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about

TSUGIO NISHIMURA 西村次雄
フォトグラファー
1973年、九州産業大学芸術学部写真科卒。同年渡米。1979年、「STUDIO BB」を設立。デジタルの可能性にいち早く気づき、雑誌・広告を中心に一眼レフカメラを駆使して活躍中の”IT写真家”である。建築物、料理、人物、商品、そして動物・植物・昆虫と被写体の幅も極めて広い。

本当に騙しだまされてきたのか?(シランとヒゲナガハナバチの共進化)2014.05.16

シランには花蜜がない(ランの花の多くは花蜜がない)。
本当に、花蜜というお駄賃を貰えない事に気づかずに今日までポリネーターとして来てしまったのか、あるいは定花性を何かの手違いでDNAに刷り込んでしまいボランティアを続けているのか?
その事が気になり、数えきれない程のシランの花の形状と香りを嗅いでみる。
やはり花蜜は見つからないけれど、薔薇のような甘い香りの中に腐ったような微香がある。
この香がヒゲナガハナバチの♀のホルモンと似ていたとするとならば、四六時中パトロールを繰り返す♂達の行動のひとつが理解できるのだが・・・。
しかし定花性で行動を説明するには不可解である。

謎解きの仮説をたてる。
シランの受粉もヒゲナガハナバチノの交尾も、開花のタイミングに合わせて速やかに達成しなければ、次世代へ強い遺伝子の命のバトンは渡せない事になる。
そこでシランは膨大なエネルギーを必要とする花密作らないことにして、
花の香りを送粉シンドロームとして進化させてきた。
唇弁もまたヒゲナガハナバチの着地に都合のいい形に整え、交尾中も滑り落ちないように柔らかな表情のギャザー状に仕立てヒゲナガハナバチを誘惑し共進化してきたのではなかろうか?と仮説をたててみる。
無論、
ポリネーターの指名に失敗した場合に備え、シランはバルブという保険もしっかりかけて抜かりは無い。

いっぽうヒゲナガハナバチは花蜜を貰えない事は重々承知しており、香りに刺激されたお仲間達に容易く出会える社交場のひとつとしてシランを利用してきた、と仮説をたててみる。
とすると無駄にアチコチ相手を探しまわらなくても良いし、最大の使命である子孫繁栄の行為に効率よくエネルギーを集中する事が出来る。
結果、巡り巡ってシランのポリネーターとして共進化してきたことで、子供達の未来を支える事となる。
ポリネーターの定花性はとりあえず様々な花から花蜜を得るとして、出会いの場所と花蜜場所を「区別できるように高等進化した」、と仮定したならばヒゲナガハナバチの謎のボランティア行動のひとつが氷解するのだが・・・。(ランとハナバチはもっとも進化したと言われている)
もしかしたら、
もっと古い時代の化石が新たに発見され、高等進化したランの花とハナバチを恐竜も見ていた・・・。などとたわいない仮説遊びに戯れるのである。

シランとヒゲナガハナバチの起源について、詳しくはコチラ
http://www.kosjp.com/reikai/r0907_t.html
https://www.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/keitai/6-8.html
https://www.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/keitai/shiran.html

写真解説
1:粘着性の高いシランの花粉。納豆みたいに良く伸びる。
2:花の中に潜り込み、中で回転出来ないため後ずさりで出てくる時にペタンと背中に花粉を背負わされた瞬間。
3:ムラサキツメクサで一晩過ごしたヒゲナガハナバチ。背負わされた花粉と朝露がついている。早朝5時撮影。
4:お尻を突き出すように後ずさりで出て来た♀に、♂達(2頭)が素早く飛び乗り交尾をとげる瞬間。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆☆)」
「インテリジェンス」
ポリネーターの定花性を仮説に沿って色々な場所を渡り歩き、時間帯や光の状態などによる変化をつぶさに観察する。シランの花の構造や、粘着性の高い花粉を背負わされてそのまま眠りにつく姿や、様々なシーンを目に焼き付けその先を自分の考えでインテリジェンスする。

カメラ設定
1:絞り値:F10、シャッタースピード:1/200秒,ISO感度設定:800、
2:絞り値:F11、シャッタースピード:1/640秒,ISO感度設定:800
3:絞り値:F16、シャッタースピード:1/20秒,ISO感度設定:800
4:絞り値:F11、シャッタースピード:1/1000秒,ISO感度設定:800

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像にも使用)

使用機材

Nikon D800、①③④AF-S NIKKOR AF-S Micro Nikkor 60mm f/2.8G ED、②AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED,
②④ニコンクローズアップスピードライトリモートキットR1使用

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

山桜の幹から椿がニョキリ!?2014.03.31

絶妙なバランスの山桜と椿が存在する。
やるか、やられるか、それとも共生か、その事が気になって2年程この山桜と椿を見続けている。
会いに行くたびに空想遊びに迷い込む。
「どうしてこうなったのか?」たぶん山桜の株立ちの幹の間に椿の種が落ち発芽。
椿の根っこは素早く株立ちの間に滑り込ませ土まで到達せしめるが、山桜が大きく成長するとともに幹どうしがくっ付き合い幹からニョキリ状態になった。
椿の根はすでに菌根菌の菌糸ネットワークが築かれていて、情報や物質のやりとりでを行うことで病気や栄養不足を補う事ができた・・・。これから先、幹の固さは椿の方が固いだろうから山桜に絞め殺される事はまずないだろう・・・、などと至福の空想遊びに迷い込むのだ。(今のところ、どの椿とどの椿が交配したか分からず、残念ながら椿の名前は専門家でもわかっていません。昆虫か鳥のみぞ知るでしょうか?)

株立ちとはコチラ
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1024904175
図解の3で椿の種が株立ちの間に落ち発芽。素早く根を地中に届かせ、菌根菌の菌糸ネットワークが完成する。(写真のニョキリ状態は図解の4あたりに当たると思われる)

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆)」
「ストロボで主題を強調」
昼間の明るい光線状態で撮影すると、肝心な椿の幹の出所が分かりにくいのでストロボ3灯で主題がより強調されるようにライティングした。
カメラは三脚にセット。
ストロボは左右からと桜のバックに1灯セットして、総てのストロボにTOKISTAR 2.4Gワイヤレスセット:TS-824-M を付け同調した。
このワイヤレスセットは昼間の明るい場所でも少しぐらい隠れても離れてもすこぶる反応がよい。
また、マシンガンストロボは熱対策が施されており連続発光にとても強いので、車を使用出来ない時には今お気に入りの組み合わせとなっている。
狙い通り、このライティングで山桜の幹の凹凸と椿のニョキリ箇所を強調できたのではないだろうか。

カメラ設定
絞り値:F9、シャッタースピード:1/200秒,ISO感度設定:200、露出モード:マニュアル
焦点距離28.0 mm

使用ソフト
Raw現像ソフト:最終調整PhotoshopCS6使用

使用機材

NIKON D800、AF-S NIKKOR 24-85mm f/3.5-4.5G ED VR、スピードライト:NISSINマシンガンストロボ「MG8000」3灯使用、TOKISTAR 2.4Gワイヤレスセット:TS-824-M 3台使用、アンブレラ使用、ハニカムグリッド、ライトスタンド、三脚

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

藪椿(Camellia japonica)2014.02.19

「美しいサンセットが見たい!」と、同行のプロデュー サーの何気ない一言で千葉県のとある岬の坂道を急いでいた。足下に注意しながら視線を太陽に向けると、チラリと藪の中に赤色をとらえた。

「すみません!先に行って下さい・・・」

日没前の逆光の中、暗がりのカメリアを救うにはどうして もストロボが必要である。
こんな願ってもないシチュエーションが今私の目の前に現れているのにストロボは車の中。
太陽の動きは予想以 上に速いのである。
「走れメロス」とばかりに大慌てで結婚式場じゃなくて、 駐 車場へ駆け下る。
まさに約束の日没直前、カメリアのもとに息も絶え絶えに到着。

藪椿とその語源はコチラ
http://www2.odn.ne.jp/had26900/topics_&_items2/on-tsubaki.htm
藪椿は日本原産の花。椿といえば藪椿(Camellia japonica)の事をさす。
因に、花言葉にまつわる話を2つ程
ココ・シャネルが愛した花が薮椿(カメリア)。その花をモチーフに多くのデザインをしている。
花言葉は「贅沢、おしゃれ、誇り、完璧な魅力」

『椿姫』から、
以前紹介した新国立劇場からオンラインツアー
http://www.nntt.jac.go.jp/library/onlinetour/index.html
月の25日間は白い椿を身に付けて、あとの5日の生理期間中には赤い椿を付けた事から、人々に『椿姫』
純朴な青年アルフレードの愛情を表した。
「理想の愛、気取らない美しさ、控えめな愛」

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「美しさの中に気配を感じさせる写真」
花の写真はとても手強い、得てして「奇麗な花だね」で終わってしまうだけの写真になりがちだ。
プロとして要望の多い画を撮るのも一つの選択肢ではあるが、ただ美しいだけの写真に釈然としないというのが本音でもある。
そこで、麗しい風景の奥底にある気配を画に出来ないかと願ってやまないのである。
例えば、この画に込めたのは、藪椿の背景にある海に栄養源を注ぎ込む豊かな森があり、麗しい風景をもたらす自然のサイクルが備わっている事を、この一枚の画に語らせたいのである・・・。
無論、ひとりよがりな思い込みの激しい写真になりがちなのは承知のうえである。

カメラ設定
絞り値:F13、シャッタースピード:1/200秒,ISO感度設定:200、露出モード:マニュアル
焦点距離32.0 mm

使用ソフト
Raw現像ソフト:最終調整PhotoshopCS6使用

使用機材

Canon EOS 5D Mark II、EF24-105mm f/4L IS USM、スピードライト 580EX II、
ストロボディフューザー G

POSTED BY:
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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

Photograph(光の描くもの)2014.01.26

この画を撮る前に菊冬至(椿)の紅地に白斑の美しさに見入っていた。
菊冬至とは良いネーミングをつけたものだとプラリプラリと散策していると、落ち葉の絨毯に射している影が妙に写欲とコネクトした意である。

冬至は少しばかり過ぎ去ってしまったが、光が一番弱い日(陰の気が極まる日)で影が長くなる道理はご存知の通りである。
この画では、光が私とカエデを回り込み影として結像している事にお気づきだろう、そこにこそPhotoの原点が潜んでいるのである。
PhotographとはPhoto(光の)graph(描くもの)という意味である。
光は、キンと冷えた空気のレンズを貫き落ち葉に影を結像させていた、これも写楽の一考でもあろうかとセルフポートレートなる戯言遊びに押始める。

菊冬至と語源はコチラ
http://tsubakikan.city.nanto.toyama.jp/cgi-bin/tsubaki/tsubaki.cgi?page=45

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「ヒストグラム」
光と影はヒストグラム(輝度RGB)の256段階(8bit表記)の両極地にあるとします。
デジタルカメラのヒストグラムでは白を0とすると黒は255。そこでコントラストを強調したければ、アンダーの黒255付近とハイキーの白0付近にヒストグラムの山が高くそびえ中間は谷型が望ましいと言う事になる。
よって、モード設定に迷ったら、影のイメージをより強調できる風景モード(コントラスト強めの設定となっている)がオススメなのだ。

カメラ設定
絞り値:F11、シャッタースピード:1/320秒,ISO感度設定:400、露出モード:マニュアル
-0.67補正、モード設定:風景

使用ソフト
Raw現像ソフト:最終調整PhotoshopCS6使用

使用機材

NIKON D800、Micro NIKKOR 60.0 mm f/2.8G ED

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

ガガイモ(北風に未来を託す)2013.12.26

ピュ〜と北風が吹くころガガイモの実が割れ、未来への旅の準備が整う。
ガガイモの実は写真のように巧妙な種髪(しゅはつ)の作りになっていて、動けない植物が風を利用してより遠い処へ種子を飛ばす術をあみ出したのだ。
こんな事実を目の当たりにして私は夢中でシャッターを押し続けた。

日本神話に話を移すと、ガガイモの種は2つに割ると小さな船の形をしている事からスクナビコの神が天之蘿摩船(あまのかがみのふね)に乗ってきたと云われている。
そんな神話から、古人もガガイモの姿形に見入ったのだと思うと、なんだか時空を超えて一緒に見入っている気がしてじつに愉快な年の瀬であった。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆)」
「認識で風を捉える」
映りっこない風をいかに画にするか。
その為のアプローチはいろいろあるが今回は風の勢いを画にするにはどうしたら良いか考えた。
ひとつの技法としてブレも考えたが、肝心要の種子の存在が犠牲になる。
そこで人間の持つ認識を利用する事を考えた。
ニュートンの引力である。
種髪を今にも引き離す風の勢いを表現するには、引力に逆らって真横になった瞬間を狙えば良いのではないかと考えたのである・・・。
果たしてうまく風を捉える事ができただろうか?

カメラ設定
絞り値:F3.2、シャッタースピード:1/500秒,ISO感度設定:400、露出モード:マニュアル

使用ソフト
Raw現像ソフト:最終調整PhotoshopCS6使用

使用機材

OLYMPUS OM-D E-M5、OLYMPUS M.60mm F2.8 Macro

POSTED BY:
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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家