YOUCHOOSE

about

TSUGIO NISHIMURA 西村次雄
フォトグラファー
1973年、九州産業大学芸術学部写真科卒。同年渡米。1979年、「STUDIO BB」を設立。デジタルの可能性にいち早く気づき、雑誌・広告を中心に一眼レフカメラを駆使して活躍中の”IT写真家”である。建築物、料理、人物、商品、そして動物・植物・昆虫と被写体の幅も極めて広い。

氷の花2013.01.18

底冷えの夜が明けると、美しい氷の花を咲かせる植物がいる。
数日前に都心の公園でシモバシラの植物は見たのだが、時は昼すでに跡形も無く消え去っていた。
見たいと思ったらトコトン探さずにはいられない性格。
ならば、都心が2〜3℃でも高尾山へ登れば昼間でも見られるはずと出かけてみた。
高尾山ビジターセンターで情報を仕入れ北斜面を目指す。
ほどなく日陰の湿っぽい場所にひっそりと氷の花が咲いているのを見つけた。
それは、落ち葉の中にひっそりと咲いていて、近づくと体温と息で溶けてしましそうで、息を止め霜が降りるようにシャッターを切る。

シモバシラ(シソ科の多年草)

詳しくはコチラ(高尾山総合インフォメーション)
http://www.takaosan.info/topics66.htm

この時の撮影技法
(動かない被写体の露出補正はシャッター速度で行う)
周りが暗いので、氷は露出オーバー(白く飛んでいる)になりがちだ。
そこで、露出補正という知識が必要になってくる。
表現したいポイントは氷の花であるから、氷の質感がキーポイントである。
とりあえずマニュアルに設定して一枚撮影する。
そして、モニターでヒストグラムを確認。
氷の花が露出オーバーになっていないかチェックする。
もしヒストグラムの山が右端へ沢山かたよっていたら露出オーバーなのでシャッタースピードを早くする。
決して絞りで調整してはだめです。
理由は、以前のべた(秋を告げるクロナガアリ)被写界深度が大きく関わってきます。
絞りが変わるとピントの合う範囲が変化して作画意図が台無しになってしまうからです。

カメラ設定
上:絞り値:F11、シャッタースピード:1/80秒,ISO感度設定:800、露出モード:マニュアル、露出補正:-0.3(ニコンはRGB対応)、ホワイトバランス:オート(Rawデータで記録のため)、測光モード:中央部重点測光、ピクチャースタイル:スタンダード、焦点距離60mm

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像にも使用)

使用機材

Nikon D800、AF-S VR Micro-Nikkor 60mm f/2.8G

POSTED BY:
tsugionishimura_image

TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

極楽極楽2012.12.17

何年も風邪をひいていない事が自慢のひとつでもあったが、とうとう風邪をひいてしまった。
そして、これには嬉しくないオマケまでついていた。
ゴホゴホと咳をしたさい、「ギクッ!」と腰まで痛めてしまったのだ。
それなのに、翌日は3本のタイトな撮影が控えていたのだが、さいわいノロウイルスではなく事なきをえた。
こんな時には、地獄谷のスノーモンキーさまのようにゆっくりと湯につかり「極楽極楽」などとつぶやいてみたいものである。

地獄谷のスノーモンキー
詳しくはコチラ
http://www.jigokudani-yaenkoen.co.jp/japanese/html/snowmonkey_outline.htm

この時の撮影技法(湯煙の中の極楽を捉える)
湯煙の中の「極楽極楽」の表情を捉えたかったので、低温と湯煙でレンズが曇るのであえてそれを利用する。
すると、ソフトフォーカスがかかりスノーモンキー至福の一瞬を捉える事ができました。
クリアな画像も良いけれど、臨機応変に撮影環境の作用をうまく使う事も大事な撮影技法ではないでしょうか。

カメラ設定
絞り値:F/8.0、シャッタースピード:1/180秒,ISO感度設定:400、露出モード:マニュアル、露出補正:なし、ホワイトバランス:オート、測光モード:部分測光、ピクチャースタイル:スタンダード、レンズ焦点距離:200mm

使用ソフト
PhotoshopCS6 Raw現像にも使用
(新しいCS6は処理速度もパワフルに進歩しています)

使用機材

Canon EOS-1Ds Mark II、EF70-200mm F2.8L IS USM

POSTED BY:
tsugionishimura_image

TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

京の紅葉狩り2012.11.27

今月4回(香、新撰組の足跡、インテリア、紅葉)取材で京都へ出かけた。
紅葉の時期はできれば避けたいけれど、リクエストが多いので京都の紅葉は外せない。
夕刻、清水寺の夕景を狙い「ネネの道」の入り口に立つ。はやくも人で溢れている、覚悟を決め「二年坂から産寧坂」へ向かう。
まるで正月の初詣状態でなかなか前に進めないので、少しばかりあせる。
はたして日の入り迄、目的のポイントまでたどり着けるか・・・。
まさに間一髪。祈るようにシャッターを押した。

清水寺
コチラをどうぞ
http://ja.wikipedia.org/wiki/清水寺
http://kiyomizuderara.com/lightup-yakan/

この時の撮影技法(人混みでの道具立て)
人で溢れている場所では他の人の迷惑にもなるので、道具もシンプルにまとめたい。
移動は混雑で動けないのでタクシーを止め、電車と徒歩で目的地まで移動する。
若ければフル装備で出かけるけれど、何回も通った場所でもあるし、撮るイメージが固まっているので必要最低限に押さえる。
道具は紅葉の一枚一枚を解像できるニコンD800にレンズは2本持参。
AF-S NIKKOR 24-85mm f/3.5-4.5G ED VR,70-200mmF2.8の2本のみの軽装で出かけた。
使ったレンズは24-85mmのみ。本当は14-24mm f/2.8も持って行きたかったけれど重いので断念、若ければ・・・。
それにしても、今回使用したズームレンズ写りも良く、軽くてとても重宝した。

カメラ設定
絞り値:F/9.0、シャッタースピード:1/40秒,ISO感度設定:400、露出プログラム:マニュアル、露出補正:-1/2、ホワイトバランス:オート、測光方式:評価測光、ピクチャースタイル:風景、レンズ焦点距離:24mm

使用ソフト
Raw現像ソフト:Lightroom3、最終調整PhotoshopCS5使用

使用機材

NIKON D800、AF-S NIKKOR 24-85mm f/3.5-4.5G ED VR

POSTED BY:
tsugionishimura_image

TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

ハラビロカマキリとドジョウ2012.10.30

田んぼの脇を流れる小さな小川で、平泳ぎのアマガエルを撮影していたら、横からハラビロカマキリがフラフラと犬かきで入水してきた。まるで酔っぱらいのおじさんみたいに、視線が定まっていないように見えなんだか気持ち悪い。と、そこへ泥の中から♪ドジョウが出て来てこんにちは♪なんて、言ったか言わなかったか、泥の中から現れるなり、いきなりカマキリのお尻あたりをさかんにつつくではないか。(写真のシーン)それは、もしかしてハリガネムシがハラビロカマキリのお尻から出て来ているところであろうか?

ハラビロカマキリは自分の意志で入水したのではなく、寄生虫のハリガネムシに操られて水辺にやって来たと思われる。これはラッキー、とカメラを構えていたがドジョウにつつかれてもカマキリは気持ち良さそうに身を任せているだけで反応があまりない。それから1分位経っただろうか、私の期待は木っ端みじんに裏切られドジョウ君は何事も無かったように何処へとス〜ッと消えてしまった。お〜い!野田君チョットでもいから解散時期を、じゃなくて・・・ハリガネムシ君のお顔が出てきていたかどうか教えて頂戴、と聞けるものなら聞きたいのだがドジョウだけにドジョウにもならない。

ハリガネムシ
勇気のあるお方はコチラをどうぞ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ハリガネムシ
http://image.search.yahoo.co.jp/search?p=ハラビロカマキリ%E3%80%80ハリガネムシ&aq=-1&oq=&ei=UTF-8

この時の撮影技法(動きを表現する)
水に浮いているカマキリが動いているように見せるにはどうするか?
それは、カマキリが泳ぐ動作で水が波打ち光の波紋が出来る、そこでパチリ。
露出プログラムは、レンズが300mmという事で高速シャッターが切れるように絞り優先で1/500秒に設定。これでカマキリとドジョウの動きを止め、光の波紋が出た瞬間にシャッターを押せば動きが表現出来るという塩梅です。それと、300mmの望遠レンズなら被写体との距離間がとれるのでカマキリにもドジョウにも警戒される事無く密かに撮影出来るのです。

この日のカメラシステム
300mm望遠レンズと60mmマクロレンズを付けたカメラ2台態勢でどんなシーンでも素早く対処出来るように、リュックには24〜85mmスームレンズを付けたボデーとストロボが3台入っています。いざという時に、レンズ交換などしている余裕はありませんから。

カメラ設定
絞り値:F/4、シャッタースピード:1/500秒,ISO感度設定:400、露出プログラム:絞り優先、露出補正:-1/2、ホワイトバランス:オート、測光方式:評価測光、ピクチャースタイル:スタンダード、レンズ焦点距離:300mm

使用ソフト
Raw現像ソフト:Lightroom3、最終調整PhotoshopCS5使用

使用機材

Canon EOS 5D Mark II、EF300mm f/4L IS USM

POSTED BY:
tsugionishimura_image

TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

ニホンミツバチの防御2012.10.23

オオスズメバチがニホンミツバチの巣の前でホバリングをして、巣に帰って来るニホンミツバチを狩っていた。
首尾よく空中で捕まえると肉団子にして巣に持ち帰る、それを何回も繰り返していた。
観察すると、オオスズメバチにも狩りの上手下手がいる。
その中の下手なオオスズメバチが、じれたのか警戒の羽音を繰り返すニホンミツバチの巣の入り口に、うかつにも着陸をしてしまったのだ。
その瞬間、果敢な一匹のニホンミツバチがオオスズメバチに飛びかかり、それを合図に20〜30匹程が一斉にオオスズメバチに覆いかぶさった。

ニホンミツバチの熱殺蜂球とは
セイヨウミツバチは対抗の術をもっていないけれど、ニホンミツバチは長い歴史の中でオオスズメバチの攻撃から巣を防御する術をあみだしたのです。
スズメバチが巣に近づくと一斉に飛びかかり蜂球をつくり、体を震わし温度が上げ熱殺するのです。
熱殺蜂球の中の温度は約46〜47℃。オオスズメバチの高温上限致死温度は約45℃でニホンミツバチは約49℃。
ニホンミツバチは約47℃まで温度を上げ、この約2℃の致死温度差でオオスズメバチだけを蒸し殺すのだ。
写真は、その熱殺蜂球のシーンです。
もし、オオスズメバチが餌場フェロモンを発してしまったら、集団でオオスズメバチが襲って来るのでニホンミツバチの巣は壊滅してしまいます。
しかるに、オオスズメバチが餌場フェロモンを出す前に退治しなければならない、まさに生死をかけた緊迫の場面なのです。

この時の撮影技法(安全な撮影のための準備)
このシーンを撮影する為に考えておかなければならない準備があります。
▲ うかつに近づくと毒液を吹きかけられたり、刺される危険があるので黒っぽい服をやめ、白い服を着る。
▲ ストロボの連写は控える。キャノンの580EXは連写によるオーバーヒートでキセノンフラッシュランプが壊れてしまう危険性があるので出来るだけ冷ましながら冷静にシャッターを切る。
▲ 熱殺蜂球が始まったら比較的安全なので至近距離から撮影可能(ニホンミツバチはとてもおとなしい蜂なので近づいても安心)
▲ たえず他のスズメバチの気配を察知する。

どんな撮影でも、エキサイティングの場面では無中のあまり大胆な行動になりがちで事故の危険性が増します(近づきすぎて刺される、崖から落ちる、後ろに下がり屋根から落ちる、カメラを落とすなどなど実際にあった話しです)。冷静な行動を心がけましょう。

こぼれ話
教員の職をすて、花のジプシーになった叔父がいた。鹿児島から北海道まで花を求めて旅をするのである。
私が小学生の頃、実家の畑にも沢山の巣箱が置いてあってレンゲの花が咲き乱れる頃、最初の集蜜が始まるのである。
好奇心の塊の私は、麦ワラ帽子に網を被せてもらい叔父について行く。
叔父は巣箱の蓋を開け
「この大きいのが女王蜂で、そして、この白いのは次の女王蜂を作る為のローヤルゼリー。どうだ、試しに舐めてみるか?」と進められ舐めてみた。それは、子供の敏感な舌にはとても耐えられない不味であった。
そんな話しの中に、セイヨウミツバチの天敵の話しがあった。
「養蜂家の敵は、巣箱ごと壊してしまう熊と、巣箱の蜜蜂総てを短時間で食い殺してしまうスズメバチがいて、残念ながら今年も北海道でやられてしまった」と、悔しそうに話していた。
巣箱をバキバキと壊して蜜をペロペロ舐める熊。
そして、片っ端から蜜蜂をガブリガブリと食い殺していくスズメバチ。空想好きの小学生には十分すぎる程凄い話しであった。
また、幾度となく蜜蜂に刺されて泣きべそをかいていた私に「一番の長生きの職業はなんだか解るか・・・答えは養蜂家。少量のハチの毒は逆に体に良い。ロシアでは民間療法に取り入れられているくらいだから、少し位刺されても大丈夫じゃ」。
そんな幼少期を過ごしたせいなのか、ハチだと聞くといても立ってもいられないのである。

カメラ設定
絞り値:F/9、シャッタースピード:1/125秒,ISO感度設定:200、露出モード:マニュアル、露出補正:なし、ホワイトバランス:オート、測光モード:部分測光、ピクチャースタイル:スタンダード、レンズ焦点距離:100mm

使用ソフト
Raw現像ソフト:Lightroom3、最終調整PhotoshopCS5使用

使用機材

Canon EOS 30D、EF100mm f/2.8 Macro USM, SPEEDOLIHT 580EX 2灯使用

POSTED BY:
tsugionishimura_image

TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家