- TSUGIO NISHIMURA 西村次雄
フォトグラファー
- 1973年、九州産業大学芸術学部写真科卒。同年渡米。1979年、「STUDIO BB」を設立。デジタルの可能性にいち早く気づき、雑誌・広告を中心に一眼レフカメラを駆使して活躍中の”IT写真家”である。建築物、料理、人物、商品、そして動物・植物・昆虫と被写体の幅も極めて広い。
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樹液を飲むエントツドロバチ2018.06.29
前泊で三重県津市に来ていたが、まだ日が高いのでホテルから徒歩10分ほどの三重津偕楽公園へ虫探しに向った。
早速、樹液の出ているコナラを見つけ張り付く。まず見つけたのはエントツドロバチ。このハチは巣材の泥採取が目的ではなく、甘い樹液を飲んでいた。狩バチであるエントツドロバチ、以前はオオカバフスジドロバチと呼ばれていましたが、最近ではエントツドロバチが一般的です。名前の由来は、煙突状の巣の入り口を作る事からエントツドロバチ。日本ではまだオスは採集されたことがないそうで、メスによる単為生殖個体群と考えられているとか。
この時の撮影技法
「撮影難易度3星表記(☆)」
被写界深度ありきのISO感度3200
樹液の出ていたコナラは仄暗い斜面の場所にあり、Micro 60mmである程度の被写界深度を求めると、絞りは最低f8ほど必要と考えISO感度3200に決定。被写体はそれほど動きが無いので、シャッタースピードは1/40sで構わないけれどカメラぶれに注意。ひとつの対策として、カメラを持つ方の肘を地面やコナラに置き身体の前後左右の揺れを極力安定させる事がポイントです。
撮影地:三重県津市広明町147−1 三重津偕楽公園
カメラ設定
NikonD850, 絞り値:F8、シャッタースピード:1/40秒,ISO感度設定:3200、レンズ焦点距離:60mm、露出モード:マニュアル、露出補正:−0.3、ピクチャーコントロール:A オート、14bitRaw
使用ソフト
PhotoshopCC19.0使用(Rawデータ現像)
使用機材
NikonD850、AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家
睡蓮とイトトンボ2018.06.13
15:05発、羽田行きにはまだ2時間ほど、寄り道して国宝「瑠璃光寺五重塔」に立ち寄る事にした。美しさは日本三名塔のひとつに数えられるらしいのだが、この睡蓮池に差し掛かるともういけません。
因果応報・・・。イトトンボと戯れて、さてこそ時間オーバーである。
この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「無い物ねだりはしょうがない!」
瑠璃光寺五重塔。なのに、睡蓮にイトトンボ!身軽にD850にNikon24-70mmの標準ズームレンズのみで来てしまったのが、あいにくである。予想通り、イトトンボ(オオイトトンボ?)はなかなか近くの睡蓮の花には止まってくれないので歯ぎしりに至る、が、そこで考え方の角度を変えてみる。手にしたフルサイズのD850は高解像度デジタルカメラなのだから、トリミング前提で撮影しちまえば良い。そして、1/3のトリミングならば、70mm×3=210mm、画素数1/3(約1600万画素相当)、さほど解像度に問題なしと割り切る。DXクロップ(APS-Cサイズ)と言う手もあるが、今回はトリミング優先にした。
身を乗り出し、池に落っこちそうになりながらも・・・。バシャ!バシャ!(シャッター音ね)
撮影地:山口県山口市香山町7-1 瑠璃光寺境内
カメラ設定
NikonD850, 絞り値:F8、シャッタースピード:1/640秒,ISO感度設定:800、レンズ焦点距離70mm、露出モード:マニュアル、露出補正:−0.33、ピクチャーコントロール:A オート、14bitRaw
使用ソフト
PhotoshopCC19.0使用(Rawデータ現像)
使用機材
NikonD850、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家
ウツギ開花フェノロジーと密接なウツギノヒメハナバチ2018.06.06
初夏の風物詩的な地中営巣性のハナバチの一種であるウツギノヒメハナバチ。ウツギ開花フェノロジー(生物季節学、花歴学)にピタリと合わせて現れ、この花に特化して一生を送るのです。すなわち、ウツギの花を選好する訪花習性のウツギノヒメハナバチです。身体中に付いた花粉は後肢と前伸腹節両側の花粉籠にまとめてから、地中営巣に運び込み、花蜜と花粉で団子を作り卵を産み付け幼虫の食餌にします。このメスは体長12mm前後。
ウツギの花が咲いている時だけ送紛昆虫として現れ、ウツギの花が終わると姿を消すのです。
この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆☆)」
「リングライトで鮮明に撮る」
狙いは、ウツギノヒメハナバチの体毛や花粉と花粉籠を鮮明に描写する。そのためにはライト選定、と絞りの設定を明確にしておかなければならない。ライトは、柔らかい光のリングライトをチョイス、ストロボの出力をマニュアルの1/64に設定。絞りはマクロフォーサーズなのでf8である程度の被写界深度がかせげる。フィールドでは小さな花は風でそよぎピント合わせが容易ではないのと、主役を狙いの角度で捉えるのが困難な事から撮影難易度を星3とした。
撮影地:東京都西東京市 生垣のウツギ
カメラ設定
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II, 絞り値:F8.0、シャッタースピード:1/320秒,ISO感度設定:400、レンズ焦点距離60mm、35mm換算120mm、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:Natural,Raw、CanonマクロリングライトMR-14EX:マニュアル発光1/64で使用
使用ソフト
PhotoshopCC2018.0.0使用(Rawデータ現像)
使用機材
OLYMPUSのOM-D E-M1 Mark II, OLYMPUS M.60mm F2.8 Macro、CanonマクロリングライトMR-14EX
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写真家
オナガバチの命のバトン2018.05.28
多分、エゾオナガバチだと思うのですが・・・、変種が多いのでオナガバチの一種としておきます。毎年のように、このカエデにオナガバチのオス達が群がっていて、興奮状態でメスが出てくるのを待っているところを今年も目撃。精子提供と産卵、どちらも命がけのバトンを繋いでいきます。近き夏—-
この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆)」
「見せたいシーンを押さえる」
キャプションのシーンを丁寧に観察記録する。言うは易く行うは難し、現場では予想外のシーンが繰り広げられる事多々。予備知識を総動員してカメラ設定をすませておきましょう。な〜に、もし外れちまったら何年でも挑戦し続ければ良いのです。もし、運あり再び出会えるなら「あのシーンをこんな風に狙おうかな・・・」なんて、考えるだけでも楽しいのですから。
上)カエデに穴が開きメスが顔を出した瞬間、数匹のオス達が狂ったように同じ穴に腹部を深く差し入れ交尾をしているようです。
動きが激しいので、連写をかけた中からセレクト。それにしてもオリンパスの40-150mm、35mm換算300mmで1/30sカメラブレが無いのに驚く。
中)メスが産卵管を突き刺すとオスがピョンと飛び乗り交尾か?
翅脈がハッキリしたカットをセレクト。写真の醍醐味である一瞬を切り取った画が好きなのです。
下)透明のシャボンのような水色の薄膜を通して、長〜い産卵管(鞘の中の中心ノコギリ状)ドリルのように突き刺しています。カエデの中に潜むキバチやカミキリムシなどの幼虫が出す振動を触覚で探し当て産卵寄生する。オナガバチは人間にとってキバチやカミキリムシを退治してくれるありがたい益虫である。
逆光を利用してシャボンのような薄膜を、この画のアクセントとして浮かび上がらせ、手前からリングライトストロボを発光。
撮影地:東京都西東京市 東大演習林
カメラ設定
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II, 露出モード:マニュアル、露出補正:+0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:Natural,Raw
上)M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO、絞り値:F7.1、シャッタースピード:1/30秒,ISO感度設定:800、レンズ焦点距離150mm、35mm換算300mm
中)M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO、絞り値:F7.1、シャッタースピード:1/60秒,ISO感度設定:800、レンズ焦点距離135mm、35mm換算270mm
下)OLYMPUS M.60mm F2.8 Macro、絞り値:F9.0、シャッタースピード:1/125秒,ISO感度設定:800、レンズ焦点距離60mm、35mm換算120mm、CanonマクロリングライトMR-14EXマニュアルで1/64使用
使用ソフト
PhotoshopCC2018.0.0使用(Rawデータ現像)
使用機材
OLYMPUSのOM-D E-M1 Mark II, OLYMPUS M.60mm F2.8Macro ,M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO,CanonマクロリングライトMR-14EX
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写真家
あの時夢見た風景が広がっていた2018.05.18
5月の初旬、対馬に野暮用で来ていた。それにしても、ナンジャモンジャ(ヒトツバタゴの別名)が何故こんなに沢山咲いているんだろう、とその時はかるく思っていたのだが・・・。
強風に傘をへし折られ、濡れネズミの最悪のシチュエーションで韓国展望所に立っていた。眼下には白い花で埋め尽くされた鰐浦の美しい漁港が広がっていて、D850のファインダーを覗いた瞬間「そうか、此処だったか!」あの時夢見た風景が眼下に広がっていた。10年ほど前のことになるが、対馬でヒトツバタゴの日本最大の自生地があると教えられ、その時一枚の写真に釘付けにされた記憶が鮮烈に蘇ったのである。
この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆)」
「カメラバックにはシャワーキャップ」
突風で傘がへし折られる、厳しい撮影条件下。カメラボデーは防塵防滴、タムロンのレンズは簡易防滴対応なので用心を兼ねホテルで貰っていたシャワーキャップをカメラに被せて撮影。小さくて軽いシャワーキャップは雨天時に重宝することこの上なし。
撮影地:長崎県対馬市上対馬町鰐浦(日本一のヒトツバタゴの自生地)
カメラ設定
NikonD850, 絞り値:F8、シャッタースピード:1/125秒,ISO感度設定:640、レンズ焦点距離28mm、露出モード:マニュアル、露出補正:−0.67、ピクチャーコントロール:A オート、14bitRaw
使用ソフト
PhotoshopCC19.0使用(Rawデータ現像)
使用機材
NikonD850、TAMRON 28-300mm F3.5-6.3 Di VC PZD A010N
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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家