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REIJI YAMADA 山田玲司
漫画家 環境問題活動家
12歳の時、手塚治虫氏に出会い漫画家になることを決意。以降「Bバージン」「アガペイズ」「絶望に効くクスリ」「ゼブラーマン」とヒットを飛ばす。環境問題にも明るく、多くの専門家・NGOと繋がりを持ち、「非属の才能」ほか著書も多数持つマルチアーティストである。

バカは置き去りにして楽しもう − 映画「ウェイキングライフ」2009 / 07 / 06

確かに大好きな映画は沢山ある。
お勧めしたい映画も山ほどある。
でも、音楽のCDは毎日でも聞くときがあるのに、お気に入りのDVDを毎日は見ない。
僕は漫画家で美大生だったので、20代の頃には「毎日こればっかり見てます」みたいな映画はあったけど、これは漫画のための勉強なので普通はありえない話だ。
ところが、仕事場で何年もほとんど毎日に近いくらいに見ていたDVDがある。
YOU CHOOSEと聞かれたらこれを入れないわけにはいかないだろう。
それがリチャードリンクレイターの「ウェイキングライフ」だ。
絶望に効くクスリという漫画でさんざん人を褒めてきた僕だけど、正直な話、あまり人の作品を褒めるのは好きではない。なぜなら自分も作品を作る人間だから本当は悔しいのだ。
いい作品や、いいテーマ、やりたかった表現をやられたのを見て呑気に喜んでいられたのは「スターウォーズ」の頃で終わっている。
それでもこの「ウェイキングライフ」に関しては、認めないどころか「ありがとう僕のために・・」という気分になるのだ。
この映画は実写で撮ったものを加工してアニメ風に変えている。じつに危うい印象の画面だが、内容が夢と現実の狭間にある世界を描いているので、その手法が表現と完璧にマッチしている。
そして沢山の人が「夢と人生」について語るシーンが続く。これがまた広くて深い。1度聞いただけでは何を言っているのかわからないものから、わかりやすかったはずの言葉が何度も聞いているうちにわからなくなるものもある。
主人公はその奇妙な世界の中で人に話を聞きながら旅を続けるという映画だ。
確かどこかの映画監督が「映画は体験だ」といっていたけど、この作品は1度映画館に行った体験だけでは終われないタイプの作品だ。何度も何度も味わってその意味を深めていく種類のアートだと思う。
もしかしたら60年代の実験作映画などにこの手のことを目指した作品もあったのかもしれないけど、不幸にもその時代繰り返し何度も同じ映画を見るのは普通の人には難しかった。
DVDというものが本当に価値を持つかどうかはこういう映画にかかっているのかもしれない。
漫画もその時だけで読み捨てられるものを描いていたら紙媒体として残っていくのは大変だろう。
その時だけでは終われない価値。
わかり易さばかりを追い求めがちな時代にこそ進むべき道はそっちだと思う。
「バカは置き去りにしておこう」
こんな言葉を心の片隅に置きながらでなければ、この大衆メディアで肥大化したお客様の自我に、大切なものを食いつぶされてしまうと僕は思う。
リンクレーターも「スクールオブロック」みたいなわかりやすいものも(実はこれも名作)撮りつつ自分の撮るべき映画を撮っている。
あまり彼と年も変らないので悔しいけど、僕は彼を認める。
なぜなら映画の中で彼はいつもこう言ってるのだ、
「さあ、バカは置き去りにして楽しもうぜ」
こんなやつがいるから「まだ生きていてもいいか」と思うのだ。

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REIJI YAMADA/山田玲司
漫画家 環境問題活動家

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初めて書きます。
ウェイキングライフはあたしのバイブルなので、この日記を見つけた時はとても嬉しかったです。あまり共感してくれる友達は私の周りにはいないので、、、出会って10年はたちましたが、何度もみたし、経験を重ねると面白い場面が変わるし、未だにわからない所もあります。わたしは死ぬまでにすべてを理解したいな(というか内容をちゃんと納得したい)と思っています。映画を見てるのに自分を探せるすごい映画だとわたしは思っています。ありがとうございました。

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