- TSUGIO NISHIMURA 西村次雄
フォトグラファー
- 1973年、九州産業大学芸術学部写真科卒。同年渡米。1979年、「STUDIO BB」を設立。デジタルの可能性にいち早く気づき、雑誌・広告を中心に一眼レフカメラを駆使して活躍中の”IT写真家”である。建築物、料理、人物、商品、そして動物・植物・昆虫と被写体の幅も極めて広い。

-
イチジクの花とコバチ2012.09.28
イチジクの花をご覧になった事がおありだろうか?
イチジクは漢語で書くと「無花果」。
「うん!?花が無いのか?」と、不思議い思われるのではないだろうか。
実は、壺状の形をした器官の内面に微小な花が多数密生した隠頭花序(いんとうかじょ)なので外からは見えないのです。外側から観察できないので、蝶などの虫達には気づいてもらえないのです。ならば、どうやって受粉するのだろうか?
イチジクとイチジクコバチの共進化について詳しくはコチラ
★「JT生命誌研究館」の研究紹介:昆虫と植物の共進化ラボ「生命誌32号」
http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/032/pdf/s32_202.pdf
東京都練馬区産のイチジクの実を割ってみた。覗き込むと、小さな黒い汚れのような物が付いている。もしや!と、急いでルーペで覗き込む。なんと、中には1ミリ強の小さな虫が5匹ほど入っていた。そいつらには翅が2対4枚あるのでハチ目の♀と思われる。そして、花の中で死んでいるのでこの花は雌花で間違いないだろう。しかし、日本の冬期の低温ではイチジクコバチは生きられないので、イチジクコバチではないということになるのだが・・・?
あとで聞いた話だが、「小学校の給食でイチジクがでたので、割ってみたらアリみたいな虫が5匹ほど入っていた・・・」。と善福寺公園のボート係の女性が教えてくれました。不思議、なんでコバチの数が5匹で一致するのだろうか?
カリフォルニア産のイチジクは日本へも輸入されているらしい。
カリフォルニアでは、イチジクコバチに受粉されたもののほうが甘くて美味しいといわれているらしいが、日本人には虫入りは受け入れられないだろうけれど。因みに、日本のイチジクはイチジクコバチの授粉を必要としない単為結果性品種なのだから入っていないはずであるけれど、練馬産のイチジクには入っていた事実をどう考えるか、悩みどころである。
東京都練馬区は都区内最高気温を今夏もたびたび記録していた地域のひとつである。近年は温暖化の進むこの地域でも奄美大島などに生息していたアカボシゴマダラや、インドやスリランカのワカケホンセイインコなどが野生化して沢山飛び交っている。
この時の撮影技法(ワーキングディスタンス)
レンズの先端から被写体迄の距離のことをワーキングディスタンス言う。よく勘違いするのが、カタログなどに書いてある「最短撮影距離」。これはカメラの撮像面から被写体迄の事をいう(レンズの最長時の長さ+マウントから撮像素子の長さを加える)。一般に売られているマクロレンズは倍率1xが標準なので、それ以上の倍率が必要ならばクローズアップレンズやエクステンションチューブなどのアクセサリーが必要になってくる。したがって、取り付けたアクセサリーでワーキングディスタンスが変わるのだ。
倍率が上がる弊害
1)被写界深度が浅くなる。
2)ライティングをコントロールすることが 困難になる。
3)近づきすぎて、虫などに警戒される。
今回のコバチ(1mm強)をCanonの(MP-E65mm f/2.8 1-5x)倍率5xで撮影するとなるとワーキングディスタンス(コバチとレンズ先端の距離)は40mmほどになりライティングが自由になりません。ちなみに、ニコンの60mmマクロレンズの最短は45mm、105mmマクロレンズならば148mmのワーキングディスタンスがありますから、105mmマクロレンズは60mmマクロレンズに比べ被写界深度が浅といえます。したがって、深い被写界深度が必要ならば60mm、長いワーキングディスタンスが必要ならば105mmと言う事になり、チョット悩ましいレンズチョイスになってしまいます。幸い、今回は動かない被写体だったのと、1mm強の小さな被写体だったので5xまで倍率が上げられるキャノンの特殊なマクロレンズMP-E65mm f/2.8 1-5xをチョイス、それにマクロリングライトMR-14EXを装着してバックライトにスピードライト580EXを一灯同調させて撮影しました。
カメラ設定
右上:Nikon D800, 絞り値:F/14、シャッタースピード:1/40秒,ISO感度設定:100、レンズ焦点距離60mm、露出モード:マニュアル、露出補正:−0.33、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、ROW。
左と右下:Canon 5DM2、絞り値:F/10、シャッタースピード:1/125秒,ISO感度設定:100、レンズ焦点距離65mmを5xで撮影、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、ROW。
使用ソフト
Raw現像ソフト:Lightroom4、最終調整:PhotoshopCS5使用
使用機材
上:Nikon D800、AF-S Micro Nikkor 60mm f/2.8G ED、 ニコンクローズアップスピードライトリモートキットR1, SB-R200用配光アダプター SW-11使用, LEDライト。SPEEDOLIHT SB-600をバックライトとして使用、三脚
下:Canon 5DM2, MP-E65mm f/2.8 1-5x 、マクロリングライトMR-14EX、SPEEDOLIHT 580EXをバックライトとして使用、三脚
POSTED BY:

TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家
カラスウリとエビガラスズメ2012.08.17
お盆が終わっても、茹だるような残暑の黄昏時。
白いドレスに盛装して怪しく闇に咲き乱れるカラスウリ。
レースに振りかけたパフィームを夜風に乗せて流すのだ。
闇に怪しく光る白いドレスと甘いフレグランスに誘われて、どこからともなくエビガラスズメがあらわれた。
軽いステップでホバリングを繰り返し、ご自慢の長〜い口吻で、カラスウリの甘いカクテルを次々に飲み干して行く。
それは、今宵カラスウリがエビガラスズメに、未来を託すために仕組んだ高等戦略が成就した瞬間でもあるのだ。
カラスウリ(烏瓜)ウリ科、つる性の多年草。
日没後19時頃に直径約7〜10㎝のレース状に広がり10分ほどで開花する。
午前2時を回ると次第にしぼみはじめ、翌朝には開花の姿を見る事は出来ない(キカラスウリは異なる)。
原産地は中国、日本。薮などにつるを絡ませて成長する。
カラスウリは雌雄異株で、花期は7〜9月。カラスウリの花筒は非常に長く、底に蜜をためるので、この写真に見るように、長い口吻を持ったスズメガでなければ花の奥の蜜を吸う事ができない。
また、夜間に目立つこの花は夜行性のガを呼び寄せるための誘導灯のようなもので、白いレースは他の虫達を止まらせない金網ブロックの役割をかねているとおもわれる。
しかるに、夜間ホバリングの出来るスズメガに特定した花粉媒介の高等戦略をとったとおもわれる。
このように特定の花と昆虫が依存し合う現象を「共進化」と呼ぶ。
写真上:雌花
写真下:雄花とエビガラスズメ
エビガラスズメ(蝦殻天蛾、学名: Agrius convolvuli)
チョウ目、スズメガ科。
翅の開張90~100mm。アメリカ大陸を除き、全世界に分布する。
太陽が沈むと花蜜を求めて飛び、長〜い口吻を伸ばして蜜を吸う。
昼に飛ぶ蝶と真逆の生態の夜行性のガである。
幼虫の食草はヒルガオ、アサガオ、サツマイモ、マメ科などのつる性植物。
日本では蛹で越冬して年二回、5〜6月と7〜9月出現する。
この時の撮影技法(三点が揃えば超ウルトラ級の撮影難度)
必須の機材はストロボとLEDライト。
「闇の中での撮影現場」「マクロレンズで捕らえる小さい被写体」「素早くチョコマカ動く被写体」この三点が揃えば超ウルトラ級の撮影難度です。
昼間のオオスカシバの吸蜜シーンの撮影もそれほど簡単ではないが、闇の中で素早く移動するエビガラスズメは小さくてピント合わせが非常に難しい。
それに、ライト光に敏感なエビガラスズメの吸蜜シーンのシャッターチャンスは運がよくて一回のみである。
さて、この難しいシーンを画にするにはどうするか?
何事にも言えますが、シミュレーション撮影を何回もトライする事につきるようです。
まず、撮りたい画の距離を想定し、LEDライトを左手に持ちターゲットのカラスウリの花をファインダーの真ん中におさめる練習を行う。
暗がりで素早く行えるようになったらしめたもの、半分は成功したようなものです。
あとは運を天にまかせてひたすら待つのみ。
いざ現れたら慌てず素早く間合いをつめ、思い描く画(長〜いストローが映る角度)を想像してカメラの角度を決め構える。
そして、もし貴方に運があればシャッターが押せるという塩梅です。ちなみに、今回は被写体との距離約30㎝、フルサイズ一眼レフカメラに60㎜マクロレンズ、この組み合わせは被写界深度も非常に浅く、F/14まで絞りこんでも約3㎝前後しかピントが合わないので「置きピン」での撮影は不可能です。
それに沢山のカラスウリの花の何処に現れるかを予測する事は不可能で三脚も役立たず。
合計この場所に3日間で5回ほど訪れましたが、4回はカメラの近くにも寄ってくれず・・・、あきらめかけた真夜中の2時30分頃やっと撮影に成功しました。
残念ながらこの時間帯は花のレースがしぼみ始めていたのがチョット残念。
カメラ設定
上下とも同じ:絞り値:F/14、シャッタースピード:1/125秒,ISO感度設定:200、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、ROW。
使用ソフト
Raw現像ソフト:Lightroom4、最終調整:PhotoshopCS5使用
使用機材
Nikon D800、AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED、 ニコンクローズアップスピードライトリモートキットR1, SB-R200用配光アダプター SW-11使用, LEDライト。上のみSPEEDOLIHT SB-600をバックライトとして使用
POSTED BY:

TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家
金ボタル(ヒメボタル)2012.07.05
七夕の頃、漆黒の森の中で金色の光の矢を放つ小さなホタルが棲んでいる。そのホタルの名は、光の色から名付けられて「金ボタル」と呼ばれています。ゲンジボタルよりも点滅間隔がとても短く、キラキラとまるでイルミネーションのように輝くのです。
現地にはお昼に到着。
1日で撮れる画は一枚のみであるから、慎重に場所選びをする。
アクセスランプやモニターなど光の出るところは総て黒のテープで覆う。なぜならば、恋の邪魔になる光は総て御法度なのである。
総てを整えたならば、あとは漆黒の闇に踊る、恋の瞬きの瞬間をただひたすら待つのみだ。
夜の帳が降り
最初の金ボタルが、漆黒の森へ向け恋の矢を放った・・・。
金ボタル(和名でヒメボタル、学名はHOTARIA PARVULA KIESENWETTER)
陸生のホタルの1生態型。
昭和34年3月27日岡山県指定天然記念物に制定。
黄金の光を発する事からその名前「金ボタル」がつけられました。
森に棲み幼虫は、陸生の巻貝「オカチョウジガイやベッコウマイマイなど」を食べ成虫になる。
♀体長約6mm前後と小さく、後翅が退化しているので飛べない。
♂体長約8mm前後、飛翔は地表から約1m〜2mの高さを飛び♀とのフラッシュコミュニケーションを行う。
めでたく♀との交信が成立した♂は♀のところに降りて行き交尾をすませ、その後♂は灯りを消し静かにあの世へ旅立ちます。
見れる期間:岡山県新見市哲多町蚊家地区の天王八幡神社の社叢に発生した金ボタルのフラッシュコミュニケーションを見れる期間は7月の七夕を挟んで10日間ほど。
漆黒の森の中で、恋の矢を放つさまはまさに幻想的で必見です。
この時の撮影技法(金ボタルの撮影技法)
金ボタルはゲンジボタルよりも光がとても弱いので、明るいレンズで高感度設定が求められる撮影です。(※土日三脚禁止なので平日に行くべし)
ここ哲多町は日本一厳しいマナーが求められるひとつの場所でもあります。
イントロでも述べましたが、光の出るモニター、パイロットランプなどは総て黒テープで光が漏れないように塞ぐ事を求められます。
少しでも光が漏れると即刻退場です、また携帯電話も主電源を切っておかなければなりません。
複数枚のレイヤー合成を行う事を前提でカメラ設定。
撮影中はモニターで確認できないので、明るいうちに撮影場所を決め、三脚にセットしてピント合わせをしておく事。さらに、ピントが動かないようにテープで固定する。
森の中が薄暗くなり始めたならば、背景を一枚撮影しておく事。
金ボタルはゲンジボタルよりも発光が小さいので(ゲンジボタルの約1/3)ISO感度を1250に設定する。
レンズはF値の明るい標準レンズか広角レンズを選ぶ絞りは、F/1.4、シャッター時間30秒。
デジタルカメラは長時間露光が苦手なので30秒ごとに30分間シャッターを切り続け、パソコンにて複数枚のレイヤー合成を行うのだ。(この時はフイルムカメラも持参して、ネガフイルムのISO1600を装填。30分間の露光を行った。出来上がりの画はほぼ同じでした)
三脚、黒色のテープ、明るいレンズ、レリーズは必須です。
「万葉集」
蛍なす ほのかに聞きて・・・
カメラ設定
上:絞り値:F1.4、シャッタースピード:30秒,ISO感度設定:1250、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、16ビット
使用ソフト
Raw現像ソフト:Lightroom4、最終調整レイヤー合成:PhotoshopCS5使用
使用機材
Canon EOS-1Ds Mark II、Canon 50mm F1.4、三脚:HUSKY 3D、レリーズ、黒色のテープ、水準器。
POSTED BY:

TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家
スミレとアリ2012.05.28
なんでこんなところにスミレの花が咲いているのだろうか?と不思議に思った事はありませんか?
じつはそこにこそ、スミレの生き残り戦術が巧みに組み込まれた結果なのです。
それにしても、まだ色彩の乏しい時期にスミレの花を見つけると、なんだか得した気分になるから不思議だ。
もし、進化の過程で人間の体の奥底に虫達のような遺伝子がかすかにのこっていて花に反応するのだと仮定したらどうであろうか?
もし、そうだとしたならば花に癒されるのも、また花束を抱えた男を目にした瞬間、浮き足立つ女達がいるのも納得できるではないか。
タチツボスミレ(立坪菫)スミレ科スミレ属
スミレ科には23属約800種があるといわれています。
大半の属は木であり、約500種が木本。
草本を含む属は3属だけ。
日本にはスミレ属の多年草しか分布していない。
日本には60種が分布しており、細かく品種まで見ると220種があり、スミレの豊富な国でもある。
タチツボスミレは北海道から沖縄まで広く分布するスミレの代表格である。
(参照:山田孝彦著/スミレハンドブック)
ちなみに、スミレの語源は諸説あるが良く間違って言い伝えられる説、
「大工さんが木材に線をひく時に使う墨入れが花の形に似ているところからスミレと言われている」スミレ(菫)の名前は奈良時代以前に命名されたので、大工道具の墨入れは江戸時代のものであるから明らかな間違いである。
現在でも諸説は多く確固たる定説はないようです。
写真のスミレは京都の霊鑑寺近くの苔むした石垣に生えていたタチツボスミレです。
花言葉:「つつましい幸福」「誠実」
花期:3月上旬〜5月下旬
トビイロシワアリTetramorium tsushimaeEmery(フタフシアリ亜科シワアリ属)
分布:北海道、本州、四国、対馬、九州、屋久島、韓国、中国。
体長:2.5mm。本土で最も普通に見られる種のひとつ。草地、公園などの開けた環境に生息し、土中、石下、草本類の根元などに巣をつくる。雑食性であるが、種子も好んで集める。
(参照:寺山守解説/久保田敏写真 アリハンドブック)
写真は巣穴に種を運び込むシーン(アリがくわえている白い部分がエライオソーム:脂肪酸、アミノ酸、糖からなる科学物質)アリの好物。
トビイロシワアリ2.5mm。タチツボスミレの種2mm
スミレの不思議3
その1
なぜ春にだけ花を咲かせるのか?
春の花の代名詞であるスミレの花が咲くのは3月上旬〜5月下旬頃。
まだ他の競争相手が少ないこの時期にいち早く花を咲かせ、太陽光エネルギーを存分に取り入れ花に蜜をため虫達を呼び寄せ他の個体と受粉します。
この時期に他の個体との遺伝子交換を行い病気などに強い遺伝子の種を作ることが出来ということになります。
その2
春を過ぎると花を咲かせないのになぜ次々と蕾が実るのか?
おかしいことに、夏に花が咲いてるところは見た覚えがないのになぜ蕾が実るのか?
じつはスミレは閉鎖花(自家受粉する)だからです。
春を過ぎると他の競争相手がどんどん大きくなり、太陽光エネルギーを遮り光が届きにくくなります。
また、花を咲かせても目立ちにくい為、虫達にアピールできなくなります。
そこで、スミレは考えました。
だったら花を咲かせるエネルギーも虫達に見つけてもらえないのなら無駄になる。
ならば、蕾だけを実らせ自家受粉し、11月頃まで次々に実らせて、生き残るという選択をしました。
たくさんの蕾を実らせるのはそれだけ生育率が低いためだと考えられています。
その3
どうしてこんな場所にスミレは咲いているのか?
たくさんの種を遠くに飛ばすには自力だけでは不可能で、スミレはアリの好物エライオソームという物質を種に付けスミレの回り約3m四方に種をはじき飛ばします。
その種を見つけたアリは好物のエライオソームだけが欲しいのですが容易に切り離せない強さで種とセット(抱き合わせ)なっているので仕方なく種ごと巣に運び込みます。
巣の中で無事切り離された種の部分はアリにとってもはや邪魔物で巣の外に捨てられます。
その時、捨てられた強運の種が競争相手の少ない早春に、いの一番で花を咲かせるというわけです。
この時の撮影技法(環境とタイミング)
植物や鳥、虫の活動のタイミングはお互いに密接に重なり合っており旬の時期を逃すと1年待たなければならない。
今回は撮りたい画のタイミングが重要で絶えず観察を続ける事が肝心でした。
スミレの花と、種の実りのタイミング、そこにアリが重なるのでまったく気が抜けない。
スミレの画は苔むす石垣などに生えている環境が条件。
4月:タイミングよく京都で理想の苔むす石垣に生えている生き生きとしたタチスボスミレを見つける。
5月:アリ撮影のキーポイント3点。
その1、アリと種の大きさのバランス。「タチツボスミレの種2mm」と「アリ2.5mm」が最適のトビイロシワアリの巣を見つける。
その2、巣穴に運び込むシーン。
その3、巣穴に運び入れる時に「種」と「エライオソーム」がしっかりと解る画でなければ撮る意味がないと考える。
それらが、絶妙なタイミングで重なるのをひたすら待ち受け撮影しました。
カメラ設定
上:絞り値:F/14、シャッタースピード:1/125秒,ISO感度設定:400、露出モード:マニュアル、露出補正:+0.7、ホワイトバランス:オート、測光モード:平均測光、ピクチャースタイル:スタンダード、焦点距離65mm
下:絞り値:F/7,1、シャッタースピード:1/80秒,ISO感度設定:800、露出モード:マニュアル、露出補正:−1、ホワイトバランス:オート、測光モード:平均測光、ピクチャースタイル:スタンダード、焦点距離105mm
使用ソフト
Raw現像ソフト:Lightroom4、最終調整PhotoshopCS5使用
使用機材
上:Canon 5DM2, MP-E65mm f/2.8 1-5x 、マクロリングライトMR-14EX
下:Nikon D800、AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G
POSTED BY:

TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家
日本三大桜2012.04.24
それぞれ推定1000年以上の歳月を生き延びてきた、まことに強運の持ち主のサクラ達である。
その生命力に畏敬の念をもって、大勢の老若何女が日本三大桜のもとに訪れる。
先日、京都で仕事があり一日早く出発して根尾谷淡墨桜にあいに行った。
大垣から樽見鉄道の2両連結の電車に乗り込むと、東京の通勤ラッシュなみの大混雑。
どんな人たちが乗っているのだろうかと車内を見渡すと8割ほどが老人達であった。
それにしても、日本のおばちゃん達は好奇心と行動力に満ちあふれている。
また、その中の数人は本格的な一眼レフを肩に下げているではないか。
記憶は曖昧だが、どこかのプリンター会社の調査で、家庭用プリンターの最大出力数が一番多いのは40〜50代のおばちゃん達であると書いていた。しかり、カメラとプリンター会社の技術者と営業マンはこの車内状況を見たら考えを新たにしなければなるまい。
ところで、この元気なおばちゃん達。
連れ合いはいったいどうしたのだろうか?
まさか、うっとうしい爺どもはおとなしく留守番しとけというわけであろうか。
『見かぎりし 古郷の桜 咲きにけり』 一茶
根尾谷淡墨桜
所在地 : 岐阜県本巣郡根尾村
推定樹齢1500年のエドヒガンザクラ。継体天皇お手植えになり、別れを惜しみ次の詠歌一首を遺された。
「身の代と遺す桜は薄住よ 千代に其の名を栄盛へ止むる」
大正時代には大雪による大枝のボッキリがあり、それを機に樹勢が著しく衰えて来たとの事。
昭和24年に山桜の若根238本を根継ぎしたほか、いろいろな保護がつづけられ回生がはかられた事が知られている。
他の三大桜も同じように、近年は樹の空洞が広がり老化がすすんでいるが、樹木医や地元民により手厚い看護で守られている。
淡墨桜は咲き始めがピンクで、しだいに白い花びらになり、散る間際に,墨をさしたような色に変わる。
山高神代桜
所在地:山梨県北杜市武川町山高2763
樹齢1800年とも2000年ともいわれる。
エドヒガンザクラ。
山高の「実相寺」の境内の現存するこの桜は、日本最古最大巨樹である。
日本武尊が東征の帰り道、この地を訪れ記念にお手植えされたおり「神代桜」と名付けられたとのこと。
その後、日蓮聖人がこの木の衰えを見て、回復を祈ったところ再生し「妙法桜」とも呼ばれる。
三春の滝桜
所在地 : 福島県田村郡三春町大字滝桜久
推定樹齢1000年のベニシダレザクラ。
滝桜は、薄紅の花が流れ落ちる滝のように咲き匂うことから名付けられた。
ちなみにこの滝桜は1611年12月2日慶長三陸地震8,1から明治三陸地震8,2〜8.5、昭和三陸地震8.1、そして今回の地震東北地方太平洋沖地震9、4回経験している事になるが、そこへ原発事故が重くのしかかる。
この画は去年の4月24日撮影。震災直後にもかかわらず車の渋滞が高速の出口まで延々と連なっていた。
日本三大桜中では最後に咲く桜で、これから見頃を迎える。
この時の撮影技法(SIGMAの実力)
桜の撮影では、高解像度カメラが求められる被写体のひとつでもある。
ちょっとだけこのカメラの特徴を説明します。
「Foveon X3ダイレクトイメージセンサーは、RGB全色を3層で取り込むことができる画期的なフルカラーイメージセンサーで、原理的に偽色が発生しない為、ローパスフィルターを必要とせず、光と色の情報を余すことなく取り込むことができます。
4,600万画素の高画素のフルカラー情報により、立体的で臨場感のある精緻な画像が得られる」シグマのサイトから引用
この説明のとおり、うまくツボにはまればフイルム並みの発色を得られ、桜の花びら一枚一枚見事に解像し立体感のある画は見事。
ただし、総ての動作は緩慢で大型カメラを扱うような慎重さが求められる。
パッとカメラバックから取り出しサクッと撮影するのは出来ない事はないけれど、はっきり言って向きません。また、Raw現像にはSIGMA Photo Pro5.2の専用ソフトを使うしかないのがチョット面倒でもある。しかし、カメラを操る感覚は久し振りで心地よい。
根尾谷淡墨桜
使用機材:SIGMA SD1 Merrill,17-50mm。三脚ベンロカーボンネオフレックス
カメラ設定
絞り値:F/11、シャッタースピード:1/125秒,露出モード:マニュアル、露出補正:−1/2段、ホワイトバランス:オート、測光モード:部分測光、ISO感度設定:100、ピクチャースタイル:スタンダード、35mm換算焦点距離25mm、ROW現像ソフト:SIGMA Photo Pro5.2、仕上げソフト:Photoshop CS6
山高神代桜
使用機材:Canon 5D MarkⅡ、CANON 17-40mm。
カメラ設定
絞り値:F/11、シャッタースピード:1/250秒,露出モード:マニュアル、露出補正:−1/2段、ホワイトバランス:オート、測光モード:部分測光、ISO感度設定:200、ピクチャースタイル:スタンダード、焦点距離24mm、ROW現像ソフト:Lightroom 4、仕上げソフト:Photoshop CS6
三春の滝桜
使用機材:Canon 5D MarkⅡ、CANON 17-40mm。
カメラ設定
絞り値:F/13、シャッタースピード:1/80秒,露出モード:マニュアル、露出補正:−1/2段、ホワイトバランス:オート、測光モード:部分測光、ISO感度設定:100、ピクチャースタイル:スタンダード、焦点距離17mm、ROW現像ソフト:Lightroom 4、仕上げソフト:Photoshop CS6
POSTED BY:

TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家