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about

TSUGIO NISHIMURA 西村次雄
フォトグラファー
1973年、九州産業大学芸術学部写真科卒。同年渡米。1979年、「STUDIO BB」を設立。デジタルの可能性にいち早く気づき、雑誌・広告を中心に一眼レフカメラを駆使して活躍中の”IT写真家”である。建築物、料理、人物、商品、そして動物・植物・昆虫と被写体の幅も極めて広い。

氷筍「羅臼のマッカウス洞窟」2017.02.07

2008年2月の「FIELD NOTES」をめくり、
当時の記録を時系列で眺めると、一瞬でその日の出来事が再現されるのだ。

その日の早朝、宿の主人から
「猛吹雪ですから、残念ながら今朝は船を出せません。退屈しのぎに、近くのマッカウス洞窟に行かれてはいかがですか?」と勧められ、パパッと朝食を済ませ車に乗り込む。ゴーッと吠える地吹雪にハンドルを持って行かれそうになりながらも、すれ違う車もいないので余裕の鼻歌混じりで向かった。

マッカウス洞窟に到着。
ポタリポタリ・・・と天井から滴り落ちる一滴一滴、この雫が見事な氷筍を作り上げていた。
それほど期待はしていなかっただけに、口あんぐりの一驚あり。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「氷筍をコントラスト強調で表現する」
Canon EOS 5Dはひと昔前のデジカメではあるが、当時はこぞってプロカメラマン達が愛用していた名機である。現像ソフト、PhotoshopCC2017.0.0で試してみると、最新のデジカメなど必要ないのではないかと思えるくらい素晴らしい再現性を秘めている。なのに、目新しい最新機種が発売されると真っ先に飛びつくのである。先日もプロキャプチャーと、ED 12-100mm F4.0 IS PRO、そして18コマ/秒、AF/AE固定最高60コマ/秒の高速連写に魅了されOLYMPUSのOM-D E-M1 Mark IIを衝動買いしてしまった・・・。

さて、話を本題に戻そう。
色味の少ない氷の冷たさを表現するには、明暗を強調すべきであると考え露出はアンダーに設定。これで洞窟の岩肌は黒く、氷は白くコントラストが強調されたことになる。
最後に、現像ソフトPhotoshopCC2017.0.0で色温度を低く設定して微調整現像。

撮影地:北海道目梨郡羅臼町共栄 マッカウス洞窟

カメラ設定
Canon EOS 5D, 絞り値:F11.0、シャッタースピード:1.3秒,ISO感度設定:100、レンズ焦点距離23mm、露出モード:マニュアル、露出補正:−1、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw

使用ソフト
PhotoshopCC2017.0.0使用(Rawデータ現像)

使用機材
Canon EOS 5D, EF17-40mm f/4L USM (焦点距離23mm)、三脚使用

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

ホワイトクリスマス2016.12.25

早朝から、雪の降りがピークになって来た・・・。
私は、かねてよりホワイトクリスマスの花名にふさわしい画を具現化できないものかとトライを重ねていたので、この初雪に躊躇なく東京都神代植物公園へ向かった。11月に東京で初雪が観測されたのは1962年以来54年ぶりの事になるとカーラジオから流れている。

誰もいない、バラ園で作業員とひとことふたこと言葉を交わす。
私「今日は、贅沢にも雪のバラ園を独り占め状態です!」
作業員「こんな日にはプロしか来ませんよ」
私がプロとは知らないはずの作業員の方から、意外な言葉がかえってきた。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「やわらかい光とアクセントでバラを撮る」
ホワイトクリスマスをじっと眺めると、雪空のソフトな光が優しく包み込むように回り込んでいます。毎年のように撮影しているホワイトクリスマスですが、簡単そうに見えてこれがとても手強い被写体なのです。なぜだか、他のバラに比べて綺麗な花弁が少ないのです。原因は、雨などの些細な刺激ですぐに汚れたように痛んでしまうのがほとんど。それに、淡いオフホワイトの花色も単調な画になりがちです。このような事から、何かしら変化をもたらすアクセントがないかと模索していました。幸いな事に、初雪に見舞われながらも、この一輪だけがかろうじて理想に近い美しさを保っていた。

—–ふわっと積もり始めた初雪のアクセントが加わり、写真の物語性はガラリと一変。

撮影地:東京都神代植物園

カメラ設定
Nikon D810, 絞り値:F8.0、シャッタースピード:1/640秒,ISO感度設定:800、レンズ焦点距離105mm、露出モード:マニュアル、露出補正:−0.67、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw

使用ソフト
PhotoshopCC2017.0.0使用(Rawデータ現像)

使用機材

Nikon D810, AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

キチョウの抗えぬ恋2016.12.02

萩の花が咲き終わる頃、キチョウの羽化を毎年のように確かめに行く。この日も長い時間観察を楽しみ、さて帰ろうかと思ったのだが、あそこもついでに見ておこうとマメ科のギンヨウアカシアへも足を運んだ。
青空に映えるギンヨウアカシアの下に近づくと、樹上には沢山のキチョウが舞っていた。それは♀が羽化したてであろう事を物語っていて、これから起きる光景をなんとなく予測できるのである。想像する、—–この風に、羽化したての♀のフェロモンが漂っているだろうから・・・、などとなんとなく目を凝らして眺めていると、交尾中のペアに他の♂たちが吸い寄せらるるよう集まってきた。あぁ、またいつもの光景が繰り広げられるのか・・・・・とその時。
「あっ!」と息を飲む!
その背後には眼光鋭いハラビロカマキリが潜んでいたのだ!
—–抗えぬ恋—–、ゆえ背後の危うさには全く気づいていない。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆)」
「ストロボで逆光の空を暗く落とす」
高い位置の枝に羽化した♀を撮影するために移動した先は逆光の位置にあった。まずい事に、そのままシャッターを切ると、空が白飛びしてキチョウとハラビロカマキリがアンダーに、これでは肝心な主題を強調出来ません。そこで、問題解消にストロボを焚くことにした。ストロボはいつも虫用のカメラバックに収まっているNikon SB-700。こいつをマニュアルでハイスピードシンクロ=(FP)設定にする。今回の撮影技法の肝は、一番明るい空をアンダーにすることにある。まず空の露出を計り、導き出されたシャッタースピード1/800s、絞りF9.0に設定した。これで、意図した肝を押さえた事になったので、あとは必然的にキチョウに当てるストロボの適正露出を絞りF9.0にしなければならない事になる。さらにシャッタースピードが1/800sになったので、ハイスピードシンクロ設定が必要という事です。言うまでもありませんが、シャッタースピード1/250s(ほとんどの機種)以上でストロボを同調させるには、ハイスピードシンクロ設定が行える機種が必須なのです。ただし、バッテリーの消耗が激しいので注意。

撮影地:練馬区:石神井公園

カメラ設定
Nikon D810, 絞り値:F9.0、シャッタースピード:1/800秒,ISO感度設定:200、レンズ焦点距離200mm、露出モード:マニュアル、露出補正:+0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw。

使用ソフト
PhotoshopCC2017使用(Rawデータ現像)

使用機材

Nikon D810, AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR、Nikon SB-700

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

この一週間で出会った南と北の蝶2016.11.01

えっ!
一瞬、特徴的な大目玉(眼状紋)を見て、思わず北海道にもタテハモドキ!?

冷静に考えれば南方系の蝶などいるはずもないのですが・・・。

認識の誤作動は、
北海道に来る4日前にさかのぼる。その日は宮崎県高鍋湿原でタテハモドキを撮影していた。この事もあり、仕事中にいきなり現れたクジャクチョウ。
あれっ!?・・・と疑いもなくポンコツ脳はリンクしちまったのだ。

それにしても、
残像を引きずり、眼状紋を見ただけで、私も鳥のように勘違いしてしまった事になる。言うまでもなく、猛禽類の目玉に見間違えたりはいたしませんが、鮮やかな翅の上にこぼれた、イオの大粒の涙の真珠をまとう、クジャクチョウ。
その和名は:「Nymphalis io geisha」
「妖精、ギリシヤ神話の娘イオ、芸者」蝶には珍しい和名:芸者に見事に惑わされてしまったようです。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「運を味方に」
見てシャッター押すだけ、簡単すぎてテクニックなど語れませんが、残念なことにクジャクチョウの翅全開まで待つ時間的余裕がなかったのが心残りでした。
寒露の頃、南と北の果てで「タテハチョウ科」の蝶を、仕事中にチョチョイと撮影出来た幸運に感謝。

撮影地
上・タテハモドキ:宮崎県宮崎市高鍋湿原 
下・クジャクチョウ:北海道北見市留辺蘂町

カメラ設定
上:Nikon D810, 絞り値:F8.0、シャッタースピード:1/640秒,ISO感度設定:800、レンズ焦点距離200mm、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw。

下:Nikon D810, 絞り値:F9.0、シャッタースピード:1/500秒,ISO感度設定:400、レンズ焦点距離85mm、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw。

使用ソフト
PhotoshopCC2015.5使用(Rawデータ現像+トリミング)

使用機材

上:Nikon D810, AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR
下:Nikon D810, AF-S NIKKOR 24-85mm f/3.5-4.5G ED VR

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

キイロスズメバチの狩りの一場面2016.10.04

蟄虫(すごもりのむし)戸をとざすころ
このキイロスズメバチはニホンミツバチの巣口で狩りをしていた。見かけはとっても怖そうなお顔なれど、慣れとは恐ろしいもので、このお顔に正対してもちっとも怖くないのです。むしろそのフォルムとカラー配色の見事さに心揺さぶられ、吐息が漏れてしまうほど・・・。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆)」
「閃光時間1/40000sの世界」
翅脈がクッキリと見えた画が欲しくて、高速閃光のストロボのひとつであるNikon SB-700の出力を下げ、M1/128(閃光時間1/40000s)の最小出力、最速閃光に設定しました。キイロスズメバチぐらいの大きさになると、羽ばたきの中間地点を切り取っても、1/40000sではご覧の通り翅もピタリと止まるのです。理論上、キイロスズメバチの1秒間1往復の羽ばたき回数は200回以下、片道では400回以下ということになります。すなわち、「ストロボの閃光時間」と「被写体のスピード」を把握できると、ブレ幅の加減を思いのままに操る事が可能となるのです。言うまでもなく、把握するにはトライ&エラーの地道な積み重ね検証が必要になります。

撮影地:東京都練馬区石神井公園

お知らせ
「ナショナルジオグラフィック」10月号P16〜P23
“写真は語る民俗芸能に見た日本の心”
西村裕介の特集が組まれています。興味のある方は書店でめくって見てください。

カメラ設定
Nikon D810, 絞り値:F8.0、シャッタースピード:1/200秒,ISO感度設定:1250、レンズ焦点距離200mm、露出モード:マニュアル、露出補正:−1、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw。Nikon SB-700 約1/40000秒(M1/128)

使用ソフト
PhotoshopCC2015.5.1使用(Rawデータ現像+トリミング)

使用機材

Nikon D810, AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR、Nikon SB-700

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家