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about

TSUGIO NISHIMURA 西村次雄
フォトグラファー
1973年、九州産業大学芸術学部写真科卒。同年渡米。1979年、「STUDIO BB」を設立。デジタルの可能性にいち早く気づき、雑誌・広告を中心に一眼レフカメラを駆使して活躍中の”IT写真家”である。建築物、料理、人物、商品、そして動物・植物・昆虫と被写体の幅も極めて広い。

ハチの驚くべき羽ばたき回数(ナミツチスガリ)2015.06.14

この4枚の写真は、ナミツチスガリがコハナバチを狩り地中に掘った巣に持ち帰ってきた場面です。
それにしても凄い羽ばたき回数で、普段通りに撮影してしまったら翅が消え失せて写ってしまうのだ。
それが、当たり前と思考を止めてしまったら面白くない。
「完全に止める」か、それとも「好みのブレ加減に演出する」か?
そのためには、最低何万分の一が必要か!?
思い描く画作りのために、ハチの羽ばたき回数を徹底的に調べあげた。

ナミツチスガリ(学名:Cerceris hortivaga、ハチ目、フシダカバチ科)
ハチがハチを狩る、狩りバチである。獲物はコハナバチ、ヒメコハナバチ類。地中に多房巣を作る。
分布は北海道から九州。
体長は12〜15mm。ちなみに他の働き蜂はニホンミツバチの10〜13mm、セイヨウミツバチは12〜14mm。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆☆)」
ミツバチの羽ばたきは恐ろしく早く一秒間、一往復約250回と言われています。
したがって片道は計算上約500回になるので、完全に翅の動きを止めるには1/50000秒が必要、と単純計算ではなります(ナミツチスガリはセイヨウミツバチの働き蜂とほぼ同じ大きさ)が、この計算は一往復の平均値を割り出したにすぎません。
それに小さな獲物だと、触覚を大顎で咥えお腹とお腹を密着させ空気抵抗を抑え飛翔運搬するのだが、いろいろな個体を観察した結果、獲物(写真4)が大物ならば密着度や重さが起因し羽ばたき回数も物理的に異なる事になる。
従って、獲物の大小、初速、中間、終点では当然スピードは異なる。
この4枚の撮影結果を見比べると、片道の中間地点辺り(写真3.4)のマックススピードはおそらく約1/100000秒〜1/500000秒が必要と思われる。
う〜む、1/20000秒前後ではまったく歯が立たないことに唖然とする。

ところで、一眼レフデジタルカメラのX同調速度は1/8000秒が限界。
Canon EOS7DMarkIIも最高シャッタースピードは1/8000秒が限界である。
さて足りないシャッタースピードをどうするか?
答えは日中シンクロでFP発光(ハイスピードシンクロ=以後HSSで統一)を行う。
そう、クリップオンタイプのストロボ発光量の出力を絞ればよいのです。
今回は最小の1/128に絞りましたが、それでも約1/20000秒前後。片道の中間地点(写真3.4)では羽ばたきスピードがマックスになるので当然翅はブレてしまいます。
動きのある画が好みならコレでOKですが、上記の事を理解していなければ、好みの翅のブレ加減を演出できないという事になります。
すなわち、晴天下のマックスでの中間地点では(1/50000秒以下)、翅の痕跡が失われている可能性が大となる計算になります。

しかし、往復の切り替え点(写真1.2)ならば一瞬止まるポイントがあるので光量1/128前後に絞れば、このように翅の動きを止める事が出来るのです。
この日は晴れ。
EOS7DMarkIIの限界のシャッタースピード1/8000秒に設定。ISO:1250で絞りf11にすると、カメラの露出計ではアンダー3絞り程になるので、当然ハチは光量不足でかなり暗く映る。
そこでHSSでストロボを適正露出に設定(ハチとの距離:20cm程に設置)して焚くと、約1/20000秒以上になる計算なので、往復の切り替え点でタイミングが合えば、翅がある程度止まって(写真:1.2)映るというわけです。
ちなみに(写真:1)は一灯のみ前方上から俯瞰ぎみに発光。(写真:2〜4)は3灯使用しHSSを行った。

羽ばたきの回数、詳しくはコチラ
http://www.athome-academy.jp/archive/engineering_chemistry/0000000157_all.html

カメラ設定
4枚とも同じ設定:Canon EOS7DMarkII, 絞り値:F8.0、シャッタースピード:1/8000秒,ISO感度設定:1250、レンズ焦点距離(35mm換算)160mm、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw

使用ソフト
Photoshop CC 使用(Rawデータ現像、トリミングあり)

使用機材

Canon EOS7DMarkII, EF100mm f/2.8 Macro USM、(写真2〜4)はSpeedlight: Godox V860 C×3灯、旧型の「Sells II C」でHSSシンクロ、斜め左上45度1灯をローアングル用三脚Fotopro fph-53pに装着、バックライトに後方から1灯VANGUARD VEO 265CBに装着:地面に直接1灯置いて使用、お手製座布団:カメラを乗せ地面すれすれに設定、Canon リモートスイッチ RS-80N3

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

ジョウビタキをHSSで撮る2015.03.16

逆光に映える白髪頭のジョウビタキ♂にお互い親近感を覚えつつ、何日か撮影に通い詰めた。
より美しい飛翔の瞬間を捉えることが出来ないかとあれこれと思案する。
たどり着いたのは、10枚連射で1/8000秒のハイスピードシンクロ(HSS)でピタリと止める。
そこから、イメージした画作りを考えるのがデジタル一眼レフの醍醐味のひとつでもあり、フイルム時代には味わえなかった面白さでもあるのだ。

ジョウビタキ(尉鶲、常鶲、学名:Phoenicurus auroreus Pallas)
スズメ目、ツグミ科。冬鳥としてチベット、中国などから日本全国に渡来する。
大きさはスズメよりも少しだけ小さい。
食性は昆虫類やクモ類、ピラカンサなどの実。
開けた環境を好み、それぞれ縄張りをもち単独でいる。
ジョウビタキのジョウは「尉」で銀髪のこと、ビタキは「火焚き」で火打ち石をたたく時の音に似た鳴き声をする事からヒタキ。人をあまり恐れない、愛嬌のあるアイドル的な冬鳥である。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆☆)」
「HSS 1/8000秒の世界」
逆光の中、ジョウビタキの羽が美しく透けて羽の一枚一枚がクッキリと写っている飛翔の場面が撮りたくて、10枚連写で1/8000秒のハイスピードシンクロ(HSS)を行った。
何故ストロボを焚いたかというと、理由はふたつほどある。
逆光でジョウビタキの美しい羽色が暗くくすむのが嫌であったのと、斜め前方45度付近からストロボを焚き立体感を出す。ただし、ストロボ光が強すぎては台無しなので、出力はチョットだけ抑えめにする。
目標が決まれば、あとは必要な道具をチョイスするだけ・・・。
送信機「Sells II C」の新型を購入したが、Canon EOS7DMarkIIと相性が悪く使えない。う〜む、どうしたものかと他を探すと、旧型の「Sells II C」が見事HSSした。
使用したスピードライトGodox V860 Cは中国製ながらリチュウムイオンバッテリーなのでチャージが早く10枚連射にもついてくる優れものだ。値段も純正の約1/3。

お願いとお知らせ
息子(裕介)が郷土芸能に魅せられ、全国を巡り撮りためています。
そして、いよいよこの秋に写真集を上梓することになりました。
なかなか見応えある力作です。
是非下記のURLにアクセスいただき、応援して頂ければ親としてこのうえない喜びです。

クラウドファンディング
https://greenfunding.jp/lab/projects/1030-

カメラ設定
Canon EOS7DMarkII, 絞り値:F4.0、シャッタースピード:1/8000秒,ISO感度設定:3200、レンズ焦点距離135mm、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像、トリミングあり)

使用機材

Canon EOS7DMarkII, EF70-200mm f/4L USM、Speedlight:Godox V860C+受信機付き1灯、マンフロット 1005BAC ライトスタンド、ラジオスレーブ:送信機Sells II(旧型) 、三脚:GITZOマウンテニア2型4段GT2542、レリーズCANON REMOTE SWITCH RS-80N3使用

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

クリスマスイブのラブラブ(ヒメコオロギバチの一種)2014.12.29

クリスマスイブ、お寺の境内で盛んに動き回っているヒメコオロギバチの一種がいる。
なぜ動き回っているのか?知りたくて長い時間観察していた。師走だというのにのんきな話ではあるが・・・。
—–どうも、このヒメコオロギバチの一種は同じ場所を何度も訪れては、触覚で小さな穴の入り口の木の根っこをトントントンと叩いているようだ・・・。
するとその合図に答えるように中から♀らしきヒメコオロギバチの一種が顔を見せた。
これだ!とシャッターを切る。

ヒメコオロギバチの一種
体長は10mm未満の黒い蜂で、名前の由来のコオロギを狩る。
狩ったコオロギに麻酔をかけ育房に運び込み卵を産み付け孵った子供(幼虫)の餌とする。クリスマスの頃でも暖かな日当たりのよい日には活動する。

詳しくはこちら
ヒメコオロギバチ – nifty
http://homepage2.nifty.com/higeoyaji/himekoorogi.htm

虫仲間のサイト
虫をさがしに
http://blog.goo.ne.jp/jkio/s/%A5%D2%A5%E1%A5%B3%A5%AA%A5%ED%A5%AE%A5%D0%A5%C1
リンベの閑居記
http://blog.goo.ne.jp/rinbe_20/e/eff5d5993ea109b183595bacd2ff41b5

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆☆)」
「いつでもシャッターが切れる状態で待つ」
観察を続けながら、いつでもシャッターが切れるようにしておかなければ、ここぞ、という瞬間を撮り逃がしてしまいます。
そのために、これから起こりうるシーンをある程度想定して全てのセッティングを完璧に完了しておかなければなりません。
1)動きが速いシーンになるのか。(シャッタースピード:動きの素早さを見極める)
2)被写界深度はどのくらい必要か。(絞り:被写体の大きさを考慮して絞りを決める)
3)ストロボは必要か。(ISO感度:薄暗いか、雲の動きが速いか、なのどの環境光の変化を把握する)
4)被写体までの距離。(ピント:瞬時にピント合わせを行わなければならないのでターゲットまでの距離感を把握する)
などなど、あらかじめ想定してセッティングを行うのです。自然相手では、おうおうに予想し得ない場面に遭遇するやもしれませんが、たいていの場合はこの四つで対応出来るはずです。
動きが素早くピント合わせが難しい小さな被写体であり、なかなか思い描いたシーンに巡り会えません(運もあるが)。
ただただ、辛抱強く観察をつづけなければならず撮影難易度☆☆☆とした。

カメラ設定
絞り値:F/13、シャッタースピード:1/125秒,ISO感度設定:400、焦点距離120mm、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw

使用ソフト
Raw現像ソフト: SILKYPIX DEVELOPER STUDIO PRO 6、最終調整PhotoshopCS6使用

使用機材

OLYMPUS OM-D E-M5、OLYMPUS M.60mm F2.8 Macro、OLYMPUS FLASH FL-300R 1灯使用

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

越冬準備に入ったコガタスズメバチ新女王2014.12.01

ぶるっとくるほど朝夕の冷え込みが厳しくなって来た。
そろそろか?と近くの東京大学演習林へ散歩ついでに新発売されたばかりの「CanonEOS7DMarkII」の試し撮りをかね出掛けた。

—–薄暗い森の中の倒木に目をこらすと、カワラタケが生えており近くに真新しい木屑を発見!
嬉しさで鼓動が高鳴るけれど、とりあえず冷静さを装いつつ木屑の先の穴にライトを当てる・・・。

やっぱり居ました!
一心不乱に穴を掘り進めている新女王様を見つけた。
お顔が拝見したくて粘る事20分程・・・。やっと出ていらして「キッ」と睨まれましたけれどこの時期の新女王様はおしとやかでございますので、パパラッチのごとくひるむ事なく激写いたしました。
頭楯(とうじゅん)を確認すると下の突起は3つ、越冬の準備に入ったコガタスズメバチの新女王様に間違いありません。

ちょっと前までは数千匹で賑わっていたコロニーも今は崩壊。元女王や働き蜂(♀)、♂蜂はもうこの世にはいません(注:ネジレバネに寄生された蜂以外は)。
写真はまさに掘り始めたシーンに運良く出会えた瞬間です。
来年の4月頃まで越冬する為に、新女王様おひとりで穴を堀り、その掘り出した木屑で入り口に蓋をして越冬に入るのです。
—–新女王様が無事に春を迎えられる事を祈りつつ、この場をあとにする。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「越冬のスズメバチを見つけ出す方法」
1)北側の薄暗く寒暖差の少ない場所にある倒木を探す。
2)倒木に生えるキノコを見つける。キノコの生えた倒木は分解が進み、木の繊維が柔らかくなっているので穴掘りが易しくなる。
3)木屑を探す。真新しい木屑なら進行中。蓋をしたようになっていれば越冬中。
このような条件に当てはまれば鼓動が高鳴る事になるのです。
撮影地:コガタスズメバチ新女王/東京大学演習林にて2014年11月27日撮影 

7DMarkIIのこぼれ話
何年経ったのだろうか、CANONのAPS-Cのカメラは40Dで止めていた。
理由は高感度がいまひとつであったのと、ファインダーがフルサイズに比べて小さく、極小の虫が見づらいのが一因でもあった。
しかしながら、虫などを撮るにはフルサイズよりもAPS-Cの方がある程度被写界深度(小さなセンサーはピントが深い)もかせげ、接写率やワーキングディスタンスが長くとれ照明が易しくなるので、高感度に少しでも強い機種が登場すれば即買いをする腹づもりであった。
そこへ、「ほれBGもおまけだよ〜ん」とCanon EOS7DMarkIIが登場したわけである。
お腹をすかしていただけにガブリと食いついた図である。Canonさん商売上手です。
買ったは良いが、このところ仕事が忙しくなかなか試せなかったけれどやっと試し撮りが出来たので、その感想を述べると・・・。
シャッター音(静かでまろやか○)
連写(マシンガンの様な・・・○)
高感度(とりあえず満足のいく進化iso1600まで○)
AFの食いつき(おおむね満足○)
発色(少し派手すぎる色味が今イチ好きになれない×)
バッテリー(5DMarkIIと共有○)
もっと使い込んで行けば隠れていたポテンシャルを引き出せるのではないかと思える程の進化をとげているようだ。
(なにしろ古い40Dが未だに現役なのですから。笑い)

カメラ設定
Canon EOS7DMarkII, 絞り値:F9.0、シャッタースピード:1/200秒,ISO感度設定:800、レンズ焦点距離150mm、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像)

使用機材

Canon EOS7DMarkII, EF100mm f/2.8 Macro USM、マクロリングライトMR-14EX

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
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晴天の旅行者(ツチグリ)2014.11.07


—–気圧配置が変わり、木枯らしに誘われて旅に出るキノコ・・・。
エッ!キノコが移動するの?と不思議に思われるでしょうが、実は雨が上がり空気が乾燥しはじめると、広がった皮が収縮し再び球体へと戻り旅への身支度が整うのです。そこへ、ヒューと風が吹けばコロコロと転がり移動するのだ。まさに「晴天の旅行者」とも呼ばれる所以でもあろうか。
それにしても、
魅惑的なツチグリの生き残り戦略を目の当たりにすると、雨上がりにデジカメを手に気もそぞろとなる。

ツチグリ(土栗)学名「Astraeus hygrometricus」
Astraeuギリシャ神話の星形の神、hygrometricus湿度計。湿度で開閉する事から「星形の湿度計」とも呼ばれている。雨が降りだすとミカンの皮を剥いたような星形に裂けると反り返り、中の球状のグレバに雨粒が当たり胞子を飛ばす仕組みである。山の中の道ばたや崖の露出した裸土で普通に見られる。夏〜秋、大きさは2㎝〜4㎝程。若いものは食用になる。

ツチグリ詳しくはコチラ

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆)」
「胞子の演出」
晴天ではあったが、昨日の雨の湿度がまだ残っていたせいか、ツチグリの皮は反り返っていた。
まさに狙い通りの形状に写欲が増す。
そのまま写しても悪くはないが、胞子を吹き出すシーンを狙っていた。
そこで、自然界では雨粒だけでなく、小枝やドングリ等でもクレバに当たると胞子を放出するはずと考え、仲間にドングリを落としてもらい演出した。雨粒では胞子がそれほど出ないので分かりづらいから・・・。
これが、なかなかタイミングが難しいので撮影難度(☆☆)。

撮影地:ツチグリ/練馬区石神井公園にて撮影

カメラ設定
Canon Eos40D, 絞り値:F8.0、シャッタースピード:1/125秒,ISO感度設定:400、レンズ焦点距離8mm、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:風景、Raw

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像)

使用機材

Canon Eos40D, 8mm F3.5 EX DG CIRCULAR FISHEYE+KENKO C-F 1.5X TELEPLUS MC

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家