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about

TSUGIO NISHIMURA 西村次雄
フォトグラファー
1973年、九州産業大学芸術学部写真科卒。同年渡米。1979年、「STUDIO BB」を設立。デジタルの可能性にいち早く気づき、雑誌・広告を中心に一眼レフカメラを駆使して活躍中の”IT写真家”である。建築物、料理、人物、商品、そして動物・植物・昆虫と被写体の幅も極めて広い。

イチジクの花とコバチ2012.09.28

イチジクの花をご覧になった事がおありだろうか?
イチジクは漢語で書くと「無花果」。
「うん!?花が無いのか?」と、不思議い思われるのではないだろうか。
実は、壺状の形をした器官の内面に微小な花が多数密生した隠頭花序(いんとうかじょ)なので外からは見えないのです。外側から観察できないので、蝶などの虫達には気づいてもらえないのです。ならば、どうやって受粉するのだろうか?

イチジクとイチジクコバチの共進化について詳しくはコチラ
★「JT生命誌研究館」の研究紹介:昆虫と植物の共進化ラボ「生命誌32号」
http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/032/pdf/s32_202.pdf

東京都練馬区産のイチジクの実を割ってみた。覗き込むと、小さな黒い汚れのような物が付いている。もしや!と、急いでルーペで覗き込む。なんと、中には1ミリ強の小さな虫が5匹ほど入っていた。そいつらには翅が2対4枚あるのでハチ目の♀と思われる。そして、花の中で死んでいるのでこの花は雌花で間違いないだろう。しかし、日本の冬期の低温ではイチジクコバチは生きられないので、イチジクコバチではないということになるのだが・・・?

あとで聞いた話だが、「小学校の給食でイチジクがでたので、割ってみたらアリみたいな虫が5匹ほど入っていた・・・」。と善福寺公園のボート係の女性が教えてくれました。不思議、なんでコバチの数が5匹で一致するのだろうか?

カリフォルニア産のイチジクは日本へも輸入されているらしい。
カリフォルニアでは、イチジクコバチに受粉されたもののほうが甘くて美味しいといわれているらしいが、日本人には虫入りは受け入れられないだろうけれど。因みに、日本のイチジクはイチジクコバチの授粉を必要としない単為結果性品種なのだから入っていないはずであるけれど、練馬産のイチジクには入っていた事実をどう考えるか、悩みどころである。
東京都練馬区は都区内最高気温を今夏もたびたび記録していた地域のひとつである。近年は温暖化の進むこの地域でも奄美大島などに生息していたアカボシゴマダラや、インドやスリランカのワカケホンセイインコなどが野生化して沢山飛び交っている。

この時の撮影技法(ワーキングディスタンス)
レンズの先端から被写体迄の距離のことをワーキングディスタンス言う。よく勘違いするのが、カタログなどに書いてある「最短撮影距離」。これはカメラの撮像面から被写体迄の事をいう(レンズの最長時の長さ+マウントから撮像素子の長さを加える)。一般に売られているマクロレンズは倍率1xが標準なので、それ以上の倍率が必要ならばクローズアップレンズやエクステンションチューブなどのアクセサリーが必要になってくる。したがって、取り付けたアクセサリーでワーキングディスタンスが変わるのだ。

倍率が上がる弊害
1)被写界深度が浅くなる。
2)ライティングをコントロールすることが 困難になる。
3)近づきすぎて、虫などに警戒される。

今回のコバチ(1mm強)をCanonの(MP-E65mm f/2.8 1-5x)倍率5xで撮影するとなるとワーキングディスタンス(コバチとレンズ先端の距離)は40mmほどになりライティングが自由になりません。ちなみに、ニコンの60mmマクロレンズの最短は45mm、105mmマクロレンズならば148mmのワーキングディスタンスがありますから、105mmマクロレンズは60mmマクロレンズに比べ被写界深度が浅といえます。したがって、深い被写界深度が必要ならば60mm、長いワーキングディスタンスが必要ならば105mmと言う事になり、チョット悩ましいレンズチョイスになってしまいます。幸い、今回は動かない被写体だったのと、1mm強の小さな被写体だったので5xまで倍率が上げられるキャノンの特殊なマクロレンズMP-E65mm f/2.8 1-5xをチョイス、それにマクロリングライトMR-14EXを装着してバックライトにスピードライト580EXを一灯同調させて撮影しました。

カメラ設定
右上:Nikon D800, 絞り値:F/14、シャッタースピード:1/40秒,ISO感度設定:100、レンズ焦点距離60mm、露出モード:マニュアル、露出補正:−0.33、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、ROW。

左と右下:Canon 5DM2、絞り値:F/10、シャッタースピード:1/125秒,ISO感度設定:100、レンズ焦点距離65mmを5xで撮影、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、ROW。

使用ソフト
Raw現像ソフト:Lightroom4、最終調整:PhotoshopCS5使用

使用機材

上:Nikon D800、AF-S Micro Nikkor 60mm f/2.8G ED、 ニコンクローズアップスピードライトリモートキットR1, SB-R200用配光アダプター SW-11使用, LEDライト。SPEEDOLIHT SB-600をバックライトとして使用、三脚

下:Canon 5DM2, MP-E65mm f/2.8 1-5x 、マクロリングライトMR-14EX、SPEEDOLIHT 580EXをバックライトとして使用、三脚

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家