YOUCHOOSE

about

SHOWKEN HIRASAKA 平坂彰謙
株式会社CAMELSTUDIO 代表取締役社長
1996年11月にCAMELSTUDIOを設立、PCや携帯・スマートフォンなどをプラットフォームに、サイトやコンテンツの企画制作を行なう。幼少時代からドラムを叩き続け、1994年に結成した爆笑系歌謡曲ロックバンド「ダイナマイトポップス」で現在も活動中。このサイトに参加してくれている面々は、公私問わず信頼する親友たちである。

NO.1ロックドラマーを選ぶ(9)ダニエル・セラフィン/Chicago2010.08.31

沖さん、いつもシブいところから選んできますね。
シブさではこちらも負けません。

NO.1ロックドラマー:ダニエル・セラフィン/Chicago
ベストトラックアルバム:Chicago lll

「Chicago」は1969年のデビュー以来メンバーがコロコロ変わるものの、いまだに現役。
ローリングストーンズ、エアロスミスと並んで、3大長寿じじいバンドと言われています。

ダニエル・セラフィンは、ロックを基調としながらも、しなやかな手首から織り出される細かなロールやシンバルさばきが光る、いわばジャズ出身のロックドラマーとでも言いましょうか。
デビューから19枚目のアルバムまでメンバーとして活動していたようですが、注目したいのは、特に3枚目あたりまでの初期です。

もともとギターがサウンドの中心であるというロックの概念を変え、「奇跡!ジャズとロックの融合」と言わしめたバンドがこの「Chicago」。
一般的には、通常のロックバンドユニットに「サックス」「トランペット」「トロンボーン」という管楽器プレイヤーをレギュラー陣に加えたことが「ジャズとロックの融合=新しい」という評判を生んだとされています。

しかし、実はそうではありません。
ダニエル・セラフィンのドラムこそが、その新しいサウンドを誕生させた張本人なのです。

そのへん少し解説いたしましょう。

<1>◎特に初期の頃は、音楽的なコンセプトがたいへん社会的で(”流血の日”のように反戦的なもの、”いったい現実を把握している者はいるだろうか?”のように社会哲学的なものなど)、世界観としては極めてロックである。

<2>◎ホーンセクションのアレンジが度を超えたテンション(というか、ほとんど不協和音)なうえに、攻撃的で乱暴な演奏スタイル。
本来ジャージーな雰囲気を作るべき楽器が、逆にジャズらしくないサウンドを生み出している。

<3>◎曲調としては、実にポップな色合いのものが多い(QUESTIONS 67 AND 68、MAKE ME SMILE、LOWDOWNなどなど)。
アレンジ次第では日本の歌謡曲としても通用するほどのポップスである。

つまり、ほっておくと「少々反社会的で、ラッパのやかましいポップ・ロック」という、音楽的には実に安っぽい感じのするバンドになってしまうわけであります。

そんなバンドを崇高な「ジャズとロックの融合」という領域にまで押し上げたのが、ダニエル・セラフィンなのです。

フツーのジャズドラマーには、この乱暴なラッパポップロックバンドなど全く務まりません。
そんなのは例えて言うならば、サッカーのフォワードにカーリングの選手を起用するようなもんです。
また、ベタベタの8ビートドラマーでは、バンドがさらに下品になってしまいます。
しかも、ロバートラム(Keyboard)、テリーキャス(Guitar)、ピーターセテラ(Bass)といったリズムに厳しいテクニシャン揃い、一寸の狂いもない正確なビートを刻むドラマーでなければなりません。

「なぜダニエルが…」お解りいただけましたでしょうか。
ジャズの基本をばっちりマスターしていて、しかもロックのニュアンスがよくわかっていて、極めて正確なリズムを刻む、なかなかいやしませんよ、こんな人。

しかし、この<1>+<2>+<3>+ダニエルのドラム=「ジャズとロックの融合」という方程式は、曲の内容やアレンジ、メロディなどの微妙なバランスの上に成り立っており、”奇跡の融合”はあまり長くは続きませんでした。
個人的には、5枚目(Saturday In The Parkなど収録)ですでにフツーのロックバンド、それ以降ではもはやありきたりのバラードポップス楽団に”成り下がってしまった”というのが我が感想です。

まあそれはいいとして、少なくともデビューから3作(すべて2枚組なため、合計6枚)ロック史上に輝く最高傑作が誕生したわけですから、それでいいじゃありませんか。

少々余談になりますが、上記の「微妙なバランス」というのは、他の同類とされるバンドと比べるとよくわかります。

◎Blood Sweat & Tears(BS&T)
 同じくホーンセクションを持つバンドで、Chicagoの親戚みたいなもんですが、こちらのほうが先輩にあたります。
 良く言えばChicagoよりも”大人っぽい”感じもしますが、ロックバンドとしては妙に安定しすぎていて、危なっかしさがなさすぎる。少々田舎のにおいもしたりして。
そういう意味で、ロックバンドとしてのバランスが取れているとは言えません。
興業的にも圧倒的にChicagoに軍配が上がります。

◎Chase
 こちらはトランペット3本というクレイジーな構成で、一時期はChicagoを食った!という感もありました。
しかしながら「ペット3本」で押しまくるというスタイルが、そもそも”一発の打ち上げ花火”…はじめからバランスを欠いたものでした。
いかんせん長続きせず、「Get It On(黒い炎)」1曲で終わり。
そういう意味ではダンディ坂野や鼠先輩と同じです。
完全にChicagoの勝ちです。 

「微妙なバランス」…もしジョン・レノンとポール・マッカートニーが出会っていなかったら。。。
あの数年間に生まれたThe Beatles数々の作品も存在しなかったわけで。
「ジャズとロックの融合」という奇跡と3枚の最高傑作アルバムを作ったChicagoに、ダニエル・セラフィン。
んー、感無量。

POSTED BY:
showken_image
Showken Hirasaka
Camelstudio Co., Ltd.

NO.1ロックドラマーを選ぶ(7)ドン・ブリューワー/Grand Funk2010.08.03

>こういうもありですよね?平坂さん

トッドはミュージシャンとして尊敬するお方です。
何をやらせてもサマになる、数少ない天才アーティストのうちの一人ですね。
しかし「ものにはいろいろな見方がある」…そんないい”対比”となるネタをお返ししましょう。

NO.1ロックドラマー:ドン・ブリューワー/Grand Funk
ベストトラック:Nothing Is The Same

ドラム演奏を目の前で見たり聴いたりしたことはありますか?

言うまでもなく、ドラムは皮を叩いて音を出しますが、思い切り叩くと、皮がヘコみ、振動し、側面に空いている穴から空気がシュッと吹き出します。
この何ともアナログでライブな感じは、リズムボックスや打ち込み(ドンカマ)では絶対に表現できないシロモノで、ドラムという楽器の醍醐味でもあると思うのですが、ライブステージではともかく、録音された音源からこの感触を感じとるのはとても難しいです。
沖さん執筆の中にもありましたように、特に最近ドラムに関してはサンプリング&打ち込みものが多く、ナマで叩くことをナリワイとしている者にとっては、実は少々寂しい感じもしたりします。

そこにきてこのドン・ブリューワー。
もともと190センチを超える身長と、ドでかいアフロヘアから(これは関係ないか)叩き出される”格闘技系”ドラミングは、当時のパワフルドラマー(例えばLed Zeppelinのボンゾとか)ともまたひと味違う、スピード感・ドライブ感のあるまさに「アナログでライブな」リズムが持ち味です。
そして、ベストトラックに選んだ「Nothing Is The Same」を含む彼らのサード・アルバム「Closer to Home
」が特にそのニュアンスをうまく仕上げた作品であると思います。

あまり細かいオカズや小細工をせず、とにかく叩き出した「音」のストレートなエネルギーで勝負するドン・ブリューワー。
タムの皮が「きゃー、やめてー」と悲鳴を上げているような気がするくらい、目の前でドカドカやっている時の空気を感じさせてくれる…これは打ち込みでは絶対に表現できない、ある種の芸術です。
パソコンで打った文字ではなく、墨で書いた筆文字みたいなもんでしょうかね。

それはそうと、ドン・ブリューワーとかグランドファンクとか言われても、最近の若いもんには「さっぱりわからない」でしょうね。
それもそのはず、1969年にデビューし、ドン・ブリューワーをはじめメンバーは全員現在60歳を超えるじじいです。
接点があるとすれば、割と最近ソフトバンク&SMAPのCMで使われた「ロコモーション」。
この楽曲は1973年ごろリリースされた彼らのナンバーです。(オリジナルではなく、カバーですが)

1970年初頭に来日もしています。
現東京ドーム(当時は後楽園球場)で、いろんな意味で伝説的なライブをやりました。
大型台風の来襲!怒濤のカミナリ!!降りしきる大雨!!(当時の球場には屋根がありませんでした)
ちなみに、確か小学校6年生くらいだった私の同級生が親にナイショで観に行って、「感電死するくらい感動した」と言っていました。

道路工事はツルハシを持って、掘ってなんぼ。
ドラマーはスティックを持って、叩いてなんぼ。
ドン・ブリューワー…
真のロックドラマーです。

沖さん、そう思いませんか?

POSTED BY:
showken_image
Showken Hirasaka
Camelstudio Co., Ltd.