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about

TSUGIO NISHIMURA 西村次雄
フォトグラファー
1973年、九州産業大学芸術学部写真科卒。同年渡米。1979年、「STUDIO BB」を設立。デジタルの可能性にいち早く気づき、雑誌・広告を中心に一眼レフカメラを駆使して活躍中の”IT写真家”である。建築物、料理、人物、商品、そして動物・植物・昆虫と被写体の幅も極めて広い。

お水送り2013.03.04

春を告げる伝統的行事、奈良東大寺二月堂の「お水取り」に先がけて、毎年3月2日に福井県小浜市の鵜の瀬で「お水送り」が行われる。

ホラ貝が鳴り響くなか、松明の灯りに照らされた白装束の住職が「お香水」を遠敷川の川面に注ぐ神事である。
「お香水(こうずい)」は遠敷川(おにゅうがわ)へ注がれ、地下を通り10日かけて奈良東大寺二月堂の若狭井にとどくといわれており、よって3月12日に奈良東大寺の「お水取り」が行われる。

20時55分、奈良に向かう「お香水」に全神経を集中して、ホラ貝の音、松明のはじける音、流れる水の音、静かにシャッター音を調和させ和音となす。

お水送り

詳しくはコチラ(http://www.fukui-c.ed.jp/~cdb/gyouji/omizuokuri/)

この時の撮影技法(陰影とスローシャッターの味付け)
陰影に映える「お香水」。これから10日かけ、奈良東大寺二月堂の若狭井まで地下水となり流れて行く。
その事を示唆させるために、対局にある白装束と煌めく「お香水」を、より豊かに語らせてくれる深みのある陰影はとても重要なファクターひとつである。
さらに、スローシャッター1/5秒にて川の流れ、松明の火の粉、煙、そしてこの写真の命である、「お香水」の流れを、かすかなブレで厳かな時間の観念を味付けした。

こぼれ話
寒空の下で長時間の撮影するプロゴルフ専門カメラマンのお話し。
ゴルフのトーナメントは女子3日、男子4日間で行われる。その期間、決定的瞬間を撮り逃す事が出来ないので一瞬たりとも現場を離れられないのでトイレに行きたくてもほとんど行けない緊迫の状況下におかれている。

「地下鉄に乗っていたらさ、急につり革を握っていた左手がバタッと落ちてさ、あれっ!と思いながら右手でもう一度左手をつり革に掴ませるのだけれど、やっぱりバタッと落ちる、すると周りの乗客が驚いて逃げるんだよ。やっとのおもいで駅を出てさ、目の前の交番にヨロヨロと入ったのだけれど、こいつが気の利かない若い警官でさ、はやく救急車を呼んでくれればよいものを、お名前は。アウアウ、じゃあご住所を書いて下さい、と。
口も手も動かせない状況だというのにさ。困り果てていると、奇跡が起きたんだ。なんと息子が偶然にも交番の前を通りかかってさ〜。幸い、直ぐに息子は事の重大さに気づいてくれ、妻の勤める病院へ直行・・・」と、笑い話のように話してくれた。
そして、今では脳梗塞の再発が怖いので「コレステロール値」と「水分補給」もしっかりととり、紙おむつを履いて撮影に臨んでいるとのことである。

前置きが長くなったが、寒空の下での長時間撮影。トイレが気になっては撮影に集中出来るはずが無いので、今回は私もPaper diaperを履いて臨んだのだ。

カメラ設定
絞り値:F6.3、シャッタースピード:1/5秒,ISO感度設定:1250、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、測光モード:中央重点(平均)、ピクチャースタイル:ノーマル、焦点距離45mm

使用ソフト
Raw現像ソフト:PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像にも使用)

使用機材

Canon EOS 5D Mark II, EF24-105mm f/4L IS USM、三脚:ベンロカーボンネオフレックス使用

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

アイスモンスター2013.02.25

シベリアの北西の季節風、日本海の対馬暖流、朝日連峰、山形盆地、蔵王連峰、雲粒が0℃以下でも凍らない過冷水滴と一定方向の強風と低温、アオモリトドマツなどの針葉樹、積雪が多すぎず少なすぎず、などなどすべての条件が揃わなければ世界的にも珍しい樹氷(アイスモンスター)はできないという。
先々週も強風で樹氷が吹き飛ばされ直前で撮影行きを断念していたのだが、念じれば叶うもので福島での仕事が入った。
仕事が終わり、ひとり反対方向の山形行きの新幹線に飛び乗った。
車窓には半分ほど雪に埋まりかけた家並みが見え、軒下に巨大なツララが下がっている。
夜の7時山形駅前のホテル着。
天気予報では、今年の東北地方は観測史上最高積雪量だとだと告げている・・・、悪い事に明日の蔵王は雪らしい。
はたして、見事に天気予報がはずれた。
体感温度−15℃の極寒の蔵王山頂に9時に立つ。
容赦なく頬と耳と指先に冷気がチクリと刺してくるけれど、不思議なものでそれが妙に心地よいのである。もはや、心穏やかならぬ状況ながら「どれどれ」と、迫力満点のアイスモンスターを品定めする歓喜の瞬間がとうとう訪れたのだ。

樹氷(アイスモンスター)
詳しくはコチラ
http://www.kankou.yamagata.yamagata.jp/zao/winter/pc_2012/juhyo/pnf_juhyo_2007.pdf#search=’樹氷(アイスモンスター)’

この時の撮影技法
D8001台、ニコンAF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED, ニコンAF-S NIKKOR 24-85mm f/3.5-4.5G ED VR, ニコンAF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VRの3本のレンズ、予備バッテリー1個を小さめなカメラバックに入れ山頂に立つ。ポイント、撮影には気象が安定している早朝がオススメです。
案の定10時を回ると雲が出て来た。スケール感のある背景選びがとても重要で、慎重に場所選びをしたい。
さらに、太陽の位置や突風などアクセントや寒さを演出出来るものを画の中に入れられればベターである。

カメラ設定
上:絞り値:F14、シャッタースピード:1/400秒,ISO感度設定:100、露出モード:マニュアル、ホワイトバランス:オート(Rawデータで記録のため)、測光モード:中央部平均測光、ピクチャースタイル:スタンダード、焦点距離14mm

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像にも使用)

使用機材

Nikon D800、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

冬を耐え忍ぶ蝶(ウラギンシジミ)2013.02.14

冬が近づくと南向きの日だまりの場所を選び、一枚の葉の裏に4本の爪を食い込ませ風雪を耐え忍ぶ蝶がいる。その蝶の名は「ウラギンシジミ」という。
雨の日も風の日も雪の日も約5ヶ月間同じ一枚の葉裏で過ごすのだ。
そんな、小さな蝶の健気な姿を一枚の画におさめたくて雪の日を待っていた。
TVは、夜半には雨から雪になるかも・・・、と曖昧な予報を告げていた。
その事が気になりiPhoneに「4時半に起こして!」とアラームをセットする。
夜中の3時静かな気配に外を見る・・・、雪が降っている。
でももうチョットだけ眠むろうと目を閉じる。
4時頃、雨音に変わり「しまった!」と飛び起き、大慌てで準備しておいたカメラバックを担ぎウラギンシジミにあいに家を飛び出す。
焦る心にむち打つように、セットしておいたアラームが鳴り響く。

—冷たい雨に今回も雪景色の画を阻まれてしまった。
ああ・・・次の雪を待とう。
それまで雪解け水で乾いた喉をうるおし、冬をたくましく生き抜いておくれ。

ウラギンシジミ(裏銀小灰蝶)

詳しくはコチラ
http://ja.wikipedia.org/wiki/ウラギンシジミ
http://homepage3.nifty.com/ueyama/shubetsu/shijimi/uragin/uragin.html

この時の撮影技法(夜雨の準備)
夜の雪や雨の日には、撮影シーンをシミュレーションして出かけよう。
現場では、照明や雨よけ寒さ対策もしなければならず、カメラやストロボ設定などに手間取ってはいられません。
なので、レンズ、絞り、スピード、ISO感度、ストロボの選択など総てセットしてシャッターが押せる状態にしておかなければなりません。
メイン光のストロボは柔らかい光が簡単にセットできるリングライトをチョイス。
EF100mm F2.8 MicroにマクロリングライトMR-14EXを取り付け、バックライトには580EXを一灯リングライトに同調させた。

カメラ設定
絞り値:F11、シャッタースピード:1/125秒,ISO感度設定:400、露出モード:マニュアル、露出補正:カメラ側を−3、ホワイトバランス:オート、測光モード:評価、ピクチャースタイル:ポートレート、焦点距離100mm

使用ソフト
Raw現像ソフト:PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像にも使用)

使用機材

Canon 5DM2, EF100mm F2.8 Micro USM 、マクロリングライトMR-14EX、スピードライト580EX、LUNATEMIS LEDライト 56灯

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

氷の花2013.01.18

底冷えの夜が明けると、美しい氷の花を咲かせる植物がいる。
数日前に都心の公園でシモバシラの植物は見たのだが、時は昼すでに跡形も無く消え去っていた。
見たいと思ったらトコトン探さずにはいられない性格。
ならば、都心が2〜3℃でも高尾山へ登れば昼間でも見られるはずと出かけてみた。
高尾山ビジターセンターで情報を仕入れ北斜面を目指す。
ほどなく日陰の湿っぽい場所にひっそりと氷の花が咲いているのを見つけた。
それは、落ち葉の中にひっそりと咲いていて、近づくと体温と息で溶けてしましそうで、息を止め霜が降りるようにシャッターを切る。

シモバシラ(シソ科の多年草)

詳しくはコチラ(高尾山総合インフォメーション)
http://www.takaosan.info/topics66.htm

この時の撮影技法
(動かない被写体の露出補正はシャッター速度で行う)
周りが暗いので、氷は露出オーバー(白く飛んでいる)になりがちだ。
そこで、露出補正という知識が必要になってくる。
表現したいポイントは氷の花であるから、氷の質感がキーポイントである。
とりあえずマニュアルに設定して一枚撮影する。
そして、モニターでヒストグラムを確認。
氷の花が露出オーバーになっていないかチェックする。
もしヒストグラムの山が右端へ沢山かたよっていたら露出オーバーなのでシャッタースピードを早くする。
決して絞りで調整してはだめです。
理由は、以前のべた(秋を告げるクロナガアリ)被写界深度が大きく関わってきます。
絞りが変わるとピントの合う範囲が変化して作画意図が台無しになってしまうからです。

カメラ設定
上:絞り値:F11、シャッタースピード:1/80秒,ISO感度設定:800、露出モード:マニュアル、露出補正:-0.3(ニコンはRGB対応)、ホワイトバランス:オート(Rawデータで記録のため)、測光モード:中央部重点測光、ピクチャースタイル:スタンダード、焦点距離60mm

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像にも使用)

使用機材

Nikon D800、AF-S VR Micro-Nikkor 60mm f/2.8G

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

極楽極楽2012.12.17

何年も風邪をひいていない事が自慢のひとつでもあったが、とうとう風邪をひいてしまった。
そして、これには嬉しくないオマケまでついていた。
ゴホゴホと咳をしたさい、「ギクッ!」と腰まで痛めてしまったのだ。
それなのに、翌日は3本のタイトな撮影が控えていたのだが、さいわいノロウイルスではなく事なきをえた。
こんな時には、地獄谷のスノーモンキーさまのようにゆっくりと湯につかり「極楽極楽」などとつぶやいてみたいものである。

地獄谷のスノーモンキー
詳しくはコチラ
http://www.jigokudani-yaenkoen.co.jp/japanese/html/snowmonkey_outline.htm

この時の撮影技法(湯煙の中の極楽を捉える)
湯煙の中の「極楽極楽」の表情を捉えたかったので、低温と湯煙でレンズが曇るのであえてそれを利用する。
すると、ソフトフォーカスがかかりスノーモンキー至福の一瞬を捉える事ができました。
クリアな画像も良いけれど、臨機応変に撮影環境の作用をうまく使う事も大事な撮影技法ではないでしょうか。

カメラ設定
絞り値:F/8.0、シャッタースピード:1/180秒,ISO感度設定:400、露出モード:マニュアル、露出補正:なし、ホワイトバランス:オート、測光モード:部分測光、ピクチャースタイル:スタンダード、レンズ焦点距離:200mm

使用ソフト
PhotoshopCS6 Raw現像にも使用
(新しいCS6は処理速度もパワフルに進歩しています)

使用機材

Canon EOS-1Ds Mark II、EF70-200mm F2.8L IS USM

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家