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about

TSUGIO NISHIMURA 西村次雄
フォトグラファー
1973年、九州産業大学芸術学部写真科卒。同年渡米。1979年、「STUDIO BB」を設立。デジタルの可能性にいち早く気づき、雑誌・広告を中心に一眼レフカメラを駆使して活躍中の”IT写真家”である。建築物、料理、人物、商品、そして動物・植物・昆虫と被写体の幅も極めて広い。

岐阜で桜とギフチョウ2016.03.28

仕事を終え、岐阜駅に向かうタクシーの車中。
まだ桜の開花には早すぎて諦めかけていたが、この時期を逃すとまた一年待たなければならない。
「運転手さん、今年はギフチョウをご覧になられましたか?」「何ですか!?チョウですか?もう半世紀以上こちらに住んでいますが、まだ一度も見たことがありません」淡い期待は・・・。
すかさず、名和昆虫博物館へ電話。
「ギフチョウいますか?」「いますよ〜!」と弾んだ声が返ってきた。行き先変更、ピュッと到着。運転手さんも見たいというので、二人分の入場券を買う。

「どこにいますか?」
「あそこの奥の方です、自由に撮影していただいて大丈夫ですよ」
60センチ程の水槽の中に5頭いて、本能とはいえこの中で蜜を吸い、交尾して卵を産むそうである。
説明を聞きながら、♂のギフチョウが彼岸桜の蜜を吸いに上の方にバタバタと移動する場面を撮影することにした。以前、金沢辺りのカタクリの吸蜜シーンは何度か撮影したけれど、岐阜で桜とギフチョウを撮影するのが夢でもあったのだ。夢は願い続ければいつか叶うもので、とうとう昆虫学者の名和 靖(ギフチョウの名付け親)の名和昆虫博物館で桜とギフチョウにタイミングよく出会えたのだ。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆☆)」
「博物館の蛍光灯のフリッカーの有無を考察する」
動きが無いなら、すごく優しい撮影ですが、羽ばたいているシーンを狙ったので撮影難易度が数段上がりました。条件が手持ち撮影で、背景をぼかしギフチョウの模様を分からせることとなると、ピントとシャッタースピードがとてもシビアで(ギフチョウが上へ上へと羽ばたいて動いてしまうので)、素早い状況判断と決断が求められる撮影なのです。

覚えておくべきポイント
ストロボが使えない場所。
名和昆虫博物館の主光源は蛍光灯。ラッキーな事に、私たちのためにギフチョウの入れられている水槽周りの電球を6個ほど急遽点灯したとのこと。嬉しいではないか、温度が上がると動きが活発になる。さらに、電球ならばフリッカー現象を考慮する必要はないのでシャッタースピードを1/250s、絞りは開放の2.8f、感度はISO800に設定したのです。
もし、主電源の蛍光灯だけだったならばフリッカー現象が起きるので(静岡県を境に西日本は60Hz、東日本は50㎐)岐阜県なのでシャッタースピードを1/120s以下(くたびれた蛍光灯があるので理想は1/60s)にしなければならない制約があるので高感度に頼ることはできない、とこのような事を瞬時に判断しなければなりません。(フリッカー低減機能がついた機種「Nikon D810」ならば、悩み無用ですが・・・)
この画では左翅がギリギリのブレ加減になっているのがお分かりだろうか?
これ以上ブラしてしまうとギフチョウの両翅の特徴的な模様が消えてしまう恐れがあると判断したのです。

撮影地:岐阜県岐阜市 名和昆虫博物館

カメラ設定
Nikon D810, 絞り値:F2.8、シャッタースピード:1/250秒,ISO感度設定:800、レンズ焦点距離70mm、露出モード:マニュアル、露出補正:+0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw。

使用ソフト
PhotoshopCC2015使用(Rawデータ現像)

使用機材

Nikon D810, AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

レンゲ畑に寝そべって2016.03.16

小学生の頃—–
春、田んぼがほぼピンク一色に染まる麗しい風景だったけれど・・・、今はポツリポツリ。
でもね、レンゲ畑で寝そべってカメラを構えると、視線に余計なものが入ってこないので、まさにあの時の心象風景が蘇ってきます。

悲しいかな、東京での癖が抜けず、頭をチョロッと持ち上げてキョロキョロと周りを確認・・・。
のどかです、
ほとんど人は歩いていないので、行き倒れ老人と間違われて撮影を邪魔される事もないのです。
心地よいミツバチの羽音と、甘い花の香りに包まれて長い時間寝転んでいました。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆)」
「ポイントを押さえる」
ミツバチが訪花する意味は、「蜂蜜」だけじゃないんだよ、「花粉」も大事なんだよ、と分かりやすく画に盛り込む事が今回の目的でした。ポイントは、レンゲの花粉を綺麗に見せる事と、ミツバチの花粉だんごが一杯になりかけている場面。そのための撮影条件として、綺麗な花と花粉が見える角度にゴロンと寝そべって粘りました。
一見簡単そうに見えますが、被写界深度が浅いマクロレンズなので撮影は容易くはありません。

撮影地:鹿児島県霧島市

カメラ設定
Nikon D810, 絞り値:F8.0、シャッタースピード:1/640秒,ISO感度設定:400、レンズ焦点距離105mm、露出モード:マニュアル、露出補正:+0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw。

使用ソフト
PhotoshopCC2015使用(Rawデータ現像)

使用機材
Nikon D810, AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED

お知らせ
前回お知らせいたしました西村裕介「The Folk」の個展のご案内です。
3月3日〜4月2日まで一ヶ月間、六本木の「IMAgallery」で開催中です。
http://imaconceptstore.jp
興味のある方は是非個展会場へ足をお運び頂きますと幸いです。

沢山の紹介記事のなかから旬なものをふたつだけご紹介させていただきます。
3月17日の産経ニュース
http://imaconceptstore.jp
現在発売中のアサヒカメラ3月号のP222「あのひとに会いたいPEOPLE」。

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

華やかな菊冬至2015.12.24

紅白の花色を眺めていると、不思議と華やぐ心を目覚めさせてくれるので飽きもせず毎年レンズを向ける事になる。この華やかな紅地に白斑が入る菊冬至は、江戸時代から愛でられてきた誠に美しい椿のひとつでもある。まさに、冬至の頃から見頃を迎える早咲きの椿(バラ科)ながら、名前の由来は、二十四節気「冬至」からではなく、行事の装束や縫い目などの補強のために付けられた房飾り「菊綴じ」からつけられたとか・・・。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆)」
「アベイラブルライト=そこで手に入る光を利用」
光量と補色効果。赤の対局は青緑と言うように、正反対の位置にある色の組み合わせは、お互いを引き立てあう関係にあり相乗効果を得られる。この画はまさに補色で構成されています。青緑の葉っぱも明るく透明感が出るように明るい光を取り入れ、明暗強弱で躍動感を演出しました。また、右奥の赤色も手前より暗くコントロールして手前の花をより強調。
このように、チョットだけ光の量に気を配ることにより、より透明感を強調できるのです。
撮影地:東京都神代植物園

お知らせ
以前、このブログ内で「ジョウビタキをHSSで撮る」でお知らせいたしました、
西村裕介の写真集『THE FOLK』がいよいよ2015年12月25日に発売されます。
『THE FOLK』とは「伝承者」の意です。4年間にわたり日本全国の伝承者を訪ね歩き、黒幕背景で挑んだ
「日本人の源へ」の写真集です。『Little More Books』より発売(英訳あり)。

ご興味のある方は、是非下記のクリックをお願いいたします。

紹介された主な媒体
NEWSROOM TOKYO/NHK WORLD TV 2015年9月4日放送
COMMERCIAL PHOTO 2015年11月号特集52P〜56P
Time out Tokyo
The Japan Times 2016年1月インタビュー記事記載予定

Time out Tokyoへはコチラ
http://www.timeout.jp/tokyo/ja/blog/西村裕介による日本の郷土芸能を詰め込んだ写真集が12月25日発売-121715

カメラ設定
Canon EOS 5DSR, 絞り値:F3.2、シャッタースピード:1/125秒,ISO感度設定:800、レンズ焦点距離100mm、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:portrait、Raw

使用ソフト
PhotoshopCC2015使用(Rawデータ現像)

使用機材

Canon EOS 5DSR, EF100mm f/2.8 Macro USM

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

秋薔薇での出来事「シングル・ピンク・チャイナとコカマキリとアキアカネ」2015.11.24

秋薔薇は色も鮮やかで香りも強い。
写真はシングル・ピンク・チャイナ(一重のコウシンバラ)と言われるオールドローズ。
バラは、ジャスミン、スズランと並び「三大花香」とされ、独特の甘い香りがある。
「香りのないバラは笑わぬ美人と同じ(アメリカ薔薇協会)」
笑顔の美人ならば、虫たちはこの鮮やかな色と香りに誘われて来るのでは、、、と思い神代植物公園へ。
セレクトしたレンズはオールドレンズのLEICA 100mm f/2.8 APO-Macro-Elmarit-R。
このレンズ、F8に絞り込んでもソフトなボケ味と、ビシッと芯のある描写をしてくれるから好きなレンズのひとつでもあるが古いだけに解像度はイマイチか。
眼前のリアルにファーカスする。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「マクロレンズはマニュアルフォーカスが基本」
虫を撮るには少しばかり不向きそうにみえるが、実はマクロ撮影はマニュアルフォーカスが基本である。
動きのある虫、動きのない花(実際は風で揺れる)に関わらずマニュアルフォーカスが使いやすいという事。
何故マニュアルフォーカスが扱いやすいか?
それは、接写では被写界深度が浅くなるので、狙った構図とポイントに正確にピントを合わせるには、手持ちでクルクルとファーカスリングを回したほうが「急がば回れ」でピントのヒット率が増すのです。
撮影地:東京都神代植物公園

カメラ設定
Nikon D810, 絞り値:F8.0、シャッタースピード:1/200秒,ISO感度設定:100、レンズ焦点距離100mm、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:ポートレート、Raw。

使用ソフト
PhotoshopCC2015使用(Rawデータ現像)

使用機材

Nikon D810, LEICA 100mm f/2.8 APO-Macro-Elmarit-R

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

奇跡のリンゴの里で「クロスズメバチ」2015.10.26

青森県弘前市に向かう電車の中で何処に行こうかと迷っていた。
それというのも、半日だけうまい具合に時間が取れたので、奥入瀬渓谷の紅葉かそれとも岩木山でリンゴを狙おうかと決めかねていた。
—–まてよ、弘前市のリンゴといえば以前映画で見た木村秋則氏の『奇跡のリンゴ』の舞台が弘前市ではないかと思い至ったのである。おそらく無農薬・無肥料によるリンゴ栽培では世界で初めて成功した人であるそうだ。残念ながら大勢の人々が押しかけたせいで、今は木村秋則氏のリンゴ農園は公開されていないので近くのリンゴ農園へ。果物ナイフとザルを手渡され、「世界一」「彩香」「津軽」など試食していたら、ブーンと見覚えのあるハチがリンゴに止まった。ひょんな所でクロスズメバチとの出会いである。嬉しくて、嬉しくて、そっと果物ナイフを置きレンズを向ける。

映画「奇跡のリンゴ」
詳しくはコチラ
https://ja.wikipedia.org/wiki/奇跡のリンゴ

You Tubeから 木村さんの自然栽培講演A はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=avFe15j_Gv8
—-テントウムシはアブラムシを1日何匹食べるか。皆さん確認しましたか?ほとんど食べない、幼虫は5〜6匹。一番食べているのはあの嫌われ者のハエやアブの幼虫だったのです・・・。

You Tubeから プロフェッショナル仕事の流儀 はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=PBuIoFUB6aEGv8

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「フットワーク」
リンゴの樹を撮るつもりで24-70㎜レンズを付けていたが、そこへ思いがけないクロスズメバチが現れ予定変更。さて、車までマクロレンズを取りに戻るか、それともこのレンズで撮るか・・・。

—–別段、ここで大きく撮る意味はないと考え、まず保険をかける為にリンゴのフォルム重視で1枚撮る。
首尾、まことに在り来たりの写真ながら、弘前市で出くわしたクロスズメバチだからこそ意義深い、と虫好きは思い至ったのである。「nurse cropと微生物=生物多様性」これらのおかげ、とリンゴの頑張りで身体に良いリンゴが実る。でもね〜、スズメバチのトッピング写真では普通ドン引きされちゃいますよね〜。なので、引かれないような画を求めてリンゴの花の咲く5月頃、もう一度訪れたいと心算している。

撮影地:青森県弘前市

カメラ設定
Nikon D810, 絞り値:F8.0、シャッタースピード:1/80秒,ISO感度設定:200、レンズ焦点距離70mm、露出モード:マニュアル、露出補正:+0.33、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw。

使用ソフト
PhotoshopCC2015使用(Rawデータ現像)

使用機材
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Nikon D810, AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家