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about

TSUGIO NISHIMURA 西村次雄
フォトグラファー
1973年、九州産業大学芸術学部写真科卒。同年渡米。1979年、「STUDIO BB」を設立。デジタルの可能性にいち早く気づき、雑誌・広告を中心に一眼レフカメラを駆使して活躍中の”IT写真家”である。建築物、料理、人物、商品、そして動物・植物・昆虫と被写体の幅も極めて広い。

ニホンミツバチの倍返し2013.09.27

TVドラマの半沢直樹の(倍返し)視聴率が凄い!というような事をMSN産経ニュースのヘッドラインで流していた。
それによると、上の者の理不尽な行為に逆襲するストーリとか。
日頃の恨み辛が視聴者の琴線に触れたのか高視聴率であったらしい。

この秋、おとなしい性格のニホンミツバチも怒っていた。
毎日、多数の姉妹がスズメバチの犠牲となりフツフツと怒りが込み上げていた。
「やられたらやり返す。倍返しだ!!」と言ったかどうかなんて馬鹿な話はさておき、この巣のニホンミツバチは見事な防御力を発揮していた。
樹洞の周りには既に7頭のキイロスズメバチと1頭のモンスズメバチが転がっていたがこのまま防御し続けられる保証などどこにも無い。
そこには「生態系のバランス」というものがすでに用意されているのだ。

ニホンミツバチの熱殺蜂球とは
セイヨウミツバチは外来種ゆえ、スズメバチのような外敵に襲撃された経験が無いのでスズメバチに襲われたら直ぐに全滅してしまうまさに養蜂家泣かせである。
それにひきかえニホンミツバチは長い進化の過程で天敵のスズメバチの攻撃をかわす術をあみだしたのだ。
その術とは「熱殺蜂球」。
スズメバチがうかつにも巣に近づくと一斉に飛びかかり蜂球をつくり、体を震わせ温度を上げ熱殺するのだ。
熱殺蜂球の中の温度は約46〜47℃、スズメバチの高温上限致死温度は約45℃、ニホンミツバチは約49℃。
ニホンミツバチは約47℃まで温度を上げ、この約2℃の致死温度差でスズメバチを蒸し殺すのだ。

スズメバチの毒
ミツバチのように一回刺すと終わりではなく、毒液が残っている限り何度でも刺す。
特に黒色の部分である黒髪、眉毛、目や耳の穴を攻撃「コントラストの強い場所」してきます。
刺すだけではなく毒のカクテルを目にめがけて吹きかけてきたりもします。
もし目に入ったら失明の危険があるそうです。
近づきすぎると大あごをガチガチ鳴らして警告してきます、低い姿勢でゆっくりとその場を後ずさりで離れること。
速い動きや横方向には敏感(縦方向は鈍感)なので決して横に逃げてはいけません。
また、香水も良くありません。
香料の一部が攻撃フェロモンに似ているケースがあるので、その時には警告なしにいきなり攻撃してくることもあるので油断なりません。
したがって香水や黒い服はさけた方が賢明です。
9月〜10月は外敵から巣を守る為に非常に攻撃的になりますから予備知識として、正しい知識と刺された時の対処方法を合わせて知っておく事も決して無駄ではないはずです。

刺された時の対処方法、詳しくはコチラ
http://www2u.biglobe.ne.jp/~vespa/vespa055.htm

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆☆)」
「多灯ライティング(光のコントロール)」
前面からのストロボ光だけでは、今ひとつフラットで立体感も透明感も乏しく美しくありません。
そこでフラット感を解消するために多灯ライティングを行います。
先ず始めに撮りたいシーンをイメージします。
イメージ出来たならば最初にカメラ位置を決め、それからバックライトの位置決めをします。
バックライトは三脚(ライトスタンドとして使用)にストロボをセットして、反逆光の位置へセットします。
レンズ側に制御用のマスターストロボをセットし総てのストロボをスレーブさせます。

ポイント
多灯ストロボ撮影時には時間的間隔が空くと自動的にストロボがスリープ状態になってしまいます。
これでは肝心な時にシャッターが瞬時に反応しません。
シャッターチャンスを逃す恐れを解消するために、約10秒間隔でシャッター反押しを続けます。
そして思い描いたシーンが訪れたら、待ちに待ったシャッターチャンス。カシャ!

写真のキャプション
1) 見張り番のニホンミツバチがスズメバチを迎え撃つ為に腹部を持ち上げて一斉に左右に振り翅を激しく振動。(自然光のみ)
2) モンスズメバチの襲撃!(多灯ライティング)
3) 1〜4頭のニホンミツバチがキイロスズメバチに襲いかかる。(多灯ライティング)
4) それ!と次々に噛み付くニホンミツバチ、逃げようともがくが多勢に無勢。(多灯ライティング)
5) これぞ、熱殺蜂球、倍返しだ!(多灯ライティング)
6) スズメバチの生死を確認しているニホンミツバチ。(自然光のみ)

カメラ設定
1)絞り値:F5.6、シャッタースピード:1/100秒,ISO感度設定:2500、露出モード:マニュアル
2)絞り値:F14、シャッタースピード:1/160秒,ISO感度設定:800、露出モード:マニュアル
3〜5)絞り値:F13、シャッタースピード:1/125秒,ISO感度設定:800、露出モード:マニュアル
6)絞り値:F13、シャッタースピード:1/20秒,ISO感度設定:400、露出モード:マニュアル

使用ソフト
Raw現像ソフト:最終調整PhotoshopCS5使用

使用機材

1〜5)Nikon D800、ニコンAF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED、ニコンクローズアップスピードライトリモートキットR1、SPEEDOLIHT SB-600一灯バックライトとして使用
6)Canon EOS 5D Mark II、キャノンEF100mm f/2.8 Macro USM, マクロリングライト MR-14EX、スピードライト580EX一灯バックライトとして使用
三脚、(ライトスタンドとして使用「段差のある場所では三脚が便利」)
三脚、ベンロカーボンネオフレックスC-298m8、雲台:Velbon QHD-73Q

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

五輪色の虫達2013.09.12

気がつけば白々と夜が明けていた。
チームジャパン。
2020年、東京五輪招致委員の最後のプレゼンに釘付けになっていた。
歓喜!
すぐさま、7年後の家族や友達、そして自分の事を思い浮かべた方も多かろう。

朝早く頼んでいた庭師の方が剪定に来られた。
先日から鳥が巣作りを始めた木とアゲハ(ナミアゲハ)の幼虫のいるミカンの木の周りは剪定をしないようにお願いした。
すると、「最近、鳥や虫好きの方が多くなられましてね、出来るだけ木は切らないでくれとよく言われるようになりました」と、意外な返事が返って来た。
 
五輪の色。
庭師の仕事ぶりを眺めながら、
青、黒、赤、黄、緑を虫達に置き換えたらどうなるだろうかと思い至った意である。
さて、あなたは答えを見ずに何匹の虫達の名前がお分かりになりますか?
5つ総てを正確に答えられたら虫博士、4〜3つなら相当な虫好き、2〜1つなら虫好き、0なら無関心か虫嫌いとしておきましょうか。
(答え合わせは最後へ)

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「印象色の再現はCamera Raw」
昆虫のフォルムと色彩に魅せられて、虫好きになられる方も少なからずと思う。
そのフォルムと色彩は必然的に進化した結果であって、無駄がなくシンプルで美しい。
そんな微妙な色合いを再現するツールとしてデジタルカメラは最適である。
Camera Rawで撮影しておけば、後から見た時の印象色をクリックひとつで簡単に色温度変換(ホワイトバランス制御)が出来てしまうのです。
写真知識として非常に重要で、覚えておくべきポイントのひとつでもある。
興味のある方は下記のURLをたぐって確認して下さい。

色温度について詳しくはコチラ
http://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/light_bulb/color_temperature/

色について詳しくはコチラ
http://www.sharp.co.jp/aquos/technology/color/

ホワイトバランスについて詳しくはコチラ
http://www.olympus.co.jp/jp/support/cs/DI/QandA/Basic/s0012.html

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像にも使用)

使用機材

Nikon D800, D300、D90、Canon EOS 5D Mark II, ストロボ

答え 青:オオセイボウ、黒:コクワガタの♀、赤:アカハネナガウンカ、
   黄色:ツマグロオオヨコバイの幼虫、緑:ハラビロカマキリ

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

鹿とサルスベリ2013.08.12

この画を撮る前に、春日大社の森を早朝に訪れていた。鹿の食害なのか本来のシイ、カシなどの照葉樹は大木しか残っていない。幼木やドングリなど鹿が好んで食べてしまう、よって鹿が嫌いなアセビ(枝葉に「アセボチン」という有毒成分を含んでいる)やナギ(ナギラクトンというテルペンが含まれている)などが相対的に多くなってしまったという訳であろうか。
神の使い(8世紀半ば、神様は鹿に乗ってこの地にやって来たと言い伝えられてきた)である鹿の好き嫌で森の生態系が変わる。
改めて1300年もの人と鹿との関わりによる時間的スパンを垣間見ることができる貴重な鎮守の森でもある。そのような事をふまえて眺めると、奈良公園内の見事なサルスベリにも合点がいくというものだ。

サルスベリ(百日紅)
フトモモ目ミソハギ科サルスベリ属、原産地:中国南部
日本の夏に彩りを与えてくれる百日紅(ヒャクジツコウ)。
漢名の百日紅は、7月頃から10月頃までおおよそ100日間紅い花を咲かせるのが名前の由来。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「テーマありきの構図」
花がテーマであるから、サルスベリが主役で鹿は脇役である。
その両方をからませるために必然的にローアングルとした。
したがってサルスベリを入れられるアングルありきで構図を決め、鹿がそのアングルに入って来るのを待ち受けたのである。
そして、上手い具合に鹿3頭が左端に入り構図が決まった。
あとは子鹿の瞳の輝きに全神経を集中して私と視線が合った瞬間に。
カシャリ!

カメラ設定
上:絞り値:F10、シャッタースピード:1/200秒,ISO感度設定:400、露出モード:マニュアル、露出補正-0.67、ホワイトバランス:オート(Rawデータで記録のため)、測光モード:中央部平均測光、ピクチャースタイル:スタンダード、焦点距離55mm

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像にも使用)

使用機材

Nikon D800、AF-S NIKKOR 24-85mm f/3.5-4.5G ED VR

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

ハッチョウトンボ(日本一小さいトンボ)2013.07.18

大きさは、一円玉にすっぽりと収まる日本一小さなトンボである。
7月16日午後2時過ぎに宮崎県高鍋湿原に到着。
トンボ橋を渡る頃になるとワクワク全開状態。
以前、岡山空港近くの湿地でお会いしてからずいぶんご無沙汰していたから無理もなしか。

この日は南国特有の猛暑。
覚悟していたが木道にうつぶせになると、まるでフライパンの上で焼かれる目玉焼き状態。
夢中になると、変に暑さも心地よく感じられ夢中でシャッターを切る。
目の前をキイトトンボやハラビロトンボがフワ〜ッと横切って行く。
気持ちも体も熱く焼かれ、虫好きにはたまらない満たされた時間を過ごす。

水深の浅い湿原特有のトンボで、日本では多数の都道府県で絶滅危惧種に指定。
『日本一大きいトンボ(オニヤンマ)はこのブログの2009年9月28日に公開』

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「絞り開放近くで主役を強調」
この撮影地では保護のために金柵がありローアングルで狙う場合これがとても邪魔になる。
さてどうするか?絞りを開放付近で金柵をぼかせば問題解決、前後がぼけて主役の「ハッチョウトンボ」をより強調できるのである。
ポイント、
このボケ味を楽しむには出来るだけ長い望遠レンズ(被写界深度が浅い)を使うことが秘訣でもある。
この暑さにハッチョウトンボも熱いか、尻尾をピンと立て太陽光が当たる面積を少なくしていた。

カメラ設定
上:絞り値:F5、シャッタースピード:1/1000秒,ISO感度設定:400、露出モード:マニュアル、露出補正+0.33、ホワイトバランス:オート(Rawデータで記録のため)、測光モード:中央部平均測光、ピクチャースタイル:スタンダード、焦点距離200mm

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像にも使用)

使用機材

Nikon D800、AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

紫陽花(千年の誤用)2013.06.28

梅雨になると、さて、今年は何処のアジサイを求めて撮影に出かけようかとなるのだが・・・。
しかし、「紫陽花」はライラックの花を指すらしい。
アジサイは日本原産で「あづさい」が変化、青い花が集まって咲く様から「集真藍」「安治佐為」「味狭藍」などと話し言葉が訛「あじさい」となった。それなのに、なぜわざわざ中国の紫陽花を当てたのか? 
誤用は平安時代までさかのぼることになる。
平安時代の学者「源順」が事もあろうに、唐の詩人「白居易」が別の紫の花「ライラック?」につけた名前を、誤って「紫陽花」と、誤用したため広く使われるようになったとか。
今月、仕事で訪れた札幌でライラックを撮影した。確かにアジサイ(紫陽花)に似ているが、こちらは字のごとく「日当りの良い場所」が好みである。アジサイは漢字とは真逆な「日陰を好む」正反対の成育環境なのだ。

ライラックについて詳しくはコチラ
http://ja.wikipedia.org/wiki/ライラック
http://www.hana300.com/rairak.html

紫陽花の誤用について詳しくはコチラ
http://www.hana300.com/ajisai.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/アジサイ

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆)」
「成育環境を露出で表現する」
明るい場所に咲くライラックは晴天下の光で演出し、反対にアジサイは日陰の場所の紫陽花を露出アンダーで表現したい。その方が、よりその花の戦略を表現出来るし、人々が抱いているイメージを写し止めることができるのではないだろうか?

カメラ設定
上:ライラック Canon EOS 5D Mark II, 絞り値:F11、シャッタースピード:1/320秒,ISO感度設定:400、レンズ焦点距離26mm、露出モード:マニュアル、露出補正:-0.33、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw。
下:アジサイ Nikon D800, 絞り値:F14、シャッタースピード:1/8秒,ISO感度設定:200、レンズ焦点距離24mm、露出モード:マニュアル、露出補正:-1、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、Raw。

使用ソフト
PhotoshopCS6使用(Rawデータ現像にも使用)

使用機材

上:ライラック Canon EOS 5D Mark II、EF17-40mm f/4L USM
下:アジサイ Nikon D800, 24.0-70.0 mm f/2.8、三脚使用

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家