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about

TSUGIO NISHIMURA 西村次雄
フォトグラファー
1973年、九州産業大学芸術学部写真科卒。同年渡米。1979年、「STUDIO BB」を設立。デジタルの可能性にいち早く気づき、雑誌・広告を中心に一眼レフカメラを駆使して活躍中の”IT写真家”である。建築物、料理、人物、商品、そして動物・植物・昆虫と被写体の幅も極めて広い。

キチョウの抗えぬ恋2016.12.02

萩の花が咲き終わる頃、キチョウの羽化を毎年のように確かめに行く。この日も長い時間観察を楽しみ、さて帰ろうかと思ったのだが、あそこもついでに見ておこうとマメ科のギンヨウアカシアへも足を運んだ。
青空に映えるギンヨウアカシアの下に近づくと、樹上には沢山のキチョウが舞っていた。それは♀が羽化したてであろう事を物語っていて、これから起きる光景をなんとなく予測できるのである。想像する、—–この風に、羽化したての♀のフェロモンが漂っているだろうから・・・、などとなんとなく目を凝らして眺めていると、交尾中のペアに他の♂たちが吸い寄せらるるよう集まってきた。あぁ、またいつもの光景が繰り広げられるのか・・・・・とその時。
「あっ!」と息を飲む!
その背後には眼光鋭いハラビロカマキリが潜んでいたのだ!
—–抗えぬ恋—–、ゆえ背後の危うさには全く気づいていない。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆)」
「ストロボで逆光の空を暗く落とす」
高い位置の枝に羽化した♀を撮影するために移動した先は逆光の位置にあった。まずい事に、そのままシャッターを切ると、空が白飛びしてキチョウとハラビロカマキリがアンダーに、これでは肝心な主題を強調出来ません。そこで、問題解消にストロボを焚くことにした。ストロボはいつも虫用のカメラバックに収まっているNikon SB-700。こいつをマニュアルでハイスピードシンクロ=(FP)設定にする。今回の撮影技法の肝は、一番明るい空をアンダーにすることにある。まず空の露出を計り、導き出されたシャッタースピード1/800s、絞りF9.0に設定した。これで、意図した肝を押さえた事になったので、あとは必然的にキチョウに当てるストロボの適正露出を絞りF9.0にしなければならない事になる。さらにシャッタースピードが1/800sになったので、ハイスピードシンクロ設定が必要という事です。言うまでもありませんが、シャッタースピード1/250s(ほとんどの機種)以上でストロボを同調させるには、ハイスピードシンクロ設定が行える機種が必須なのです。ただし、バッテリーの消耗が激しいので注意。

撮影地:練馬区:石神井公園

カメラ設定
Nikon D810, 絞り値:F9.0、シャッタースピード:1/800秒,ISO感度設定:200、レンズ焦点距離200mm、露出モード:マニュアル、露出補正:+0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw。

使用ソフト
PhotoshopCC2017使用(Rawデータ現像)

使用機材

Nikon D810, AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR、Nikon SB-700

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

この一週間で出会った南と北の蝶2016.11.01

えっ!
一瞬、特徴的な大目玉(眼状紋)を見て、思わず北海道にもタテハモドキ!?

冷静に考えれば南方系の蝶などいるはずもないのですが・・・。

認識の誤作動は、
北海道に来る4日前にさかのぼる。その日は宮崎県高鍋湿原でタテハモドキを撮影していた。この事もあり、仕事中にいきなり現れたクジャクチョウ。
あれっ!?・・・と疑いもなくポンコツ脳はリンクしちまったのだ。

それにしても、
残像を引きずり、眼状紋を見ただけで、私も鳥のように勘違いしてしまった事になる。言うまでもなく、猛禽類の目玉に見間違えたりはいたしませんが、鮮やかな翅の上にこぼれた、イオの大粒の涙の真珠をまとう、クジャクチョウ。
その和名は:「Nymphalis io geisha」
「妖精、ギリシヤ神話の娘イオ、芸者」蝶には珍しい和名:芸者に見事に惑わされてしまったようです。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「運を味方に」
見てシャッター押すだけ、簡単すぎてテクニックなど語れませんが、残念なことにクジャクチョウの翅全開まで待つ時間的余裕がなかったのが心残りでした。
寒露の頃、南と北の果てで「タテハチョウ科」の蝶を、仕事中にチョチョイと撮影出来た幸運に感謝。

撮影地
上・タテハモドキ:宮崎県宮崎市高鍋湿原 
下・クジャクチョウ:北海道北見市留辺蘂町

カメラ設定
上:Nikon D810, 絞り値:F8.0、シャッタースピード:1/640秒,ISO感度設定:800、レンズ焦点距離200mm、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw。

下:Nikon D810, 絞り値:F9.0、シャッタースピード:1/500秒,ISO感度設定:400、レンズ焦点距離85mm、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw。

使用ソフト
PhotoshopCC2015.5使用(Rawデータ現像+トリミング)

使用機材

上:Nikon D810, AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR
下:Nikon D810, AF-S NIKKOR 24-85mm f/3.5-4.5G ED VR

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

キイロスズメバチの狩りの一場面2016.10.04

蟄虫(すごもりのむし)戸をとざすころ
このキイロスズメバチはニホンミツバチの巣口で狩りをしていた。見かけはとっても怖そうなお顔なれど、慣れとは恐ろしいもので、このお顔に正対してもちっとも怖くないのです。むしろそのフォルムとカラー配色の見事さに心揺さぶられ、吐息が漏れてしまうほど・・・。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆)」
「閃光時間1/40000sの世界」
翅脈がクッキリと見えた画が欲しくて、高速閃光のストロボのひとつであるNikon SB-700の出力を下げ、M1/128(閃光時間1/40000s)の最小出力、最速閃光に設定しました。キイロスズメバチぐらいの大きさになると、羽ばたきの中間地点を切り取っても、1/40000sではご覧の通り翅もピタリと止まるのです。理論上、キイロスズメバチの1秒間1往復の羽ばたき回数は200回以下、片道では400回以下ということになります。すなわち、「ストロボの閃光時間」と「被写体のスピード」を把握できると、ブレ幅の加減を思いのままに操る事が可能となるのです。言うまでもなく、把握するにはトライ&エラーの地道な積み重ね検証が必要になります。

撮影地:東京都練馬区石神井公園

お知らせ
「ナショナルジオグラフィック」10月号P16〜P23
“写真は語る民俗芸能に見た日本の心”
西村裕介の特集が組まれています。興味のある方は書店でめくって見てください。

カメラ設定
Nikon D810, 絞り値:F8.0、シャッタースピード:1/200秒,ISO感度設定:1250、レンズ焦点距離200mm、露出モード:マニュアル、露出補正:−1、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw。Nikon SB-700 約1/40000秒(M1/128)

使用ソフト
PhotoshopCC2015.5.1使用(Rawデータ現像+トリミング)

使用機材

Nikon D810, AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR、Nikon SB-700

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

一瞬、ルリボシヤンマと目があう!?2016.08.26

処暑、福島県のデコ平湿原へ向かった。
ゴンドラ駅山頂に降り立つ、空は青く心地よい涼風がそよいでいる。
逸る気持ちで改札を抜けると、眼前にヨツバヒヨドリの群生が広がっていて、そこには当たり前のようにアサギマダラが乱舞しているのだ。
飽きるほどアサギマダラを撮影し、興奮を鎮めつつ湿地帯の方に下る。そこには、木道がありエゾリンドウなどの花々にレンズを向けつつゆっくりと移動。

—-突如、木道上で寒冷な気候を好む、ルリボシヤンマと鉢合わせしたのです。
私は瞬時に歩みを止め、じっくりと観察を始める。体近くをすり抜けるその時、複眼が鮮やかな青緑色であることを確認。どうやら成熟した♂で、♀を探してのパトロール中のようである。

周りはとても静かです。
シャッター音に反応したか、一瞬だけルリボシヤンマと目があった。・・・ように感じられたのだが。
トンボでも目があうと、ドキッと摩訶不思議な感覚に捕らわれます。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆☆)」
「トンボの美しい飛翔シーンを前方から狙う」
素早く不規則に動く被写体を、前方から焦点距離200㎜、絞りF4.5(ほぼ解放で背景を綺麗にぼかしルリボシヤンマだけにピントを合わせる)で狙うには、まぐれの要素を含むピント合わせが求められる。毎度の事ながら水平移動ならば簡単なのだが・・・。「目があってドキッとした」思いを画に収めたくて、あえて正面からのアングルに挑戦。
さて、どうするか? 観察を続けた結果、このルリボシヤンマほんの一瞬だけホバリングをおこなう瞬間があるのに気付き、その一瞬のチャンスを狙うこととした。さらに、トンボ独特の翅の形状をしっかりと綺麗に見せたいがために、翅のブレを嫌いシャッタースピードは高速の1/1000sに設定。

撮影地:福島県デコ平湿原

カメラ設定
Nikon D810, 絞り値:F4.5、シャッタースピード:1/1000秒,ISO感度設定:200、レンズ焦点距離200mm、露出モード:マニュアル、フォーカスモード:MF、露出補正:+0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw。

使用ソフト
PhotoshopCC2015.5使用(Rawデータ現像+トリミング)

使用機材

Nikon D810, AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

美しいナミハンミョウの狩り2016.07.26

昼、鹿児島市で用を済ませ空港へ向かう。途中で加治木町の霧島市よりの端っこに「一番ラーメン」があり、いつも常連客で繁盛している。ここで、お昼に食べるのは鹿児島ラーメンではなく、いつも決まってチャンポンなのだ。よくよく考えてみれば他のものを食したことがない。
熱々のチャンポンが運ばれてくると、綺麗に整頓された調味料置きから、すりおろしニンニクをたっぷりと投げ入れ、チャンポン専用の三杯酢を4周ほどかけ回し食らうのである。
吹き出す汗と格闘しながら、鹿児島発ANA628便の出発にはまだ2時間ほどの余裕がある。
「さ〜て、何処に行こうか。藺牟田池には昨日行ったしな〜」と記憶の地図を広げモグモグ。やっぱり通い慣れたところが良かろうと、約10分で行ける龍門滝に決めた。道すがら、お土産用に「新道屋」の加治木まんじゅうを10個買う。いつも「本日は終了いたしました」の看板を目にして、ちくしょうと引き返すのだが、今日はなんだか運が良いぞとハンドルが軽い。—–ピュッッと到着。

山道脇のシラス堆積岩では僅かに水が染み出ているので、目的の甲虫と出会える確率が高い、ここで時間が許す限り粘ることにした。背中で滝の爆音を聞きながら、次々に現れるアシナガバチや蝶などと戯れていると、目の覚めるようなナミハンミョウ登場である。うれしさを噛み殺し、私は少し離れた所から様子を窺う。何やら獲物を探しているようである、ならば多少時間がかかろうが私は粘りますよ・・・と、1時間ほど経過、こうなりゃ我慢比べです。ほとんど動かないナミハンミョウから、チョットでも目を切れば、たちどころに行方知れずとなりかねず凝視し続けるのですが、この日は梅雨が明けたかのようなピーカン。こりゃー堪らんばい、と日陰に隠れるが南国の容赦ない強烈な暑さに汗たら〜り。ヘナヘナと気力が萎えかけた頃、突然ナミハンミョウは獲物を見つけたか、猛ダッシュしたのだ。私はベストポジションへ、そろ〜りと移動。スローモションは歯痒いけれど、急に動くと気付かれてアウトですからね。

爆音とニイニイゼミの鳴き声にかき消されつつ、連写!

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆)」
「狩りをするまで粘る」
ナミハンミョウは甲虫の中でもタマムシと並んで、一二を争う美しさですが、こちらは獰猛な肉食。できれば、狩りの場面を、大あご強調で前方から撮る。そのためには時間の許す限り粘ると決めたのです。

ターゲットと方針を決めたら、近づけるのか近付けないか判断が必要です。今回のナミハンミョウは、あまり近づきすぎても逃げられてしまうのではないかと考え、望遠ズームレンズを使用することとしました。日陰で動きが俊敏なので内蔵ストロボを明るくなりすぎないようにアンダー(-0,67)に強制発光。個体差にもよるがナミハンミョウは以外と臆病で用心深いようです。この狩りでも反撃を受けそうになると、素早く離れ、隙を見て再アタックを続けていましたが、獲物が大きすぎたのか、最後はとうとう諦めて去って行きました。残念ならが、獲物の名前が不明。もしかして、噛まれて丸くなるのでヤスデの一種だろうか。でもね〜、なんだかドイツ菓子のプレッツェルに似ているようで、チョット美味そうに見えませんか・・・。

撮影地:鹿児島県姶良郡加治木町・龍門滝近く

カメラ設定
Nikon D810, 絞り値:F8.0、シャッタースピード:1/160秒,ISO感度設定:1250、レンズ焦点距離200mm、フォーカスモード:MF、露出モード:マニュアル、露出補正:-0,67、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw。

使用ソフト
PhotoshopCC2015.5使用(Rawデータ現像+トリミング)

使用機材

Nikon D810, AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR、内蔵ストロボ強制発光

POSTED BY:
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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家