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about

TSUGIO NISHIMURA 西村次雄
フォトグラファー
1973年、九州産業大学芸術学部写真科卒。同年渡米。1979年、「STUDIO BB」を設立。デジタルの可能性にいち早く気づき、雑誌・広告を中心に一眼レフカメラを駆使して活躍中の”IT写真家”である。建築物、料理、人物、商品、そして動物・植物・昆虫と被写体の幅も極めて広い。

鹿とサルスベリ2013.08.12

この画を撮る前に、春日大社の森を早朝に訪れていた。鹿の食害なのか本来のシイ、カシなどの照葉樹は大木しか残っていない。幼木やドングリなど鹿が好んで食べてしまう、よって鹿が嫌いなアセビ(枝葉に「アセボチン」という有毒成分を含んでいる)やナギ(ナギラクトンというテルペンが含まれている)などが相対的に多くなってしまったという訳であろうか。
神の使い(8世紀半ば、神様は鹿に乗ってこの地にやって来たと言い伝えられてきた)である鹿の好き嫌で森の生態系が変わる。
改めて1300年もの人と鹿との関わりによる時間的スパンを垣間見ることができる貴重な鎮守の森でもある。そのような事をふまえて眺めると、奈良公園内の見事なサルスベリにも合点がいくというものだ。

サルスベリ(百日紅)
フトモモ目ミソハギ科サルスベリ属、原産地:中国南部
日本の夏に彩りを与えてくれる百日紅(ヒャクジツコウ)。
漢名の百日紅は、7月頃から10月頃までおおよそ100日間紅い花を咲かせるのが名前の由来。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「テーマありきの構図」
花がテーマであるから、サルスベリが主役で鹿は脇役である。
その両方をからませるために必然的にローアングルとした。
したがってサルスベリを入れられるアングルありきで構図を決め、鹿がそのアングルに入って来るのを待ち受けたのである。
そして、上手い具合に鹿3頭が左端に入り構図が決まった。
あとは子鹿の瞳の輝きに全神経を集中して私と視線が合った瞬間に。
カシャリ!

カメラ設定
上:絞り値:F10、シャッタースピード:1/200秒,ISO感度設定:400、露出モード:マニュアル、露出補正-0.67、ホワイトバランス:オート(Rawデータで記録のため)、測光モード:中央部平均測光、ピクチャースタイル:スタンダード、焦点距離55mm

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像にも使用)

使用機材

Nikon D800、AF-S NIKKOR 24-85mm f/3.5-4.5G ED VR

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

ハッチョウトンボ(日本一小さいトンボ)2013.07.18

大きさは、一円玉にすっぽりと収まる日本一小さなトンボである。
7月16日午後2時過ぎに宮崎県高鍋湿原に到着。
トンボ橋を渡る頃になるとワクワク全開状態。
以前、岡山空港近くの湿地でお会いしてからずいぶんご無沙汰していたから無理もなしか。

この日は南国特有の猛暑。
覚悟していたが木道にうつぶせになると、まるでフライパンの上で焼かれる目玉焼き状態。
夢中になると、変に暑さも心地よく感じられ夢中でシャッターを切る。
目の前をキイトトンボやハラビロトンボがフワ〜ッと横切って行く。
気持ちも体も熱く焼かれ、虫好きにはたまらない満たされた時間を過ごす。

水深の浅い湿原特有のトンボで、日本では多数の都道府県で絶滅危惧種に指定。
『日本一大きいトンボ(オニヤンマ)はこのブログの2009年9月28日に公開』

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「絞り開放近くで主役を強調」
この撮影地では保護のために金柵がありローアングルで狙う場合これがとても邪魔になる。
さてどうするか?絞りを開放付近で金柵をぼかせば問題解決、前後がぼけて主役の「ハッチョウトンボ」をより強調できるのである。
ポイント、
このボケ味を楽しむには出来るだけ長い望遠レンズ(被写界深度が浅い)を使うことが秘訣でもある。
この暑さにハッチョウトンボも熱いか、尻尾をピンと立て太陽光が当たる面積を少なくしていた。

カメラ設定
上:絞り値:F5、シャッタースピード:1/1000秒,ISO感度設定:400、露出モード:マニュアル、露出補正+0.33、ホワイトバランス:オート(Rawデータで記録のため)、測光モード:中央部平均測光、ピクチャースタイル:スタンダード、焦点距離200mm

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像にも使用)

使用機材

Nikon D800、AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

紫陽花(千年の誤用)2013.06.28

梅雨になると、さて、今年は何処のアジサイを求めて撮影に出かけようかとなるのだが・・・。
しかし、「紫陽花」はライラックの花を指すらしい。
アジサイは日本原産で「あづさい」が変化、青い花が集まって咲く様から「集真藍」「安治佐為」「味狭藍」などと話し言葉が訛「あじさい」となった。それなのに、なぜわざわざ中国の紫陽花を当てたのか? 
誤用は平安時代までさかのぼることになる。
平安時代の学者「源順」が事もあろうに、唐の詩人「白居易」が別の紫の花「ライラック?」につけた名前を、誤って「紫陽花」と、誤用したため広く使われるようになったとか。
今月、仕事で訪れた札幌でライラックを撮影した。確かにアジサイ(紫陽花)に似ているが、こちらは字のごとく「日当りの良い場所」が好みである。アジサイは漢字とは真逆な「日陰を好む」正反対の成育環境なのだ。

ライラックについて詳しくはコチラ
http://ja.wikipedia.org/wiki/ライラック
http://www.hana300.com/rairak.html

紫陽花の誤用について詳しくはコチラ
http://www.hana300.com/ajisai.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/アジサイ

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「成育環境を露出で表現する」
明るい場所に咲くライラックは晴天下の光で演出し、反対にアジサイは日陰の場所の紫陽花を露出アンダーで表現したい。その方が、よりその花の戦略を表現出来るし、人々が抱いているイメージを写し止めることができるのではないだろうか?

カメラ設定
上:ライラック Canon EOS 5D Mark II, 絞り値:F11、シャッタースピード:1/320秒,ISO感度設定:400、レンズ焦点距離26mm、露出モード:マニュアル、露出補正:-0.33、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw。
下:アジサイ Nikon D800, 絞り値:F14、シャッタースピード:1/8秒,ISO感度設定:200、レンズ焦点距離24mm、露出モード:マニュアル、露出補正:-1、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw。

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像にも使用)

使用機材

上:ライラック Canon EOS 5D Mark II、EF17-40mm f/4L USM
下:アジサイ Nikon D800, 24.0-70.0 mm f/2.8、三脚使用

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

黄色いバラとベニカミキリ2013.05.31

黄色いバラ(ミラベラ)にベニカミキリがなんの迷いもなく飛翔して来た。
昼行性のカミキリムシで花の蜜を食べる。
ベニカミキリにとってこの黄色いバラはさぞかし美味しそうなレストランに見えた事だろう。
凄い勢いで蜜を食べ、少し休んではまた蜜を食べ始める事を繰り返していたのだが、なんだか途中で様子がおかしい事に気づく(頭をかく仕草)。
その訳はフンを・・・。ふーん、カシャリ!

花の出現はおおよそ1億3000万年前
(現在、世界最古の花粉化石の記録はイスラエル産1億3500万年前が発見されている)
花と共に甲虫やハチが現れ、そして色覚領域の広い蝶が現れる(蝶に出現の時期に関しては未だ不明)。
色盲の昆虫にとって、白色の花の明るい発色が花の在処の目印で、栄養満点な花粉と蜜の在処が黄色や橙色である事を生活環境により習得して進化してきたのである。
そのせいなのか、昆虫にとって黄色の花が一番好きな色のひとつでもある。
「友達の話:黄色い車が欲しくてディーラーに(黄色い車には虫が良くつくので止めた方が良いと言われた)」
花色の変化は、気の遠くなるような時間を経て白、黄、橙、青、藍などと変化させ、色や匂い構造で特定の虫や鳥を招き入れ、受粉のお駄賃に蜜や花粉を与えて進化して来た。
それに応えるように、昆虫や鳥もまた色覚領域を広げその花色の変化に進化順応している。
花色、それは被子植物の生殖戦略が見事に仕組まれ進化して来た証でもある。

ベニカミキリについて詳しくはコチラ
http://mushinavi.com/navi-insect/data-kamikiri_beni.htm

花の起源について詳しくはコチラ
http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/014/ss_4.html

色彩の認識について詳しくはコチラ
http://www5e.biglobe.ne.jp/~t-hys/chapter-8.html

黄色いバラの花言葉について詳しくはコチラ
http://blog.goo.ne.jp/yagisan_2006/e/c26fdf8cd804d4455b38f8e0023437c8
もうすぐ父の日、黄色いバラの花言葉は蕾や花の大きさなどで異なる。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「銀レフで赤色を美しく」
逆光では、そのまま撮影すると暗くなりがちで、いまいち美しい色味を再現出来ない。
そこでストロボか銀レフを使う事になる。
ここでは赤色の輝きの具合を確かめるには、銀レフの方が都合よいので銀レフをチョイスした。
左手に銀レフ、右手にカメラ。両手が塞がってしまったこの状態では、AF手ぶれ補正付きの「VRレンズ」はすこぶる便利な道具である。

カメラ設定
Nikon D800, 絞り値:F13、シャッタースピード:1/400秒,ISO感度設定:400、レンズ焦点距離105mm、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw。

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像にも使用)

使用機材

Nikon D800, AF-S VR Micro-Nikkor105mm f/2.8G IF-ED,銀レフ使用

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

花の惑星2013.04.22

花には全く関心がなかったけれど、虫や鳥を観察しているといつの間にか花に取りつかれていた。
そして、あらゆる花に関する本を読みあさってきた。
その中に、植物の花は虫や動物にたとえると「生殖器」であるとある本に書いてあった。ハッ!とその言葉の裏にある「進化と戦略」に強く惹かれ、生物学と昆虫学『ジャレド・ダイアモンド、ハワード・エンサイン・エバンス』など読みあさっている。
人間の歴史は虫や植物に比べ遥かに短いけれど、生き物はどれも似たような選択による自然淘汰を繰り返し進化している事に気づかされるのである。
4月には入るとまさに百花撩乱。
花好きには園芸品種を嫌う方もおられるが、日々の暮らしの中にある花も人々の暮らしを彩っているのだから・・・。
さて、花の惑星でもあり虫の惑星でもあるけれ、そんな花達の原種をたどる花紀行もまた興味が尽きないのである。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「花を美しく撮るコツ」
あらゆる場面で花のある暮らしがある。
書店を覗くと「花の写真撮影のコツ」の題字が今まさに花盛りでデジタルカメラが身近になった証でもある。
花はシャッターを押せば写るのだけれど、その時の感動が写せていない事にガッカリ、何故上手く写せないのだろうか?と思われた事はありませんか。

花を美しく撮るコツ
1) 一番美しい花盛りを撮る。
花盛りのタイミングはまさに一瞬。
ただし、美しいなと感じる感性は人それぞれ違う訳で、咲き始めが良いとか、散り際が美しいなどと、その感性の趣くままにシャッターを押す。

2) 主役を生かす背景を選ぶ
主役にスポットライトを当てる意味合いから、背景を考慮する。環境を生かし、うるさくなりがちな背景を絞りでコントロールする。

3) チャームポイントを生かすライティングを選ぶ
花びらを透かした方が美しいのか、斜光で立体的に見せた方が良いのか見極めよう。晴れた日のふさわしい花、曇り空の柔らかい光がベストの花など、花ごとに太陽光を考慮する。迷ったら、花色は得てして日陰の方が美しく撮れますから日陰がオススメです。

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像にも使用)

使用機材

OLYMPUS OM-D E-M5、14-42mm F3.5-5.6 ,Micro60mm
Nikon D800, 14-24mm,VR16-35mm,24-70mm,VR24-85mm,Micro60mm,VR70-200mm
Canon EOS 5D Mark II, 17-40mm,IS24-105mm ,Micro100mm

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家