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about

TSUGIO NISHIMURA 西村次雄
フォトグラファー
1973年、九州産業大学芸術学部写真科卒。同年渡米。1979年、「STUDIO BB」を設立。デジタルの可能性にいち早く気づき、雑誌・広告を中心に一眼レフカメラを駆使して活躍中の”IT写真家”である。建築物、料理、人物、商品、そして動物・植物・昆虫と被写体の幅も極めて広い。

金ボタル(ヒメボタル)2012.07.05

七夕の頃、漆黒の森の中で金色の光の矢を放つ小さなホタルが棲んでいる。そのホタルの名は、光の色から名付けられて「金ボタル」と呼ばれています。ゲンジボタルよりも点滅間隔がとても短く、キラキラとまるでイルミネーションのように輝くのです。

現地にはお昼に到着。
1日で撮れる画は一枚のみであるから、慎重に場所選びをする。
アクセスランプやモニターなど光の出るところは総て黒のテープで覆う。なぜならば、恋の邪魔になる光は総て御法度なのである。
総てを整えたならば、あとは漆黒の闇に踊る、恋の瞬きの瞬間をただひたすら待つのみだ。

夜の帳が降り
最初の金ボタルが、漆黒の森へ向け恋の矢を放った・・・。

金ボタル(和名でヒメボタル、学名はHOTARIA PARVULA KIESENWETTER)
陸生のホタルの1生態型。
昭和34年3月27日岡山県指定天然記念物に制定。
黄金の光を発する事からその名前「金ボタル」がつけられました。
森に棲み幼虫は、陸生の巻貝「オカチョウジガイやベッコウマイマイなど」を食べ成虫になる。
♀体長約6mm前後と小さく、後翅が退化しているので飛べない。
♂体長約8mm前後、飛翔は地表から約1m〜2mの高さを飛び♀とのフラッシュコミュニケーションを行う。
めでたく♀との交信が成立した♂は♀のところに降りて行き交尾をすませ、その後♂は灯りを消し静かにあの世へ旅立ちます。

見れる期間:岡山県新見市哲多町蚊家地区の天王八幡神社の社叢に発生した金ボタルのフラッシュコミュニケーションを見れる期間は7月の七夕を挟んで10日間ほど。
漆黒の森の中で、恋の矢を放つさまはまさに幻想的で必見です。

この時の撮影技法(金ボタルの撮影技法)
金ボタルはゲンジボタルよりも光がとても弱いので、明るいレンズで高感度設定が求められる撮影です。(※土日三脚禁止なので平日に行くべし)
ここ哲多町は日本一厳しいマナーが求められるひとつの場所でもあります。
イントロでも述べましたが、光の出るモニター、パイロットランプなどは総て黒テープで光が漏れないように塞ぐ事を求められます。
少しでも光が漏れると即刻退場です、また携帯電話も主電源を切っておかなければなりません。
複数枚のレイヤー合成を行う事を前提でカメラ設定。
撮影中はモニターで確認できないので、明るいうちに撮影場所を決め、三脚にセットしてピント合わせをしておく事。さらに、ピントが動かないようにテープで固定する。

森の中が薄暗くなり始めたならば、背景を一枚撮影しておく事。
金ボタルはゲンジボタルよりも発光が小さいので(ゲンジボタルの約1/3)ISO感度を1250に設定する。
レンズはF値の明るい標準レンズか広角レンズを選ぶ絞りは、F/1.4、シャッター時間30秒。
デジタルカメラは長時間露光が苦手なので30秒ごとに30分間シャッターを切り続け、パソコンにて複数枚のレイヤー合成を行うのだ。(この時はフイルムカメラも持参して、ネガフイルムのISO1600を装填。30分間の露光を行った。出来上がりの画はほぼ同じでした)

三脚、黒色のテープ、明るいレンズ、レリーズは必須です。

「万葉集」
蛍なす ほのかに聞きて・・・

カメラ設定
上:絞り値:F1.4、シャッタースピード:30秒,ISO感度設定:1250、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、16ビット

使用ソフト
Raw現像ソフト:Lightroom4、最終調整レイヤー合成:PhotoshopCS5使用

使用機材

Canon EOS-1Ds Mark II、Canon 50mm F1.4、三脚:HUSKY 3D、レリーズ、黒色のテープ、水準器。

POSTED BY:
tsugionishimura_image

TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家