オオスズメバチがニホンミツバチの巣の前でホバリングをして、巣に帰って来るニホンミツバチを狩っていた。
首尾よく空中で捕まえると肉団子にして巣に持ち帰る、それを何回も繰り返していた。
観察すると、オオスズメバチにも狩りの上手下手がいる。
その中の下手なオオスズメバチが、じれたのか警戒の羽音を繰り返すニホンミツバチの巣の入り口に、うかつにも着陸をしてしまったのだ。
その瞬間、果敢な一匹のニホンミツバチがオオスズメバチに飛びかかり、それを合図に20〜30匹程が一斉にオオスズメバチに覆いかぶさった。
ニホンミツバチの熱殺蜂球とは
セイヨウミツバチは対抗の術をもっていないけれど、ニホンミツバチは長い歴史の中でオオスズメバチの攻撃から巣を防御する術をあみだしたのです。
スズメバチが巣に近づくと一斉に飛びかかり蜂球をつくり、体を震わし温度が上げ熱殺するのです。
熱殺蜂球の中の温度は約46〜47℃。オオスズメバチの高温上限致死温度は約45℃でニホンミツバチは約49℃。
ニホンミツバチは約47℃まで温度を上げ、この約2℃の致死温度差でオオスズメバチだけを蒸し殺すのだ。
写真は、その熱殺蜂球のシーンです。
もし、オオスズメバチが餌場フェロモンを発してしまったら、集団でオオスズメバチが襲って来るのでニホンミツバチの巣は壊滅してしまいます。
しかるに、オオスズメバチが餌場フェロモンを出す前に退治しなければならない、まさに生死をかけた緊迫の場面なのです。
この時の撮影技法(安全な撮影のための準備)
このシーンを撮影する為に考えておかなければならない準備があります。
▲ うかつに近づくと毒液を吹きかけられたり、刺される危険があるので黒っぽい服をやめ、白い服を着る。
▲ ストロボの連写は控える。キャノンの580EXは連写によるオーバーヒートでキセノンフラッシュランプが壊れてしまう危険性があるので出来るだけ冷ましながら冷静にシャッターを切る。
▲ 熱殺蜂球が始まったら比較的安全なので至近距離から撮影可能(ニホンミツバチはとてもおとなしい蜂なので近づいても安心)
▲ たえず他のスズメバチの気配を察知する。
どんな撮影でも、エキサイティングの場面では無中のあまり大胆な行動になりがちで事故の危険性が増します(近づきすぎて刺される、崖から落ちる、後ろに下がり屋根から落ちる、カメラを落とすなどなど実際にあった話しです)。冷静な行動を心がけましょう。
こぼれ話
教員の職をすて、花のジプシーになった叔父がいた。鹿児島から北海道まで花を求めて旅をするのである。
私が小学生の頃、実家の畑にも沢山の巣箱が置いてあってレンゲの花が咲き乱れる頃、最初の集蜜が始まるのである。
好奇心の塊の私は、麦ワラ帽子に網を被せてもらい叔父について行く。
叔父は巣箱の蓋を開け
「この大きいのが女王蜂で、そして、この白いのは次の女王蜂を作る為のローヤルゼリー。どうだ、試しに舐めてみるか?」と進められ舐めてみた。それは、子供の敏感な舌にはとても耐えられない不味であった。
そんな話しの中に、セイヨウミツバチの天敵の話しがあった。
「養蜂家の敵は、巣箱ごと壊してしまう熊と、巣箱の蜜蜂総てを短時間で食い殺してしまうスズメバチがいて、残念ながら今年も北海道でやられてしまった」と、悔しそうに話していた。
巣箱をバキバキと壊して蜜をペロペロ舐める熊。
そして、片っ端から蜜蜂をガブリガブリと食い殺していくスズメバチ。空想好きの小学生には十分すぎる程凄い話しであった。
また、幾度となく蜜蜂に刺されて泣きべそをかいていた私に「一番の長生きの職業はなんだか解るか・・・答えは養蜂家。少量のハチの毒は逆に体に良い。ロシアでは民間療法に取り入れられているくらいだから、少し位刺されても大丈夫じゃ」。
そんな幼少期を過ごしたせいなのか、ハチだと聞くといても立ってもいられないのである。
カメラ設定
絞り値:F/9、シャッタースピード:1/125秒,ISO感度設定:200、露出モード:マニュアル、露出補正:なし、ホワイトバランス:オート、測光モード:部分測光、ピクチャースタイル:スタンダード、レンズ焦点距離:100mm
使用ソフト
Raw現像ソフト:Lightroom3、最終調整PhotoshopCS5使用
使用機材
Canon EOS 30D、EF100mm f/2.8 Macro USM, SPEEDOLIHT 580EX 2灯使用
POSTED BY:
TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家
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