YOUCHOOSE

about

TSUGIO NISHIMURA 西村次雄
フォトグラファー
1973年、九州産業大学芸術学部写真科卒。同年渡米。1979年、「STUDIO BB」を設立。デジタルの可能性にいち早く気づき、雑誌・広告を中心に一眼レフカメラを駆使して活躍中の”IT写真家”である。建築物、料理、人物、商品、そして動物・植物・昆虫と被写体の幅も極めて広い。

ジョウビタキをHSSで撮る2015.03.16

逆光に映える白髪頭のジョウビタキ♂にお互い親近感を覚えつつ、何日か撮影に通い詰めた。
より美しい飛翔の瞬間を捉えることが出来ないかとあれこれと思案する。
たどり着いたのは、10枚連射で1/8000秒のハイスピードシンクロ(HSS)でピタリと止める。
そこから、イメージした画作りを考えるのがデジタル一眼レフの醍醐味のひとつでもあり、フイルム時代には味わえなかった面白さでもあるのだ。

ジョウビタキ(尉鶲、常鶲、学名:Phoenicurus auroreus Pallas)
スズメ目、ツグミ科。冬鳥としてチベット、中国などから日本全国に渡来する。
大きさはスズメよりも少しだけ小さい。
食性は昆虫類やクモ類、ピラカンサなどの実。
開けた環境を好み、それぞれ縄張りをもち単独でいる。
ジョウビタキのジョウは「尉」で銀髪のこと、ビタキは「火焚き」で火打ち石をたたく時の音に似た鳴き声をする事からヒタキ。人をあまり恐れない、愛嬌のあるアイドル的な冬鳥である。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆☆)」
「HSS 1/8000秒の世界」
逆光の中、ジョウビタキの羽が美しく透けて羽の一枚一枚がクッキリと写っている飛翔の場面が撮りたくて、10枚連写で1/8000秒のハイスピードシンクロ(HSS)を行った。
何故ストロボを焚いたかというと、理由はふたつほどある。
逆光でジョウビタキの美しい羽色が暗くくすむのが嫌であったのと、斜め前方45度付近からストロボを焚き立体感を出す。ただし、ストロボ光が強すぎては台無しなので、出力はチョットだけ抑えめにする。
目標が決まれば、あとは必要な道具をチョイスするだけ・・・。
送信機「Sells II C」の新型を購入したが、Canon EOS7DMarkIIと相性が悪く使えない。う〜む、どうしたものかと他を探すと、旧型の「Sells II C」が見事HSSした。
使用したスピードライトGodox V860 Cは中国製ながらリチュウムイオンバッテリーなのでチャージが早く10枚連射にもついてくる優れものだ。値段も純正の約1/3。

お願いとお知らせ
息子(裕介)が郷土芸能に魅せられ、全国を巡り撮りためています。
そして、いよいよこの秋に写真集を上梓することになりました。
なかなか見応えある力作です。
是非下記のURLにアクセスいただき、応援して頂ければ親としてこのうえない喜びです。

クラウドファンディング
https://greenfunding.jp/lab/projects/1030-

カメラ設定
Canon EOS7DMarkII, 絞り値:F4.0、シャッタースピード:1/8000秒,ISO感度設定:3200、レンズ焦点距離135mm、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像、トリミングあり)

使用機材

Canon EOS7DMarkII, EF70-200mm f/4L USM、Speedlight:Godox V860C+受信機付き1灯、マンフロット 1005BAC ライトスタンド、ラジオスレーブ:送信機Sells II(旧型) 、三脚:GITZOマウンテニア2型4段GT2542、レリーズCANON REMOTE SWITCH RS-80N3使用

POSTED BY:
tsugionishimura_image

TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

クリスマスイブのラブラブ(ヒメコオロギバチの一種)2014.12.29

クリスマスイブ、お寺の境内で盛んに動き回っているヒメコオロギバチの一種がいる。
なぜ動き回っているのか?知りたくて長い時間観察していた。師走だというのにのんきな話ではあるが・・・。
—–どうも、このヒメコオロギバチの一種は同じ場所を何度も訪れては、触覚で小さな穴の入り口の木の根っこをトントントンと叩いているようだ・・・。
するとその合図に答えるように中から♀らしきヒメコオロギバチの一種が顔を見せた。
これだ!とシャッターを切る。

ヒメコオロギバチの一種
体長は10mm未満の黒い蜂で、名前の由来のコオロギを狩る。
狩ったコオロギに麻酔をかけ育房に運び込み卵を産み付け孵った子供(幼虫)の餌とする。クリスマスの頃でも暖かな日当たりのよい日には活動する。

詳しくはこちら
ヒメコオロギバチ – nifty
http://homepage2.nifty.com/higeoyaji/himekoorogi.htm

虫仲間のサイト
虫をさがしに
http://blog.goo.ne.jp/jkio/s/%A5%D2%A5%E1%A5%B3%A5%AA%A5%ED%A5%AE%A5%D0%A5%C1
リンベの閑居記
http://blog.goo.ne.jp/rinbe_20/e/eff5d5993ea109b183595bacd2ff41b5

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆☆)」
「いつでもシャッターが切れる状態で待つ」
観察を続けながら、いつでもシャッターが切れるようにしておかなければ、ここぞ、という瞬間を撮り逃がしてしまいます。
そのために、これから起こりうるシーンをある程度想定して全てのセッティングを完璧に完了しておかなければなりません。
1)動きが速いシーンになるのか。(シャッタースピード:動きの素早さを見極める)
2)被写界深度はどのくらい必要か。(絞り:被写体の大きさを考慮して絞りを決める)
3)ストロボは必要か。(ISO感度:薄暗いか、雲の動きが速いか、なのどの環境光の変化を把握する)
4)被写体までの距離。(ピント:瞬時にピント合わせを行わなければならないのでターゲットまでの距離感を把握する)
などなど、あらかじめ想定してセッティングを行うのです。自然相手では、おうおうに予想し得ない場面に遭遇するやもしれませんが、たいていの場合はこの四つで対応出来るはずです。
動きが素早くピント合わせが難しい小さな被写体であり、なかなか思い描いたシーンに巡り会えません(運もあるが)。
ただただ、辛抱強く観察をつづけなければならず撮影難易度☆☆☆とした。

カメラ設定
絞り値:F/13、シャッタースピード:1/125秒,ISO感度設定:400、焦点距離120mm、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw

使用ソフト
Raw現像ソフト: SILKYPIX DEVELOPER STUDIO PRO 6、最終調整PhotoshopCS6使用

使用機材

OLYMPUS OM-D E-M5、OLYMPUS M.60mm F2.8 Macro、OLYMPUS FLASH FL-300R 1灯使用

POSTED BY:
tsugionishimura_image

TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

越冬準備に入ったコガタスズメバチ新女王2014.12.01

ぶるっとくるほど朝夕の冷え込みが厳しくなって来た。
そろそろか?と近くの東京大学演習林へ散歩ついでに新発売されたばかりの「CanonEOS7DMarkII」の試し撮りをかね出掛けた。

—–薄暗い森の中の倒木に目をこらすと、カワラタケが生えており近くに真新しい木屑を発見!
嬉しさで鼓動が高鳴るけれど、とりあえず冷静さを装いつつ木屑の先の穴にライトを当てる・・・。

やっぱり居ました!
一心不乱に穴を掘り進めている新女王様を見つけた。
お顔が拝見したくて粘る事20分程・・・。やっと出ていらして「キッ」と睨まれましたけれどこの時期の新女王様はおしとやかでございますので、パパラッチのごとくひるむ事なく激写いたしました。
頭楯(とうじゅん)を確認すると下の突起は3つ、越冬の準備に入ったコガタスズメバチの新女王様に間違いありません。

ちょっと前までは数千匹で賑わっていたコロニーも今は崩壊。元女王や働き蜂(♀)、♂蜂はもうこの世にはいません(注:ネジレバネに寄生された蜂以外は)。
写真はまさに掘り始めたシーンに運良く出会えた瞬間です。
来年の4月頃まで越冬する為に、新女王様おひとりで穴を堀り、その掘り出した木屑で入り口に蓋をして越冬に入るのです。
—–新女王様が無事に春を迎えられる事を祈りつつ、この場をあとにする。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「越冬のスズメバチを見つけ出す方法」
1)北側の薄暗く寒暖差の少ない場所にある倒木を探す。
2)倒木に生えるキノコを見つける。キノコの生えた倒木は分解が進み、木の繊維が柔らかくなっているので穴掘りが易しくなる。
3)木屑を探す。真新しい木屑なら進行中。蓋をしたようになっていれば越冬中。
このような条件に当てはまれば鼓動が高鳴る事になるのです。
撮影地:コガタスズメバチ新女王/東京大学演習林にて2014年11月27日撮影 

7DMarkIIのこぼれ話
何年経ったのだろうか、CANONのAPS-Cのカメラは40Dで止めていた。
理由は高感度がいまひとつであったのと、ファインダーがフルサイズに比べて小さく、極小の虫が見づらいのが一因でもあった。
しかしながら、虫などを撮るにはフルサイズよりもAPS-Cの方がある程度被写界深度(小さなセンサーはピントが深い)もかせげ、接写率やワーキングディスタンスが長くとれ照明が易しくなるので、高感度に少しでも強い機種が登場すれば即買いをする腹づもりであった。
そこへ、「ほれBGもおまけだよ〜ん」とCanon EOS7DMarkIIが登場したわけである。
お腹をすかしていただけにガブリと食いついた図である。Canonさん商売上手です。
買ったは良いが、このところ仕事が忙しくなかなか試せなかったけれどやっと試し撮りが出来たので、その感想を述べると・・・。
シャッター音(静かでまろやか○)
連写(マシンガンの様な・・・○)
高感度(とりあえず満足のいく進化iso1600まで○)
AFの食いつき(おおむね満足○)
発色(少し派手すぎる色味が今イチ好きになれない×)
バッテリー(5DMarkIIと共有○)
もっと使い込んで行けば隠れていたポテンシャルを引き出せるのではないかと思える程の進化をとげているようだ。
(なにしろ古い40Dが未だに現役なのですから。笑い)

カメラ設定
Canon EOS7DMarkII, 絞り値:F9.0、シャッタースピード:1/200秒,ISO感度設定:800、レンズ焦点距離150mm、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像)

使用機材

Canon EOS7DMarkII, EF100mm f/2.8 Macro USM、マクロリングライトMR-14EX

POSTED BY:
tsugionishimura_image

TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

晴天の旅行者(ツチグリ)2014.11.07


—–気圧配置が変わり、木枯らしに誘われて旅に出るキノコ・・・。
エッ!キノコが移動するの?と不思議に思われるでしょうが、実は雨が上がり空気が乾燥しはじめると、広がった皮が収縮し再び球体へと戻り旅への身支度が整うのです。そこへ、ヒューと風が吹けばコロコロと転がり移動するのだ。まさに「晴天の旅行者」とも呼ばれる所以でもあろうか。
それにしても、
魅惑的なツチグリの生き残り戦略を目の当たりにすると、雨上がりにデジカメを手に気もそぞろとなる。

ツチグリ(土栗)学名「Astraeus hygrometricus」
Astraeuギリシャ神話の星形の神、hygrometricus湿度計。湿度で開閉する事から「星形の湿度計」とも呼ばれている。雨が降りだすとミカンの皮を剥いたような星形に裂けると反り返り、中の球状のグレバに雨粒が当たり胞子を飛ばす仕組みである。山の中の道ばたや崖の露出した裸土で普通に見られる。夏〜秋、大きさは2㎝〜4㎝程。若いものは食用になる。

ツチグリ詳しくはコチラ

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆)」
「胞子の演出」
晴天ではあったが、昨日の雨の湿度がまだ残っていたせいか、ツチグリの皮は反り返っていた。
まさに狙い通りの形状に写欲が増す。
そのまま写しても悪くはないが、胞子を吹き出すシーンを狙っていた。
そこで、自然界では雨粒だけでなく、小枝やドングリ等でもクレバに当たると胞子を放出するはずと考え、仲間にドングリを落としてもらい演出した。雨粒では胞子がそれほど出ないので分かりづらいから・・・。
これが、なかなかタイミングが難しいので撮影難度(☆☆)。

撮影地:ツチグリ/練馬区石神井公園にて撮影

カメラ設定
Canon Eos40D, 絞り値:F8.0、シャッタースピード:1/125秒,ISO感度設定:400、レンズ焦点距離8mm、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:風景、Raw

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像)

使用機材

Canon Eos40D, 8mm F3.5 EX DG CIRCULAR FISHEYE+KENKO C-F 1.5X TELEPLUS MC

POSTED BY:
tsugionishimura_image

TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

ツマベニチョウ「幸せを呼ぶチョウ」2014.10.14

ハイビスカスの花にひらりと舞い降り、カメラを向けると人の気配を察し、力強くグンと天高く舞い上がり飛び去ってしまう。呆然と見送り、残像をおのれの脳裏に焼き付けるしかない。

一度でもこの配色の妙、と妖艶な舞に囚われてしまうと目の前にいるシロオビアゲハやベニモンアゲハなど全て大勢の中の脇役でしかなりえない程の存在感を有している。—–事実、見た事がない人にはシロチョウ科の配色などたいしたことがないと思われるだろうが、是非いちど南国の空で「幸せを呼ぶチョウ」大形の力強い妖艶な舞をご覧あれ。

ツマベニチョウ(褄紅蝶、学名:Hebomoia glaucippe)チョウ目(鱗翔目)アゲハチョウ上科シロチョウ科ツマベニチョウ属。食樹はフウチョウソウ科のギョボク。
開張約9〜10cm。シロチョウ科では世界最大級の種であり、猛毒チョウでもある。
オーストラリアの研究チームはフリピン、インドネシア、マレーシアで採取したツマベニチョウの羽、幼虫の体液から海にすむ巻貝(イモガイ)と同じ成分の猛毒(神経毒)を見つけた。
生物の毒としては最強レベルの神経毒である。
生息域は宮崎以南(鵜戸神宮の境内にはギョボクが多く植えてある)鹿児島県が保護・誘引目的でギョボクを増やした結果、宮崎県に入ったのではないかと考えられているそうだ。

猛毒の記事引用
http://www.asahi.com/eco/news/TKY201210160646.html

北限の参考文献『翔べツマベニチョウ』海老原秀夫著
http://www1.ocn.ne.jp/~r-ainan/tefu.htm

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆☆)」
「ひたすら我慢の待ち伏せ撮影」
動きが素早く神経質。
吸蜜中もタッチ&ゴーでなかなか近づけず望遠レンズで待ち伏せ撮影する事にした。
ツマベニチョウの動きをこまかく観察し、体の動きを最小限にしつつ気配を消して待ち伏せる。その際、ハイビスカスの花付きが奇麗なものに狙いをさだめ、その方向にレンズ向けて待つ。少しでも動きを感づかれるとひらりと上空に舞い上がり飛び去ってしまうのだ。
ターゲットの動きが早いので高速シャッター(1/2000),絞り(f/9)に設定。次々と現れるツマベニチョウだが狙いの花付きに来る迄はひたすら我慢し、決してその場を動かないと肝に銘じつつ。

ハイビスカスの見頃
宮古島では、ハイビスカスの花は一年中見られるが、夏場は暑さにへたり気味になる。
美しい花付きを見るには、これから涼しくなる11〜12月頃がハイビスカスの花のベストシーズンとなる。

撮影は簡単そうだが、非常に神経質なチョウなので撮影難度(☆☆☆)とした。
運良く台風18号は宮古島をそれた。
撮影地:ツマベニチョウ♂/沖縄県宮古島「赤瓦集落かたあきの里」にて2014年10月4日撮影 

カメラ設定
Nikon D810, 絞り値:F9.0、シャッタースピード:1/2000秒,ISO感度設定:800、レンズ焦点距離200mm、露出モード:マニュアル、露出補正:-1/2、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw 14bit。

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像、トリミングあり)

使用機材

Nikon D810, AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR

POSTED BY:
tsugionishimura_image

TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家