ロックというジャンルの音楽を語る時、まずスポットが当たるポジションは、決まってボーカリストかギタリスト。
おいおい、違うでしょ。
実はドラマーこそがロックを語るうえで最も重要でしょ!
そんな思いのもと、しばらく連載にお付き合いください。
NO.1ロックドラマー:ジョン・デンスモア/The Doors
ベストトラック:Hello I Love You
The Doorsといえば、何といってもリードヴォーカルのジム・モリソン。
さらに「Light My Fire」「Touch Me」などのソングライターとしても評価の高い、ギタリストのロビー・クリューガー。
そして”ロックを演る大学教授”と言われ、ドアーズサウンドの中核を担ったレイ・マンザレクの陰にあって、最も地味な存在であったのが、ジョン・デンスモアであります。
この人、他のロックドラマーと比べ決定的に違う点がひとつ。
ロックドラマーは、ベーシストとセットで「リズムセクション」と呼ばれたりしますね。
野球でいえば”ピッチャー”と”キャッチャー”、漫才でいえば”ボケ役”と”ツッコミ役”みたいなもんです。
ところがこのThe Doorsには、なぜかベーシストがおりません。
タマを投げても捕るやつがいない、ボケてもツッコんでくれるやつがいない…
という恵まれない状況にあって、文句も言わずひとりリズム隊を勤めあげたという、たいへん貴重なドラマーだと認識しております。
◎アリスにもドラマーがいて、ベーシストがいないじゃねえか。
◎B’Zにはドラマーもベーシストもいねえぞ。
…というのとは意味が違いますね。
彼のドラミングの特徴をひとことで言い表すならば、「調味料的ドラム」といったところでしょうか。
実はThe Doorsの聴きどころはいくつもあります。
★ジム・モリソンの歌声、そして「詩人」としても名を馳せた、その歌詞
★レイ・マンザレクの不思議なオルガンサウンドとそのアレンジ
★ロビー・クリューガーの何ともポップなコード進行と味のあるメロディライン
これら「素材の良さ」を活かして、そこにピリッとひと味効かせているのが、ジョンのドラムなのです。
つまり、ジョンは”パスタ”ではなく、”コショウ”とか”タバスコ”なわけです。
“炊きたてのご飯”ではなく、”桃屋の辛くない辣油”なのです。
ベストトラックとして挙げた「Hello I Love You」が良い例でしょう。
そんな前提で一度聴いてみてください。
The Doorsは、ジム・モリソンが不慮の事故で亡くなった後も、残ったメンバーでバンド活動を続けました。
チームワークが良かったのでしょうかね。
自分の推測からすれば、調味料役のジョンの存在が大きかったのではないかと。
そう、おそらく性格も調味料のように地味ながらみんなをまとめる調整役−「ドラミングは体を表す」ってとこですか。
独りよがりなワガママ野郎が多い中で、こういう人がロックバンドを支える…そんな気がしてなりません。
いかがでしょうか、沖さん。