- TSUGIO NISHIMURA 西村次雄
フォトグラファー
- 1973年、九州産業大学芸術学部写真科卒。同年渡米。1979年、「STUDIO BB」を設立。デジタルの可能性にいち早く気づき、雑誌・広告を中心に一眼レフカメラを駆使して活躍中の”IT写真家”である。建築物、料理、人物、商品、そして動物・植物・昆虫と被写体の幅も極めて広い。

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紅葉はじめ2009.11.25
秋風が彩りを運んでくる頃、虫たちを探しに近場のフィールドへ出掛けた。
木の葉を揺らす風も少し肌寒いためか、
虫たちの姿もめっきり少なくなった公園をプラリプラリと探索していると、
赤く色づきはじめたイロハモミジが目に留まった。
控えめな紅葉はじめをしばし眺め、
明日はあのカメラで挑んでみるのもいいかな・・・、と、
思案しながら再び虫たちを探しに歩きはじめた。
この時の撮影技法
「秋のはじめ」の味わいを出すために一番気を遣ったのは背景の佇まいです。
主役を際だたせるための背景はとても重要で、
なかでも光の強弱がキーポイントだと思っています。
苔の生えた幹のしっとりとした質感、
そして画の左端に遠景を少しだけ取り入れて、
明るい光のアクセントで「秋のはじまり」感を表現してみました。
隠し味として低速シャッター(1/4秒)で葉っぱをぶらし、
心地よい空間を表現してみましたが如何でしょうか?
有名な紅葉名所だけではなく、
身近な場所でじっくりと時間をかけて独り占め出来る空間を見つけ出すことこそ、
写真撮影の醍醐味のひとつではないでしょうか。
解像度の話
このデジタルバック(CCD解像度3900万画素、有効画素数7216×5412ピクセル)は
高細密な画像データが得られ大伸ばし時にその威力を発揮します。
デジタル一眼レフタイプ(2000万画素クラス)より撮像素子が一回り大きいので、
その圧倒的な情報量がもたらす質感描写はさらに一段高いレベルにあろといえます。
今回の写真もモニターで拡大して見ると「オッ!」と声を発するほど葉っぱの一枚一枚見事に再現され、
その豊かな階調の美しさに感動すら覚えてしまいます。
ただし、ご存じのとおりモニターの解像度は72dpiで表示されるため、
この写真の大きさ(72dpi,20cm×15cm)まで縮小してしまうと、
その良さをモニターでは確認出来ないのは残念ですが。
カメラ設定
露出設定マニュアル、シャッタースピード1/4秒,絞りF22、ISO100。
使用機材
Mamiya RZ67 PROⅡD、M140mmレンズ,デジタルバックPHASE ONE P45+,Gitzo大型三脚、レリーズ。
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写真家
山水(称名滝と紅葉)2009.11.13
この場所に着いたのは午後4時を少し回っていて、
称名滝が雨でボンヤリと浮かびあがっていた。
暫くすると薄暮の柔らかな光が紅葉をよりいっそう艶かに色づけして浮かびあがってきた。
私はこの時間帯の妖艶な光がたまらなく好きで、
この一瞬のためにひたすら待ち受けるのである。
狙いは神宿る山水。
称名滝
富山県中新川群立山町にあり、
立山連峰を源流とする滝で日本最大落差(350m)を誇り「日本の滝百選」に入る。
この時の撮影技法
霧雨と瀑布の水しぶきでカメラはずぶ濡れ状態になるので、
カメラを守るビニール袋、タオルなどが必須です。
薄暮の時間帯は光の陰影や色温度などが複雑に絡み合い刻々と表情が変化します。
その一瞬一瞬で閃いたイメージを如何に具現化するかがポイントです。
この時はスローシャッターで滝の流れを表現したかったので三脚を使用。
ビニール越しで構図を決めたらレリーズの直前にレンズの覆いをはずします。
露光中は水しぶきが架かるので何度もレンズをせっせと拭かなければならないので、
水を良く吸い取るタオルなどが必須です。風景写真の極意は「待ちの忍耐」と「イマジネーション」、
そして僅かな変化を見逃さない集中力ではないでしょうか。
機材故障の話
先日、松島に取材で出掛けた折、
カメラマン人生で初めて2台同時にカメラのトラブルが発生しました。
まずCanon 5DMarkⅡにErr30がモニターに表示され撮影不能。
Canon40DはAFが故障。同行の編集者達の顔が一瞬蒼くなりましたが、
幸い予備機のNikonは何の問題もなく最後まで順調に働いてくれました。
プロとして何年かに一度の故障に備えたえず予備機材を携帯するのですが、
それにしてもデジタルカメラに移行してから故障の頻度が多くなり、
肩にかかるカメラバックが重たいことよ。
カメラ設定
露出設定マニュアル、シャッタースピード1/4秒,絞りF16、ISO400。
使用機材
Canon 1Ds MarkⅡ、24~105ミリISレンズ(55ミリで使用)。
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写真家
ルリタテハと空巣老人2009.10.30
リコーGRデジタルカメラを構え、
とある神社境内でテリトリーを張るルリタテハに注視していた。
ふとルリタテハだけでは何かが足りないように思へ、
画に深みと味わいを与える背景には何が良いのかと思案した。
大袈裟な表現をお許し頂けるならば、
テリトリーを張るルリタテハには
なんだか哲学者の雰囲気が漂っているように思えてならないのだ・・・。
9/20付けの朝日新聞のコラムに
『漢語的不思議世界』(岩波書店)から引用した「空巣老人」について記事が出ていた。
一部抜粋「▼空き巣狙いの怪老人、ではない。
独り暮らしのお年寄りのことだという。
雛が育って飛び立てば、巣は空っぽになる。・・・」以下略。
当初この写真を公開する予定は全く無かったけれど、
「空巣老人」なる妙な響きに魅せられて、ルリタテハを公開することにした。
ルリタテハ(瑠璃立羽)
黒褐色の翅の表面には鮮やかな水色の帯模様がカタカナの「ノ」字のように入っているので見分けは簡単ですが、
しかし翅を閉じると枯れ葉や樹皮に似てとても見つけにくくなります。
飛翔スピードは高速で、♂は小高い岩の上や小枝などでテリトリーを張り、
近づく者にはご自慢の高速飛翔でもって奇襲攻撃を仕掛け、侵入者の追っ払いに精を出します。
コンパクトデジタルカメラの話
この時使った道具は「GRデジタルカメラ」です。
画作りの道具のひとつとしてコンパクトデジタルカメラを使うの一番の理由は
「持ち運びの利便性」と「深い被写界深度」。
GRはレンズ交換単焦点レンズ(広角28ミリ)が出来ないコンパクトデジタルカメラです。
少しだけこのカメラの歴史をお話しすると、1996年「プロのサブフィルムカメラ」として「GR1」が誕生。
2001年「GR 1v」が発売され、
当時は珍しい非球面レンズを2枚と広角レンズ搭載ながら
コンパクトカメラでは珍しディストーション(歪曲収差)が少なく、
写りの良いコンパクトカメラとして高評価を得ていました。
面白い事に2005年10月「GRデジタルカメラ」が発売されると、
逆に「GR 1v」の人気が再燃し、
中古市場では現在でも高値で取引される希なフイルム式コンパクトカメラとなっています。
言うまでもなくデジタルに変わっても
プロやハイアマチュアに高評価を得ていることには変わりありません。
ちなみに私はコンパクトで手に馴染むフィット感が心地よくフイルム式2台、
デジタル2台を所有しています。
この時の撮影技法
撮像素子(CCD)は1/1.8型サイズ(6.9×5.2mm)800万画素(最新GRⅢはCCDが1/1.7型1000万画素)です。
ちなみにフルサイズは36×24mm。
この小さな撮像素子に800万画素を詰め込むには多少無理があると思われますが、
撮像素子が小さければ被写界深度が深くなり、
広角28ミリレンズの「接写」では背景までボケの少ない写真を簡単に撮ることが出来るのです。
逆にフルサイズの撮像素子の場合その逆ということになります。
コンパクトカメラの隠された利点として、
公園などで撮影中デジタル一眼レフカメラを構えていると
「何かいるんですか?」などと肝心な場面でよく声をかけられ困ることが多いのですが、
コンパクトデジカメなら滅多に声をかけられないのです。
人に警戒感を与えないのも隠された撮影技法のひとつかもしれませんね。
カメラ設定
露出設定マニュアル、シャッタースピード1/125秒,絞りF8、ISO400、マクロに設定。
使用機材
リコーGRデジタル(28mm単焦点レンズ)
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写真家
捕食者の輝きを放つ「オオスズメバチ」2009.10.16
クヌギの樹の下で、S氏が何かを叫んで手招きしているので駆けつけると、
ハラビロカマキリが横たわっていた。
聞くと「オオスズメバチの落とし物」とのこと。
おそらくクヌギの高所で狩ったものの重すぎて落としてしまったらしい。
二人して覗き込んでいると、やがて落とし主が羽音を響かせて背後から現れた。
我々は少しだけ後ずさりして様子を窺っていると、
オオスズメバチはふわりとハラビロカマキリの近くに舞い降りた。
恐る恐る5㎝程の近距離にカメラを置きレリーズでシャッターチャンスを待った。
一回では運べないとみて頭部、胸部、お腹、
と手際よく数回に分けて肉団子にして運び去った。
息の詰まるような緊張感のあいだ、
オオスズメバチは捕食者の輝きを放っていた。
オオスズメバチ
世界最大種で、体長:女王バチ40~45mm,働きバチ27~40mm,オスバチ35~40mm、
攻撃力、毒性もきわめて強い。
秋口(9月~10月)になる大きくなったコロニーの幼虫や蛹の餌集めで忙しくなり、
集団でミツバチやキイロスズメバチなどの巣を襲います。
よってこの時期キイロスズメバチなどは天敵のオオスズメバチの襲撃にそなえ
絶えず見張り番をおき巣に近づく者に対し攻撃をしかけます。
このような理由から秋口には被害者が多発することになります。
都市部でキイロスズメバチが増えた原因として
天敵のオオスズメバチが少なくなり
生態系のバランスが壊れてしまったのが原因ではないかと言われています。
オオスズメバチは見るからに怖い顔をしていますが決して無益な攻撃はしません。
人があやまって巣に近づくと体の周りを飛び回り、
さらに巣に近づくと大顎をカチカチ鳴らし近づくなと警告を発します。
その時はゆっくりと後ずさりをしてその場を離れることです。
間違っても手で追い払ったりしないことです。
この時の撮影技法
オオスズメバチとの息詰まるような緊張感がたまらなく好きで、
季節ごとに思い描くシーンをシュミレーションしていますが、
何故か不思議と思い描いたシーンに遭遇します。
今までオオスズメバチの「食うか食われるか」のシーンを幾度となくカメラに納めてきましたが、
幸運にもこの週は3日連続で「オオスズメバチ同士の死闘」、
「セミと共に謎の絶命」、そして「カマキリの解体シーン」に巡り会えました。
思うに「こんなシーンが撮りたい」と念じることにより、
予め被写体の予備知識やカメラ機材の準備しておくことこそがシャッターチャンスを撮り逃さない、
撮影技法の重要なファクターかもしれませんね。
カメラ設定
露出設定マニュアル、シャッタースピード1/500秒,絞りF4.5、ISO800。
使用機材
Canon40D、シグマ8mmフィッシュアイレンズ+1.5Xテレコン。
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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家
キチョウと萩2009.10.15
秋の七草のひとつ「萩」の字は
クサカンムリに秋と書く日本生まれの和製漢字ですが、
『万葉集』の中で萩の花の歌を詠んだものが一番多く141首ほどあるといわれています。
花の人気も高く此処の神社境内にも縁起ものとしてなのだろうか2対植えられています。
萩はキチョウの食草(マメ科)であることから、
数頭のキチョウが吸蜜、交尾、産卵にここの萩に依存しています。
写真は蛹から羽化したばかりのキチョウの交尾です。
キチョウの♂は今か今かと蛹の羽化を待ち構えるるように、
常時数頭が代わる代わる確認に訪れます。
その羽化直後の交尾シーンにはなかなか巡り会えず悔しい思いを募らせていましたが、
今回やっとその決定的瞬間が訪れました。
撮影技法
キチョウの羽化直後の交尾シーンはお互いが翅を閉じているため肝心の部分が確認出来ません。
観察の結果、ライバルの♂がちょっかいを仕掛けた瞬間だけ翅をバタバタと開くので
そこを狙うことにしました。
8ミリ魚眼レンズ+1.4xテレコンをキチョウの下の方にセット。
ストロボはサンパックPF20XD2灯使用、一灯は斜め右から三脚にセットして、
もう一灯は手持ちで影の出方を調整しらがら内蔵ストロボに同調させて、その瞬間を待ち構えた。
カメラ設定
露出設定マニュアル、シャッタースピード1/120秒,絞りF18、ISO400。
使用機材
Canon40D、シグマ8mmフィッシュアイレンズ+1.5Xテレコン、内蔵ストロボ+外部サンパックPF20XDストロボ2灯、三脚。
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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家