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about

TSUGIO NISHIMURA 西村次雄
フォトグラファー
1973年、九州産業大学芸術学部写真科卒。同年渡米。1979年、「STUDIO BB」を設立。デジタルの可能性にいち早く気づき、雑誌・広告を中心に一眼レフカメラを駆使して活躍中の”IT写真家”である。建築物、料理、人物、商品、そして動物・植物・昆虫と被写体の幅も極めて広い。

木枯らし2010.12.28

年の瀬。誰もいなくなった公園で、めっきり少なくなった虫を未練がましく探していたけれど「♪夕焼け小焼け」が流れてきたので、カラスと一緒に帰り支度を始めた。
すると、突然風が吹き出し、落ち葉がザワザワと舞い上がりはじめた。
それからはもう、まるで堰を切ったようにみるみる葉っぱ増水し、荒れ狂う川の濁流のように木々に激しくぶち当たり砕け散り舞い上がった。
こりゃ~凄い!と、バッグに仕舞いかけたカメラを取り出し撮影ポイントを探るが、ふと、舞い踊る落ち葉を見て、♪をつけるとしたら何が良かろうか?と、よけいな事を考え始めたのである・・・。
「う~む、♪コンチネンタルタンゴ?いやいやアフリカ系のビートが効いた♪アルゼンチンタンゴが良いかな?いやいや・・・♪だんご三兄弟、それとも♪木枯らし紋次郎。おいおい、音楽に疎いのがバレバレだねぇ」
などと、誰もいなくなった薄暗い公園でひとりブツブツニヤニヤ。
・・・・・
「カシャ!カシャ!」

木枯らしとは
太平洋側地域に晩秋から初冬にかけて、冷たい北からの強風(風速8m/s以上)が吹く季節風のことをいう。
強い風で木の葉を落とし枯れ木にするので「木枯らし」の説や「木嵐」が転じたとの説もあるようだ。
初冬に吹き荒れた木枯らしの気圧配置は長続きせず、翌日には穏やかな小春日和になりやすいともいわれる。

この時の撮影技法(ブレについて)
ブレの原理が理解できると、「瞬間をキッチリ止めたい」「動きのある写真を撮りたい」などの、思い描く完成画を容易に具現化できるようになります。
ご存知のように、ブレには大きく分けて「被写体ブレ」と「カメラブレ(手ブレ)」があります。ブレを押さえ込むには「高速シャッター」「三脚」「カメラブレ補正レンズまたはカメラ内補正機構」「パン=流し撮り」などがあります。

1)ブレはレンズの焦点距離で異なる。
広角レンズと望遠レンズではカメラブレは異なります。例えば広角レンズ20mmでは1/20s以上、望遠レンズ300mmでは1/300s以上がカメラブレを防ぐ限界シャッタースピードと一般的には言われています。
すなわち、焦点距離と同じ値がシャッタースピードの下限値という訳です。
(勿論、経験を積むことによりその数値以下でも止められるようになります)

2)ブレ表現にはシャッタースピードの加減が重要
例えば、プロ野球の投手が投げたボールを、バッターが打ち返した瞬間を捕らえるには最低1/250s以上でなければバットに当たった様にみえる瞬間は撮れません。
完全に止めるには約1/1500s以上が必要です(条件によって異なる)。
もし、1/60sならばボールとバットは消えてしまうことになります。
また、人通りの激しい繁華街で三脚を使いシャッタースピード30秒以上で撮影を行うと、30秒間じっとして動かない物以外は総て消えてしまい、無人の不思議な街として撮影出来てしまうのです。
この様に、シャッタースピードの加減ひとつで表現方法が飛躍的に広がります。

3)動きを表現する二つの方法(フォロー・パンとフィックス)
A、フォロー・パン(Pan=流し撮りのこと:被写体の動きに合わせ同一方向へカメラを振る)
例えば、1/30sでカメラを疾走する車と同じ方向へパンして撮影を行うと、車の車輪は回りかつ背景は流れている。
しかし車体はブレてないような写真が撮れます。
B、フィックス(カメラ固定)
カメラを三脚などで固定して撮影。
ご存知のとおり、静止したもの以外は被写体の動きの速さでブレ幅が異なります。
例えば、風景写真の場合。木々の葉っぱが風で揺れていると
低速シャッター(ブレは風の強さで異なる)では葉っぱが揺れて写り、その場の情景をドラマチックに仕上げるスパイスの役割を持たせることもあります。

今回の写真は、あえて被写体ブレとカメラブレの両方とを持ち合わせたカットをセレクトしました。
本来ならば破棄してしまうカットですが現場の雰囲気を一番表していたので、あえてこのカットをセレクトしたというわけです。

カメラ設定
絞り値:F/16、シャッタースピード:1/30秒,露出モード:マニュアル、露出補正:-2段、ホワイトバランス:晴天、測光モード:マルチパターン測光、ISO感度設定:ISO 400、焦点距離100mm

使用機材
Nikon D300、AF-S NIKKOR VR 70-300mm F/4.5-5.6G

POSTED BY:
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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

狩りから戻ったクロスズメバチ2010.12.14

恐る恐る、どれだけの震動で飛び出すのだろうか?
と、巣穴から2メートル程で「ドン!ドン!」と踏み鳴らすも反応がない。
ならば30㎝程では如何に、と「ドン!ドン!」、案の定スクランブルがかかり後ずさり。
でも、威嚇性も攻撃性も弱いので巣穴から3メートル程に避難しつつ、何に対して反撃をしかけるかと観察する。
やはり、黒色のカメラボディー、ストロボの黒色の箇所、レンズ(ハチ自身が映り込むからか?)などに集中する。

暫くするとハチの興奮も落ち着き、巣穴から50cmほどの至近距離から観察を続行。
ときおり巣穴から顔を出し外の様子をうかがう者、重そうに肉団子やアオマツムシの足らしき物を持ち帰る者、巣の中から土や枯れ葉を運び出す者、レイジー(怠慢)らしき者、飛び出しと同時に空中衝突する者などなど、実に興味深く喜悦満面でシャッターを押す。

クロスズメバチ(黒雀蜂)ハチ目、クロスズメバチ属。
体長は女王バチ15mm~16mm,働きバチ10~12mm,オス12~14mm。
スズメバチの中では小型。
全身は黒く、白色または淡黄色の横縞模様。
北海道、本州、四国、 九州、奄美大島など広く分布する。
おもに地中に大きな巣をつくる。
地方により呼び方が、スガレ、ヘボ、タカブなどと呼ばれ一部では食用とされる。
3月下旬頃から女王バチは活動を開始し、働き蜂は6月頃羽化、新女王蜂や雄蜂は10月~12月に羽化する。
ハエ、アブ、ガの幼虫、蜘蛛などの小さな昆虫を主に狩り、幼虫の餌として与える。
成虫の餌は、樹液や終齢幼虫の唾液腺から分泌された栄養液。
毒性、威嚇性、攻撃性は弱い。

この時の撮影技法(道具立て)
獲物を持ち帰るクロスズメバチを、被写界深度の深いフィッシュアイレンズで狙うことにした。
おとなしいといっても相手はスズメバチ。
そこで、撮影シミュレーションを行い必要な道具立てを考えます。
それはまるで「あれもこれも」とお菓子をリュックに詰め込む、高揚した小学生の頃の遠足前夜です。
撮影当日、パンパンに膨らんだカメラバックを背負い、脇目もふらず一心に自転車を転がす僕がおります。

①カメラを地面にセット
カメラを地面に置く時に便利なカメラ座布団(お手製)を使用。これは好きな角度に簡単に素早く設定出来る優れもの。カメラは縦位置で巣穴7㎝程にセット。

②魚眼レンズに外部ストロボ2灯
魚眼レンズは画角が広いので、ストロボをレンズの前方には出せない。
ギリギリの位置決めのため、ローアングルの自由度が効く三脚ベンロカーボンネオフレックスC-298m8にCANON SPEEDLITE 580EX+エツミストロボディフューザーG6をセット(魚眼レンズ用に拡散ディフューザーとして)カメラ上部にセット。
もう一灯の580EXは左側にセット。
CANON SPEEDLITE TRANSMITTER ST-E2でスレーブ。
さらに、小型のSUNPAK PF20XD+ミニ三脚SLIK PRO-MINI Ⅲをレンズ横からマニュアル光量で使用。

③シャッターは遠隔操作
「ドン!ドン!」で怒り狂ったクロスズメバチを、離れた位置から遠隔操作ができるCANON WIRELESS CONTROLLER LS5を使用。
ハチが落ち着くと、レンズ横から覗き獲物を抱えたクロスズメバチが巣に飛び込むタイミングをはかる。

カメラ設定
絞り値:F/14、シャッタースピード:1/250秒,露出モード:マニュアル、露出補正:-1/3段、測光モード:スポット測光、ISO感度設定:ISO 400、

使用機材
CANON 40D、SIGMA 8mm f/8 1:3.5 EX DG FISHEYE、KENKO 1.5XTEREPURUS MC、CANON WIRELESS CONTROLLER LS5 、CANON SPEEDLITE TRANSMITTER ST-E2、CANON SPEEDLITE 580EX2灯使用+エツミストロボディフューザーG6、三脚ベンロカーボンネオフレックスC-298m8、ミニストロボSUNPAK PF20XD+ミニ三脚SLIK PRO-MINI Ⅲ、お手製カメラ座布団。

POSTED BY:
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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家