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アントラージュ2010.12.21

SEX&THECITYというドラマは女の赤裸々な内部告発ドラマとして話題になった作品だけど、実はなかなかちゃんとした人生ドラマになっていて、僕もかなり楽しんでました。

このドラマがヒットした後、みんなが「男性版」は可能なのか?なんて言っていて、漫画業界もよくそんな話をしてました。
僕もそういう漫画を描いてみたいと思っているし、読んでみたいとも思う。

ところで、とっくの昔に男性版SEX&THECITYが本家アメリカで作られているのをご存知でしょうか?
タイトルは「アントラージュ」ハリウッドで成功を目指す若い役者とその友人、兄弟4人の物語だ。

この作品は日本ではあまり話題にならなかったけど、僕は抜群に買っている。
オスである男のバカさや可愛さ、底の浅さ、なんかも描きつつ、ハードな競争社会で助け合いながら楽しく生きていく男たちの雰囲気が実にいい。
男の友情が第一とかいいつつ、いい女にはまるとコントロールができなくなるあたり、実にリアルでいい。

この作品は「競争社会ではそれをゲームとして楽しもうぜ」という哲学があって
もうこんな社会はだめだ、スローライフだ、なんていうのもいいけど、せっかくならこのレースを楽しんでやろうぜ、という感じ、実にいいです。

それにしてもこの頃のアメリカドラマの空気感って、あきらめた感に満ちていてどこか「ユーロな感じ」がいいですね。

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REIJI YAMADA/山田玲司
漫画家 環境問題活動家

「アメリカン・スプレンダー」2010.12.07

知り合いのCMプロデューサーから教えてもらったのが、この『アメリカン・スプレンダー』。
毎回ドキュメンタリームービーを紹介していますが、この作品はその意味では異色作品といえます。

何でもない自分の日常の出来事や思ったことを漫画にして、カルト的な人気を誇った作家ハービー・ピーカーの半生を描いた今作は、本人がナレーションをしています。
場面場面でアドリブも入っているのでは?と勘ぐってしまう面白さがあります。

病院の書類係で生計を立てていたハービーは、2度目の離婚のショックで声が出なくなり、唯一の趣味であるレコード収集だけが楽しみのような生活。
ある日、このまま死んでいくことに恐怖した彼は、友人の絵描きロバート・クラムに自分の原作に絵をつけてもらうよう懇願します。
いまでこそ、エッセイコミックは多くありますが、70年代にはとても新鮮だったことでしょう。
「特別なヒーローでない主人公の、まったく冴えない日常は、果たして物語になるのか」という発想ですから。

ハービーのコミックは、全米で話題となりました。
最近のマーケティング用語っぽくいえば、エンゲージメントされた作品になった、ということでしょうか。
ハービー自身も、テレビショーにレギュラー出演して、人気者になります。
司会者のおべっかに迎合せず、シニカルに世の中を風刺していったからです。
これも、現在のテレビショーではあたり前ですよね。たとえば、マ○コ・Dさんとかを挙げるまでもなく。

映画の中では、ハービーの漫画のファンだった奥さんとの関係も見所になっています。
ハービーは、作家として認められてからも書類係を続けました。
特別な人の特別な日常には、嘘がたくさんあるということがわかっていたんだと思います。
今年の7月、70歳になったハービーは自宅で亡くなりました。
ご冥福をお祈りいたします。

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AKIRA OKAJIMA/岡島朗
有限会社楽脳 取締役