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TSUGIO NISHIMURA 西村次雄
フォトグラファー
1973年、九州産業大学芸術学部写真科卒。同年渡米。1979年、「STUDIO BB」を設立。デジタルの可能性にいち早く気づき、雑誌・広告を中心に一眼レフカメラを駆使して活躍中の”IT写真家”である。建築物、料理、人物、商品、そして動物・植物・昆虫と被写体の幅も極めて広い。

雨宿り2014 / 06 / 10

もう3日間ほどシトシトと長雨が続いている。
夕刻、ふと「この雨の中どうしているのだろうか?」と気になってウラナミアカシジミに会いに出かけた。
この辺かな?とあたりをつけて探す。
ほどなく、美しく輝く姿をクワの茂みの中で見つけた。
「やっぱりここでしたか!」と冷静さを装いつつ葉っぱの間にレンズをそ〜っと滑り込ませ、
マニュアルフォーカスリングをくるくる回しフォーカスする・・・。

ス〜ッ、とファインダーに浮かび上がったウラナミアカシジミ、
想像以上に美しい!

息を止めスローシャッターで「カ〜シャ!カ〜シャ!カ〜シャ!」と3回程連写する。

ウラナミアカシジミ(裏波赤小灰蝶、学名Japonica saepestriataシジミチョウ科アカシジミ属)
日本には25種が生息。
ゼフィルス(Zephyrus)の一種で樹上性があり昼間は葉に止まりじっとしているが、夕方になると黄昏れ飛翔が見られる。ちなみにゼフィルスとはギリシャ神話の西風の神ゼピュロス(ヴィーナスの誕生の画の中で、ヴィーナスに風を吹きかける姿で描かれている)。
天候のことわざ『西風に雨は梅雨どきだけ』。まさに梅雨時に現れる蝶である。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆)」
「スローシャッターの極意」
雨のシットリ感が欲しくてレンズはLEICA 100mm Macro-Elmaritをセレクト。
難関が2つ。葉っぱの奥で雨宿りしているので、枝が邪魔になり三脚が使えない。イメージからストロボは使いたくない。ならば、と二通りのテクニックを使って撮影した。iso感度を上げ3枚連写を行うのである。iso1250まで感度を上げ露出を計るとシャッタースード1/25。ブレを押さえるには通常100㎜ではシャッタースピード1/100以上が必要と言われているが今回は1/25である。このレンズ、美しいボケ味と立体感はまさに一級品であるが、手ぶれ補正などついていない古い代物であるがゆえにブレには細心の注意が必要なのだ。そこで、カメラをしっかりホールドして、息を止め3枚ほど「カ〜シャ!カ〜シャ!カ〜シャ!」と連写する(理由は2枚目当たりからブレが少なくなる)。
味付けとして、クワの紅い果実、と雨の雫のバランスに注意しつつ構図とシャッターチャンスを決めた。

こぼれ話
高感度カメラが欲しい!
もうすぐニコンとキャノンから新機種の発表があるらしい。もし高感度に改善がみられれば購入したいと思っている。普段から「嘘八百」と仲間から言われるようにiso800をよく使うし、場合によっては800以上もガンガン使う。高感度こそがフィルム時代に味わえなかった最大の利点でもあり、今まで撮れなかったシーンが狙えるのだ。だったらそれを道具として使わない理由などどこにもないと考えている。多少ノイズが増えようが立体感にかけようがそんな些細な事は問題ではない。特殊な撮影をのぞき、撮りたいものをその現場の光源下で撮りたいのである。

チョット脇道へ
ロバート・キャパの『ノルマンデー上陸作戦』の写真を覚えておいでだろうか、命がけで撮影したフィルムを『LIFE』の暗室係の助手は興奮のあまりネガフィルムを乾かす際、加熱のためにフィルムのエマルジョン(乳剤)を溶かしてしまった(『LIFE』は11コマが使えたと言っている)。

キャパは命がけで撮った写真でありながらこの事を怒る事もなく、撮り終えた写真には全く執着しなかった。後に、「106枚うつした私の写真の中で救われたのは、たったの8枚きりだった」とキャパ自身が『ちょっとピンぼけ』ロバート・キャパ、川添浩史/井上清一訳の中に記している。
ピンボケで粒子が荒れていたが、それがより緊迫感を与えていた。

蘊蓄に富んだキャパの誓い
絶対禁止!
酒、賭博、爆撃照準機、女!!
ロバート・キャパは写真技術には無頓着で、金が入るとカメラ機材を買うよりも先ずスーツを新調した。

カメラ設定
絞り値:F2.8、シャッタースピード:1/25秒,露出モード:マニュアル、露出補正:−1/3段、ホワイトバランス:オート、測光モード:部分測光、ISO感度設定:1250、ピクチャースタイル:風景

使用機材
Canon 5D MarkⅡ、LEICA 100mm f/2.8 APO-Macro-Elmarit-R、LR-EOSマウントアダプターにて取り付け

使用ソフト
Raw現像ソフト:最終調整PhotoshopCS6使用

POSTED BY:
tsugionishimura_image

TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

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