、ストリート以外でも速くないとラップタイムは速くならない。
今シーズンのパフォーマンスからして、モンツァにはレッドブル、フェラーリ、メルセデスの順で適性がマッチしているように思われるが、オランダGPをみてもわかるように、ちょっとしたセッティングの適合性や路面温度とタイヤの使い方、レース中の戦略によって結果が変わるほどチームの実力は接近している。
イタリアは、英国のについでベースとするチームが多い国だ。
フェラーリとアルファタウリはイタリアのチームだし、アルファロメオもスイスのチームだがイタリア名のチームだし、ハースもイタリアにファクトリーがある。
しかし、なんといってもフェラーリが活躍しないことには盛り上がらない。

イタリアGPは1位フェルスタッペン、2位ペレス、3位ルクレール、4位サインツ、5位ハミルトン、6位ラッセル、7位フェッテル、8位ボッタス、9位角田、10位ノリスかな。 

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉