「ソイヤソイヤ」と秋の収穫祭が行われていた。
と、いっても御輿(エノコログサのタネ)の上で見事な足技を披露しているのは、日本人と同じイネ科植物を食す唯一のクロナガアリ。
今年の猛暑も涼しい地中で過ごしていたが、秋の収穫期に合わせ地上に現れたのだ。
私は、祭囃子に促されるように最前列のカメラマン席にローアングルで陣取った。
クロナガアリ(黒長蟻)ハチ目・アリ科・フタフシアリ亜科。
働きアリの体長は約4~5mm、女王アリ約10㎜。
地中深くに巣を作る。体は黒色で、頭部と胸部は艶がなく、丸い腹部のみ艶がある。
日本のアリは約270種いるといわれるが、このクロナガアリのみが唯一、イネ科植物のオヒシバやエノコログサなどの種子を食料とする。
本州、四国、九州、屋久島などで年2回ほど見ることができる。
一回目は羽アリになり4~5月の良く晴れた日に一日だけの婚約飛行を行う。
二回目はイネ科植物の種子が落ちる秋に再び地上に現れ、食料となる種子を拾い集め巣に運び込む。
運び込まれた種子は精米担当アリに渡され、カビたり腐ったりしないように皮を剥き、ピカピカに磨いて食料として貯蔵する。
収穫が終わると再び本来の地中生活にもどる。
この時の撮影技法(被写界深度とは)
被写界深度とは一言で言えば「ピントの合う範囲」のことを指します。
写真撮影技術を理解するうえで「被写界深度」はとても重要なアイテムのひとつです。
絞り、焦点距離、被写体との距離、撮像センサーサイズと密接な関係にあります。
●絞り
仮に、今回使った標準マクロレンズの絞りがF2.8~F22までだとします。
開放絞りとはF2.8のことを指します。
この絞りで撮影するとピントを合わせた前後の範囲はボケるので「被写界深度が浅い」といいます。
逆にF22だと、絞り込むといいます。
ピントを合わせた被写体の前後が、かなりの範囲までピントが合ったように見えるのでの「被写界深度が深い」といいます。
●焦点距離
広角レンズと望遠レンズとでは被写界深度が異なります。
広角レンズは被写界深度が深いレンズともいえます。
開放でもそこそこ被写界深度は深く、さらに絞り込む事により被写体の手前から背景まで明確にピントが合ったように見えるので「被写界深度が深いレンズ」または「パンフォーカス」といいます。
逆に、望遠レンズは絞り込んでもピントの合った前後の範囲は狭いので「被写界深度が浅いレンズ」ともいえます。
●被写体との距離
至近距離、すなわちマクロレズなどで接写を行うと、ピントの合う前後の範囲が極端に狭くなります。
上の写真ではF16まで絞り込み被写界深度を深くしていますが、ここまで絞り込んでも「接写では被写界深度が浅くなる」といえます。
●撮像センサーサイズ
撮像センサーサイズの違いでも被写界深度は異なります。
撮像センサーの小さな「コンパクトデジタルカメラは被写界深度が深い」といえます。
逆に「35㎜フルサイズデジタルカメラは被写界深度が浅い」といえます。
以上、少し説明が長くなりましたが、初心者脱出の切り札は「被写界深度を理解」する事だといっても過言ではありません。
今までの、カメラまかせの撮影から脱却して、自分の意志でカメラを操るマニュアル設定。そこにこそ自分の思い描いた画作りのヒントが隠されています。
今回の写真では、動き回る3匹のアリにある程度のピントがくるようにF16まで絞り込みましたが、それでも接写ではピントの合った前後の範囲は狭く、出来れば最大値のF22まで絞り込みたいところです。
でも、すでにF16まで絞ってしまったために回折現象が起き描写が若干甘くなっています。
しかし、それを覚悟してまでも被写界深度を稼ぐためにF16まで絞り込みました。
何度も言うようですが、接写時の被写界深度はとても浅くデリケートなピント合わせが必要なのです。
(回折現象についてはいずれ・・・)
カメラ設定
露出モード:マニュアル、絞り値:F/16、シャッタースピード:1/250秒、露出補正:±0、測光モード:スポット測光、ISO感度設定:ISO 640、内蔵ストロボ:±0、コマンダー設定外部ストロボ+1/3補正
使用機材
Nikon D300、AF Micro NIKKOR 60mm 1:2.8、Nikon SPEEDLIGHT SB-600、内蔵ストロボ:エツミポップアップストロボディフューザー(ナチュラル) E-6218、レジャーシート